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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年6月

2011年6月30日 (木)

帝王賞はスマートファルコン

驚き、呆れるというか、次元の違う存在になっていますね。去年のJBCクラシック(G1・ダート1800m)からケタ違いのレースを続けているのは周知のとおりですが、今回はエスポワールシチー(全盛期の力を取り戻してはいませんが)に9馬身差ですから、内容的なインパクトは大きかったと思います。いまやダート界のスーパースターと呼んでも差し支えないでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=STzWw_d80d0

今回のラップは以下のとおり(勝ちタイム2分01秒1)。

12.2- 11.0- 12.0- 12.3- 12.3- 12.6- 12.7- 12.6- 11.3- 12.1

レコード勝ちした昨年12月の東京大賞典のラップも示します(勝ちタイム2分00秒4)。

12.2- 11.1- 11.5- 12.2- 11.9- 12.1- 12.1- 12.3- 11.9- 13.1

今回は東京大賞典ほどのハイペースではありません。ただ、それでも前半5ハロンが59秒8ですから、普通の感覚でいえばかなりのハイペースです。後半のラップが落ちないのでそうは見えないところが恐ろしいですね。淀みのないハイペースで逃げて、最後の2ハロンが11秒3-12秒1。後続がちぎれて当然です。

以前は、強い相手を避けて賞金稼ぎに徹している、という陰口のあった馬です。しかし、地方のG2、G3を中心に走らせてきたことは、結果的に馬の成長を妨げなかったという面で有益であったのかもしれません。仮に本格化する前にハードなレースを繰り返していたら、馬が消耗して成長力を損ない、いまごろ出涸らし状態になっていた可能性もあると思います。

体調面によほどの狂いがないかぎり、今年はもう負けることはないでしょう。来年はドバイに挑戦するとのこと。トランセンドとの比較から考えても有望でしょう。

国内であと何戦するのかは分かりませんが、この強さはクロフネと遜色ないレベルであり、後世に語り継ぐべきものです。ぜひ競馬場に行って目に焼き付けておきたいですね。それぐらいの存在だと思います。

2011年6月29日 (水)

愛ダービーは Treasure Beach

日本時間の日曜夜に行われた愛ダービー(G1・芝12f)は、1番人気に推された女王陛下の Carlton House が4着に敗れ、2番人気の Treasure Beach が優勝しました。
http://www.youtube.com/watch?v=Zni3eJyhPmU

Carlton House がゴール前で伸びあぐねたのは意外でした。出遅れて位置取りが悪くなったのが痛かったですね。このほか考えられる敗因は、遠征によるコンディション面と、距離適性でしょうか。

カラ競馬場の12ハロンで行われる愛ダービーは、エプソムで行われる英ダービーよりも、コースの高低差はありませんし、勝ちタイムも速いので、イージーなレースと見られがちですが、じつはそうではありません。エプソムは、スタートしてから半マイルあたりまでがきつい上り坂で、残りはほぼ水平か下り坂がほとんど。したがって、スローペースで序盤の上り坂の部分を乗り切ってしまえば、案外ごまかしがきくという面があります。しかし、カラ競馬場は、ゆるやかながら全体的に上りの部分が多く、3ハロンほどある最後の直線もずっと上り。スタミナのない馬はごまかしがきかず脱落してしまいます。

たとえば、本質的に10ハロンがベストだった Sir Ivor は、英ダービーこそ勝ったものの、愛ダービーでは「Ribot×Hyperion」という血統のリベロにやられました。父がスプリンター血統だったドクターデヴィアスも、同様に英ダービーを制したあと、愛ダービーでは Ribot 系のスタミナ血統馬 St.Jovite に12馬身離される完敗を喫しました。ドクターデヴィアスは、芝10fの愛チャンピオンSでは St.Jovite に雪辱を果たしています。

Carlton House の配合を見てスタミナがないとは思えないのですが、最後の追い比べで脚が上がったことを考えると、10ハロンぐらいがベストかもしれない、という可能性は考えられます。その場合は父方のMr.Prospector 系が強く出ているということでしょうか。仕切り直していいレースを見せてくれることを期待したいですね。

