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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2010年9月

2010年9月30日 (木)

シンボリルドルフがジャパンC当日に東京競馬場へ

1歳違いのミスターシービーとシンボリルドルフが立て続けに三冠馬となったのは30年近く前のことです。当時、栗山少年はどちらも好きだったのですが、より深く心をとらえたのはシンボリルドルフでした。強すぎてつまらないとか、優等生すぎて面白みがないとか、そんな意見もありました。型破りの追い込みを武器としたミスターシービーのほうが世間的にははるかに高い人気を誇っていましたね。

絶対的に強い馬(=シンボリルドルフ)に憧れる気持ちが「なぜ強いのだろう」という探求心を生み、それを解き明かそうとしたことが血統に関心を持つきっかけだったと思います。そういう意味でシンボリルドルフは自分の人生を変えた馬といえます。初めて5代血統表を書いた馬はシンボリルドルフでした。もっとも、完成した血統表を見たところで何が何やらわかりませんでしたが……。

5歳秋(現在の4歳秋)のジャパンC(85年)は東京競馬場へ見に行きました。雨が降って寒かったのを覚えています。パドックへ行き、傘の林の隙間からシンボリルドルフの姿を眺めました。といっても、馬体全部が見えたわけではなく、白と緑のメンコをした顔の部分が周回してくるたびにチラッと見えただけです。それでも満足でした。

シンボリルドルフが東京競馬場にやってくるのはそれ以来のこと。じつに25年ぶりです。体調に不安があればシンボリ牧場もOKを出さないはずなので、おそらく元気いっぱいなのでしょう。楽しみですね~。

★85年ジャパンC
http://www.youtube.com/watch?v=FGfCfXelHWc

2010年9月29日 (水)

凱旋門賞に挑んだヨーロッパ以外の外国馬(後)

海外遠征において、本番前に前哨戦を走ることは、馬場や環境に慣れる効果があります。その一方で、滞在が長くなると体調維持が難しくなり、調子が落ちることもあります。馬の個性、滞在場所の環境、スタッフの手腕などが関わってくる問題なので、一概にどちらがいいとはいえません。

ただ、凱旋門賞が行われるロンシャン競馬場は、ひと雨降るとヨーロッパ独特の非常に重い馬場となり、しかもコース設定がトリッキーです。さらにメンバーはきわめてハイレベル。ぶっつけというのはなかなか結果が出にくいですね。秋のパリはよく雨が降ります。エルコンドルパサーが出走した99年、ロンシャンの馬場を実際に歩いてみたのですが、濡れた長い芝が足に絡みついてくるような感触で、この馬場をこなすのは容易ではないと感じました。

昨日掲載した表を見ると、アルゼンチンやブラジルなど、日本と同じように時計が速く、馬場のアップダウンが比較的少ない南米の国々は、まったく結果が出ていないことがわかります。どの馬も故国では年度代表馬クラスの名馬ですが、競馬になっていません。

5位以内に入線した馬を書き出してみます。

56年 Career Boy(米)    4着
77年 Balmerino (新)    2着
84年 Strawberry Road (豪) 5着
99年 エルコンドルパサー(日)2着
06年 ディープインパクト(日)失格(3位入線)

このうち、ぶっつけだったのは、Career Boy とディープインパクトの2頭。Balmerino、Strawberry Road、エルコンドルパサーの3頭は、本番前にヨーロッパで競馬を使っていました。

Career Boy(米)は、ヨーロッパの深い芝もバリヤー式のスタートも初経験でしたが、よく頑張りました。ただ、勝ち馬の Ribot からは8馬身以上離されています。
http://www.pedigreequery.com/career+boy

ディープインパクト(日)は、ヨーロッパ以外からぶっつけで挑んだ外国馬のなかで最も健闘した馬です。失格となったのは残念でした。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2002100816/

