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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

回顧

2011年10月12日 (水)

レコードで快勝ショウナンラムジ

土曜京都2Rの未勝利戦(芝1600m)は、中団追走のショウナンラムジ(3番人気)が勝負どころで進出し、直線で豪快に抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=k6qFdecrDYc

勝ちタイムの1分33秒4はレコード。2年前にアグネスワルツが記録した1分33秒7を0秒3更新しました。この日は準メインの大原S(1600万下・芝2000m)で1分56秒8というコースレコード(日本歴代2位タイ)が出ているので、馬場コンディションのアシストが何より大きかったと思います。ただ、それでも強い勝ちっぷりには違いなく、昨年10月に同じコースで未勝利戦を勝ち上がったサダムパテックぐらいのインパクトはありました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106523/

母フォーカルスターの半弟フォーカルポイントは、キングカメハメハを破って京成杯(G3・芝2000m)をレースレコード(1分59秒2)で制しています。高速決着を得意とする一族なのかもしれません。

父ダンスインザダークは、自身が抱える Nijinsky と相似な血の関係にある Storm Bird や、4分の3同血の The Minstrel を母方に入れた配合がうまく行っています。本馬には Storm Bird が入ります。

そしてもうひとつ、サンデー系と相性抜群のホワイトマズルが母の父に入るところが強調ポイントです。当ブログで繰り返し説明しているとおり、そこに含まれる Drone はサンデーサイレンスの父 Halo とニックスの関係にあります。

「サンデー系×ホワイトマズル」のなかでも、とくに父がアグネスタキオンの場合は優秀で、この配合でデビューを果たした3頭(エミーズスマイル、シュガーヴァイン、ハッピーダイアリー)はすべて準OP以上に出世しています。好相性の理由については10年1月24日のエントリー「アグネスタキオン×ホワイトマズル」に記しました。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/01/post-33fe-1.html

理由のひとつに挙げた「Autocratic(ホワイトマズルの2代母)とロイヤルスキー」の組み合わせを、母フォーカルスターは持っています。

          ┌ Bold Ruler
        ┌○┤ ┌ My Babu
Autocratic―――┤ └○┘
        └○┐
          └○┐
            └ Lea Lark

          ┌ Bold Ruler
        ┌○┤ ┌ My Babu
ロイヤルスキー―┤ └○┘
        │ ┌○┐
        └○┘ └○┐
              └ Lea Lark

本馬は近い世代にサンデーサイレンス、ホワイトマズル、ロイヤルスキーを持つため、「アグネスタキオン×ホワイトマズル」のニックス配合にきわめて近い組成を持つことになります。

            ┌ サンデーサイレンス
          ┌○┘
ショウナンラムジ ―┤ ┌ ホワイトマズル
          └○┤
            └○┐ ┌ ロイヤルスキー
              └○┘

            ┌ サンデーサイレンス
          ┌○┤ ┌ ロイヤルスキー
タキオン×マズル ―┤ └○┘
          │ ┌ ホワイトマズル
          └○┘

3代母ダイナフォーカスが Raja Baba≒ステューペンダス2×2で、ロイヤルスキーの構成要素を強調している点も、ロイヤルスキーがキーポイントとなっている配合のなかではプラス材料でしょう。全体的によくできた配合だと思います。2000m前後がベストで、2400mも守備範囲でしょう。

ダンスインザダーク産駒は先週、ダークシャドウが毎日王冠を勝ちました。今週はクラレント(ショウナンラムジと同じく母方にダンシングブレーヴが入ります)がデイリー杯2歳S(G2)で人気を集めそうです。ダンスインザダーク産駒の月別の重賞勝ち数を調べると10月が「10勝」で突出しています(2位が12月の6勝)。昨年はダノンヨーヨー(富士S)とマルカフェニックス(スワンS)が、一昨年はムードインディゴ(府中牝馬S)とスリーロールス(菊花賞)がいずれも2週連続重賞制覇を果たしました。クラレントがデイリー杯2歳Sを勝てば3年連続となります。この時期のダンスインザダーク産駒は要注意です。

     ――――――――――――――――――――
      血 統 屋 http://www.miesque.com/
     ――――――――――――――――――――

2011年10月11日 (火)

