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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

時事問題

2010年11月 6日 (土)

ブレイクランアウト種牡馬入り

先日の富士S(G3・芝1600m)で故障を発症したブレイクランアウトの種牡馬入りが決定しました。配合的に高く評価していた馬なので、どうなるのか気を揉んでいたのですが、血を残せることになってよかったと思います。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006110007/

父 Smart Strike はアメリカにおける Mr.Prospector 系の代表格。リーディングサイアーの経験もあります。Curlin(米年度代表馬)、English Channel(BCターフを含めて芝G1を6勝)、Lookin At Lucky(プリークネスS)、Fleetstreet Dancer(ジャパンCダート)などを送り出し、芝・ダートを問わず成功しています。

ブレイクランアウトは「Smart Strike×フレンチデピュティ」という組み合わせ。母の父が Deputy Minister 系、という配合は前出の Curlin と同じです。
http://www.pedigreequery.com/curlin

母キューが芝12ハロンのロングアイランドH(米G2)の勝ち馬なので、芝向きの軽いフットワークが備わっていたのでしょう。 Mitterand≒Peroxide Princess 2×2(近い世代で Bold Ruler、Prince John、Eight Thirty、Folle Nuit が共通し、このうち Prince John と Eight Thirty がニックス)というユニークな配合をしています。
http://www.pedigreequery.com/queue2

父母どちらかにおもしろい凝縮のある馬は、種牡馬でも繁殖牝馬でも私の好みです。たとえば、名馬 Native Dancer を産んだ Geisha などがそうですね。その母 Miyako には多重クロスが見られます。
http://www.pedigreequery.com/geisha

70年代末から80年代前半にかけて、地方競馬ではタガワ四兄弟(タガワエース、タガワキング、タガワテツオー、タガワリュウオー)が大活躍しましたが、その母コーホールも同パターンです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1955101937/

笠雄二郎さんの「4分の1異系配合」という考え方は、視点を変えれば、こうした配合パターンをもカバーできうるものではないかと思います。詳しくは以下のサイトをご覧ください。
http://www.tescogabby.com/index.htm

2010年10月28日 (木)

ディープインパクト産駒、土日で4勝(3)

本日紹介する2頭は、いずれも『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』で◎を打って的中した馬なので、手っ取り早く説明するためにその予想文を転載します。カギ括弧の部分です。

■日曜東京5R新馬戦(芝1400m)リアルインパクト
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103244/

「◎リアルインパクトは『ディープインパクト×メドウレイク』という組み合わせ。アイルラヴァゲイン(オーシャンS)の半弟にあたる。母トキオリアリティーは、配合構成がメドウレイクの代表産駒メドウスター(BCジュベナイルフィリーズなど米G1を6勝)と酷似しているので、繁殖牝馬としての好成績もうなずける。基本的にディープインパクトはアメリカ血脈と相性がよく、本馬はサンデー系とニックスの関係にあるヘリオポリスが入るほか、ノーサードチャンス≒ブルームーン5×4・5などを持つ。なかなかの好配合馬。稽古で抜群の時計が出ており、このメンバーが相手なら問題なく通過しそう。」

パドックでは馬っ気を出していました。レース後、後藤浩輝騎手は気性面のコントロールについてコメントしていたので、ネックとなりそうなのはメンタル面だけですね。直線でエンジンが点火するまでにやや間を感じましたが、初戦なので何の問題ないでしょう。フットワークが豪快で惚れ惚れします。直線でグイッと伸びて後続を突き放したときに、スタンドにいた私の周囲に軽くどよめきが起こりました。気性面のケアを優先して大事に使っていくようですね。

■日曜京都5R新馬戦(芝1800m)ダノンバラード
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103548/

「◎ダノンバラードは『ディープインパクト×アンブライドルド』という組み合わせ。半兄にロードアリエス(京都新聞杯-2着)がいる。母レディバラードは現役時代にクイーン賞(G3・ダ1800m)とTCK女王盃(G3・ダ2000m)を勝った。本馬はヘイロー3×3を持っているが、これは父ディープインパクトのヘイロー≒サーアイヴァー2×4を継続するものなので好感が持てる。今年のNHKマイルCを勝ったダノンシャンティとも配合構成が似ている(ヘイロー3×3、2代母が全姉妹、ルファビュルーが入る)。抜群の稽古を消化しているのでしっかり勝ち負けに持ち込むだろう。」

