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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年2月

2011年2月28日 (月)

中山記念はヴィクトワールピサ

日曜日の中山競馬場は春でした。昼食を食べたあとボーッと馬場を眺めていると睡魔が襲ってきて困りました。そんな競馬日和のなか行われた中山記念(G2・芝1800m)。素晴らしいレースでしたね~。目の保養になりました。
http://www.youtube.com/watch?v=yjfvsdYBWcM

大外をマクった◎ヴィクトワールピサ(1番人気)が直線で先頭に立つと、軽いどよめきが起こりました。「うわっ、強いな~!」という声も。それなりの強豪が集まる古馬G2で、他馬を子供扱いにして楽勝するのですから、一言でいって能力が違います。予想は◎△で馬単810円的中。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想文を転載します。

「◎ヴィクトワールピサは『ネオユニヴァース×マキアヴェリアン』」という組み合わせで、スウィフトカレント(小倉記念、天皇賞・秋-2着)の4分の3弟、アサクサデンエン(安田記念)の半弟にあたる。中山コースでは3戦全勝(有馬記念、皐月賞、弥生賞)。前走、2500mの有馬記念でブエナビスタを倒したが、本質的には2000m前後を得意とする中距離馬なので、距離短縮はプラスだろう。能力は抜けており、他馬との比較で58キロはむしろ有利。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007102923/

着順掲示板に表示された上がり4ハロン「45秒9」という数字にビックリしました。中山内回りコースの終盤は、3コーナー→4コーナー→急坂、というレイアウト。カーブと坂が大半なので速い上がりは出ません。上がり4ハロンは序盤どんなにスローでも46秒台が精一杯。それが、45秒台突入。「TARGET frontier JV」で調べてみたところ、これは中山内回りコースの新記録でした。

コース史上最も速い上がりを記録したレースで、後方から大外を回って突き抜けたヴィクトワールピサの脚力は、ちょっと形容しがたいものがあります。有馬記念でブエナビスタを封じたロングスパートはやはり並ではなかったということです。今回のマクリは一瞬ディープインパクトの姿がダブりました。

これで中山コースは4戦全勝。もちろん、中山は得意ですが、中山専用馬ではないという点には注意したいところです。レースを見ても明らかなように、コース巧者である以前に能力が違います。直線の長いコースでも大きな能力減はなくそれなりの走りはするでしょう。次走予定のドバイワールドC(3月26日・メイダン競馬場・AW2000m)はまさにそうしたコースレイアウト。世界のトップクラスとブエナビスタを相手にどれだけやれるのか興味が尽きません。

2011年2月27日 (日)

アーリントンCはノーザンリバー

土曜阪神11RのアーリントンC(G3・芝1600m)は、好位追走の◎ノーザンリバー(4番人気)が外から抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=D3POibKfIy4

阪神競馬は開幕日ということで絶好の芝コンディション。傷みの少ないインコースを通れる内枠の馬が馬券に絡みまくっていました。ノーザンリバーは12番枠から出て終始外を回っていたので、着差以上に強かったと思います。

2着キョウエイバサラ(11番人気)は無印。血統的に芝向きだとは思いましたが、成績が成績だけに印は回りませんね~。内枠だったことにも幸いしたと思います。レース選択が上手な矢作調教師があえてぶつけてきた意味をもう少し考えるべきでした。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008110045/

勝ったノーザンリバーについては、前走を勝ったあと、2月2日のエントリーで「次は芝に戻るのではないでしょうか。ダート馬ではないので要注意です」と書きました。ここ2走はダートで勝ちましたが、芝・ダート兼用というだけで、ダート専用馬ではもちろんありません。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想文を転載します。

「◎ノーザンリバーは『アグネスタキオン×マキアヴェリアン』という組み合わせ。ノットアローン(ラジオNIKKEI賞-2着)、ルミナスポイント(OP)の全妹、モンローブロンド(ファンタジーS-2着)の半妹にあたる良血。ダートで連勝しているが、初戦(芝1500m)はレーヴディソールの2着、休み明けだった2戦目(芝1600m)も差のない3着。芝適性は問題ない。アグネスタキオン産駒は阪神芝1600mと相性がいい。ダイワスカーレットとレーヴディソールがG1を制覇し、アーリントンCでも〔0・2・1・2〕とコンスタントに走っている。全兄ノットアローンが4着なら、それより上と思えるノーザンリバーは勝ち負けになっていい。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103212/