マイルCS南部杯はトランセンド

土曜日の夜半に降った雨の影響で、月曜日の東京ダートは第1Rまでは稍重。メインのマイルCS南部杯(Jpn1・ダ1600m)も良馬場ではありましたがやや脚抜きのいい馬場でした。

とはいえ、〇エスポワールシチー(2番人気)が刻んだラップは凄まじく、1200m通過が1分09秒3。馬場が改修された03年以降では最速です。

それ以前では、01年の武蔵野Sでクロフネが1分09秒2で通過した例があります。クロフネは残りの2ハロンを、最後は手綱を抑える余裕を見せながら11秒7-12秒4で乗り切り、1分33秒3という大レコードを樹立しました。もっとも、クロフネは別カテゴリーの怪物ですから、他の馬にこの芸当は無理です。

当レースのラスト2ハロンは12秒4-13秒1。エスポワールシチーが最後の1ハロンで失速してしまったのは仕方がありません。それでも約3馬身差の4着に粘っているので、調子も気迫も春よりはだいぶ戻してきたなという印象です。順当に良化すれば次走はもっと粘れるはずです。

勝った◎トランセンド(1番人気)は、先頭のエスポワールシチーにいったん突き放されかけ、外のダノンカモン(3番人気)にも出られてしまい、一瞬危ないムードが漂ったのですが、そこから盛り返して勝つところが並の馬ではないですね。
http://www.youtube.com/watch?v=SKbDBozuNDA

予想では◎を打ったものの、2着ダノンカモンをヌケにしてしまい不的中。予想文を転載します。

「◎トランセンドは『ワイルドラッシュ×トニービン』という組み合わせ。ブッシェルンペック≒サニースワップス3×3はユニークで、この相似な血のクロスが活力と底力の源泉ではないかと思われる。サニースワップスの母アイアンリージはハイペリオンとサンインローの組み合わせで、父ワイルドラッシュの大物産駒は、たとえばクリールパッション、クラーベセクレタ、ブラウンワイルドなどのように、この組成を母方から取り入れたものが目につく。母の父トニービンや、ハイペリオンとサンインローの組み合わせから成る血は成長力があるので、昨年秋以降の本格化は、こうした血がモノをいっているのだろう。メンバーを見渡すと単騎マイペースが濃厚。フェブラリーS(G1)と同じ舞台なら中心は動かない。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006104736/

トランセンドの4代母アイアンエイジは、名馬 Swaps(北米で通算25戦19勝、世界レコード5回)の全妹にあたる良血。Swaps は「Hyperion と Son-in-Law」から成る名馬の代表的存在です。望田潤さん風に表現すれば“ハイインロー”ですね。この牝系から出たダンディコマンド(北九州記念)は、Abernant≒チャイナロック≒アイアンエイジ4・3×3で、この部分を強調した配合でした。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1993109569/

           ┌ Hyperion
         ┌○┘ ┌ Son-in-Law
Abernant ――――┤ ┌〇┘
         └○┘

           ┌ Hyperion
         ┌○┘ ┌ Son-in-Law
チャイナロック ―┤ ┌〇┘
         └○┘

           ┌ Hyperion
         ┌○┘ ┌ Son-in-Law
アイアンエイジ ―┤ ┌〇┘
         └○┘

トランセンドの場合、父ワイルドラッシュが「Hyperion と Son-in-Law」から成る Flower Bowl と Etonian を持ちます。Flower Bowl とアイアンエイジは母の父が Beau Pere という点まで共通しています。

           ┌ Hyperion
         ┌○┘ ┌ Son-in-Law
Flower Bowl ―――┤ ┌〇┘
         └○┘

           ┌ Hyperion
         ┌○┘
Etonian ―――――┤
         └○┐ ┌ Son-in-Law
           └〇┘

つまり、トランセンドは、同じ牝系から出たダンディコマンドと同じく「Hyperion と Son-in-Law」を継続した配合となっています。

父ワイルドラッシュの側から見ても「Hyperion と Son-in-Law」の継続は大物を生み出すパターンです。予想文に記した以外にも、海外におけるG1ウィナー Hollywood Story、Dream Rush、名古屋の王者ヒシウォーシイなどがこれに当てはまります。
http://www.pedigreequery.com/hollywood+story
http://www.pedigreequery.com/dream+rush
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2005105442/

