天皇賞・秋はトーセンジョーダン
レース前半、かなりのペースでレースが展開していることは分かりましたが、1000m通過が「56秒5」とターフビジョンに表示されると場内がドッと湧きました。逃げたシルポートが残り300mで馬群に飲み込まれたあともペースは落ちることなく、馬場中央を突き抜けた△トーセンジョーダン(7番人気)が1分56秒1の日本レコードで快勝しました。
http://www.youtube.com/watch?v=wbCnkopLCkk
1800mの通過1分44秒3は、同距離のコースレコード(1分44秒2=チョウサン)と0秒1しか違いません。2000mの旧レコード(1分57秒2=ウオッカ)が樹立された3年前の当レースは、この距離を1分44秒6で通過したものの、最後の1ハロンで12秒6とラップを落としました。今回は11秒8で締めくくったので大レコードとなりました。
◎ペルーサ(6番人気)は好スタートを決め、後方で折り合いがつきました。個人的には超ハイペースの展開に内心しめしめ……という気分で、直線で大外に持ち出したときには差し切れると思いましたが、惜しくも届かず3着。思いのほか前がしぶとかったですね。
『netkeiba.ocm』の「No.1予想」、『ウマニティ』に提供した予想は△○◎で3連単21万4010円的中。連単系マルチに買い目を設定していたので高配当が的中しました。予想文を転載します。
「◎ペルーサは『ゼンノロブロイ×キャンディストライプス』という組み合わせで、母アルゼンチンスターの全姉に亜チャンピオン牝馬で米G1も制したディフェレントがいる良血。昨年5月の青葉賞(G2)を勝った際は、いずれ日本を背負って立つ名馬になるだろうとの期待感があったが、それを最後に勝ち星がなく現在7連敗中。しかし、たそがれたイメージとは裏腹に今回の休養中にガラリ一変。稽古で抜群の時計を連発している。思えば父ゼンノロブロイも4歳秋に一変し、天皇賞・秋→ジャパンC→有馬記念とG1を3連勝した。ここにきての急上昇は父の軌跡と重なって見える。ゼンノロブロイ産駒は東京芝2000mで連対率48%(23戦11連対)と驚異的な成績を挙げており、ペルーサ自身、昨年の天皇賞・秋でブエナビスタの2着と好走している。この条件はベストに近く、休み明けだからこそ配当面の妙味もある。」
馬体重はプラス14キロ(520キロ)。太いというよりも筋肉の盛り上がりが目立ち、明らかにスケールアップしていました。反動が出なければジャパンCでも勝ち負けに持ち込めそうです。
2着○ダーウシャドウ(2番人気)は直線半ばで前が開かず、外側に進路を変えた不利が痛かったですね。あれがなければ……と惜しまれます。大阪杯でG1馬に伍して2着、前走の毎日王冠では安田記念馬リアルインパクトに先着しているのですから、今回のメンバーに交じっても格下ということはありません。ゴール前の追い比べでは、尾を振って内にモタれ、苦しがっていました。最後の一滴までガソリンを使い切ったような走りだったので、反動がやや心配です。
勝ったトーセンジョーダンはジャングルポケット産駒。スパッと切れるタイプではないだけに瞬発力勝負になるとやや劣勢では、という気がしていました。スピードの持続力が要求される超ハイペースになったことが幸いしました。とはいえ、トップレベルのG1をレコードで制したわけですから、もちろん展開が向いたことだけが勝因ではありません。この馬自身、厳しい流れを追走しながら上がり3ハロンはメンバー中2位の34秒2。地力強化は明らかです。晩成型の血がようやく開花してきたのでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006103169/
当ブログで再三示しているとおり、配合構成は2年前の天皇賞・秋、マイルCSを制したカンパニーに酷似しています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2001103435/
┌ トニービン
┌○┤ ┌ Nureyev(≒Sadler's Wells)
トーセンジョーダン ┤ └○┘
└ エヴリウィスパー(=ブリリアントベリー)
┌ トニービン
┌○┤ ┌ Sadler's Wells(≒Nureyev)
カンパニー ――――┤ └○┘
└ ブリリアントベリー(=エヴリウィスパー)
カンパニーは長らくG2大将というポジションでしたが、8歳にして本格化し、G1を勝ちました。配合がよく似たトーセンジョーダンもこれから旬を迎えるのではないでしょうか。フロックではないでしょう。
両馬の2代母クラフティワイフの牝系は、トニービン系と絶好の相性を示しており、トーセンジョーダンとカンパニーのほかにも、レニングラード、バトルバニヤンといった活躍馬が出ています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1999107047/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004102878/
┌ トニービン
レニングラード ――┤
└ ブリリアントベリー(=エヴリウィスパー)
┌ トニービン
┌○┘
バトルバニヤン ――┤
└ クラフティワイフ
非常に分かりやすいニックスなので、トーセンジョーダンは以前POGで指名していました。個人的にも思い入れのある馬です。この秋、ジャングルポケット産駒はアヴェンチュラ(秋華賞)に次いで2頭目のG1制覇となりました。
もともとトニービンとノーザンテーストの組み合わせは東京コースのG1に強く、90年代にはサクラチトセオーとエアグルーヴが天皇賞・秋を勝っています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1990108898/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1993109154/
┌ トニービン
サクラチトセオー ―┤ ┌ ノーザンテースト
└○┘
┌ トニービン
エアグルーヴ ―――┤ ┌ ノーザンテースト
└○┘
これらに加え、トーセンジョーダン、カンパニーを含めてあらためて思うのは、“Hyperion の勝利”である、ということ。トニービンもノーザンテーストも Hyperion が主要な構成要素です。府中の長い直線で底力勝負になったとき、この血は頼りになります。Hyperion については以下のエントリーご参照ください。
★Hyperion 没後50年(前)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/12/hyperion-a60d.html
★Hyperion 没後50年(後)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/12/hyperion-4e5d.html
★Hyperion とウォルター・オルストン(1)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/12/hyperion-7206.html
★Hyperion とウォルター・オルストン(2)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/12/hyperion-5de0.html
★Hyperion とウォルター・オルストン(3)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/12/hyperion-58a6.html
周知のとおり、トーセンジョーダンがここに至るまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。裂蹄により二度の長期休養を余儀なくされ、クラシックも棒に振りました。ここまでよく這い上がったものです。サンデーサイレンスを含まない血統なのでいずれ種牡馬となったときに重宝されるでしょう。
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血 統 屋 http://www.miesque.com/
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