凱旋門賞は Danedream
好天続きでロンシャン競馬場は過去最高レベルの高速馬場。しかも30℃前後まで気温が上昇する異常気象。これを見て、レース前はヒルノダムールが好位から抜け出すシーンしか頭に浮かびませんでした^^
しかし、勝負は甘くありません。ヒルノダムール10着。ナカヤマフェスタ11着。ただ、人気を集めた Sarafina が7着、Galikova が9着、昨年の覇者 Workforce が12着ですから、凡走というわけでもなく、力いっぱい走ったものの相手が強かった、ということでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=PcqRJojow6k
勝った Danedream(父 Lomitas)はドイツ産の牝3歳馬。ドイツ調教馬の凱旋門賞制覇は1975年の Star Appeal 以来36年ぶりです。
http://www.pedigreequery.com/danedream
ドイツからの遠征馬は長らく勝てなかったわけですが、ドイツ血統を持つ馬の優勝は3年連続です。09年の優勝馬 Sea the Stars、10年の優勝馬 Workforce にもドイツ血統が含まれていました。
http://www.pedigreequery.com/sea+the+stars
http://www.pedigreequery.com/workforce
ドイツの名伯楽ペーター・シールゲン調教師が管理し、今年5月の伊オークス(G2・芝2200m)を6馬身半差で勝って重賞初勝利を挙げました。ただ、次のマルレ賞(仏G2・芝2400m)では同じ3歳牝馬を相手に5着と敗れているので、この時点ではまだごくありふれた重賞勝ち馬だったと思います。
変わったのはその次から。約1ヵ月後の7月24日、牡馬を含めた古馬相手のベルリン大賞典(独G1・芝2400m)を5馬身差で、9月4日のバーデン大賞典(独G1・芝2400m)も同様に6馬身差で勝ち、ロンシャンに乗り込んできました。映像を見ると強靭な末脚が印象的です。バーデン大賞典から凱旋門賞を制したのは02年のマリエンバード以来となります。
http://www.youtube.com/watch?v=le3Xm_kfJrI
http://www.youtube.com/watch?v=L3GjMUnAR0U
凱旋門賞の直前、社台ファーム代表の吉田照哉氏が権利の半分を獲得しました。競走馬購買の広汎なネットワーク、眼力、決断力。さすがというしかありません。社台ファームは過去にもドイツ血統を積極的に入れているので、たまたまドイツ牝馬を買ったら当たったというわけではなく、ドイツの良血牝馬を獲得したいという明確な意思のもとに行ってきた地道な活動が実を結んだ、ということだと思います。
今回の凱旋門賞出走に関しては、10万ユーロ(約1030万円)という高額な追加登録料を支払っています。もし吉田照哉氏の購買と凱旋門賞挑戦がリンクしているなら、今回の勝利の立役者は吉田照哉氏といえるかもしれません。ジャパンCに出走する可能性があるのかどうか、続報を待ちたいと思います。
Danedream の父 Lomitas は、一昨年のエリザベス女王杯に来日(4着)したシャラナヤ Shalanaya の父。このほか、Silvano(アーリントンミリオン-米G1)、Belenus(独ダービー-独G1)などを送り出し成功しています。Lomitas の母の父 Surumu は、旧来の重苦しいドイツ血統とは肌合いを異にする現代的な特長を持ちます。それはすなわち堅い馬場を苦にしないということです。詳しくは10年4月22日のエントリー「勢力を拡大するドイツ血統」をご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/04/post-5cf1.html
母 Danedrop はキンシャサノキセキの母ケルトシャーンと構成が似ています(近い世代で Northern Dancer、His Majesty、Lady Berry が共通)。
母の父にデインヒルが入り、自身は Ribot 5×5を持つので馬力や底力は十分ですが、Nijinsky や High Top は堅い芝もOKなので、凱旋門賞のレースレコード(2分24秒49)を出せる下地はあったと思います。たとえば、05年のジャパンCを2分22秒1のレコードで勝ち、日本の堅い芝で新たな才能を開花させたイギリス馬アルカセットは、母チェサブラナが Niniski×High Top という組み合わせ。Danedream も近い世代に Niniski と High Top を持ちます。
http://www.pedigreequery.com/alkaased
Danedream はいずれ社台ファームで繁殖入りするのでしょう。93年の凱旋門賞を制した Urban Sea(Galileo、Sea the Stars などの母)のような名繁殖牝馬になることを期待したいところです。
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血 統 屋 http://www.miesque.com/
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こんばんは、毎度読ませて頂いてます。
欧州の堅い馬場といてばダルシャーンの切れが有利だと思っていました。
ニジンスキーは堅い馬場もこなせるとは知っていましたが、ハイトップはステイヤー血統だと理解していたので認識を変えて血統表見てみます。
堅い馬場こなせるであろうオススメの欧州の種牡馬いたら参考までに教えてもらえませんか?
投稿: ネオユニ大好き | 2011年10月 6日 (木) 23:54
おはようございます。High Top の代表産駒 Top Ville はたしか仏ダービーをレコード勝ちしていたはずです。Top Ville の直系の孫 Riton は、アルゼンチンで芝1600mの世界レコードを出しました(1分31秒0)。
http://www.pedigreequery.com/riton3
昔の血でいえば、Busted などは堅い馬場への対応力があります。High Top の母と Busted の母はいずれも「ヴィミー×Court Martial」ですね。
http://www.pedigreequery.com/high+top
http://www.pedigreequery.com/busted
投稿: 栗山求 | 2011年10月 7日 (金) 09:45
こんにちは。
解答ありがとうございます。Bustedやヴィミーの血統表見てみます。
投稿: ネオユニ大好き | 2011年10月 7日 (金) 12:50