苦しい勝負どころでもうひと頑張り、ふた頑張りできる底力は、「Hyperion と Son-in-Law」の影響によるものが大きいと思います。こうした血がサポートしているか否かによって、大レースにおける信頼度は違ってきます。

次走、11月3日に大井競馬場で行われるJBCクラシック(Jpn1・ダ2000m)は、現在6連勝中のスマートファルコンとの頂上決戦が予定されています。昨年9月の日本テレビ盃以来の対戦で、このときはトランセンドが2着、スマートファルコンが3着でした。ただ、両馬ともそれから大きく化けたので力量比較の参考にはなりません。この対決は熱すぎですね~。ライブで見たい一戦です。

2011年10月10日 (月)

毎日王冠はダークシャドウ

800m通過が48秒7ですから超スローペース。その結果、00年以降の毎日王冠(G2・芝1800m)では最も遅い1分46秒7という決着となりました。
http://www.youtube.com/watch?v=DkLb6O0Fca8

直線で前が壁になりながら上がり32秒7で追い込んだ◎ダークシャドウ(1番人気)、3歳で57キロを背負ってクビ差2着の○リアルインパクト(2番人気)は強いですね。堀厩舎は昨年のアリゼオに続いての連覇で、今年はワンツーフィニッシュです。

予想は◎○△で馬単1250円、3連単5660円的中。『netkeiba.com』の「No.1予想」に提供した予想文を転載します。

「◎ダークシャドウは『ダンスインザダーク×プライヴェートアカウント』という組み合わせで、2代母ユーセフィアがスピードタイプの名種牡馬グリーンデザートの全妹という良血。母方に速いアメリカ血統を入れ、ヘイロー≒サーアイヴァー3×4、ディナーパートナー≒バックパサー5×4というクロスを持っているため、ダンスインザダーク産駒にしては俊敏さがある。大阪杯のあとトモに違和感が出て休ませたが、前走のエプソムCはその影響を感じさせない楽勝。抜け出すときだけ本気を出してあとは流すという、力が二枚ぐらい違う勝ち方だった。天皇賞でも勝ち負けになる器だと思われるので、ここは普通に走れば結果がついてくるはず。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007102929/

昨年5月、デビュー2戦目の500万下(芝2000m)の予想で◎を打ち、勝ったあとに『web競馬王』で配合を褒めたことがあるので、自分のなかでは気に入っている馬です。論旨は当時から変わっていません。予想文に「Dinner Partner≒Buckpasser 5×4」とありますが、ダンシングキイは Flaming Page≒Dinner Partner 2×3という特殊な凝縮を持つので、同時に「Flaming Page≒Buckpasser 4×4」でもあります。つまり、

         ┌ Tom Fool
Dinner Partner ―┤ ┌ Blue Larkspur
         └○┤ ┌ Man o'War
           └○┘

         ┌ Tom Fool
         │   ┌ Man o'War
Buckpasser ―――┤ ┌○┘
         └○┤ ┌ Blue Larkspur
           └○┘

であると同時に、

             ┌ Bull Dog
           ┌○┘
         ┌○┤ ┌ Blue Larkspur
Flaming Page ――┤ └○┘
         │ ┌ Menow
         └○┤
           └○┐ ┌ Man o'War
             └○┘

           ┌ Menow
         ┌○┤ ┌ Bull Dog
         │ └○┘
Buckpasser ―――┤   ┌ Man o'War
         │ ┌○┘
         └○┤ ┌ Blue Larkspur
           └○┘

でもあります。後者の相似な血のクロスはマルゼンスキー、ヤマニンスキー、ラシアンルーブルが2×2で持っており、「Nijinsky×Buckpasser」の成功の有力な根拠となっています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a0003bd/

ダンスインザークの配合については、昨年10月24日のエントリー「ダンスインザダークの配合的核心」でも解説しております。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/10/post-599e.html

Halo≒Sir Ivor については、昨年11月9、10日のエントリー「Halo≒Sir Ivor≒Drone(前・後)」をご参照ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/11/halosir-ivordro.html
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/11/halosir-ivord-1.html