勝った Treasure Beach は Galileo 産駒。今年の春は欧州クラシック戦線で Galileo 旋風が吹き荒れました。現時点でタイトルは6つ。まだ愛オークス(7月17日)が残っているので、さらに上積みする可能性があります。

・Frankel(英2000ギニー)
・Golden Lilac(仏1000ギニー、仏オークス)
・Roderic O'Connor(愛2000ギニー)
・Misty for Me(愛1000ギニー)
・Treasure Beach(愛ダービー)

Treasure Beach は英ダービー2着のあとここに臨んでいました「Sadler's Wells 系×Darshaan 系」というニックス配合。今年の英ダービー馬 Pour Moi と同パターンです。
http://www.pedigreequery.com/treasure+beach3

エイダン・オブライエン調教師は6年連続9回目の愛ダービー制覇。Galileo 産駒は07年の Soldier of Fortune、10年の Cape Blanco に次いで3回目の制覇。ここ5年間は Galileo か Montjeu の子しか勝っていません。つまり Sadler's Wells 系の5連覇です。ごまかしのきかないタフな12ハロンで底力を発揮するのが Sadler's Wells 系の持ち味です。

2011年6月28日 (火)

鋭く抜けたニンジャ

■土曜中山5Rの新馬戦(芝1200m)は、好スタートから逃げた◎エクセルシオール(2番人気)が押し切りました。
http://www.youtube.com/watch?v=wUk2gCaKuR4

予想は◎△△で馬単2870円、3連単21280円的中。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想を転載します。

「◎エクセルシオールは『エクシードアンドエクセル×ザフォニック』という組み合わせ。母メイビーフォーエヴァーはサンジョルジュ賞(仏G3・芝1000m)の勝ち馬。父イクシードアンドエクセルはオーストラリアで短距離G1を2勝するなど12戦7勝の成績を残し、種牡馬としても成功している。先日、英アスコット競馬場で行われた2歳牝馬によるクイーンメアリーS(英G2・芝5ハロン)を、同産駒のベストタームズが制した。仕上がりの早さとスピードに関して優れたものを伝えている。稽古の動きからもここは勝ち負け濃厚。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009102680/

6月14日のエントリー「セントジェームズパレスS展望」でちょっと触れたことがあります。こういう条件は得意でしょう。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/06/post-574a.html

ゲートが開いてからのスピードの乗りがいいですね。母は芝1000mの重賞勝ち馬ですから距離は短いほうがいいと思います。小回りコースの短距離戦なら安定して走れそうです。

■日曜阪神5Rの新馬戦(芝1400m)は、3番手追走の△ニンジャ(4番人気)が3馬身半突き抜けました。
http://www.youtube.com/watch?v=WbYZWozXup0

宮徹厩舎といえば、今年の2歳にモルトフェリーチェ(父ディープインパクト、母レンドフェリーチェ)という評判馬が控えています。今季はスペリオビーンが3着、本馬が1着と好調な出足です。

ニンジャは、この日のメインレース宝塚記念を制したアーネストリーと同じグラスワンダー産駒。同産駒は全国の競馬場のなかで阪神芝コースを最も得意としており、連対率21.2%と抜群の成績です(同産駒の芝連対率は13.9%)。今開催は〔3・2・0・2〕ですから手が付けられません。

ニンジャは「グラスワンダー×アドマイヤベガ」という組み合わせ。グラスワンダー×サンデーサイレンス(アドマイヤベガの父)の組み合わせは、スクリーンヒーロー、サクラメガワンダー、セイウンワンダー、シルクアーネストなどが出ているニックスです。「グラスワンダー×アドマイヤベガ」はこれに近いので悪くないでしょう。アドマイヤベガに含まれるトニービンはアーネストリーの母の父です。

2代母ブリッジオブラブは、ラムタラとフォーティナイナーの全姉との間に誕生しているので、やや硬さを感じさせます。したがって、母の父アドマイヤベガの柔らかさは芝向きの瞬発力を生み出す上で効果があるでしょう。グラスワンダー産駒は新馬戦の成績がイマイチなのですが、ここではモノが違いました。いい勝ちっぷりだったので次走が楽しみです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009101652/