母の父が Machiavellian で、母の母が Sonic Lady ですから、1600~2000mあたりがちょうどいいタイプですね。牝系については1月19日のエントリー「ディープインパクト産駒の買いどころは基本的にマイル以上」で触れておりますのでご覧くださいませ。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/01/post-35da.html

○ノーブルジュエリー(1番人気)は見てのとおり出遅れ+大外回しが敗因。牡馬相手の1600mでそのような競馬は荷が重すぎました。牝馬相手の1400mなら評価を下げる必要はないと思います。

△ラトルスネーク(3番人気)は引っ掛かる気性で、勝った前走でも外に出した途端掛かり気味になっていました。したがって馬群に入れてレースを進めたい馬なのですが、それはイコール、前が詰まるリスクを背負うことでもあります。今回も馬群が捌けていれば勝ち負けでした。次走以降も詰まったら負け、詰まらなければ勝ち、という丁半博打のような競馬になりそうなので、なかなか本命は打ちづらい馬です。

さて、日曜日の阪急杯。馬場の傾向が土曜日とほぼ同じだと仮定すると、内枠の馬は要注意です。1~3枠の馬は人気薄でも念のため押さえたいところです。

2011年2月26日 (土)

黛弘人騎手、油断騎乗により9日間の騎乗停止

土曜日の小倉最終レースで、メジロガストンに騎乗した黛弘人騎手が「決勝線手前で2完歩ほど追う動作を緩め2着」(JRAホームページより)となりました。
http://www.youtube.com/watch?v=QCNcvxI0dDs

87年10月の東京競馬で、天間昭一騎手(現調教師)がゴール前で手綱を緩めて後続に差されたことが問題になったとき、騎乗停止期間は「4ヵ月」でした。わたしはこういうケースで仮に半年間の騎乗停止処分が下ったとしても重いとは思いません。

メジロガストンの馬主であるメジロ牧場のブログに以下のような記述があります。

「黛ジョッキーから牧場に電話がありました。ガストンがもたれて斜行しそうになり、それを立て直すために上体が起きてしまったとのこと。しかもムチを入れようとおもった手が勝ったときのガッツポーズにとられてしまったそうです。」
http://ameblo.jp/mejiro308/entry-10813960180.html

JRAの説明は以下のとおり。

「黛騎手本人から事情聴取を行うとともに、パトロール映像を精査した結果、この行為は騎手としての注意義務を著しく怠った油断騎乗であると認め、騎乗停止30日としました。」
http://www.jra.go.jp/news/201102/022602.html

JRAは黛騎手の言い分を認めていません。「騎乗停止30日間」は競馬開催日に直すと「9日間」ということになります。

ゴール前の競り合いの最中、不用意に手綱を緩めたり腰を上げたりする騎手がよく目に付きます。今回は1着と2着が入れ替わったので目立ちましたが、2着と3着、あるいは3着と4着の争いでは、「最後までしっかりと追っていたら着順が入れ替わっていたのでは?」というシーンをたまに目にします。たった数メートル手綱を緩めたぐらいで馬のスピードは変わらないよ、という意見もあります。しかし、ファンの目にはそうは映らないでしょう。レースの公正性に対して疑念を抱かせる行為が競馬ファンの増加につながるとは思えません。

公正というものに厳格な態度を貫くJRAが、なぜこうした行為を放置しているのかよく分かりません。騎手を調整ルームに缶詰にすることよりも重要だと思うのですが。

ボールドスマッシュ2勝目

2月18日のエントリーで取り上げたボールドスマッシュ(牝3歳・船橋・岡林光浩厩舎)が、2月22日に船橋競馬場で行われた2戦目(ダ1600m)を快勝し、通算成績を2戦2勝としました。
http://www2.keiba.go.jp/KeibaWeb/TodayRaceInfo/RaceMarkTable?k_raceDate=2011%2f02%2f22&k_raceNo=9&k_babaCode=19

出走馬の半数以上がJRA所属馬。前走に比べて大幅に相手が強化されたため着差はわずか(2馬身半差)でしたが、勝ちタイムの1分43秒4は同日のB3特別と0秒4差なので悪くないでしょう。好位追走からしびれを切らしたように3コーナーで先頭に立ち、そのまま押し切りました。順調に成長してクラーベセクレタやマニエリスムに追いついてほしいものです。
http://www2.keiba.go.jp/KeibaWeb/DataRoom/HorseMarkInfo?k_lineageLoginCode=30018402055