文中でダノンシャンティとの比較について語りましたが、文章だけでは分かりづらいので表にしてみます。

           ┌ サンデーサイレンス
         ┌○┘
ダノンバラード ―┤ ┌○┐ ┌ Le Fabuleux
         └○┤ └○┘
           │ ┌ Halo
           └○┤
             └ Ballade

           ┌ サンデーサイレンス
         ┌○┤ ┌ Le Fabuleux
ダノンシャンティ ┤ └○┘
         └○┐ ┌ Halo
           └○┤
             └ Ballade

ダノンバラードの母の父 Unbridled は名配合の産物。しかし、性質としてはダート向きです。芝で走ったレッドチリペッパー(父 Unbridled)にしても、繁殖牝馬としては決め手を伝えていません。ですから、この血を取り込んで芝向きのA級中距離馬を作るには少々厄介なところがあります。ディープインパクトは、Halo≒Sir Ivor 3・5×3の効果があるにせよ、しっかり手なずけています。このあたりの懐の深さは魅力ですね。ちなみに、今週デビュー予定のダコール(父ディープインパクト)も母の父 Unbridled です。

ダノンバラードが年末に阪神へ行くのか、それとも中山へ向かうのかは分かりませんが、どちらでも好勝負でしょう。

今週の出走馬はまだ確定していません。ただ、10頭以上出てくることは間違いなさそうです。注目のレースは土曜京都6Rの新馬戦(芝2000m)。トーセンレーヴ(池江泰寿厩舎)とオンリーザブレイヴ(角居勝彦厩舎)が出走を予定しています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103273/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102980/

前者はノーザンファームのエース格。水曜日の坂路で好時計を出しました。私が今年のPOGで1位指名した馬です。後者は3月30日のエントリー「ディープインパクトの牝系をクロスさせてみると」で取り上げました。「Burghclere≒Height of Fashion 3×4」という4分の3同血クロスがどう出るか、ですね。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/03/post-fc82.html

