Sadler's Wells 死亡(後)
昨日のエントリーで、Sadler's Wells と Nureyev が4分の3同血であるという話を書きましたが、Sadler's Wells は兄弟も大成功しています。
全弟 Fairy King は、エリシオ(凱旋門賞)、オース(英ダービー)、ファルブラヴ(ジャパンC)などの父で、96年には仏リーディングサイアーとなっています。Sadler's Wells よりも短めの距離で強さを発揮しました。
http://www.pedigreequery.com/fairy+king2
この牝系は、51年にクレイボーンファームのブル・ハンコックがニューマーケットで購入した Rough Shod という牝馬にさかのぼります。代々活躍馬が目白押しで、Sadler's Wells と Nureyev の直近の共通祖先である Special は、英チャンピオンマイラー Thatch の全姉です。
http://www.pedigreequery.com/thatch
この牝系はスピードが持ち味で、Nureyev や Fairy King はそれを体現した馬でした。しかし、Sadler's Wells 自身は中距離馬で、種牡馬としては長距離向きの産駒も多数出しています。素晴らしい底力に恵まれ、2400m前後で少し時計が掛かればこれほど信頼できる種牡馬はありません。息子たちも種牡馬として成功し、ヨーロッパはもちろん、アメリカ、チリ、南アフリカ、インドなどでリーディングサイアーとなっています。
日本の馬場で走るにはやや重たく、スパッと切れる脚もありません。したがって、子の代では重賞勝ち馬が1頭(サージュウェルズ)しか出ませんでした。しかし、孫の代になると、持ち前の底力とスタミナがちょうどいい具合に希釈され、日本の馬場にフィットする大物が続出しました。サイアーラインを受け継ぐ孫にはテイエムオペラオー、メイショウサムソン。母の父に持つ馬にはエルコンドルパサー、フサイチコンコルド、シーザリオ、ヘヴンリーロマンスなど。天皇賞・春に出走するジャミールもそうです。
Sadler's Wells はアイルランドのクールモアスタッドに繋養されました。同スタッドはいまや世界最大級の種牡馬事業組織に成長しましたが、それを可能にしたのは Sadler's Wells が稼ぎ出した莫大な富です。こうした面からも世界を変えたといえるかもしれません。
『RACING POST.com』では、どのサドラーズウェルズ産駒が好きか、という緊急アンケートが行われていました。1位はなんと Istabraq。チャンピオンハードルを3連覇するなど無敵を誇ったハードル王です。これは故ジョン・ダーカン調教師との感動ストーリーが寄与したのでは、と思います。2位は Yeats。アスコットゴールドC(英G1・芝20f)を4連覇した長距離王です。以下、Galileo、Montjeu の順。
Istabraq、Yeats のワン・ツーは日本では想像がつかないところですが、「どれが強いか」ではなく「どれが好きか」という投票なので、妥当な結果かもしれません。イギリス人の意識に触れることができるおもしろいアンケートでした。
Sadler's Wells 系が障害に強いというテーマは昨年10月16日のエントリー「障害界のサンデーサイレンス」で触れています。ご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/10/post-c88e.html