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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

時事問題

2011年1月20日 (木)

2010年の米年度代表馬に Zenyatta

日本時間の1月18日昼に発表された2010年のエクリプス賞米年度代表馬は Zenyatta でした。票数は以下のとおり。

1位:Zenyatta(牝・2004年生・父 Street Cry)……128票
   10年成績:6戦5勝(G1-5勝)
http://ahonoora.web.fc2.com/zenyatta.html

2位:Blame(牡・2006年生・父 Arch)……102票
   10年成績:5戦4勝(G1-3勝)
http://ahonoora.web.fc2.com/blame.html

3位:Goldikova(牝・2005年生・父 Anabaa)……5票
   10年成績:6戦5勝(G1-5勝)
http://ahonoora.web.fc2.com/goldikova.html

どれが受賞しても一理あるという感じでした。昨年の Rachel Alexandra と Zenyatta の争いでは、個人的に Zenyatta が受賞すると予想して外したのですが、今年はさすがに Zenyatta だろうなと思いました。

エクリプス賞の記者投票は、むろん人気投票ではありません。しかし、勝ったレースをポイント換算して機械的に決めるわけでもありません。

Zenyatta はブリーダーズCクラシック(G1・ダ10f)で Blame との直接対決に敗れ、しかも勝ったG1は牝馬限定戦のみ。そのあたりが評価を難しくさせている部分だったのですが、投票する記者も人の子ですから、昨年受賞させてあげられなかった罪滅ぼしのような面もあったのではないでしょうか。どちらの投票行動が正しく、あるいは正しくなく……ということではないと思います。

ここ2年、全米の競馬シーンを盛り上げてきた女傑に対し、それにふさわしい栄誉が与えられたことを喜ぶファンが多数派ではないでしょうか。

2011年1月16日 (日)

社台グループが欧米セリで良血牝馬を大量購入(後)

社台スタリオンステーションにサンデー系が増殖しているのは周知のとおり。サンデー系が増えすぎて血の飽和を起こすのではないか、という意見もありますが、私はそうは思いません。たとえば仮に、サラブレッドを生産している国が日本だけだったり、あるいは欧米でも日本と同じようにサンデー系が大繁栄しているのなら、そうなる可能性もあるでしょう。しかし、もちろんそのようなことはなく、欧米では Northern Dancer 系や Mr.Prospector 系などの、旧来からある系統が相変わらず繁栄しています。サンデー系と交配可能な他系の牝馬は、海外に出向いてお金さえ出せばいくらでも買えます。幸いなことに社台グループは、それを可能にするだけの潤沢な資金に恵まれています。こんな状況で飽和など起こるはずがありません。あと10年もすれば、サンデーサイレンスのクロスを持つ馬が大レースを勝ち、サンデー系同士の配合も珍しくなくなるでしょう。

種牡馬事業で得た莫大な資金を、海外の良血牝馬の購買に注ぎ込むことは、サンデー系の発展を促すための投資です。サンデー系が健全に成長するために必要となる新鮮な栄養分を、どんどん海外から運んできているわけです。繁殖牝馬のレベルが上昇し、しかもサンデー系が強くなるわけですから一石二鳥です。

「種馬は数打たなきゃ当たらない」という哲学のもと、かつて社台グループは海外の種牡馬を毎年のように導入していましたが、最近は繁殖牝馬の導入に力点を置き換えているような気がします。ある時期を境に、海外から種牡馬を導入して新たな系統を見つけ出そうという考えが後退し、サンデー系を筆頭とする内国産ラインをしっかり育てていこう、という方向に舵を切ったのではないでしょうか。新たな系統を導入するにしても、国内で走った馬のなかで優秀なものを用いれば事足りる、と。“種牡馬による血の更新”から“繁殖牝馬による血の更新”に比重が移っているような気がします。

種牡馬の分野でも、繁殖牝馬の分野でも、国内においては比肩するものが見当たらない社台グループ。これではほかの牧場は追いつけないではないか、とお考えになる方が多いと思います。しかし、ひとつだけやっていない(であろう)ことがあります。それは、アガ・カーン四世殿下がやっているような血統表をベースとした交配種牡馬の選定です。これを社台グループが始めたら半永久的に追いつけないと思います。しかし、やっていないとしたら、その王権は絶対的なものではなく、知恵を使って闘えばまだ革命の起こる余地はあるでしょう。