2月が通り過ぎれば地方競馬にもクラシックの蹄音が微かに聞こえてきます。ここで各地区の3歳有望馬を整理しておきます。

【岩手】
ベストマイヒーロー
牡 父サクラプレジデント 瀬戸幸一厩舎
通算6戦5勝
主な勝ち鞍:南部駒賞、若駒賞、金杯、ジュニアグランプリ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008105137/
〔一口メモ〕厩舎の先輩に岩手の帝王ロックハンドスターがいる。サクラプレジデントの現3歳は中央でもよく走っている。母方は Hyperion 色が強くパワー満点。

【南関東】
セルサス
牡 父タイムパラドックス 佐藤賢二厩舎
通算4戦3勝
主な勝ち鞍:ハイセイコー記念
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008106137/
〔一口メモ〕配合については昨年11月11日のエントリー「ハイセイコー記念はセルサス」で紹介済み。昨年暮れの調教中に脚をぶつけて現在休養中。復帰時期は未定。

【東海】
アポインホープ
牡 父アポインテッドデイ 原口次夫厩舎
通算8戦4勝
主な勝ち鞍:若鮎特別3歳
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103810/
〔一口メモ〕母に Capote≒Some de Lys 2×2がある。まだ格下だがこれから頭角を現しそうな馬。馬主の大藪憲三氏は元名古屋競馬の調教師でリーディングトレーナーとなった経験もある。

【兵庫】
オオエライジン
牡 父キングヘイロー 橋本忠男厩舎
通算5戦5勝
主な勝ち鞍:園田ジュニアC、兵庫若駒賞、園田ユースC
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102256/
〔一口メモ〕2代母フシミラッキーは道営の北海優駿を制した名牝。父がキングヘイローで母方にブレイヴェストローマンを持つのでキクノアロー(ダイオライト記念)と似ている。

【佐賀】
リョウマニッポン
牡 父ルールオブロー 九日俊光厩舎
通算3戦3勝
主な勝ち鞍:九州ジュニアグランプリ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008101805/
〔一口メモ〕ギオンゴールドやマンオブパーサーと同じ九日俊光厩舎所属。Nureyev≒Sadler's Wells 4×4を持つ。父ルールオブローはこの4分の3同血クロスが走るのかもしれない。

2011年2月25日 (金)

オーストラリアのスピードクイーン Black Caviar(後)

Black Caviar の重要な構成要素である Vain(1966年生)は、日本ではあまり馴染みのない血で、過去にこの系統の種牡馬が導入されたこともありません。オーストラリアでは83-84年にリーディングサイアーに輝くなどメジャーな血です。現役時代は14戦12勝(2着2回)。圧倒的なスピードで大レースを勝ちまくり、69-70年の豪年度代表馬に選ばれました。名誉の殿堂入りも果たしています。
http://www.pedigreequery.com/vain2

その父 Wilkes(1952年生)は、Worden(ボンモーやマリーノの父、ディクタスやサンシーの母の父)の半弟、ブランブルー(タニノチカラの父)の半兄にあたる良血。父 Court Martial 譲りの非凡なスピードを伝え、1960年代にオーストラリアで3回リーディングサイアーとなりました。Vain と同じく名誉の殿堂入りを果たした Wenona Girl など多数の一流馬を送り出しています。
http://www.pedigreequery.com/wilkes

Vain は、父が Fair Trial 系で、母の父が Nasrullah 系。これら Lady Josephine 牝系の影響を受けた血からスピードを受け継ぎ、Gainsborough-Hyperion を重ねて底力を補強しています。当時のイギリスでよく見られたスピード型の配合パターンで、イギリス血統の影響を強く受けたオーストラリアでもよく見られました。自国で生まれ育った名馬が種牡馬としても成功し、新たな名馬を作り出すための糧となっている、というサイクルが Black Caviar の血統表からは見て取ることができます。オーストラリア生産界の歴史と底力を感じさせる配合ですね。

Black Caviar の母の父 Desert Sun は、現代のスピード血統の新たな主流ラインを形成しつつある Green Desert の子。名誉の殿堂入りを果たした名牝 Sunline(通算48戦32勝)の父でもあります。Black Caviar と Sunline は近い世代に Nijinsky と Desert Sun を持っているという共通点があります。
http://www.pedigreequery.com/sunline