このままいくと週末は台風14号の影響で道悪必至。その適性が問われそうです。芝の重・不良でディープインパクト産駒は〔1・1・0・2〕。サンプルは少ないものの悪くない結果が出ています。今週の競馬である程度傾向が鮮明になりそうです。

~~~~~~~~~~~~~~~~

注)トーセンレーヴは出走投票がなかったため、今週のデビューは見送られました。

2010年10月27日 (水)

ディープインパクト産駒、土日で4勝(2)

先週勝ち上がった馬の配合をざっと見ていきたいと思います。

■土曜京都5R新馬戦(芝1600m)ドナウブルー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103250/

ディープインパクトの母は Court Martial(父 Fair Trial)のクロスを持ちます。また、Fair Trial 3×3の Queen's Hussar も入ります。このあたりを刺激すると大物感が出づらいのではないかと考えたので、今年の馬選びでは、Fair Trial やその息子 Court Martial の影響が感じられる血――Danzig や Lyphard など――が入った馬は、積極的に評価しませんでした。ドナウブルーには両方入っています(笑)。

ただ、この馬にはサンデー系と相性のいい Revoked が入るので、そのあたりがポジティヴに作用したのかもしれません。このニックスについては昨年12月5日のエントリー(ミカエルビスティーと「Nothirdchance≒Revoked」)で触れています。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2009/12/nothirdchancere.html

今年のPOGでは、ディープインパクト産駒のレッドセインツ(新潟2歳S-3着)を指名しました。この馬はまさに Nothirdchance≒Revoked のニックスを持っています。

■日曜東京3R未勝利戦(芝2000m)サトノペガサス
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103131/

この馬もドナウブルーと同じく Lyphard クロスを持ち、しかも4×4・4ですから、あまり指名したくないタイプです(笑)。ただ、薔薇一族に属しており、母クラシックローズも3勝馬ですから、牝系の質はなかなかいいですね。

そして、なんといっても「Halo≒Sir Ivor≒Drone 3・5×5」です。父ディープインパクトは「Halo≒Sir Ivor 2×4」が配合構造のひとつの核。これを継続する配合は悪かろうはずがありません。これらとよく似た構造の Drone を入れると、同じような血がトリプルで重なるわけですから、その効果は大きいのではないかと思います。このあたりについては3月26日のエントリー(ディープインパクト産駒の成功する配合パターンとは?)で詳しく触れています。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/03/post-1f90.html

サトノペガサスは中山のほうがいいタイプではないでしょうか。京成杯あたりに向きそうな気がします。(続く)

2010年10月26日 (火)

ディープインパクト産駒、土日で4勝(1)

10月22日のエントリー(ディープインパクト産駒、今週10頭出走)に記したように、今週はうまくいけば3~4頭は勝てそうな情勢でした。期待どおりしっかり勝てるというのはいいですね。

土曜日
 東京2R 未勝利戦  芝1400m フジハヤブサ    9着
 東京4R 新馬戦   芝1800m エアジョイント   5着
 東京9R いちょうS 芝1600m ヒラボクインパクト 取消
 京都3R 未勝利戦  芝2000m スマートロビン   2着
 京都5R 新馬戦   芝1600m ドナウブルー    1着

日曜日
 東京2R 未勝利戦  芝1600m ナイスアゲイン   3着
 東京3R 未勝利戦  芝2000m サトノペガサス   1着
 東京5R 新馬戦   芝1400m リアルインパクト  1着
 京都5R 新馬戦   芝1800m ダノンバラード   1着
 京都5R 新馬戦   芝1800m フェアープライド  7着

夏ごろは明らかに期待先行で、7月から8月にかけてちょっと苦しい時期もありました。しかし、秋風が吹いたあたりからエンジンが掛かり、10月に入ってさらに加速しています。10月の成績は〔8・4・2・9〕。勝率34.8%、連対率52.2%、複勝率60.9%です。

夏のローカル短距離戦に向いたタイプではない、ということは常々言ってきたことですが、それよりも単純に、ここにきて期待馬が続々とデビューを迎えているということでしょう。1年で最もレベルが高いこの時期の新馬戦を、ディープインパクト産駒がどんどん勝ち上がっているわけですから、今後の重賞戦線は同産駒が中心となって展開していきそうな予感がします。もちろん、一方の雄ハーツクライも大物を揃えているので、これから来年春にかけて両産駒の大決戦となりそうですね。楽しみです。