2011年1月15日 (土)

社台グループが欧米セリで良血牝馬を大量購入(前)

北半球ではだいたい春から秋にかけて1、2歳のセールが行われ、秋冬に繁殖牝馬や現役牝馬などが出場するミックスセールが行われます。良血の繁殖牝馬を手に入れようとするならば、秋冬のミックスセールに出かける必要があります。

1月10日から米ケンタッキーで始まったキーンランドジャニュアリーセールでは、社台ファームが140万ドルの最高価格で Ave(父 Danehill Dancer)を、吉田勝己氏が2番目の価格である80万ドルで Wickedly Perfect(父 Congrats)を落札しました。

Ave は、昨年10月のフラワーボウル招待S(米G1・芝10f)でレッドディザイアを破って優勝した馬です。一方の Wickedly Perfect も米G1ホースですが、明け3歳なのでまだしばらく現役を続けるのではないでしょうか。
http://www.pedigreequery.com/ave5
http://www.pedigreequery.com/wickedly+perfect

このところ欧米のセールにおいて、社台グループ(社台ファームと吉田勝己氏)がどんどん良血牝馬を購入しています。昨年12月に仏ドーヴィルで行われたアルカナディセンバーセールでは、社台グループが落札価格順の上位3頭(Celimene、Lune d'Or、La Boum)までをお買い上げ。また、11月末から12月初めにかけて英ニューマーケットで行われたタタソールズディセンバーセールや、11月に米ケンタッキーで行われたファシグティプトン、キーンランドの両ノベンバーセールでも、目玉商品を続々と落札していきました。

社台グループが落札した主な牝馬は以下のとおり。いずれ日本に輸入され、社台スタリオンステーションの種牡馬群と交配されるのでしょう。どんな実績を持つ牝馬であるかは説明は省きます。興味のある方はURL内にある説明をご覧ください。

http://www.pedigreequery.com/celimene5
http://www.pedigreequery.com/lune+dor2
http://www.pedigreequery.com/la+boum
http://www.pedigreequery.com/serious+attitude2
http://www.pedigreequery.com/gabbys+golden+gal
http://www.pedigreequery.com/dubai+majesty
http://www.pedigreequery.com/franny+freud
http://www.pedigreequery.com/lucky+one3
http://www.pedigreequery.com/fit+right+in
http://www.pedigreequery.com/baroness+thatcher
http://www.pedigreequery.com/moneycantbuymelove2
http://www.pedigreequery.com/pretty+carina2
http://www.pedigreequery.com/cooden+beach
http://www.pedigreequery.com/exhibit+one
http://www.pedigreequery.com/belle+allure3
http://www.pedigreequery.com/limelight11
http://www.pedigreequery.com/pollenator

2010年12月24日 (金)

マルカシェンクがフランスで種牡馬に

先週土曜日、JRAのサイトに告知がありました。最近では日本馬が海外で種牡馬入りすることは珍しくなくなりましたね。アチチさんという方の個人サイト「火傷でアッチッチ! Annex」に、海外で種牡馬となった日本馬のリストがまとめてあります。「DATA」→「海外で活躍する日本関連種牡馬」というルートでご覧いただけます。
http://atiticlinic.web.fc2.com/index.html

これによると、海外で種牡馬入りしたサンデーサイレンス産駒は30頭を超えています。フランスだけでもすでに8頭。

アグネスカミカゼ
グレイトジャーニー
サムソンハッピー
ペールギュント
ボーンキング
ミレニアムバイオ
レゴラス
ローゼンカバリー

現在トルコにいるディヴァインライトは、当初、フランスで種付けを行っていたので、これを含めると9頭です。マルカシェンクがリストに加われば10頭目。

なぜこれほど多いかというと、やはり Natagora 効果ではないでしょうか。いうまでもなくディヴァインライトの代表産駒で、07年のカルティエ賞最優秀2歳牝馬に輝き、08年の英1000ギニー(G1・芝8f)を制した名牝です。
http://www.pedigreequery.com/natagora