父 Bel Esprit は First Rose≒Tom Fool 4×5。娘の Black Caviar は、Tom Fool の息子 Silly Season 5×5によってこの相似な血のクロスを継続しています。これもポイントのひとつかもしれません。
http://www.pedigreequery.com/first+rose
http://www.pedigreequery.com/tom+fool

       ┌ Menow
First Rose ―┤ ┌ Sir Gallahad(=Bull Dog)
       └○┤ ┌ Broomstick
         └○┤
           └ Cherokee Rose(=Pennant)

       ┌ Menow
Tom Fool ――┤ ┌ Bull Dog(=Sir Gallahad)
       └○┤   ┌ Pennant(=Cherokee Rose)
         │ ┌○┤ ┌ Broomstick
         └○┘ └○┘

Black Caviar は楽勝の連続で、これまで辛勝というものがありません。今回のライトニングSでもゴール前で手綱を抑えていました。勝ちっぷりがあまりに楽なので、弱い相手と戦っているように見えますが、今回の2着馬 Hay List は通算13戦11勝のG1ウィナーで、これも相当な強豪です。よほど調子が悪かったり、長すぎる距離を使ったり、常識外の斤量でも背負わないかぎり、連勝は続いていきそうです。

2011年2月24日 (木)

オーストラリアのスピードクイーン Black Caviar(前)

オーストラリアで注目を集める女傑スプリンター、Black Caviar が無傷の9連勝を飾りました。2月19日に豪フレミントン競馬場で行われたライトニングS(G1・芝1000m)を3・1/4馬身差で快勝。すでに歴史的名牝との評価を獲得しています。
http://www.youtube.com/watch?v=J6QktlVEydw

オーストラリアの芝短距離は世界ナンバーワンの水準。そこで抜きん出た強さを誇っているので、いま世界で一番速い馬かもしれません。
http://www.pedigreequery.com/black+caviar

父 Bel Esprit は前肢に難があるため、1歳時のセールでわずか9000ドル(当時の邦貨で約55万円)の値しか付きませんでした。しかし、競走馬としては何の問題もなく、2つのG1を含めて重賞6勝という成績を収めました。Nijinsky 系のロイヤルアカデミー産駒で、重賞勝ち距離は1000mから1350mです。
http://www.pedigreequery.com/bel+esprit2

昨シーズンの豪種牡馬ランキングは21位。今シーズンは現時点で10位。Black Caviar のほかにロバートサングスターS(豪G1・芝1200m)を勝った Bel Mer などを出しています。
http://www.pedigreequery.com/bel+mer

Black Caviar と Bel Mer は、いずれも「Vain 3×4」というクロスを持っています。Bel Esprit 産駒のこの配合パターンは要注目です。

2011年2月23日 (水)

My Charmer が光るヒラボクインパクト

■日曜東京5Rの新馬戦(芝1800m)は、△カグニザント(2番人気)が5馬身差で逃げ切りました。
http://www.youtube.com/watch?v=dnVJMjuV4sg

ネオユニヴァースの現3歳世代は、昨年6月のシーズン開幕から32連敗を喫しました。2歳夏のローカル戦が苦手であることを差し引いても酷い成績であり、前途多難を思わせたのですが、その後は順調に勝ち星を伸ばしています。一昨年のロジユニヴァースとアンライバルド、昨年のヴィクトワールピサほどの大物は見当らないものの、オールアズワン、ユニバーサルバンクがクラシック路線に乗っています。

カグニザントは、母インコグニートがシックスセンス(京都記念)の半姉です。底力はあるものの瞬発力に一抹の不安を感じさせる配合なので、この距離にありがちな切れ味比べになると弱みを見せる可能性も……と予想しました。先頭に立って自らレースを作ったのは正解だったと思います。最後の3ハロンは11秒7-11秒5-11秒4と尻上がりにラップを上げているので、相手がバテたわけではなく、自身がしっかり伸びています。決して展開に恵まれた勝利ではありません。内容は濃いですね。

母方に Danzig を持つネオユニヴァース産駒は、ロジユニヴァースとオールアズワンという重賞勝ち馬に加え、サンビーム、ダノンフェニックス、ベストリガーズ、本馬と、このところ活躍馬が目立っています。パワフルな配合なので、良馬場ながら雨の影響により馬場が荒れていたことはプラスでした。中山のほうが向いているかもしれません。皐月賞に間に合うようなら楽しみです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102580/