2011年6月27日 (月)

宝塚記念はアーネストリー

レースが終わった瞬間「Roberto だなぁ」と思いました。切れはないけれど粘り強く、スピードの持続力に優れ、ハマれば無類の底力を発揮する。これが Roberto の特徴です。今回の△アーネストリー(6番人気)はまさに Roberto 的なレースをしました。
http://www.youtube.com/watch?v=WvU1yGqvHZQ

6歳のG1未勝利馬に◎は打ちづらかったのですが、佐藤哲三騎手は「まだ本格化に入ってやっと初期の段階」と語っており、伸びシロは十分あるようです。ここまでの器だとは思いませんでした。カンパニーのような晩成型でしょうか。

宝塚記念は切れ味勝負にはなりづらく、過去10年(重・不良を除く)の上がり3ハロンの平均は36秒0。同じドリームレースの有馬記念も似たような傾向があり、持続力に秀でたしぶといタイプがしばしば台頭します。ですから、両レースとも Roberto、Ribot、Sadler's Wells といった血を持つ馬がよく好走しています。

アーネストリーの父は99年の宝塚記念を制したグラスワンダー。その2代父が Roberto です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2005105410/

グラスワンダーが小回りや内回りコースで見せた冴えは、それは見事なものでした。Roberto 系に、これまた持続型の Danzig と Ribot が入っているので、前述の Roberto 的な特徴が強化されています。

今回は最初の5ハロン通過が58秒7というよどみない流れ。これを2番手で追走し、早め先頭に立つという競馬。後続になし崩しに脚を使わせる展開なので、とくに瞬発力タイプの馬にとってはキツくなります。同じく佐藤哲三騎手が騎乗して優勝(04年)したタップダンスシチーも、レース途中で先頭を奪うという競馬でした。アーネストリーは「Roberto 系×トニービン」で、これは皐月賞馬ヴィクトリーと同じ。ヴィクトリーが勝った皐月賞も似たような競馬でした。アーネストリーは切れ味勝負に強いサンデーサイレンスの血を持っていません。サンデー系に属すライバルたちの持ち味を消すには、タフな持続力競馬に持ち込むのが近道です。

グラスワンダーが勝った宝塚記念の2着馬はスペシャルウィーク。今回の2着馬ブエナビスタはスペシャルウィークの娘なので、グラスワンダーとアーネストリーは宝塚記念を親子2代で制覇すると同時に、スペシャルウィークとブエナビスタの親子をこの舞台で2代にわたって破ったことになります。

○ブエナビスタ(1番人気)はこれでドリームレース(宝塚記念、有馬記念)で4戦連続2着。長い直線を必要とする瞬発力型なので、持続型が台頭しやすい小回りコースや内回りコースで詰めを欠く、というのはある種の必然でしょう。今回は一度叩いたにしては良化度がイマイチ。前走比+12キロの馬体重も微妙でした。そんな状況で、強引にマクリを打って2着を確保したのはさすがとしか言いようがありません。

◎ルーラーシップ(2番人気)はブエナビスタと似たような競馬をして5着なので、言い訳のできない敗戦です。目に見えない前走の疲れが残っていたかもしれませんが、このあたりは分かりません。G1でも好勝負できるほどの力を付けていると判断したのですが、そうではありませんでした。横山典弘騎手によれば「良化途上」とのことですから、秋になればもっと成長しているでしょう。

2011年6月26日 (日)

伝説の95年阪神3歳牝馬S

宝塚記念で人気を集めるブエナビスタとルーラーシップ。現時点で前者の単勝オッズは3.5倍、後者は3.8倍。レースでどちらが先着するかという前に、どちらが1番人気を取るかという熱い戦いを繰り広げています。ブエナビスタは国内で過去17戦し、すべて1番人気となっています。ここも譲れないところでしょう。