初年度のサンデーサイレンス(94年)は、まったく同時期に18勝ですから、現在18勝のディープインパクトはこれにぴったり並びます。産駒数はディープのほうが多いので、サンデーサイレンスが記録した初年度産駒の勝利数記録「30勝」は、高い確率で更新できるのではないかと思います。

明日は勝ち上がった馬の血統を解説します。(続く)

2010年9月22日 (水)

競馬国際交流協会と日本軽種馬登録協会が合併

本年12月1日をもって両法人は合併し、「ジャパン・スタッドブック・インターナショナル」という組織に生まれ変わります。両法人は競馬を支援するさまざまな事業を行っています。サイトも充実しており、専門家だけでなく競馬ファンにも楽しめる内容となっています。私もしょっちゅう利用させていただいています。

★競馬国際交流協会
http://www.jair.jrao.ne.jp/japan/
★日本軽種馬登録協会
http://www.studbook.jp/ja/

今回の合併は、両者それぞれの事業を一体的・効率的にできる体制を整えることが目的です。特例民法法人は、2013年11月30日までに、新公益法人または一般社団法人・一般財団法人へ移行しなければならないのですが、それを見据えて合併するという事情もあるようです。

競馬国際交流協会も日本軽種馬登録協会も、公益団体であるため収益事業はできません。活動費は補助金などで賄われます。ふたつの団体が合併することにより、そのあたりの節約も図られます。

取材のためお話をうかがった幹部の方は「競馬をとりまく状況は非常に厳しい」とおっしゃっていました。ただ、事業を一体化して無駄を省き、効率的なシステムが作られることは悪いことではないと思います。

なお、事業体としては競馬国際交流協会が日本軽種馬登録協会を吸収合併するという形をとり、事業所は日本軽種馬登録協会のあるJRA新橋分館に置かれるようです。

2010年9月21日 (火)

ハーツクライ固め打ち

種牡馬に関する先週の話題といえばハーツクライの固め打ちでしょう。野路菊S(OP)のワン・ツー・フィニッシュを含めて〔3・3・0・3〕という成績でした。全盛期のイチローを思わせる猛打ぶりです。

サンデー系種牡馬が初年度にどのような成績を残したか、秋の中央開催2週目終了時点で比べてみます。サンプルが4頭だけなのは、これらがほかのサンデー系種牡馬と比べて別格といえる成績だからです。

                   勝率 連対率 複勝率(%)
サンデーサイレンス〔13・6・6・6〕 41.9  61.3  80.6
アグネスタキオン 〔13・8・6・24〕 25.5  41.2  52.9
ディープインパクト〔10・5・7・16〕 26.3  39.5  57.9
ハーツクライ   〔9・7・3・11〕 30.0  53.3  63.3

勝率、連対率、複勝率、いずれにおいてもサンデーサイレンスが圧勝しています。これは当然でしょう。サンデーサイレンスがデビューした当時、ライバルとなるサンデー系種牡馬はいなかったのですから。

ハーツクライは各部門でサンデーサイレンスに次ぐ第2位。サンデーを父に持つ種牡馬ではナンバーワン、ということになります。ただ、2歳のこの時期は週によって成績に波があるので、調子のいい週もあれば悪い週もあります。ハーツクライとディープインパクトについては、これから毎週上がったり下がったりするでしょう。この2頭はいずれリーディングサイアーを争う種牡馬になると思います。

ハーツクライはどう考えても早熟タイプではないので、この成績が一過性のものであるとは考えづらいところです。クラシック向きのスタミナ、底力も持ち合わせているでしょう。

どの距離でもまんべんなく走るところがセールスポイントなのですが、とくに芝1800mでは〔5・2・1・4〕で連対率58.3%。この距離では逆らえません。ウインバリアシオンが楽勝した野路菊S(芝1800m)を見ると、2400mではさらに強いのではないかというイメージが湧いてきます。

いまのところ“母に Northern Dancer の強いクロスを持つ馬”が目立ちます。ウインバリアシオンは2×4。マリアビスティーは2×4。メイショウナルトは3×4。そして、全体的にちょっと硬いかなと思うような血統のほうがいいですね。こうした特長はマンハッタンカフェとよく似ています。ウインバリアシオンの母は「Storm Bird×Time for a Change」ですから、ちょっと日本向きとはいえないような血統です。それをジャパナイズして走らせてしまう力業は非凡ですね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103206/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103221/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008101384/

2010年9月 8日 (水)

橋本邦治さん死去

先月19日にお亡くなりになったとのことですが、9月に入ってから知りました。87歳。大川慶次郎さんより7歳年上で、大正生まれ(大正11年/1922年生)では最も長く現役でいらした競馬関係者ではないでしょうか。つい数年前までラジオNIKKEIの競馬中継に出演されていたイメージがあります。