ダンスインザダーク産駒ではありますが、2代母が快速 Green Desert の全妹で、なおかつアメリカ血統を積極的に絡めていることから、長距離タイプではありません。ダンスインザダーク産駒の中距離型としては最高傑作といえるでしょう。大阪杯(G2・芝2000m)でヒルノダムールと同じ斤量を背負いハナ差2着となっているので、天皇賞・秋(G1)でも互角の勝負に持ち込めると思います。

2着リアルインパクトは、パドックに出てきたときに、春に比べてずいぶん逞しくなったと感じました。筋肉が盛り上がってきましたね。結果的に仕掛けが早かったかもしれませんが、鞍上のゴーサインが出ると瞬時に反応し、後続を突き放しにかかったところが非凡です。ディープインパクト産駒のトビが大きいタイプには真似ができない芸当で、このあたりの爆発力は母方に濃厚に流れるアメリカ血統の影響でしょうか。

3歳馬が57キロを背負って毎日王冠で連対を果たしたのは98年のエルコンドルパサー以来13年ぶり。安田記念の結果がフロックでないことを証明しました。次走は天皇賞・秋ではなくマイルチャンピオンシップ(G1・芝1600m)になる模様です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103244/

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2011年10月 7日 (金)

上のクラスのほうが競馬がしやすいアンチュラス

■日曜阪神1Rの未勝利戦(芝1400m)は、アンチュラス(1番人気)が単勝1.3倍の断然人気に応えて4馬身差で勝ちました。
http://www.youtube.com/watch?v=iv5gjKo9Zqg

デビュー戦は単勝1.4倍の1番人気に推されたものの、掛かり気味に追走して末を失い、3着に敗れました。稽古の動きは未勝利レベルではないので、2戦目に勝ち上がったのは当然の結果といえるでしょう。

ただ、行きたがる気性は相変わらず。レース序盤、ジョッキーが持って行かれそうになっていました。1、2戦目とも外枠だったので、前に馬を置けば違ってくるのかもしれませんが……。

3戦2勝のイングリッド(現在休養中)の全妹にあたり、母アンチョは Music Zone≒Medaille d'Or 2×3で、Music Zone の父 The Minstrel は父ディープインパクトと相性良好です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106569/

        ┌ The Minstrel(≒Fanfreluche)
Music Zone ――┤
        └〇┐
          └ Zonely(≒Secretariat)

        ┌ Secretariat(≒Zonely)
Medaille d'Or ―┤
        └ Fanfreluche(≒ The Minstrel)

『競馬王のPOG本』の「栗山ノート」で指名し、血統屋の電子書籍『種牡馬別好配合馬リスト ディープインパクト編』では〇評価でした。母方が硬質なアメリカ血統で固められているので、距離は1800mあたりまでが良さそうです。気性を考えれば1400~1600mでしょうか。おそらく、レースの流れが速くなる上のクラスのほうが走りやすいでしょう。次走に予定しているファンタジーS(G3・芝1400m)では、内枠を引ければ好勝負に持ち込めるのではないかと思います。

■日曜札幌1Rの未勝利戦(芝1500m)は、3番手追走のガッテンムサシ(5番人気)が抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=Y4O8QrNYrCM

直線半ばで前と後ろの態勢がガラリと入れ替わるレースで、きついペースのなか3番手から押し切った内容は強かったと思います。持続力とパワーが活きそうな1200~1600mのレースではこれからも要注意です。

母方に Storm Cat が入るスペシャルウィークの典型的なニックス配合。2代母テンザンストームは名馬タイキシャトルに土をつけた数少ない馬です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009104180/

スペシャルウィークと Storm Cat の関係については、10年4月14日のエントリー「マルゼンスキーと Storm Cat」をご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/04/storm-cat-897-1.html

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2011年10月 6日 (木)

母譲りの中山巧者ぶり、マイネエカテリーナ

■阪神9RのききょうS(2歳OP・芝1200m)は、1~4着までハナ、ハナ、クビの大接戦をネオヴァンクル(4番人気)が制しました。
http://www.youtube.com/watch?v=OGEA4liSQzk

小倉の未勝利戦(芝1200m)に続いての連勝です。音無秀孝厩舎の2歳馬のなかで、現在のところ勝ち星を挙げているのはこの馬だけ。クラヴェジーナがモタつく間に2勝してしまいました。クランモンタナ、ダノングーグー、ヒストリカルなど評判馬が揃っているので、京都開催で攻勢をかけてくる予感がします。