年季の入った競馬ファンなら、ブエナビスタの母ビワハイジと、ルーラーシップの母エアグルーヴが、同期のライバルであったのはよくご存知だと思います。二度対戦して戦績は1勝1敗の五分。

初対決となった95年の阪神3歳牝馬S(G1・芝1600m)は、好スタートから先手を奪ったビワハイジが逃げ切り、2番手から差を詰めたエアグルーヴが2着。

二度目の対決となった96年のチューリップ賞(G3・芝1600m)は、好位追走のエアグルーヴが1頭だけ違う脚いろで突き抜けて1着。5馬身差の2着がビワハイジでした。

エアグルーヴは2歳時から頭角を現し、3歳時にはオークスを制覇しました。ただし、本格化したのは古馬になってから。牡馬相手に天皇賞・秋を勝つなど大活躍し、牝馬ながら年度代表馬に輝いています。成長力と底力を武器としており、そうした特長を産駒にも伝えています。本格化までに時間を要する産駒が多いので、繁殖牝馬としての華々しい実績からすると、POGでは案外旨みに乏しいタイプです。ルーラーシップのここにきての成長ぶりはエアグルーヴの影響が大きいでしょう。

95年の阪神3歳牝馬Sは、ビワハイジとエアグルーヴのほかに、ロゼカラー(重賞3勝のローゼンクロイツの母)、ゴールデンカラーズ(キーンランドCを勝ったチアフルスマイルの母)、シーズグレイス(重賞2勝のシャドウスケイプの母)が出走していました。名繁殖牝馬だらけです。これもある種の伝説のレースといえるかもしれません。

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2011年6月25日 (土)

女王陛下の Carlton House(後)

Carlton House の父 Street Cry は、ゴドルフィンの持ち馬としてドバイワールドC(首G1・ダート10f)を制しました。母は愛オークス馬 Helen Street、自身の全姉の子に Shamardal がいるという良血。種牡馬としても Zenyatta、Street Sense など多数の一流馬を送り出し、大成功を収めています。Mr.Prospector 系ではありますが、母方の影響でスタミナと底力が強化されています。

Carlton House 自身の配合的ポイントはふたつあります。ひとつは、Riverman≒Mill Reef 4×3。

     ┌ Never Bend
Riverman ┤   ┌ Princequillo
     │ ┌○┤ ┌ Count Fleet
     └○┘ └○┘

     ┌ Never Bend
Mill Reef ┤ ┌ Princequillo
     └○┤ ┌ Count Fleet
       └○┘

これは定番ですね。

もうひとつは、ヴィクトワールピサと配合構成が似ていること。
http://www.pedigreequery.com/carlton+house2
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007102923/

             ┌ Machiavellian
           ┌○┤
           │ └○┐
Carlton House ――――┤   └○┐
           │     └ Boulevard
           │ ┌ Bustino
           └○┘

           ┌○┐
           │ └○┐
ヴィクトワールピサ ―┤   └○┐
           │     └ Boulevard
           │ ┌ Machiavellian
           └○┤ ┌ Bustino
             └○┘

ヴィクトワールピサは Boulevard≒Sans Le Sou 4×5ですが、配合的な骨格が似ている Carlton House は、同じクロスを4×4で持っています。Sans Le Sou は Busted の母です。
http://www.pedigreequery.com/boulevard
http://www.pedigreequery.com/sans+le+sou

           ┌ Fair Trial
         ┌○┘
       ┌○┤ ┌ Portlaw
Boulevard ――┤ └○┘
       │ ┌ Wild Risk
       └○┘

         ┌ Wild Risk
       ┌○┘ ┌ Fair Trial
Sans Le Sou ―┤ ┌○┘
       └○┤ ┌ Portlaw
         └○┘

Sans Le Sou は、母 Talented の血統構成において重要な役割を果たしています。High Top の母 Camenae がまったく同じ「ヴィミー×Court Martial」なので、Sans Le Sou≒Camenae 3×4という組み合わせのクロスを形成しています。