日本から連れてきた名もない種牡馬の子が、並み居る強豪をしりぞけて本場イギリスのクラシックを勝ってしまったのですから、その衝撃は小さくなかったと思います。ディープインパクトの凱旋門賞(06年)におけるパフォーマンスと相俟って、サンデーサイレンスが日本のみで通用するローカル種牡馬ではないという認識に至ったのでしょう。その子供たちにどんどんオファーが来たのは当然だと思います。

第二の Natagora が出現!というニュースが聞きたいですね。

2010年12月17日 (金)

ダノンシャンティ有馬へ

アヴェンチュラ骨折、と聞いてガッカリしていたら、骨折が癒えたダノンシャンティの有馬緊急参戦、というニュースが。

いや~、ビックリしました。と同時に、これまで数々の常識を打ち破ってきた松田国英調教師らしいローテーションだと思いました。仮に負けたとしても、さすがに条件が厳しかったね、ということで馬の評価は下がりません。逆に、もし勝ち負けに絡めば、常識破りの好走ということで評価はうなぎ登り。松田国英調教師が常々口にしている「種牡馬の価値」も揺るぎないものとなるでしょう。

配合については一貫して高く評価してきました。共同通信杯、毎日杯、NHKマイルCといずれも◎を打ちました。見解については5月10日のエントリー「NHKマイルCはダノンシャンティ」をご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/05/post-ce80.html

もちろん、懸念材料はいくつかあります。まず、誰もが思うであろう距離面の不安。ハイペースになればスタミナ切れ、スローペースになれば引っ掛かる心配があります。ハイペースのNHKマイルCでは折り合いましたが、スローペースの毎日杯では行きたがっていました。休み明けでテンションが高くなると危ないですね。

松田国英調教師は半年以上の休み明けの成績があまり芳しくありません。このクラスの調教師ですから、もちろん技術がないというわけではありません。調教でキッチリ仕上げるか、使いつつ仕上げるか、という考え方の違いで生じる部分です。角居勝彦厩舎や橋口弘次郎厩舎も、同じように長期休養からのカムバック戦はイマイチという傾向が見られます。逆に、音無秀孝厩舎は半年以上の休み明けは断然買いです。もちろん、今回はいきなり有馬記念に出てくるわけですから、使いつつ……という仕上げでは臨んでこないと思います。すでに坂路で2ヵ月乗り込んでいるので、体調面に大きな問題はないでしょう。

今年の有馬記念は、大げさではなくレース史上最高のメンバー構成ではないでしょうか? 活きのいい3歳馬が多いと盛り上がります。

2010年11月30日 (火)

ディープインパクト産駒の格上がり戦

11月28日のエントリー「土曜日の2歳戦いろいろ」のコメント欄に、ぎむれっと様から「ディープの仔って、なかなか2勝目あげれませんね、新馬戦でパフォーマンス見せてクラス上がると2着までのパターンが多いような気がします」というご意見を賜りました。

ジャパンCが終わったあと、府中駅近くの居酒屋で、石川ワタルさんご夫妻、宇田川淳さん、村田利之さんなど総勢十数名で宴会をしたのですが、奇遇なことにその席でも「ディープインパクト産駒って、すごく勝ってる割に2勝馬が少ないですよね、栗山さんどう思われますか」と訊かれました。

みなさんが疑問に思われていることなのだなぁと実感しました。正しい答えなのかどうかは分かりませんし、あくまでも仮説ですが、現時点における私の考えを述べたいと思います。

11月末までにディープインパクトが挙げた勝利数は33。勝ち上がりは31頭で、うち2勝馬は2頭です(ディープサウンド、ドナウブルー)。京王杯2歳S(G2)でリアルインパクトが2着となっているのでOP馬は計3頭です。

サンデーサイレンスが新種牡馬だった94年は、23頭が30勝を挙げました。2勝以上は7頭です。重賞2着馬を含めるとOP馬は計9頭。時代背景が異なることを考慮しても驚異的な数字です。

ディープインパクト産駒を見ていてちょっと異様だなぁと思うのは、新馬戦における圧倒的な強さです。長いあいだ競馬を見てきましたが、これほど新馬戦で勝ち上がる種牡馬は記憶にありません。またディープ、またまたディープ……といった感じで、そこそこ人気に推された馬ならほとんどが勝ち上がってしまうという印象です。