「フレンチデピュティ×サンデーサイレンス」は桜花賞馬レジネッタなど多くの活躍馬を出して成功している組み合わせです。この馬は、父がフレンチデピュティで、2代母マイライフスタイルがサンデーサイレンスの全妹ですから、配合構成が似ています。母の父にティンバーカントリーを挟むので一本調子ではありますが、緩急を必要としない1200~1400mの競馬では逆にいいのでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106011/

サンデーサイレンスの全妹は、サンデーズシス、ペニーアップ、マイライフスタイルと3頭輸入され、かなり多くの子孫が誕生していますが、重賞を勝ったのはトーセンクラウン(中山記念)のみ。残念ながらサンデーサイレンスのような影響力は発揮していません。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004101623/

■中山5Rの新馬戦(芝1800m)は、◎マイネエカテリーナ(4番人気)が2番手から抜け出して快勝しました。

予想は◎△〇で馬単13980円、3連単74240円的中。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想文を転載します。

「◎マイネエカテリーナは『アグネスタキオン×ブライアンズタイム』という組み合わせ。母マイネヌーヴェルはフラワーC(G3)の勝ち馬で、その全弟にマイネルチャールズ(弥生賞、京成杯)とマイネルアワグラス(シリウスS)がいる良血。『アグネスタキオン×ブライアンズタイム』は芝新馬戦で連対率36.4%(11戦4連対)と走っており、母は中山巧者だったのでこのコース条件も向くはず。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105193/

名繁殖牝馬マイネプリテンダーの孫。予想文に記したとおり、母マイネヌーヴェルの2頭の全弟マイネルアワグラスとマイネルチャールズは重賞を勝っており、半弟マイネルヌーヴォーは中山グランドジャンプ(J・G1)の勝ち馬。つまり、マイネプリテンダーの子はデビューした4頭がすべて重賞を勝っています。この一族は中山芝コースに強く、今回の勝利で連対率46.4%(28戦13連対)となりました。

マイネプリテンダーの父はオセアニアの大種牡馬 Zabeel。その父は“南半球の Northern Dancer”と言われた Sir Tristram で、その父は Sir Ivor。この血は Halo とニックスの関係にあるので、サンデーサイレンス(その父 Halo)の系統は合うでしょう。

2011年10月 4日 (火)

ディープブリランテ視界良好

土曜阪神5Rの新馬戦(芝1800m)は、中団追走の◎ディープブリランテ(1番人気)が4コーナー手前でマクリ気味に進出し、直線で楽々と抜け出しました。2着との着差は5馬身。
http://www.youtube.com/watch?v=q27WwQ6XuRw

予想は◎△★で馬単500円、3連単6690円的中。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想文を転載します。

「◎ディープブリランテは『ディープインパクト×ルーソヴァージュ』という組み合わせで、ハブルバブル(フラワーC-2着)の全弟にあたる。母ラヴアンドバブルズには重厚なヨーロッパ血統が含まれており、本馬はバステッド4×5を持つなど底力を感じさせる中距離配合に仕上がっている。ダービー向きの本格派だろう。姉と違ってこの時期に仕上がったのは体質が強い証拠。稽古時計も素晴らしく、ここは相手探しのレース。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105084/

ディープインパクト産駒は、首を上手に使って全身を躍動させるタイプが目につくのですが、この馬もその1頭ですね。追い出されてからフットワークが伸びるので末が切れます。初戦としては満点の勝ち方でした。

今年のフラワーC(G3)で2着となったハブルバブルの全弟です。同馬が新馬戦を勝った直後の3月3、4日に、「ハブルバブルとブサック血統(前・後)」という2回にわたるエントリーを記しました。配合についての詳しい説明はそちらをご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/03/post-bd37.html
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/03/post-dc7f.html

注目の配合馬なので、『競馬王のPOG本』の「栗山ノート」で取り上げただけでなく、白夜書房で行われた「POG公開ドラフト」でも指名しました。netkeiba.com の「私のオススメ10頭」にも入れています。