Balmerino(新)は、故国ニュージーランドからオーストラリア、アメリカを経て77年夏にイギリスのジョン・ダンロップ厩舎に入り、グッドウッドのステークスを5馬身差で勝って本番に臨みました。2着という成績はヨーロッパ以外の外国馬ではエルコンドルパサーと並ぶ最高着順です。
http://www.pedigreequery.com/balmerino

Strawberry Road(豪)は、8月末と9月始めにドイツで2戦し、本番に駒を進めました。5着と健闘したあと、ワシントンDC国際、ブリーダーズCターフと使って、ジャパンCに来日したのですからタフな馬です。
http://www.pedigreequery.com/strawberry+road

エルコンドルパサー(日)についてはあらためて書くまでもありません。春からヨーロッパへ渡るという長期的な計画によって見事結果を出しました。ただ、この長期遠征は、オーナーの個人的なコネクションによって、預け先の現地厩舎との間にあらかじめパイプが存在していました。何のツテもなくいきなり長期遠征しようとしても難しいでしょう。また、経済的な負担も多大なものになるので、並の覚悟では無理だと思います。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1995108742/

ヨーロッパ以外でデビューした外国馬は、凱旋門賞で凡走するのが当たり前。5着以内に入れば大善戦といえます。傑出したスーパースターがいない今年は多くの馬にチャンスがあります。日本馬2頭が新たな歴史を作ることを期待したいと思います。

2010年9月28日 (火)

凱旋門賞に挑んだヨーロッパ以外の外国馬(前)

日曜夜に行われる凱旋門賞(仏G1・芝2400m)は、フジテレビTWOでも生中継されます。グリーンチャンネルに加入されていない方はこちらでも視聴可能です。

パリの天気予報を見ると、やはりこの時期だけに天候はぐずついていますね。当日、乾いた馬場で行われる可能性は低いでしょう。1日ごとの降水確率は以下のとおり。

28日 29日 30日 1日 2日 3日
35% 30% 75% 45% 90% 60%

レース当日(10月3日)は晴れ間も見えるようですが、前日にしっかりと雨が降るので馬場状態は稍重~重ぐらいと予想します。1番人気が予想される Behkabad は重い馬場に不安がないのでますます有利です。

凱旋門賞に挑戦する外国馬、とくにヨーロッパ以外からはるばる参戦する馬たちは、競馬をさせてもらえずに敗れ去るケースがほとんどです。

■日本

69年 スピードシンボリ  着外(11着以下)
72年 メジロムサシ    18着
86年 シリウスシンボリ  14着
99年 エルコンドルパサー 2着
02年 マンハッタンカフェ 13着
04年 タップダンスシチー 17着
06年 ディープインパクト 失格(3位入線)
08年 メイショウサムソン 10着

■アメリカ

56年 Career Boy     4着
   Fisherman      9着
57年 Career Boy     18着
62年 Carry Back     10着
65年 Tom Rolfe      6着
71年 One for All     9着
75年 Intrepid Hero    10着

■アルゼンチン

72年 Snow Castle     19着
77年 Mia         24着
79年 Telescopico     18着
95年 El Sembrador    15着

■ブラジル

94年 Much Better     14着
09年 Hot Six       15着

■オーストラリア

84年 Strawberry Road   5着
97年 Nothin' Leica Dane 17着

■ニュージーランド

77年 Balmerino      2着
81年 Ring the Bell    11着

■チリ

86年 Maria Fumata    15着

上記のリストは手作業で調べたので、ひょっとしたら漏れなどがあるかもしれません。違っているというご指摘があれば幸いです。

ほとんど通用していないのは、能力的な問題はもちろんあると思いますが、それよりも馬場や環境に適応できないことが大きいのではないかと思います。(続く)

2010年9月27日 (月)

神戸新聞杯はローズキングダム

ダービー馬◎エイシンフラッシュ(1番人気)との一騎打ちとなり、○ローズキングダム(2番人気)が競り勝ちました。夏の上がり馬が勢力図を書き換えることはできませんでした。

前半1200mの通過は「1分15秒3」。過去3年の平均が「1分12秒5」ですからかなりのスローペースです。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想文は以下のとおり。