94年のサンデーサイレンス、2歳戦で過去最高の勝ち星(54勝)を記録した04年のサンデーサイレンス、そして今年のディープインパクトの新馬戦勝率を比較してみます。94年当時は折り返しの新馬戦があったので、それを除いた新馬初戦のみ対象です。

94年 サンデーサイレンス 21.9%
04年 サンデーサイレンス 20.4%
10年 ディープインパクト 31.3%

今年のディープインパクト産駒がどれほど新馬戦に強いかご理解いただけると思います。サンデーにめぼしいライバルがいなかった94年、全盛期を迎えた04年ですら、今年のディープインパクトには敵いません。

ディープインパクト産駒がデビュー戦に強いのは、能力の高さはもちろんですが、気のいいタイプが多く、競走に対して前向きであることが大きいと思います。それに加えて、デビューさせる各厩舎も、ディープインパクト産駒ということで多少意識が違うのか、新馬戦からキッチリ仕上げてきます。どれも高馬だけに“下手な仕上げでは出せない”という気持ちがあるのかもしれません。トーセンレーヴが万全を期してデビューを再三延期しているのはその典型でしょう。

新馬戦向きのディープインパクト産駒が、いきなり目一杯に仕上げられれば、それは強いと思います。ただ、上がり目は乏しく、馬によっては反動もあるでしょう。2戦目にもうひとつパフォーマンスが伸びないのはこのあたりに原因があるのではないかと考えています。

ですから、藤沢厩舎や角居厩舎のような、馬を作りすぎずにゆっくり仕上げる調整法が、ディープインパクト産駒には合っているのではないかと個人的には考えています。ポンポンと勝ち上がるので手が掛からないように見えて、じつは、大成させるためにはほかの種牡馬の子よりも我慢と忍耐が必要なのかもしれません。

優れた資質を持っていることは明らかだと思うので、やがてどんどんOP馬が誕生していくでしょう。

2010年11月26日 (金)

サクラユタカオー死亡(後)

社台ファームは70年代の Princely Gift ブームに背を向け、もちろんテスコボーイ、トウショウボーイとも無縁でした。しかし、トウショウボーイの代表産駒である三冠馬ミスターシービーを社台スタリオンステーションに導入したのに続き、サクラユタカオーの獲得にも乗り出しました。こちらの交渉は失敗するのですが、静内スタリオンステーションに繋養されたサクラユタカオーのもとへ毎年繁殖牝馬を送り込み、「サクラユタカオー×ノーザンテースト」という90年代を代表するニックスによって、サクラバクシンオー、ダイナマイトダディ、トゥナンテ、エアジハード(2代母の父がノーザンテースト)といった活躍馬を生産しました。この配合は他牧場でも成功し、サクラキャンドル、システィーナなどが誕生しています。

シルクロードS(G3)2着など重賞戦線で頑張っているショウナンカザンは、サクラバクシンオー≒ダイナマイトダディ2×2。リスクの高いこのような配合でもしっかり走ってしまうのですから、サクラユタカオーとノーザンテーストの組み合わせはいいものを伝えているのだなぁと実感します。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2005101404/

代表産駒のサクラバクシンオーは2年連続でスプリンターズS(G1・芝1200m)を制しました。1400m以下では12戦11勝、芝1400mで日本史上初めて1分20秒の壁を破った馬でもあります。種牡馬としても成功し、日本競馬にスピード革命をもたらしたテスコボーイのサイアーラインを繋げることに成功しています。また、もう1頭の代表産駒であるエアジハード(安田記念、マイルチャンピオンシップ)は、ショウワモダン(安田記念)の父となりました。

テスコボーイが送り出した牡馬のうち、最も優れていたのはトウショウボーイとサクラユタカオー。トウショウボーイは代表産駒ミスターシービーが失敗したのが大きく、サイアーラインはほぼ絶滅しています。一方、サクラユタカオーはサクラバクシンオーとエアジハードを残しました。