血統屋の電子書籍『種牡馬別好配合馬リスト ディープインパクト編』では、Busted 4×5の影響で姉のように仕上がりが遅れたら……という懸念から評価を○にしてしまいました。望田潤さんは◎だったのでちょっと悔しいですね(笑)。
http://www.miesque.com/c00005.html

00年以降、10~12月に中央開催で行われた芝1600~2000mの新馬戦で、2着を5馬身以上ちぎって勝った馬は過去9頭います。そのうちの3頭はのちにG1ウィナーとなり(ダンスインザムード、フサイチパンドラ、ヴィクトリー)、2頭は重賞を勝ち(ローエングリン、ハイアーゲーム)、2頭は重賞で3着以内に入りました(メテオバースト、テイラーバートン)。要するに、上記の条件をクリアした馬はだいたい重賞クラスには出世し、3分の1の割合でG1を勝つ、ということです。

レース後は、ソエを治すために放牧に出たとのこと。能力の高さは間違いないので、ダービーを目指してじっくり行ってほしいですね。

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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2011年10月 3日 (月)

凱旋門賞は Danedream

好天続きでロンシャン競馬場は過去最高レベルの高速馬場。しかも30℃前後まで気温が上昇する異常気象。これを見て、レース前はヒルノダムールが好位から抜け出すシーンしか頭に浮かびませんでした^^

しかし、勝負は甘くありません。ヒルノダムール10着。ナカヤマフェスタ11着。ただ、人気を集めた Sarafina が7着、Galikova が9着、昨年の覇者 Workforce が12着ですから、凡走というわけでもなく、力いっぱい走ったものの相手が強かった、ということでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=PcqRJojow6k

勝った Danedream(父 Lomitas)はドイツ産の牝3歳馬。ドイツ調教馬の凱旋門賞制覇は1975年の Star Appeal 以来36年ぶりです。
http://www.pedigreequery.com/danedream

ドイツからの遠征馬は長らく勝てなかったわけですが、ドイツ血統を持つ馬の優勝は3年連続です。09年の優勝馬 Sea the Stars、10年の優勝馬 Workforce にもドイツ血統が含まれていました。
http://www.pedigreequery.com/sea+the+stars
http://www.pedigreequery.com/workforce

ドイツの名伯楽ペーター・シールゲン調教師が管理し、今年5月の伊オークス(G2・芝2200m)を6馬身半差で勝って重賞初勝利を挙げました。ただ、次のマルレ賞(仏G2・芝2400m)では同じ3歳牝馬を相手に5着と敗れているので、この時点ではまだごくありふれた重賞勝ち馬だったと思います。

変わったのはその次から。約1ヵ月後の7月24日、牡馬を含めた古馬相手のベルリン大賞典(独G1・芝2400m)を5馬身差で、9月4日のバーデン大賞典(独G1・芝2400m)も同様に6馬身差で勝ち、ロンシャンに乗り込んできました。映像を見ると強靭な末脚が印象的です。バーデン大賞典から凱旋門賞を制したのは02年のマリエンバード以来となります。
http://www.youtube.com/watch?v=le3Xm_kfJrI
http://www.youtube.com/watch?v=L3GjMUnAR0U

凱旋門賞の直前、社台ファーム代表の吉田照哉氏が権利の半分を獲得しました。競走馬購買の広汎なネットワーク、眼力、決断力。さすがというしかありません。社台ファームは過去にもドイツ血統を積極的に入れているので、たまたまドイツ牝馬を買ったら当たったというわけではなく、ドイツの良血牝馬を獲得したいという明確な意思のもとに行ってきた地道な活動が実を結んだ、ということだと思います。

今回の凱旋門賞出走に関しては、10万ユーロ(約1030万円)という高額な追加登録料を支払っています。もし吉田照哉氏の購買と凱旋門賞挑戦がリンクしているなら、今回の勝利の立役者は吉田照哉氏といえるかもしれません。ジャパンCに出走する可能性があるのかどうか、続報を待ちたいと思います。