「神戸新聞杯は決め手勝負になることが多いので、超スローペースのダービーを突き抜けたこの馬(エイシンフラッシュ)が有利。追い切りの動きは圧巻で春からさらに成長している。」

スローの決め手勝負ならダービー組が上ですね。1、2着馬の上がり3ハロンは33秒3でした。昨年のイコピコの再現を期待して、同じマンハッタンカフェ産駒で配合構成も似ているサンディエゴシチー(6番人気)に▲を打ったのですが、1、2着馬とは地力が違いすぎました(9着)。

ここ3年間の菊花賞(G1・芝3000m)は、勝ち馬の上がり3ハロンの平均が35秒1ですから、スローの上がり勝負というわけではありません。加えて今年はヤマニンエルブがペースを緩めずに逃げます。セントライト記念で相応の実力を示した馬ですから、有力各馬は早めに追いかけざるを得ないでしょう。ロングスパート気味のスタミナが問われるレースになるはずです。ダービーや神戸新聞杯のようなレースにはなりません。

今回の1、2着馬がそうしたレースでも他馬を抑えられるほど地力が抜けているのか、あるいはスタミナ自慢の新興勢力が台頭してくるのか。菊花賞の焦点はこのあたりになりそうです。

2010年9月26日 (日)

栗原正光さん死去

9月23日(木)の日本テレビ盃当日、船橋競馬場で倒れられた栗原正光さんが、昨夜お亡くなりになりました。ただただ悲しく、残念というほかありません。通夜は28日(火)18時から、告別式は29日(水)11時から印西斎場で。

ディオーサとワイズミューラーは3着

ディオーサは休み明けでこのメンバー相手にまずまずの走りでしょう。松岡正海騎手は「切れ味のある馬ですから、道中掛からないように気をつけました。オープン級の素質があると思っていますし、休み明けとしてはいい内容だったと思います」(ラジオNIKKEI競馬実況web)とコメントしています。道中インに押し込められて勝負どころで位置取りを下げてしまったのが痛かったですね。

ワイズミューラーは現状ではここまで。内田博幸騎手は「もう少し馬場が乾いた方がいいのでしょうか。後ろで構えたくないのに、前へ出ていってくれませんでした」(ラジオNIKKEI競馬実況web)とコメントしています。菊花賞挑戦の夢は消え去りました。いずれ頭角を現してくる馬だと思うので成長を待ちたいと思います。

一方、新馬戦の予想は好調。予想した2レースはいずれも的中しました。

阪神4Rの新馬戦(芝1200m)は◎キョウワジャンヌ(2番人気)が勝ち、◎★で馬単20450円、◎★△で3連単27万3750円的中。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想文を転載します。

「◎キョウワジャンヌは『ハーツクライ×シーキングザゴールド』という組み合わせで、半兄にキョウワロアリング(北九州記念)、ヘイローフジ(京阪杯-3着)がいる。母アサカフジは父ハーツクライと相性のいいアメリカ血統(バックパサー、ラウンドテーブルなど)を抱えている。スピード色が強いので1200mにも対応できる。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008104415/

ハーツクライ産駒は勝ち星を「10」の大台に乗せ、ついにディープインパクトと肩を並べました。ハーツクライ産駒は追ってからしっかりとした脚を使うのが印象的ですね。この時期の2歳馬は未完成ですから、フラフラしたりレースに集中できなかったりといったことはしょっちゅうです。ハーツクライの子はゴールを目指して最後まで力強く伸びます。体力と集中力に優れているという印象です。2歳の早い時期にどんどんデビューを果たし、競走馬としてそれなりに完成しているのは、体質が丈夫である証拠。もし仮に父と同じように古馬になってさらに成長するとしたら、これは末恐ろしい種牡馬ですね。

中山5Rの新馬戦(芝1200m)は◎イトククリ(1番人気)が2着を確保し、△◎で馬連1930円、△◎★で3連複16450円的中。予想文にも書いたのですが、「サクラバクシンオー×サンデーサイレンス」は今シーズンの新馬戦で7戦6連対。直近10走で集計すると9連対というずば抜けた成績です。この配合を見つけたら新馬戦では逆らえません。