日本産馬のレベルが世界水準に達していなかった時代は、相対的に能力が高い外国産種牡馬が次々と導入され、そのたびに日本国内の血統は更新され、ランキングの上位はそれらに独占される状況でした。内国産の系統は、代を経るごとに能力を上げていかなければ、外から入ってくる種牡馬群に対抗できません。輸入種牡馬のレベルは日本経済の発展と歩調を合わせるように、60年代、70年代、80年代、90年代と上がっていったからです。輸入種牡馬のレベル上昇に敗れ去った内国産ラインはどんどん淘汰されていき、ほとんど残りませんでした。

そうした厳しい時代を生き抜き、約40年にわたって日本に根付いているテスコボーイ系は素晴らしいとしかいいようがありません。サクラユタカオーはその発展に大きく寄与した名種牡馬でした。合掌。

2010年11月25日 (木)

サクラユタカオー死亡(前)

いまから24年前、1986年に行われた第6回ジャパンCで、サクラユタカオーは1番人気に推されました。この年の秋、同馬は競走馬としてのピークを迎えており、毎日王冠(G2・芝1800m)を1分46秒0、続く天皇賞・秋(G1・芝2000m)も1分58秒3と、2戦連続で日本レコードを樹立していました。

530キロに達する雄大で均整の取れた馬体、輝くような明るい栗毛、温和な気性。いかにも良家のボンボンといった風情がありました。天皇賞を制した夜、NHKのスポーツニュースに小島太騎手が中継で出演し、インタビューを受けたという記憶があります。それぐらいスターホースとしての扱いを受けていました。

しかし、期待を背負ったジャパンC(G1・芝2400m)は6着。距離の壁はいかんともしがたいものがありました。

誤解を恐れずにいえば、種牡馬としての可能性という意味では、この結果はポジティヴなものだったと思います。種牡馬というものは、特長のないオールラウンダーよりも、伝えるものがはっきりしている馬のほうが成功すると思います。それがスピードであれば申し分ありません。サクラユタカオーの持ち味は中距離におけるズバ抜けたスピード。2400mでタレたことでこの一芸が際立った、というとらえ方もできるでしょう。

半兄サクラシンゲキ(重賞4勝)、甥にサクラスターオー(皐月賞、菊花賞)がいる良血で、3代母スターロッチは有馬記念とオークスを制した名牝です。日本における最良の在来牝系のひとつといえるでしょう。

これに Nasrullah 3×4というスピード豊かなクロスを施した配合は、シンプルで狙いがはっきりしています。母方にネヴァービートを持つテスコボーイ産駒といえば“黄金の馬”ハギノカムイオー。これも速い馬でした(Nasrullah 3×5・5)。このほか、Jury≒Precipitation 4×5という相似な血のクロスもあるので、配合の完成度は高いと思います。(続く)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1982101222/

        ┌ Hurry On
Jury ―――――┤ ┌ Bachelor's Double
        └○┤
          └○┐ ┌ Desmond
            └○┘

        ┌ Hurry On
Precipitation ―┤ ┌ Bachelor's Double
        └○┤
          └○┐ ┌ Desmond
            └○┘

2010年11月23日 (火)

先週の2歳戦(前)

ディープインパクト産駒が先週5勝を挙げ、初年度産駒の2歳戦勝利数記録である30勝(94年サンデーサイレンス)に並びました。今年はあと5週あるので相当な上積みが期待できそうです。おそらく45~50勝ぐらいは行くだろうと予想します。ちなみに、04年にサンデーサイレンスが2歳戦の最高記録である54勝を挙げたとき、同じ時期に34勝を挙げていました。これよりはやや遅いペースです。

サンデーサイレンスの初年度産駒は67頭。ディープインパクトの152頭に比べると半分以下です。ただ、30勝到達時点の出走回数を比べてみると、サンデーサイレンスの107走に対しディープインパクトは114走と、大きな差はありません。中身は濃いですね。

トップクラスの種牡馬が30勝に到達するまでにどれぐらいの出走回数を要したか比べてみます。

サンデーサイレンス 107走
ディープインパクト 114走 ←←←
アグネスタキオン  181走
クロフネ      186走
サクラバクシンオー 216走
ジャングルポケット 265走
ゼンノロブロイ   267走
シンボリクリスエス 280走
キングカメハメハ  284走
フジキセキ     288走
ネオユニヴァース  332走
スペシャルウィーク 355走
マンハッタンカフェ 357走