『日本の名馬』(サラブレッド血統センター)の118頁に、「私と競馬」と題する橋本さんの文章が載っています。抜粋します。

「私の家は、昔府中にあった。そんな関係もあり、父が野戦重砲兵だったりしたため、子供のころから馬が好きだった。そのうえ、目黒から東京競馬場が移転してきたりしたため、なにもわからないうちから、競馬は見ていた。だから、ガヴアナーが『ダービー』に勝った後で急死して、墓地に運ばれる、悲運な姿を見たことを覚えている。」

ガヴアナーは第4回のダービー馬。死んだのは1935年(昭和10年)ですから75年前です。橋本さんはそのときの光景を目撃しています。

また、『優駿』04年10月号にはこんな記述があります。

「私も、馬房によこたわるトキノミノルを見舞ったが、“これがあのダービー馬か”と、目を疑いたくなるような寂しい姿だった。」

トキノミノルは1951年(昭和26年)の二冠馬で、通算10戦全勝。ダービー制覇から17日後に破傷風により死亡しました。橋本さんは死の床にあるトキノミノルも目撃しています。

時代が下り、日本テレビの名物番組『11PM』で、大橋巨泉氏と競馬コーナーを持ったと聞きますが、残念ながら記憶にありません。私にとって橋本さんは『話のかいば』の著者です。NAR地方競馬全国協会の機関誌『地方競馬』に連載されたコラムをまとめたもので、91年にJRA馬事文化賞を受賞しました。競馬に関する幅広い蘊蓄を90のチャプターに分けてエッセイ風に記したものです。読みやすくて好きな本でしたね。「父は、明治の日本画家、橋本雅邦の六男」というプロフィールの記述を見て、へぇ~と感心したりもしました。この本を Amazon で検索しても引っ掛かってきません。現在入手は困難かもしれません。晩年はJRA賞の記者投票でたびたび独創的な票を投じることで話題になりました。

私はよく中山競馬場行きのバスでお見かけしました。雨の日も風の日も変わることなく座席に腰掛けていらっしゃいました。奥様らしきお連れの方と一緒のことが多かったですね。自分はあの歳まで競馬場に通う気力を保てるだろうか……と、そのお背中を見ながら思ったものです。合掌。

2010年9月 4日 (土)

Harbinger 日本へ

社台グループが Harbinger を獲得したと複数の海外メディアが報じています。値段は明らかになっていません。円高傾向が続いているので、このクラスの馬としてはそれほど高い価格ではなかったのでは、と思います。

社台ファーム代表の吉田照哉氏は「種馬は数打たなきゃ当たらない」「失敗するのが当たり前」が口癖です。社台グループといえばサンデーサイレンス、トニービン、ノーザンテーストといった華々しい成功種牡馬にばかり目が行きがちですが、その陰には膨大な数の失敗種牡馬が死屍累々と横たわり、それだけで一冊の本が書けるほどです。種牡馬というものは本来きわめて低い確率でしか成功しません。

競走成績からある程度見分ける方法はあります。2歳時からトップクラスで活躍し、3歳時にスプリントまたはマイルのG1を勝つようなタイプは当たる確率が高いといわれています。ただ、こんなことはプロなら誰でも知っているでしょう。

ヨーロッパでそうした馬を買ってこようとしても、種牡馬ビジネスで激しい火花を散らすクールモア、ダーレー、ジャドモントなどいくつかの巨大資本がまず押さえてしまうので簡単ではありません。当ブログでも Green Desert 系がいいとか Oasis Dream はサンデーと合うだろうとかたびたび書いてきましたが、欲しいといって買えるなら誰も苦労はしません。

現実的には、成功パターンから外れた Harbinger のような大物を狙うしかないのだろうと思います。最前線でしのぎを削る欧米の種牡馬事業グループ群は、クラシックディスタンスを得意とする晩成タイプに強く執着することはなく、だからこそ社台グループが手に入れることができたのだと思います。社台グループには「種馬は数打たなきゃ当たらない」という哲学と、リスクを承知の上でそれに挑むだけの資力があります。たとえ低い確率でも当たれば儲けもので、運良くヒットすれば牧場は20年間安泰です。失敗したとしても屋台骨が揺らぐことはないので、買ってみる価値はあるでしょう。

思えばサンデーサイレンスは血統的なリスクの大きな買い物でした。トニービンもクラシックディスタンスを得意とする晩成タイプ、という成功しづらいカテゴリーに属していました。種牡馬ビジネスというものは常識では割り切れませんし、かといって当てずっぽうでもダメ、という難しさがあります。Harbinger がトニービンになるのかエリシオになるのか分かりませんが、ワールドサラブレッドランキングでは過去最高クラスの評価を得た馬なので期待したいですね。

11馬身差のレコード圧勝、という今年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英G1・芝12f)は、この一戦だけでアスコット競馬場に銅像が建つレベルのパフォーマンスだと思います。ニコニコ動画に生涯全9戦をダイジェストでまとめたものがアップロードされていました。戦績表と合わせて鑑賞すると楽しめます。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm11808925