       ┌ ヴィミー
Sans Le Sou ―┤ ┌ Court Martial
       └○┘

       ┌ ヴィミー
Camenae ―――┤ ┌ Court Martial
       └○┘

このあたりは望田潤さんが少し前にブログで指摘されています。5月3日のエントリー「デインヒル丸出しで突進する Frankel」の後半部分をご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/3c5467a2d494f1e743f89dd41debfe55

「組み合わせのクロス」については笠雄二郎さんの『血統論』に詳述されています。ビギナーの方にも分かりやすく配合パターンや血統用語などを解説した好著ですので、ぜひ1冊お手元に置かれることをお勧めいたします。
http://www.miesque.com/c00001.html

母 Talented において配合上のキーポイントとなっている Sans Le Sou を、父方の Boulevard によってさらに強化しているのですから、Carlton House は配合的によく出来ています。

ヴィクトワールピサと Carlton House は、使っている血も配合のポイントもよく似ています。ちなみに、ネオユニヴァース産駒のダービー馬ロジユニヴァースも、ヴィクトワールピサと同じく母方に Machiavellian と Busted(6代目)を持っています。配合のポイントは同じです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006103140/

Carlton House とヴィクトワールピサは、両者このまま順調にいけば凱旋門賞で対決が実現するでしょう。もちろん、Carlton House は愛ダービーで負けているようでは凱旋門賞出走はおぼつかないので、ここはスッキリ勝ってほしいところです。

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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2011年6月24日 (金)

女王陛下の Carlton House(前)

宝塚記念の当日夜、アイルランドのカラ競馬場では愛ダービー(G1・芝12f)が行われます。

1番人気に推されているのはエリザベス女王の所有馬 Carlton House(父 Street Cry)。ブックメーカー各社の単勝オッズは2.5倍前後です。周知のとおり、アイルランドとイギリスとの間には、長年にわたる政治的な問題が横たわっているのですが、先月、エリザベス女王はイギリスの君主として100年ぶりにアイルランドを訪問しました。その雪解けムードを加速させる遠征となりそうです。ただし、テロには十分気を付けてほしいものです。

前走の英ダービーは、直前になって左前肢に不安が出たことと、レース中の落鉄が響きました。個人的にはいちばん応援していた馬なので3着という結果は残念でした。
http://www.pedigreequery.com/carlton+house2

とにかく配合が綺麗ですね。母 Talented は「Bustino×Mill Reef」。これだけで惚れてしまいます。Busted(Bustino の父)と Mill Reef は、70~80年代にイギリスで繋養された最高クラスの種牡馬です。相性も悪くなかったため、この組み合わせはしばしば目にします。英ダービーを勝った Reference Point(84年生)と Shaamit(93年生)は、配合構成がきわめてよく似ているのですが、その中核を成しているのが Busted と Mill Reef です。
http://www.pedigreequery.com/reference+point
http://www.pedigreequery.com/shaamit

        ┌ Mill Reef
Reference Point ┤ ┌ Habitat
        └○┤ ┌ Busted
          └○┘

          ┌ Busted
        ┌○┘
Shaamit ――――┤ ┌ Habitat
        └○┤ ┌ Mill Reef
          └○┘

このほか、Talented と逆配合の「Mill Reef×Bustino」には、サンタラリ賞(仏G1)を勝ち凱旋門賞(G1)でも2着となった名牝 Behera がいます。同馬は昨年のパリ大賞典(仏G1)の勝ち馬 Behkabad の2代母となりました。(続く)
http://www.pedigreequery.com/behkabad

2011年6月23日 (木)

サクラバクシンオーのニックス配合、コスモメガトロン

日曜函館5Rの新馬戦(芝1200m)は、○コスモメガトロン(3番人気)が2番手追走から先頭に立ち、後続に3馬身半差をつけました。
http://www.youtube.com/watch?v=njpzQxRY_2k

1分09秒7という時計は、函館の新馬戦としては相当優秀なのですが、同日の最終レース(1000万特別)に1分08秒0というレコードタイムが出ています。開幕週特有の速い馬場でした。