Danedream の父 Lomitas は、一昨年のエリザベス女王杯に来日(4着)したシャラナヤ Shalanaya の父。このほか、Silvano(アーリントンミリオン-米G1)、Belenus(独ダービー-独G1)などを送り出し成功しています。Lomitas の母の父 Surumu は、旧来の重苦しいドイツ血統とは肌合いを異にする現代的な特長を持ちます。それはすなわち堅い馬場を苦にしないということです。詳しくは10年4月22日のエントリー「勢力を拡大するドイツ血統」をご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/04/post-5cf1.html

母 Danedrop はキンシャサノキセキの母ケルトシャーンと構成が似ています(近い世代で Northern Dancer、His Majesty、Lady Berry が共通)。

母の父にデインヒルが入り、自身は Ribot 5×5を持つので馬力や底力は十分ですが、Nijinsky や High Top は堅い芝もOKなので、凱旋門賞のレースレコード(2分24秒49)を出せる下地はあったと思います。たとえば、05年のジャパンCを2分22秒1のレコードで勝ち、日本の堅い芝で新たな才能を開花させたイギリス馬アルカセットは、母チェサブラナが Niniski×High Top という組み合わせ。Danedream も近い世代に Niniski と High Top を持ちます。
http://www.pedigreequery.com/alkaased

Danedream はいずれ社台ファームで繁殖入りするのでしょう。93年の凱旋門賞を制した Urban Sea(Galileo、Sea the Stars などの母)のような名繁殖牝馬になることを期待したいところです。

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2011年10月 2日 (日)

Dabirsim がジャンリュックラガルデール賞(仏G1)制覇!

ハットトリック産駒として注目を集める Dabirsim が、凱旋門賞当日に行われた仏2歳チャンピオン決定戦・ジャンリュックラガルデール賞(G1・芝1400m)を制しました。通算5戦全勝。
http://www.youtube.com/watch?v=O9oxMZghO44

2倍を切る圧倒的な1番人気ながら、鞍上のデットーリ騎手は残り300mぐらいまで前が詰まり最後方に控える展開。ゴール直前、最内を突いてグイグイ伸び、全馬を交わし去りました。曲芸のような騎乗でしたね。サンデー系の切れ味はやはり恐ろしいものがあります。乾いた馬場で勝ち時計は1分19秒85と速いのですが、ロンシャンのこのコースは実測1400mありません。このあたりは日本のように厳密ではありませんね。

Dabirsim はこれでカルティエ賞最優秀2歳牡馬の受賞に大きく前進しました。レース後、テレビカメラの前でインタビューに応えたデットーリ騎手は、興奮冷めやらぬ様子で「スーパースター」を連発していました。サンデーサイレンス系にとっても大きな意味を持つ勝利です。
http://www.pedigreequery.com/dabirsim

スプリンターズSはカレンチャン

いろいろあったスプリンターズS(G1・芝1200m)ですが、△カレンチャン(3番人気)の完勝ぶりは文句のつけようがなく、能力が一枚上という競馬でした。ここまで強くなっているとは……という感想です。
http://www.youtube.com/watch?v=VqCvGFc-MS0

5連勝でG1戴冠、という歩みは同じクロフネ牝馬のスリープレスナイトと同じ。着差がつきづらいスプリント戦における“1・3/4馬身差”はかなり大きなもので、2000年以降、良~稍重で行われたスプリンターズSでは、06年のテイクオーバーターゲット(2・1/2馬身差)に次ぐものです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007102807/

4コーナーから直線にかけて◎ロケットマン(1番人気)の外側に被せるように進出し、同馬をポケットに閉じ込めた池添騎手のプレーが見事でした。「(ロケットマンを)ずっと見ながら競馬ができたらいいかなぁと思っていました」と、レース後に語っていたので、最大のライバルと見越した上で蓋をしたのでしょう。池添騎手はこれでホエールキャプチャ、オルフェーヴルに続き3週連続重賞制覇。今年に入って重賞11勝目で、うちG1は4勝目となります。大レースで冷静沈着に仕事ができるという点では現役ナンバーワンではないでしょうか。

カレンチャンの配合については、4月10日のエントリー「阪神牝馬Sはカレンチャン」をご覧ください。準OPからノンストップで頂点を極めたわけですが、馬はまだ強くなる可能性があります。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/04/post-c728.html