■東京9Rのセントポーリア賞(3歳500万下・芝1800m)は、ヒラボクインパクト(6番人気)が逃げ切り勝ち。
http://www.youtube.com/watch?v=BmGssldqAPY

母ドリームカムカムは短距離戦線で活躍した馬(シルクロードS-5着)で、「メジロライアン×ローモンド×ハードツービート」という組み合わせ。決め手に欠ける血統なので、息子のヒラボクインパクトはディープインパクト産駒であっても瞬発力勝負になるとどうかな……と感じさせます。日曜日の東京芝は前残りばかり。そして馬場が荒れていたのでパワーが活きるコンディションでもありました。この馬に向いていたと思います。薄いながらも Hypericum≒Aureole という重厚な4分の3同血クロス(6×6)を持っており、これは粘りを補強するものでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008100579/

2代母の父 Lomond は米三冠馬 Seattle Slew の半弟で、英2000ギニー(G1)の勝ち馬。その母 My Charmer は Striking=Busher 3×3という大胆な全きょうだいクロスを持っています。Striking も Busher も名牝 La Troienne の孫。
http://www.pedigreequery.com/my+charmer

       ┌○┐
       │ └○┐
My Charmer ―┤   └ Striking(=Busher)
       │ ┌○┐
       └○┘ └ Busher(=Striking)

ディープインパクトと La Troienne の関係は非常に良好で、同じように La Troienne 血脈の凝縮から成る Sex Appeal(Busanda≒Mr.Busher 2×3)も、ディープインパクトと抜群の相性を示しています。このパターンからはマルセリーナ、ターゲットマシンが出ました。
http://www.pedigreequery.com/sex+appeal

もし仮にヒラボクインパクトに My Charmer が無かったとしたら、強調点の見当たらない茫洋とした配合で、大成は覚束なかったと思います。ディープインパクト産駒は年明けから500万以上で7勝目。内訳は重賞1勝、OP特別2勝、500万特別4勝。もちろん世代トップです。とにかく層が厚いですね。

2番人気に推されたリヴェレンテ(父キングカメハメハ)は出遅れて後方からの競馬となり、大外へ持ち出したものの12着。騎乗したデムーロ騎手曰く「今日は精神的に不安定で、物見してばかりいました」(週刊競馬ブック)。ただ、デムーロ騎手もこの土日は、出遅れて後方追走から大外回しという騎乗が目立ち、とくに日曜日の後半はほとんどこのパターンでした。騎乗のリズムがイマイチだったような気がします。

2011年2月22日 (火)

ラヴィアンクレールの「マンカフェ×エンドスウィープ」はニックス

■土曜京都9Rのこぶし賞(3歳500万下・芝1600m)は、ディープインパクト産駒のアルティシムス(4番人気)がしぶとく伸びて差し切りました。
http://www.youtube.com/watch?v=FZihqCf2yj0

母アルーリングアクトは小倉3歳S(G3)の覇者。Mr.Prospector 3×3が手堅いスピードを安定的に伝えているようで、産駒はコンスタントに走っています。出世頭のアルーリングボイス(父フレンチデピュティ)は小倉2歳S(G3)とファンタジーS(G3)を勝ちました。アベレージヒッター型の繁殖牝馬といえるでしょう。その一方で大物感という面ではやや物足りないところがあり、アルティシムスがこれをどう克服していくかが今後の鍵でしょうね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102629/

ディープインパクト産駒は基本的に外回りコース向きですが、この馬は母方の影響で内回りコースに向いているのかもしれません。フットワークからもそんな感触があります。秋山真一郎騎手によれば「荒れた馬場はうまい」(週刊競馬ブック)。これで道悪は2戦2勝です。

母方に Fappiano を持つディープインパクト産駒には、ダノンバラード、サイレントソニック、そしてこのレースにも出走したダコールがいます。相性がいいようですね。このほか、本馬には Pocahontas 5×6(Alzao の2代母、Tom Rolfe の母)があります。このクロスは注意したいところです。

3着ダコール(2番人気)は、福永祐一騎手によれば「切れ味タイプだからこんな馬場はもうひとつ」(週刊競馬ブック)とのこと。12キロ減の馬体重も影響したのかもしれません。休み明けを使った反動でもあったのでしょうか。次走、馬体が戻って良馬場の1600mなら絶好の狙い目でしょう。

