勢力を拡大するドイツ血統
皐月賞2着のヒルノダムール、3着のエイシンフラッシュにはドイツ血統が含まれています。ヨーロッパにおけるドイツ血統は、ブームを超えてすでに定着した感がありますが、日本ではマンハッタンカフェとビワハイジが両輪となってこれから勢力を増していきそうです。3歳世代にはほかに、リリエンタール(水仙賞)やミッションモード(葉牡丹賞)といったドイツ血統の影響を受けた外国産馬が活躍中。今後、ドイツ血統の導入は確実に増加していくはずです。
日本におけるドイツ血統といえば、昔はホッカイダイヤとスタイヴァザントが代表的存在で、前者はホッカイペガサス(ダイヤモンドS、ステイヤーズS)を、後者はブラウンビートル(新潟記念)を出しましたが、いずれも種牡馬として成功したとはいえません。
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初期のジャパンCには、パゲーノ、トンボス、カイザーシュテルンといった西ドイツ代表馬が参戦したものの、いずれも見せ場なく後方に敗れています。
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こうした状況があったため、当時、ドイツ血統に抱いていたイメージは、「スタミナはあるが重く、道悪が上手でスピードに乏しい」というものでした。この見立ては間違ってはいなかったと思います。エイシンフラッシュが皐月賞で3着に突っ込んできたのは、渋り気味の馬場状態の恩恵を受けた部分もあったでしょう。
ただ、ドイツ血統の特徴がそれだけでしかないなら、現在のような世界的な成功はありえません。ドイツ型馬産とは、ひと言でいえば牝系を重視した系統繁殖です。閉鎖的な環境で似たような血を重ねた結果、ほかのどの国とも違った独自のサラブレッドが育まれました。主流血統とは無縁の異質な血が凝縮されているため、どんな血統とも和合性があり、新鮮な活力をもたらすというメリットがあります。
主要競馬国の血統は、昔の時代に比べてクロスオーバー化が進み、国ごとの個性といったものが消失しつつあります。そうした時代にあって、ドイツ型馬産によって育まれた血統が、貴重な異系――つまりは活力源――として引っ張りだこになるのは自然な成り行きです。サドラーズウェルズと結びつけばその味を引き立て、サンデーサイレンスと結びつけばその味を引き立てます。そうした万能調味料のような役割を果たしてるからこそ、ドイツ血統は世界的な成功を収めているのではないかと思います。
現代における最も重要なドイツ血統は、1974年に誕生した Surumu でしょう。「スタミナはあるが重く、道悪が上手でスピードに乏しい」といった旧来のイメージから脱した、現代性を帯びたドイツ血統です。スピードがあり、堅い馬場も苦にしません。Surumu の2代母 Suncourt はテスコボーイの母でもあります。Monsun は、母の父にSurumu があってこそ世界的な成功を収めることができたのだと思います。
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ドイツ血統については、『栗山求 Official Website』の「Works」に収められた「ドイツ・ダービーの父系」をご参照ください。エイシンフラッシュの母の父 Platini についても触れています。
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