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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年10月11日 (火)

マイルCS南部杯はトランセンド

土曜日の夜半に降った雨の影響で、月曜日の東京ダートは第1Rまでは稍重。メインのマイルCS南部杯(Jpn1・ダ1600m)も良馬場ではありましたがやや脚抜きのいい馬場でした。

とはいえ、〇エスポワールシチー(2番人気)が刻んだラップは凄まじく、1200m通過が1分09秒3。馬場が改修された03年以降では最速です。

それ以前では、01年の武蔵野Sでクロフネが1分09秒2で通過した例があります。クロフネは残りの2ハロンを、最後は手綱を抑える余裕を見せながら11秒7-12秒4で乗り切り、1分33秒3という大レコードを樹立しました。もっとも、クロフネは別カテゴリーの怪物ですから、他の馬にこの芸当は無理です。

当レースのラスト2ハロンは12秒4-13秒1。エスポワールシチーが最後の1ハロンで失速してしまったのは仕方がありません。それでも約3馬身差の4着に粘っているので、調子も気迫も春よりはだいぶ戻してきたなという印象です。順当に良化すれば次走はもっと粘れるはずです。

勝った◎トランセンド(1番人気)は、先頭のエスポワールシチーにいったん突き放されかけ、外のダノンカモン(3番人気)にも出られてしまい、一瞬危ないムードが漂ったのですが、そこから盛り返して勝つところが並の馬ではないですね。
http://www.youtube.com/watch?v=SKbDBozuNDA

予想では◎を打ったものの、2着ダノンカモンをヌケにしてしまい不的中。予想文を転載します。

「◎トランセンドは『ワイルドラッシュ×トニービン』という組み合わせ。ブッシェルンペック≒サニースワップス3×3はユニークで、この相似な血のクロスが活力と底力の源泉ではないかと思われる。サニースワップスの母アイアンリージはハイペリオンとサンインローの組み合わせで、父ワイルドラッシュの大物産駒は、たとえばクリールパッション、クラーベセクレタ、ブラウンワイルドなどのように、この組成を母方から取り入れたものが目につく。母の父トニービンや、ハイペリオンとサンインローの組み合わせから成る血は成長力があるので、昨年秋以降の本格化は、こうした血がモノをいっているのだろう。メンバーを見渡すと単騎マイペースが濃厚。フェブラリーS(G1)と同じ舞台なら中心は動かない。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006104736/

トランセンドの4代母アイアンエイジは、名馬 Swaps(北米で通算25戦19勝、世界レコード5回)の全妹にあたる良血。Swaps は「Hyperion と Son-in-Law」から成る名馬の代表的存在です。望田潤さん風に表現すれば“ハイインロー”ですね。この牝系から出たダンディコマンド(北九州記念)は、Abernant≒チャイナロック≒アイアンエイジ4・3×3で、この部分を強調した配合でした。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1993109569/

           ┌ Hyperion
         ┌○┘ ┌ Son-in-Law
Abernant ――――┤ ┌〇┘
         └○┘

           ┌ Hyperion
         ┌○┘ ┌ Son-in-Law
チャイナロック ―┤ ┌〇┘
         └○┘

           ┌ Hyperion
         ┌○┘ ┌ Son-in-Law
アイアンエイジ ―┤ ┌〇┘
         └○┘

トランセンドの場合、父ワイルドラッシュが「Hyperion と Son-in-Law」から成る Flower Bowl と Etonian を持ちます。Flower Bowl とアイアンエイジは母の父が Beau Pere という点まで共通しています。

           ┌ Hyperion
         ┌○┘ ┌ Son-in-Law
Flower Bowl ―――┤ ┌〇┘
         └○┘

           ┌ Hyperion
         ┌○┘
Etonian ―――――┤
         └○┐ ┌ Son-in-Law
           └〇┘

つまり、トランセンドは、同じ牝系から出たダンディコマンドと同じく「Hyperion と Son-in-Law」を継続した配合となっています。

父ワイルドラッシュの側から見ても「Hyperion と Son-in-Law」の継続は大物を生み出すパターンです。予想文に記した以外にも、海外におけるG1ウィナー Hollywood Story、Dream Rush、名古屋の王者ヒシウォーシイなどがこれに当てはまります。
http://www.pedigreequery.com/hollywood+story
http://www.pedigreequery.com/dream+rush
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2005105442/

苦しい勝負どころでもうひと頑張り、ふた頑張りできる底力は、「Hyperion と Son-in-Law」の影響によるものが大きいと思います。こうした血がサポートしているか否かによって、大レースにおける信頼度は違ってきます。

次走、11月3日に大井競馬場で行われるJBCクラシック(Jpn1・ダ2000m)は、現在6連勝中のスマートファルコンとの頂上決戦が予定されています。昨年9月の日本テレビ盃以来の対戦で、このときはトランセンドが2着、スマートファルコンが3着でした。ただ、両馬ともそれから大きく化けたので力量比較の参考にはなりません。この対決は熱すぎですね~。ライブで見たい一戦です。

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マイルCS南部杯はトランセンドを参照しているブログ:

コメント

はじめまして。先日の「シンボリルドルフ死す」、興味深く読ませてもらいました。自分も長寿だったのはもちろん知っているんですが、なぜかルドルフは死なない、変ですがそういう気持ちを持ってました。同じく、漠然とシンザンの長寿記録を抜くんだろうなぁって。ルドルフの最後を見たわけじゃもちろんないんですが、「皇帝」らしく、最後までクールでスマートにいたのかなぁって思いました。実感はまだありませんが、心よりご冥福をお祈りしてます。

ブログ初めて拝見したんですが、ダビスタ&ウイニングポスト世代の人間にとってはたまらないブログですね!(笑)なんか、昔より周りが熱狂的に血統のことを語らなくなったので、こういう記事嬉しい限りです^^

素人なんですが、自分もホームページで先日木村幸治さんの「神に逆らった馬」の本を読んだ感想を書きました。ほんと名著ですよね。

はじめまして。『神に逆らった馬――七冠馬ルドルフ誕生の秘密』は、『吉田善哉 倖せなる巨人』と同様、木村幸治さんの腰を据えた取材から誕生した素晴らしい一冊で、現代競馬の成り立ちに興味のある方にはオススメしたい名著です。昔に比べると出版界の景気もかなり悪いので、このような本は生まれづらくなっているかもしれませんね。

ブログお褒めいただき光栄です。大変励みになります。ホームページの書評、読ませていただきました。

社台やシンボリ牧場について、私も優駿で連載されていたのを読みました。競馬を覚え始めた頃で競馬の記事を貪っていましたね。トランセンドは素晴らしく良い馬になってました。背の長さなど馬体はむしろトニービン産駒らしく見えます(笑)

昔の『優駿』には吉田善哉さんと和田共弘さんの対談なども載っていましたね。いま読み返しても惹き込まれる内容です。ああいう良質な企画がどこにも収録されることなく眠っているというのは惜しいとしか言いようがありません。

トランセンドの母シネマスコープは Hyperion だらけですから、古馬になってから味が出てきましたね。この成長力は魅力的です。

JBCに、フリオーソも出てきてくれれば、まさに頂上決戦になりますね。
しかし、ロックハンドスターの故障は、本当に残念です…。
菅原騎手が直後に取材を受けていた姿をネットで観たら、尚更悲しくなってきました。こういうのは、直ぐ聞いちゃダメだよなぁ…。

ロックハンドスターがこんな形で生涯を終えるとは思いませんでした。若く有能で、血統的におもしろく(マンハッタンカフェと似ています)、これからの岩手競馬を背負うであろう1頭だっただけに残念の一語です。

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