1番人気で敗れたロケットマンは4着。先頭に並びかけることすらできませんでした。蓋をされてロスがあったのは事実ですが、それ以前に道中の手応えがもうひとつでしたね。

個人的には、火曜日と金曜日に強いところを追って、なおかつ馬体重が増えていたところに敗因があるような気がします。シンガポールから日本への輸送を見越して、出発前に少し太めに作りすぎていたのではないでしょうか。あるいは、9月17日に来日してから何か誤算があったか。

今年に入ってから、本拠地シンガポールのレースでは481、479、479、479キロと安定しています。ドバイでは計測がありません。昨年末、香港に遠征(2戦)した際は、475、473キロ。シンガポールでレースをしているときよりも減っています。そして今回は486キロ。香港遠征のときのように減っているならともかく、逆に増えています。レース当週の異例の2回追いは、太目を解消するための苦肉の策だったとも考えられます。

もしこれが敗因なら、ベストの体調ではなかったことになるので、できることなら来年もう一度チャレンジしてほしいですね。セン馬なので7歳になっても衰えはないでしょう。

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札幌2歳Sはグランデッツァ

■札幌2歳S(G3・芝1800m)は好位追走の◎グランデッツァが好位追走から難なく抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=YeSx5gvfE4Q

予想は◎△△で馬単410円、3連単2430円的中。『netkeiba.com』の「No.1予想」に提供した予想文を転載します。

「◎グランデッツァは『アグネスタキオン×マージュ』という組み合わせ。半姉マルセリーナは桜花賞馬で、母マルバイユはアスタルテ賞(仏G1)など3つのマイル重賞を制した名牝。母方はヨーロッパ血統で構成されており、馬場が少々湿ったぐらいではへこたれない。ほんの少し気合いをつけた程度で後続を8馬身ちぎった前走の勝ちっぷりは圧巻。まだまだ未完成でレースぶりも荒削りだが、外からすんなり好位をキープできればこのメンバー相手に連を外すことはなさそう。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105989/

1200mの2歳重賞と違い、札幌2歳Sは来年のクラシックを思い描きながら予想することができるので、毎年検討するのが楽しみなレースです。今年は素直にグランデッツァが抜けていると評価して◎。外からすんなり好位をキープできた時点で半分レースは決まったようなものでした。

配合については9月21日のエントリー「グランデッツァ8馬身差圧勝」をご覧ください。Alcide 周辺の重厚な部分を強化した配合なので、雨の心配はしていませんでした。これで賞金は足りたのでゆったりとしたローテーションを組むことができます。次走は暮れの阪神でしょうか? 直線の長いコースでどんな脚が使えるのか楽しみです。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/09/post-43d5.html

2着△ゴールドシップ(2番人気)の走りを見ていると母の父メジロマックイーンの姿がダブります。身のこなしがそっくりですね。直線でエンジンが掛かったときに思わず「おっ」と身を乗り出しました。鋭く追い込んで届かなかった馬はつねに強く見えるもので、現時点で過大視は禁物ですが、先々かなりいい形で完成しそうな予感があります。早熟型ではないのでこれからどんどん成長するでしょう。

■阪神11RのシリウスS(G3・ダ2000m)は、勝ったヤマニンキングリー(5番人気)を無印に落として大失敗。2年も勝ち星から遠ざかった6歳馬が初挑戦のダートで蘇り、しかもそれが重賞だったという例はきわめて稀です。
http://www.youtube.com/watch?v=zPgDoB4FU-0

武豊騎手は「初めてのダート戦なので砂を被らないポジションでレースをしようと思っていました」(ラジオNIKKEI競馬実況web)と語っています。ファインプレーですね。

2代母ティファニーラスはケンタッキーオークス(米G1・ダ9f)の勝ち馬で、その父 Bold Forbes、母の父 Graustark というパワー型の血統ですから、ダートをこなす下地はありました。父アグネスデジタルと同じく芝とダート双方で重賞を勝ったことになります。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2005105360/

前日に雨が降り、良馬場とはいえ軽い馬場コンディションだったことも幸いしたはずです。必ずしも状態面が良好というわけではなかったと思うので、調子が上がってくればさらに上のパフォーマンスが期待できます。もともと寒い時季のほうがいいタイプ。武豊騎手のお手馬であるスマートファルコンの座を脅かし、“男版ホクトベガ”といった存在になればおもしろいですね。

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競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!