■土曜東京9RのヒヤシンスS(3歳OP・ダ1600m)は、好位追走のラヴィアンクレール(5番人気)が抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=QQP4UD-zTAI

『競馬王のPOG本』の「栗山ノート」で取り上げた好配合馬です。母ダークエンディングはシリーンS(加G1・ダ8.5f)の勝ち馬。本馬は「マンハッタンカフェ×エンドスウィープ」ですからゲシュタルト(京都新聞杯)と同じ組み合わせです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102913/

日本に輸入後わずか3世代しか残せなかった名種牡馬エンドスウィープは、母の父としても優秀です。連対率は21.4%。母の父として連対率が20%を超える種牡馬は稀です。こぶし賞を勝った前出のアルティシムスも母の父がエンドスウィープですね。

エンドスウィープはサンデー系とニックスといえる関係にあります。なかでもマンハッタンカフェとの組み合わせはおもしろいと思います。エンドスウィープは Mr.Prospector と Northern Dancer を併せ持つのですが、これはマンハッタンカフェの交配相手としては有効なパターン。さらにはマンハッタンカフェの配合構成のなかで鍵となる Heliopolis を継続します。

前回のPOGではゲシュタルトを、今回はラヴィアンクレールを「栗山ノート」で取り上げました。どちらも走ったので「マンハッタンカフェ×エンドスウィープ」はニックスといってもいいでしょう。ほかにもう1頭、キッズアプローズという馬がいるのですが、全成績〔3・3・2・0〕と複勝圏を一度も外していません。

母ダークエンディングは File≒Fire Water 3×3という組み合わせのクロスを持ちます。これがパワーを補強しているものと思われます。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a006881/

         ┌ Tom Rolfe
File ――――――┤ ┌ Double Jay
         └○┘

         ┌ Tom Rolfe
Fire Water ―――┤ ┌ Double Jay
         └○┘

そして自身は Promised Land≒Darlin Patrice 5×5という4分の3同血クロスを持ちます。なかなか洗練された配合です。

         ┌ Palestinian
Promised Land ――┤
         └ Mahmoudess

         ┌ Palestinian
Darlin Patrice ―┤
         └○┐
           └ Mahmoudess

マンハッタンカフェは、ダート色の強い繁殖牝馬から芝をこなす産駒を作ることが珍しくないので、デビュー前は芝でも行けるんじゃないかと考えていたのですが、バリバリのダート馬でしたね。この日は東京ダートでマンハッタンカフェ産駒が3勝。プチ祭りでした。現3歳世代のマンハッタンカフェ産駒には、これも大物と評価されているグレープブランデーという馬がいます(2月9日のエントリーを参照)。どちらもデムーロ騎手が手綱を取っているので、聞けるものなら力量比較を聞いてみたいところです。

2011年2月21日 (月)

フェブラリーSはトランセンド

今週の東京ダートは時計が掛かりました。フェブラリーSの勝ちタイムは1分36秒4。2000年以降で2番目に遅いタイムです。スピードよりもパワーやスタミナが必要な馬場でした。
http://www.youtube.com/watch?v=Zt29AsEeEMI

『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想は▲◎で馬連1100円、▲◎△で3連複3200円的中。『ウマニティ』の予想は◎フリオーソの単勝一本勝負で不的中。美味しいオッズ(5.5倍)にちょっと目が眩んでしまいました……^^

勝った▲トランセンド(1番人気)にとって東京ダ1600mは決して条件好転ではありません。Mr.Prospector が無く Hyperion のパワーで走るダート馬ですから、過去の成績どおりダ1800mがベスト。今回はパワーやスタミナが必要な馬場状態になったことが良かったのでしょう。仮に1分34秒台の決着になっていたとしたら厳しかったのではないか、と思います。ただ、差しが利く馬場コンディションで、道中競り掛けられながら、逃げ切りが難しいレースを逃げ切ったのですから、能力の高さは歴然としています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006104736/

配合については11月7日のエントリー「トーセンジョーダン、トランセンド」をご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/11/post-e9bf.html

2着◎フリオーソ(3番人気)のレースぶりは見てのとおり。スタート直後の芝の部分であれほど置かれるとは思いませんでした。先頭か番手が定位置のこの馬にとって、後方に控える競馬は経験がありません。慣れない位置取りで大外をマクって2着に追い込んできたのですから、能力は頭ひとつ抜けていたと思います。予想文を転載します。