2010年9月25日 (土)

土曜日の注目馬、ディオーサとワイズミューラー

土曜日は個人的に注目している3歳馬が2頭出走します。

★中山9R・汐留特別(500万下・芝1600m)
  ディオーサ(牝3)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007105462/

★中山10R・九十九里特別(1000万下・芝2500m)
  ワイズミューラー(牡3)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007102779/

ディオーサは母方に Nijinsky と Mr.Prospector を併せ持つマンハッタンカフェ産駒。このパターンは、イコピコ、レッドアゲート、サンディエゴシチー、メイショウレガーロ、マンハッタンスカイ、エーシンモアオバーなど活躍馬が多数出ています。母ジェニアリータは桜花賞プリモディーネと配合構成がきわめてよく似ており、この点もおもしろいと思います。

          ┌ Mr.Prospector
        ┌○┘
ジェニアリータ ┤ ┌ マルゼンスキー
        └○┤ ┌ イエローゴッド
          └○┤ ┌ モンタヴァル
            └○┤
              └ ソーダストリーム

          ┌ Mr.Prospector
        ┌○┘
プリモディーネ ┤ ┌ マルゼンスキー
        └○┤ ┌ イエローゴッド
          └○┤ ┌ モンタヴァル
            └○┤
              └ ソーダストリーム

今回は昨年12月のひいらぎ賞以来9ヵ月ぶりのレース。久々、道悪、牡馬相手と不安材料がいっぱいですが、勝ち負けに持ち込んでもおかしくないと思います。

一方、ワイズミューラーは8月21日のエントリー(「菊花賞路線に乗れるか、ワイズミューラー」)ですでに取り上げています。配合解説はそちらをご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/08/post-17b9.html

アプリコットフィズと配合構成が酷似している馬で、とりあえずその血統表だけ転載します。

             ┌ ジャングルポケット
ワイズミューラー ――――┤   ┌ サンデーサイレンス
(=ジャングルスマイル) │ ┌○┘
             └○┤
               └ サトルチェンジ

             ┌ ジャングルポケット
アプリコットフィズ ―――┤ ┌ サンデーサイレンス
             └○┤
               └ サトルチェンジ

ここを勝たないと菊花賞挑戦の夢が絶たれるので、陣営は必勝態勢で臨んでくるでしょう。

ディオーサ、ワイズミューラーとも道悪は未知数。あっさり勝つかもしれませんし、コロッと負けるかもしれません。いずれにしても、このレースだけでなく先々まで注目してみたい馬たちです。

2010年9月24日 (金)

日本テレビ盃(G2・船橋ダ1800m)はフリオーソ

2番手を追走したフリオーソ(1番人気)が最後の直線で楽々と先頭に立ち、帝王賞(G1)に続いて重賞連勝を果たしました。逃げたトランセンド(2番人気)が2着、スマートファルコン(3番人気)が3着。まったくの横綱相撲でしたね。
http://www.youtube.com/watch?v=CIroic2h6_c

春以降の充実ぶりは著しく、得意の番手差しは安定感抜群。11月3日のJBCクラシック(G1・船橋ダ1800m)はシルクメビウスと人気を二分する形になりそうです。今年は地元船橋開催なので凡走はないでしょう。ただ、シルクメビウスも道中の目標が決まっているので乗りやすいと思います。

母ファーザは Kingmambo と同じ「Mr.Prospector×Nureyev」という組み合わせ。《ブライアンズタイム+Kingmambo=フリオーソ》というイメージはしっくりきます。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004106867/

日本テレビ盃が終わったあとは、毎年、元日刊競馬の栗原正光さんが主宰する“天然鰻の会”という食事会に出席するのが習わし。今年もその予定で船橋競馬場へ行ったところ、宇田川淳さんから「栗原さんがさっき倒れた」と聞いてビックリ。会は急遽中止となりました。栗原さんは12年前に大井競馬の取材中に倒れられて体の一部に麻痺が残り、日刊競馬を退職されました。その後も何度か倒れられたのですが、そのたびに再起されました。幸い、命にかかわるほどの症状ではないらしいとのこと。一日も早くお元気になってください。