サクラバクシンオーは Nijinsky とニックスの関係にあります。シーイズトウショウ、ショウナンカンプ、サンダルフォン、メジロマイヤー、ブルーショットガン、スプリングソング、エイシンツルギザン、デンシャミチなど多くの重賞勝ち馬が出ています。

本馬の母の父はマルゼンスキー(その父 Nijinsky)なのでこのパターンに当てはまります。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009101873/

先週は、出石特別(阪神芝1400m)のエーシンダックマン、基坂特別(函館芝1200m)のシシャモチャンと、この配合パターンの馬が2頭特別を勝ちました。サクラバクシンオー産駒はもともと函館競馬場で強いのですが、母方に Nijinsky を持つ馬はこの傾向がさらに強まり、芝連対率は32.2%。手が付けられない強さです。

2代母ダイアナソロンは桜花賞馬。ただし、2代母の父パーソロンはサクラバクシンオーとの相性がイマイチです。サクラバクシンオーが好むのは、Nijinsky のような雄大な馬格を伝えるやや硬めのアメリカ血統か、Hyperion の影響を強く受けた重厚なヨーロッパ血統です。素軽くて柔らかいパーソロンはもうひとつフィットしません。

母方にパーソロンが入ったサクラバクシンオー産駒で最も出世したのは京王杯2歳S(G2)を制したデンシャミチ。デンシャミチは母の父がマルゼンスキーなのでコスモメガトロンと配合構成がそっくりです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2003109318/

          ┌ サクラバクシンオー
コスモメガトロン ―┤ ┌ マルゼンスキー
          └○┤ ┌ パーソロン
            └○┘

          ┌ サクラバクシンオー
デンシャミチ ―――┤ ┌ マルゼンスキー
          └○┤
            └○┐ ┌ パーソロン
              └○┘

サクラバクシンオーとパーソロンの関係を通して配合を眺めると、マルゼンスキーのような血を入れることで足りないものを補っていることが分かります。これまで母ダイアナチェリーはサクラバクシンオーとの間に2頭の牝馬を産み、どちらも成績は振るいませんでした。コスモメガトロンは三度目の正直といったところでしょう。

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2011年6月22日 (水)

器と適性、どちらを重く見るか?

■土曜中山の新馬戦(芝1200m)は、▲スマイルゲート(1番人気)が2番手から抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=DxlROPxzndE

新馬戦で悩まされるのは「器」と「適性」のどちらを重く見るか、ということ。一度も走っていない馬の適性を云々するのはおかしな話ですが、あくまでも血統的な適性です。

スマイルゲートはスマイルジャック(重賞3勝)の全妹です。その一方で、タニノギムレット産駒の中山下手は知られるところであり、中山の芝新馬戦は連対率8.3%(36戦3連対)と酷い成績です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105484/

スマイルジャックの全妹という「器」を取るか、タニノギムレット産駒の中山苦手という「適性」を取るか、しばし迷うところではあります。新馬戦は出走馬の実力差が大きいレースなので、この場合、わたしは7割ぐらいの確率で「器」を重視します。しかし、このレースでは残り3割の確率に賭けて失敗しました。▲に落としたスマイルゲートは危なげなく快勝。代わりに本命に推した◎ジェイケイヒーロー(4番人気)は11着。裏目を食ったレースは見ていてトホホ……という気分になります。

適性があるとはいえないコースでいきなり勝ち上がったのですから、2戦目以降も楽しみです。

■日曜中山の新馬戦(芝1600m)は、△クイーンアルタミラ(6番人気)が中団から鋭く抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=2_Bvh0G-5JI

このレースも適性重視。今度は逆にそれが功を奏しました。2着に食い込んだ◎ミヤコマンハッタン(7番人気)が本命で、評判馬マイネルアトラクト(1番人気)は▲に下げました。予想は△◎で馬連8770円的中です。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想を転載します。

「◎ミヤコマンハッタンは『マンハッタンカフェ×ドクターデヴィアス』という組み合わせ。父マンハッタンカフェは中山芝1600mの新馬戦で強く、連対率34.8%、単勝回収率120%という成績を残している。アレッジドのクロスを持つマンハッタンカフェ産駒なのでショウナンマイティと同じパターン。短距離では忙しいがマイル戦なら力を発揮できる。一発があっても不思議はない。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009100373/