サンデーサイレンスとディープインパクトだけが別次元で、他の種牡馬とは一線を画しています。

土曜日の2歳戦で注目したいのは、京都6R新馬戦(芝1600m)を勝ち上がったリトルダーリン、東京5R新馬戦(芝1800m)を勝ち上がったコウヨウレジェンド。

リトルダーリンは「栗山ノート」で指名した馬です。春ごろは馬体重が380キロぐらいしかないという話もあったので、これはちょっと厳しいのかな……と思っていたのですが、初戦は404キロでした。あと20キロぐらいは増えてほしいですね。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想は以下のとおり。

「◎リトルダーリンは『ディープインパクト×ロドリゴデトリアーノ』という組み合わせ。母エリモエクセルはオークス(G1)など4つの重賞を制した名牝。母方にセックスアピール(ラトロワンヌの強い凝縮)やリヴァーマン(ローマンを内包)を持つ配合パターンは好ましい。馬体は小さいようだが素質は高いだろう。」

「栗山ノート」のディープインパクト産駒の項では、母方に Riverman を持つ馬を何頭か選びました。“Pocahontas≒River Lady”が生じ、それらに含まれる Roman がディープインパクトの構成要素のひとつの核なので、好結果が期待できるのではないかと考えたからです。今週、京都2歳Sに出走するレッドセインツなどもそうです。

予想文にも書きましたが、La Troienne の強い凝縮がある Sex Appeal のような血は、おそらくディープインパクトに合うでしょう。
http://www.pedigreequery.com/sex+appeal

ディープインパクトにアメリカ血統が合うことは産駒のデビュー前から主張してきました。そして、La Troienne を持っていないため、そのエッセンスを濃厚に含んだ血を新たに注入することは悪くないでしょう。ですから、Sex Appeal の息子たち(トライマイベスト、El Gran Senor)を含んだ馬も何頭か指名しました。まだサンプルが少ないので何ともいえない状況ですが、数年経てばだいたい傾向が明らかになると思います。

このパターンの1頭がレッドディアーナ(母ケイウーマン)。同馬はそれだけでなく、3代母が River Lady なので大きな期待を掛けていました。しかし、聞くところによると肺炎に罹ってしまったようで、残念ながらデビュー予定は白紙に。素晴らしい配合馬だけに残念です。(続く)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008105563/

2010年11月12日 (金)

レーヴドリアン死亡

菊花賞の健闘からまだ半月しか経っていないので驚きました。腸捻転を悪化させたとのことです。

私的な話をすれば、09-10年のPOGで1位指名した馬でした。調教は動かない、レースでは行き脚がつかず不器用と、じれったくなるような癖馬でしたが、目立つ芦毛だったせいか、なんとなく憎めないキャラでしたね。福永騎手に乗り替わってから脚質に幅が出てきて、「来年こそは」の思いがあっただけに残念でなりません。

配合については1月10日のエントリー「レーヴドリアン完勝――福寿草特別」で触れています。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/01/post-aae6-1.html

そのエントリーにも記しましたが、レーヴドスカーの子供たちは体質面に不安を抱えるケースが目に付きます。半姉レーヴダムールは爪の故障で戦線離脱したあと復帰調整中に死亡。半兄アプレザンレーヴは頑健な四肢を伝えるシンボリクリスエスの子ながら屈腱炎で引退。そして、レーヴドリアンが腸捻転で死亡。抜群に走るのは事実ですが、その一方で暗い影のつきまとう血統でもあります。

  レーヴドスカー(f.1997.Highest Honor)
    ナイアガラ(c.2003.ファンタスティックライト)
    レーヴダムール(f.2005.ファルブラヴ)
    アプレザンレーヴ(c.2006.シンボリクリスエス)
    レーヴドリアン(c.2007.スペシャルウィーク)
    レーヴディソール(f.2008.アグネスタキオン)

今年の2歳牝馬戦線のトップランナー、レーヴディソール(父アグネスタキオン)はレーヴドスカーの末娘。父アグネスタキオンは周知のとおり脚部の弱さを伝えるところのある種牡馬です。このまま何ごともなく大成してほしいですね。

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!