★栗原さんのブログ
http://plaza.rakuten.co.jp/meruborun/

2010年9月23日 (木)

『奇跡の名馬』

春と秋には競馬の本がいろいろ出版されます。最近目に付いたものでおもしろいと思ったのは『奇跡の名馬』(兼目和明・大岡賢一郎共著/パレード)。うみねこ博物館(http://umineko-world.jugem.jp/)というブログから抜粋して再構成したものです。

588頁の大冊で、中身は古今東西100頭以上の名馬が紹介されています。そのセレクトがミソ。日本馬では第二メルボルンやミラクルユートピアが収録されていますし、外国馬は北米、中米、南米、ヨーロッパ、アジア、アフリカなど、ほぼ全世界を網羅しています。たとえば英領ヴァージン諸島の Act Spectation、スペインの Rheffissimo、トルコの Minimo、フィリピンの Fair and Square、インドの Elusive Pimpernel、ケニアの Tinsel Town、ジャマイカの Simply Magic、トリニダードの Mentone、バルバドスの Zouk などは見たことも聞いたこともない馬たちでした。

南米馬は大岡賢一郎氏が担当し、それ以外はすべて兼目和明氏が執筆しています。兼目氏独特のポエティックな文体は少々癖があるのですが、そのマニアックな目配りは瞠目すべきものがあります。

私は血統畑の人間なので、pedigreequery.com でそれら辺境の名馬をリサーチし、配合を玩味するのが楽しいですね。たとえば「西アジア史上最強皇妃」と紹介されたトルコの Minimo を調べると、Forli とほとんど同じ配合構成であることに気付きます。トルコとアルゼンチンで同じような配合馬が走ったのだなぁ……と、しばし感慨に耽ってしまいます。
http://www.pedigreequery.com/minimo
http://www.pedigreequery.com/forli

       ┌ Hyperion
     ┌○┤ ┌ Fair Trial
Minimo ―┤ └○┘
     └○┐
       └ Commotion

       ┌ Hyperion
     ┌○┤
Forli ――┤ └ Commotion
     │   ┌ Fair Trial
     │ ┌○┘
     └○┘

血統表にある Commotion の母 Riot と Fair Trial は相似な血です。
http://www.pedigreequery.com/riot
http://www.pedigreequery.com/fair+trial

        ┌ Phalaris
      ┌○┤ ┌ Chaucer
Riot ―――┤ └○┘
      └ Lady Juror

        ┌ Phalaris
      ┌○┤ ┌ Chaucer
Fair Trial ┤ └○┘
      └ Lady Juror

ちなみに、ナスノカオリ(桜花賞)、ナスノチグサ(オークス)の母ナスノホシも、Riot と Fair Trial の組み合わせを持っています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1955100166/

2010年9月22日 (水)

競馬国際交流協会と日本軽種馬登録協会が合併

本年12月1日をもって両法人は合併し、「ジャパン・スタッドブック・インターナショナル」という組織に生まれ変わります。両法人は競馬を支援するさまざまな事業を行っています。サイトも充実しており、専門家だけでなく競馬ファンにも楽しめる内容となっています。私もしょっちゅう利用させていただいています。

★競馬国際交流協会
http://www.jair.jrao.ne.jp/japan/
★日本軽種馬登録協会
http://www.studbook.jp/ja/

今回の合併は、両者それぞれの事業を一体的・効率的にできる体制を整えることが目的です。特例民法法人は、2013年11月30日までに、新公益法人または一般社団法人・一般財団法人へ移行しなければならないのですが、それを見据えて合併するという事情もあるようです。

競馬国際交流協会も日本軽種馬登録協会も、公益団体であるため収益事業はできません。活動費は補助金などで賄われます。ふたつの団体が合併することにより、そのあたりの節約も図られます。

