Harbinger 日本へ
社台グループが Harbinger を獲得したと複数の海外メディアが報じています。値段は明らかになっていません。円高傾向が続いているので、このクラスの馬としてはそれほど高い価格ではなかったのでは、と思います。
社台ファーム代表の吉田照哉氏は「種馬は数打たなきゃ当たらない」「失敗するのが当たり前」が口癖です。社台グループといえばサンデーサイレンス、トニービン、ノーザンテーストといった華々しい成功種牡馬にばかり目が行きがちですが、その陰には膨大な数の失敗種牡馬が死屍累々と横たわり、それだけで一冊の本が書けるほどです。種牡馬というものは本来きわめて低い確率でしか成功しません。
競走成績からある程度見分ける方法はあります。2歳時からトップクラスで活躍し、3歳時にスプリントまたはマイルのG1を勝つようなタイプは当たる確率が高いといわれています。ただ、こんなことはプロなら誰でも知っているでしょう。
ヨーロッパでそうした馬を買ってこようとしても、種牡馬ビジネスで激しい火花を散らすクールモア、ダーレー、ジャドモントなどいくつかの巨大資本がまず押さえてしまうので簡単ではありません。当ブログでも Green Desert 系がいいとか Oasis Dream はサンデーと合うだろうとかたびたび書いてきましたが、欲しいといって買えるなら誰も苦労はしません。
現実的には、成功パターンから外れた Harbinger のような大物を狙うしかないのだろうと思います。最前線でしのぎを削る欧米の種牡馬事業グループ群は、クラシックディスタンスを得意とする晩成タイプに強く執着することはなく、だからこそ社台グループが手に入れることができたのだと思います。社台グループには「種馬は数打たなきゃ当たらない」という哲学と、リスクを承知の上でそれに挑むだけの資力があります。たとえ低い確率でも当たれば儲けもので、運良くヒットすれば牧場は20年間安泰です。失敗したとしても屋台骨が揺らぐことはないので、買ってみる価値はあるでしょう。
思えばサンデーサイレンスは血統的なリスクの大きな買い物でした。トニービンもクラシックディスタンスを得意とする晩成タイプ、という成功しづらいカテゴリーに属していました。種牡馬ビジネスというものは常識では割り切れませんし、かといって当てずっぽうでもダメ、という難しさがあります。Harbinger がトニービンになるのかエリシオになるのか分かりませんが、ワールドサラブレッドランキングでは過去最高クラスの評価を得た馬なので期待したいですね。
11馬身差のレコード圧勝、という今年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英G1・芝12f)は、この一戦だけでアスコット競馬場に銅像が建つレベルのパフォーマンスだと思います。ニコニコ動画に生涯全9戦をダイジェストでまとめたものがアップロードされていました。戦績表と合わせて鑑賞すると楽しめます。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm11808925
http://ahonoora.web.fc2.com/harbinger.html
また質問で申し訳ありません。栗山さんの記事をみてDanzig系の活躍馬調べてみたのですが、目に付いたのが一つは栗山さんが指摘されていたTom Foolあるいはそのニアリークロスをもつもの、二つ目は望田さんのいうナスキロその中でも特にBold Rullahをもつもの、あとは一つはNative Dancerをもつものでした。ざっと調べたので合っているのかどうかも解らないのですが、こういった傾向はあるんでしょうか?「Grey Flight 牝系+Bold Ruler の活力」も読み直してみて、なるほどと思いつつ、Grey Flight 牝系以外でも結構Bold Ruler が目に付いたような気がしました。
それとHasiliの項目を読むとサンデー系は合うと思うのですがどうでしょうか?宜しくお願いいたします。
投稿: Bucchi | 2010年9月 4日 (土) 16:47
書き漏れましたが、Harbingerのレースをみてグラスワンダーのような力強いかきこむフォームをストレートに伝えて欲しいと思いました。
投稿: Bucchi | 2010年9月 4日 (土) 16:53
枝分かれしたいくつかの Danzig 系のなかで、たとえば Chief's Crown は母方に Sir Gaylord を入れて Somethingroyal クロスを作ることが成功パターンです。これは Chief's Crown の母の父が Somethingroyal の息子 Secretariat だからです。
Green Desert 産駒の大物には Never Bend クロスが目に付きます。また、Never Bend の構成要素の核となっている Tourbillon-Djebel のラインとは基本的に相性がいいですね。
デインヒルは Natalma 3×3で、これが安定的な活力の供給源となっているので、パターンを選ぶことなく走る馬が出る傾向が見られますね。北半球でも南半球でも、さまざまなタイプの繁殖牝馬との間に優れた産駒をもうけました。
このように、“Danzig 系”といっても個性はいろいろなので、ケースバイケースで見ていくほうがいいような気がします。Danzig 系に関しては、とくに系統単位で「こういう配合がいい」という観念はありません。種牡馬ごとに個別で見ていく感じですね。
Hasili には Seven Seas=Heliopolis 6×6があるので、サンデー系との出会いで好結果を生む可能性はあると思います。ただ、Harbinger とサンデー系牝馬となると代が遠くなりすぎるような気もします。
投稿: 栗山求 | 2010年9月 5日 (日) 02:08
ありがとうございました。代の近さ等々大変色々と勉強になりました。サンデー一色よりもそれぞれ特色ある沢山の種馬がいたほうが、ファンも楽しめます。Harbinger には成功して欲しいと思います。
投稿: Bucchi | 2010年9月 5日 (日) 09:09