「◎フリオーソは『ブライアンズタイム×ミスタープロスペクター』という組み合わせ。フェブラリーSはダートのマイル戦なのでミスタープロスペクターと相性がいい。ただ、スピードだけで乗り切れるレースではなく、底力に秀でた持続力型の血、ロベルトを持つ馬の活躍が目立っている。とくにブライアンズタイムとは好相性。昨年の優勝馬エスポワールシチー、07、08年と2年連続で連対したブルーコンコルドはこの血を持っていた。
 フリオーソはブライアンズタイム産駒。そして、母の父にミスタープロスペクターを持つのでノーリーズン(皐月賞)、チョウカイキャロル(オークス)と同じ組み合わせ。底力は申し分ない。昨年来、日本のダート界の頂点を争う馬たちと互角の勝負を繰り広げており、格ではナンバーワンだろう。
 問題は坂のあるコースをこなせるかどうか。こればかりはやってみないと分からないが、以前中央で競馬をしたころとは別馬のようにパワーアップしており、この充実ぶりならこなせるのではないか。土曜日の競馬を見ると馬場は思っほど速くなく、この馬向きの適度なコンディションとなっている。早め先頭で粘りたい。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004106867/

エスポワールシチーやスマートファルコンが復帰しなければ、ダートスタートのダート戦ではしばらく負けることはないのでは、と思わせる充実ぶり。パドックではその迫力ある馬体に痺れました。これなら負けないだろうと確信したのですが……。

3着△バーディバーディ(4番人気)は「父ブライアンズタイム、母の父 Mr.Prospector 系」ですからフリオーソと酷似しています。パワーが必要なダートではブライアンズタイムは頼りになります。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007100567/

2011年2月20日 (日)

ダイヤモンドSはコスモメドウ

木曜日から金曜日にかけて東京競馬場に降った雨はJRA発表では49ミリ。冬場にしては珍しくしっかり降ったので、1日やそこらで回復するのだろうかと思っていたら、10RのアメジストSから早くも良馬場になりました。

勝った○コスモメドウ(2番人気)の上がりは34秒7。完勝でした。
http://www.youtube.com/watch?v=MJq2M7dPorI

「King's Best×Sadler's Wells」ですから、昨年の凱旋門賞と英ダービーを制した Workforce と同じ組み合わせ。そして、「Kingmambo 系×Sadler's Wells」ですから、エルコンドルパサーとも似ています。この組み合わせは Nureyev と Sadler's Wells の4分の3同血クロスが鍵となります。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007110045/

昨年6月8日のエントリー「仏ダービー、英ダービー」、同10月4日のエントリー「ナカヤマフェスタ、凱旋門賞2着」、1月18日のエントリー「リスポリ騎手の鬼追いで快勝、タガノリベラノ」などで詳しく解説しておりますので、お時間がありましたらご覧いただければと思います。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/06/post-f907.html
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/10/post-6f63.html
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/01/post-61a5.html

前走の万葉Sでかなり行きたがる素振りを見せており、それが気になったため対抗評価でした。今回は序盤にちょっと首を上げて難しいところを見せただけで、あとはしっかり折り合いました。外国人騎手は折り合いのつけ方が総じて巧みですね。いまが伸び盛りなのでG1の天皇賞・春でも怖い1頭です。

◎ビートブラック(1番人気)は出負けして最後方から。こうなると展開頼みになってしまうわけですが、レースの上がりが35秒3ですから向きませんでした。よく4着まで追い上げたという感じです。切れる脚がない馬なのでもう少し流れに乗りたかったですね。それにしてもこの馬が1番人気になったのはビックリしました。新聞の印を見てもせいぜい4~5番人気だろうと思ったのですが。

さて、日曜日はフェブラリーS。土曜日の競馬を見ると、思ったよりもダートは時計が掛かっています。昨日のエントリーで「とにかく持ち時計重視です」と記しましたが、そんな雰囲気ではないですね。見込みが違ったので前もって考えていた予想を変更しました(現在公開しているものが変更後の予想です)。土曜日に比べてダートの水分はさらに抜けるはずなので底力やパワーが必要。Roberto や Ribot といった血がモノをいう馬場ではないでしょうか。

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!