取材のためお話をうかがった幹部の方は「競馬をとりまく状況は非常に厳しい」とおっしゃっていました。ただ、事業を一体化して無駄を省き、効率的なシステムが作られることは悪いことではないと思います。

なお、事業体としては競馬国際交流協会が日本軽種馬登録協会を吸収合併するという形をとり、事業所は日本軽種馬登録協会のあるJRA新橋分館に置かれるようです。

2010年9月21日 (火)

ハーツクライ固め打ち

種牡馬に関する先週の話題といえばハーツクライの固め打ちでしょう。野路菊S(OP)のワン・ツー・フィニッシュを含めて〔3・3・0・3〕という成績でした。全盛期のイチローを思わせる猛打ぶりです。

サンデー系種牡馬が初年度にどのような成績を残したか、秋の中央開催2週目終了時点で比べてみます。サンプルが4頭だけなのは、これらがほかのサンデー系種牡馬と比べて別格といえる成績だからです。

                   勝率 連対率 複勝率(%)
サンデーサイレンス〔13・6・6・6〕 41.9  61.3  80.6
アグネスタキオン 〔13・8・6・24〕 25.5  41.2  52.9
ディープインパクト〔10・5・7・16〕 26.3  39.5  57.9
ハーツクライ   〔9・7・3・11〕 30.0  53.3  63.3

勝率、連対率、複勝率、いずれにおいてもサンデーサイレンスが圧勝しています。これは当然でしょう。サンデーサイレンスがデビューした当時、ライバルとなるサンデー系種牡馬はいなかったのですから。

ハーツクライは各部門でサンデーサイレンスに次ぐ第2位。サンデーを父に持つ種牡馬ではナンバーワン、ということになります。ただ、2歳のこの時期は週によって成績に波があるので、調子のいい週もあれば悪い週もあります。ハーツクライとディープインパクトについては、これから毎週上がったり下がったりするでしょう。この2頭はいずれリーディングサイアーを争う種牡馬になると思います。

ハーツクライはどう考えても早熟タイプではないので、この成績が一過性のものであるとは考えづらいところです。クラシック向きのスタミナ、底力も持ち合わせているでしょう。

どの距離でもまんべんなく走るところがセールスポイントなのですが、とくに芝1800mでは〔5・2・1・4〕で連対率58.3%。この距離では逆らえません。ウインバリアシオンが楽勝した野路菊S(芝1800m)を見ると、2400mではさらに強いのではないかというイメージが湧いてきます。

いまのところ“母に Northern Dancer の強いクロスを持つ馬”が目立ちます。ウインバリアシオンは2×4。マリアビスティーは2×4。メイショウナルトは3×4。そして、全体的にちょっと硬いかなと思うような血統のほうがいいですね。こうした特長はマンハッタンカフェとよく似ています。ウインバリアシオンの母は「Storm Bird×Time for a Change」ですから、ちょっと日本向きとはいえないような血統です。それをジャパナイズして走らせてしまう力業は非凡ですね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103206/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103221/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008101384/

2010年9月20日 (月)

Spectacular Bid のウォークオーヴァーからちょうど30年

アメリカ競馬史における名勝負は数多いのですが、なかには“勝負”にならなかったレースもあります。

1980年9月20日、米ニューヨーク州ベルモントパーク。メインレースとして組まれたウッドワードS(G1・ダ9f)の出走馬はたった1頭、Spectacular Bid のみでした。強すぎるチャンピオンに恐れをなして他馬が出走してこなかったのです。
http://www.youtube.com/watch?v=NcbHpy61bTk

ウォークオーヴァーとは単走競馬のこと。これ以降、G1レースの単走はなく、おそらく今後もないでしょう。Spectacular Bid の通算成績は30戦26勝、G1を14勝しています。明らかに普通の馬ではありません。
http://ahonoora.web.fc2.com/spectacular_bid.html