http://ahonoora.web.fc2.com/harbinger.html

2010年9月 2日 (木)

G1サラブレッドクラブ誕生

今週発売の『週刊競馬ブック』の表紙をめくると、「G1 Thoroughbred Club 誕生」という広告があります。もちろんサイトも存在しており、8月30日付けで「G1サラブレッドクラブが誕生しました!」というインフォメーションが記されています。
http://www.g1tc.co.jp/

サイトのどこにも謳ってはいませんが、社台サラブレッドクラブ、サンデーサラブレッドクラブに続く、社台系第三のクラブ法人なのでしょう。社台グループが新しく何かを始めるらしいという噂は、こうした事情に疎い私の耳にも入っていました。サイトの作り、育成先やリンク先などを見ても、社台グループ以外にないだろうと思います。

驚いたのは「G1サラブレッドクラブは前身のないまったく新しい愛馬会法人」という一文です。この問題について10年前に取材した際に、新規のクラブ法人はもう作れないという規制があることを知り、それはいまなお生きているものと思っていました。事情が変わったのでしょうか。

1頭の総額は1400~3600万円(一口35~90万円)と比較的安く、月会費は1575円ですから社台やサンデーの半額。このご時世ですから大衆化路線は受けるかもしれませんね。

2010年9月 1日 (水)

凱旋門賞のアンティポスト

気がつけば暦は9月、フランスに遠征したヴィクトワールピサとナカヤマフェスタの勝負が迫ってきました。前哨戦のニエル賞(G2・芝2400m)とフォワ賞(G2・芝2400m)は9月12日(日)に、本番の凱旋門賞(G1・芝2400m)は10月3日(日)に行われます。

イギリスのブックメーカーが発表しているアンティポストをご紹介したいと思います。アンティポストとは“事前オッズ”のようなものと考えればいいでしょう。この賭けは、早ければ対象競走の数ヵ月前から受け付けられます。直前オッズよりも当然倍率は高いのですが、出走しなかったとしても掛け金は返ってきません。もし当たれば、賭けた時点のオッズで配当が支払われます。POGが盛んな日本では、もしアンティポストベットが実現したら相当売れると思うのですが。法改正して発売を目指すという動きはないのでしょうか。

多数のブックメーカーのなかで、世界三大ブックメーカーといわれる三社のものをご紹介します(9月1日現在)。数字は左から順にラドブロークス、コーラル、ウイリアムヒルです。オッズは日本式に直しています。

Fame and Glory   4  4  4
Behkabad      7  7  7
Planteur      11  11  11
Workforce      11  9  9
Sarafina      13  13  11
Byword       17  17  15
St Nicholas Abbey     13  13
Sariska       17  13  17
Rewilding         17  21
Youmzain      26  26  26
Cape Blanco        17  21
Cavalryman     17  34  26
Dar Re Mi      34  17  26
Snow Fairy     26  34  26
Daryakana      34  34  34
Goldwaki      41     26
Jan Vermeer        26  34
Ice Blue         41  34
Cutlass Bay     26  41  51
Simon De Montfort     26  34
Midas Touch        51  51

三社とも重賞4連勝中の Fame and Glory が1番人気、パリ大賞典(G1)の勝ち馬 Behkabad が2番人気です。
http://www.pedigreequery.com/fame+and+glory
http://www.pedigreequery.com/behkabad

Fame and Glory は古馬代表で、次走はフォワ賞。一方の Behkabad は3歳代表で、次走はニエル賞。つまり、前者はナカヤマフェスタと、後者はヴィクトワールピサと対決します。

表のなかに日本馬2頭の名前がないのは、まだオッズが付けられていないからです。日本馬の実力が把握できずにオッズが付けられないのか、それとも挑戦することすら知らないのか、事情はよく分かりません。前哨戦が終われば数字が出てくるでしょう。

現時点で数字を発表しているブックメーカーもあります。ヴィクトワールピサには3社がつけており、それぞれ35倍、39倍、44倍。ナカヤマフェスタには2社がつけており、それぞれ107倍、130倍。はっきり“圏外”という扱いです。こういうのを見ると燃えてきますね~。

両馬のオッズが付いている二社は以下のとおり。ご参考までに。
http://www.betfair.com/
http://www.wbx.com/

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!