雨の影響が残る馬場だったので、コース適性に加え、パワーを伝える Alleged クロスがよかったと思います。

勝ったクイーンアルタミラは「バゴ×コマンダーインチーフ」で、母方の奥には力強いチャイナロックがあります。こちらもパワー満点ですね。中山芝1600mは外枠が不利なのですが、この馬は12頭立ての11番枠から出て差し切り勝ち。いいものを持っています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009104270/

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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2011年6月21日 (火)

ダイワメジャー産駒が新馬戦でワンツー!

開幕週の注目新馬戦といえば阪神芝1600m戦。今年は新種牡馬ダイワメジャーの子が1、2着しました。後続を4馬身引き離しているので力が抜けていましたね。
http://www.youtube.com/watch?v=G7zTVSycwyU

勝った▲ダローネガ(2番人気)は2番手追走から直線で先頭に立ち、○エピセアローム(3番人気)の追撃をクビ差抑えました。馬連1290円的中。

レース後、検量室前へ行くと、佐々木晶三調教師が満面の笑みでやってきて、「だから走ると言ったダローガ」と、馬名をひっかけた軽口を飛ばしてゴキゲンなご様子。「調教でもビビリ入ってたし、差されるかと思ったよ。このあとは放牧。間に合えば新潟2歳Sあたりかな。球節がモヤっとしていたし、長い目で見たい馬だね。そのほうがいいダローネ」と、最後もシャレで締めくくり、終始ニコニコ顔でした。

「ダイワメジャー×ホワイトマズル」という組み合わせで、母カメリアローズはフェアリーS(G3)4着馬。母の父ホワイトマズルはサンデーサイレンスと相性抜群です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106109/

そのニックスの核となっているのは、サンデーに含まれる Halo とダンシングブレーヴに含まれる Drone でしょう。これについては昨年11月9、10日のエントリー「Halo≒Sir Ivor≒Drone(前・後)」をご参照ください。

Halo≒Sir Ivor≒Drone(前)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/11/halosir-ivordro.html
Halo≒Sir Ivor≒Drone(後)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/11/halosir-ivord-1.html

ちなみに、ホワイトマズル牝馬はアグネスタキオンと好相性で、これについては昨年1月24日のエントリー「アグネスタキオン×ホワイトマズル」に記しました。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/01/post-33fe-1.html

今回勝ち上がったダローネガの配合を見て、「ダイワメジャー×ホワイトマズル」もなかなかおもしろいのではないか、と思いました。ダイワメジャーは Hail to Reason≒Consentida 3×3が配合上のポイントのひとつだと思います。

           ┌ Royal Charger
         ┌○┘
Hail to Reason ―┤ ┌ Blue Swords(≒Bee Mac)
         └○┤ ┌ Sir Gallahad(=Bull Dog)
           └○┘

             ┌ Bull Dog(=Sir Gallahad)
           ┌○┘
         ┌○┤
Consentida ―――┤ └ Bee Mac(≒Blue Swords)
         │ ┌ Royal Charger
         └○┘

ホワイトマズルの父の母 Navajo Princess は、Consentida の配合構成の主要部分、Beau Max、Royal Charger、Mahmoud をしっかり押さえてあります。前述のとおりダイワメジャーは Hail to Reason≒Consentida 3×3なので、Consentida の構成要素を強化する配合は悪くないはずです。「ダイワメジャー×ホワイトマズル」が有効な配合なのかどうか、今後も監視して行きたいと思います。

種牡馬ダイワメジャーは最高のスタートを切りました。先週は3頭出走して1、2、6着。まだサンプルが少ないので、先週の結果をもって結論めいたことは語れません。良馬場だったとはいえ前日からの雨の影響は残っていました。そんな馬場が合っていたという見方もできます。楽しみな種牡馬であることは間違いないので、今後も1頭ずつしっかりチェックしていきたいですね。

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!