ダート10ハロンのチャールズHストラブS(G1)では、1分57秒8という世界レコードを樹立しました。このタイムはいまだに更新されることなく残っています。
http://www.youtube.com/watch?v=wDbOyu5tTF4

70年代のアメリカ競馬は名馬の宝庫です。後半は2年連続で三冠馬が誕生し、その翌年に Spectacular Bid が二冠を達成しました。

77年 Seattle Slew(三冠)
78年 Affirmed(三冠)
79年 Spectacular Bid(二冠)

Spectacular Bid は79年のベルモントS(G1)で3着に敗れ、三冠を逸しました。しかし、だからといって Seattle Slew や Affirmed よりも評価が劣っているわけではありません。ブラッドホースパブリケーションズ社が刊行した『Thoroughbred Champions:Top 100 U.S. Racehorses of the 20th Century』という本では、20世紀のアメリカ馬のなかで10位にランクされ、9位の Seattle Slew、12位の Affirmed とほぼ同格という扱いです。

Spectacular Bid は Bold Ruler 系に属し、To Market 3×3という強いクロスを持ちます。
http://www.pedigreequery.com/spectacular+bid

父 Bold Bidder はすでに Cannonade というケンタッキーダービー馬を出していました。Bold Bidder の子で日本に入ったワイルドウインター、オランテ、レックスレンジャーといった種牡馬はすべて失敗。むしろ Bold Bidder の全妹ディープディーンの牝系からギャロップダイナ(天皇賞・秋、安田記念)が出たことのほうが重要です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1980101941/

伝説のウォークオーヴァーを最後に現役を退いた Spectacular Bid は、巨額のシンジケートが組まれて種牡馬入りしました。しかし、残念ながら大失敗に終わります。

サンデーサイレンスの種牡馬シンジケートを当初アメリカで組もうとしたとき、生産者のあいだでまったく不人気だったのは、先に種牡馬入りしていた Sunny's Halo と Devil's Bag(いずれも Halo 産駒)が不振だったから、という話があります。私はもうひとつ、Spectacular Bid の母の父 Promised Land がサンデーサイレンスの母の父の父であることも理由だったのではないかと睨んでいます。サンデーサイレンスの血統表のなかにある Promised Land を見て、Spectacular Bid の大失敗を連想した生産者も少なくなかったのではないか――と。

もし仮に Spectacular Bid が成功していたら、サンデーサイレンスは日本に入っていなかったかもしれません。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a00033a/

2010年9月19日 (日)

日曜日の東西重賞

■セントライト記念(G2・芝2200m)は後方追走の△クォークスター(4番人気)が差し切り勝ち。△ヤマニンエルブ(3番人気)の大逃げでレースが前後ふたつに分かれてしまい、ヤマニンは粘り勝負、後続馬群は切れ味勝負でした。

中山芝2200mのコース適性について、昨日のエントリーで「アグネスタキオンはイマイチ」と書いたのですが、クォークスターはそのアグネスタキオン産駒。見事にやられました。

大逃げを打ったヤマニンエルブはハイペースでしたが、2番手以下はスロー。クォークスターの上がり3ハロンは34秒0でした。このコースでこの上がりはちょっと記憶にないので、「TARGET frontier JV」で調べてみたところ歴代1位タイの数字でした。切れ味の有無が勝敗を分ける流れだったので、アグネスタキオン産駒が台頭したのだと思います。

2着に粘ったヤマニンエルブは、母方に Sadler's Wells が入るサッカーボーイ産駒ですから、逆に切れ味勝負になると苦しくなります。持ち前のスタミナを活かし、速めのペースで行って後続になし崩しに脚を使わせることでしか活路は開けません。満点の騎乗だったと思います。こういう馬がいると長距離戦が楽しくなりますね。菊花賞では勝っても負けても速いペースで引っ張ってくれそうなので、今年は本格的なスタミナが問われる中身の濃いレースになりそうです。

◎ゲシュタルト(1番人気)は4コーナーで早くも一杯。「休み明けで、馬もまだ本調子にはなっていなかった」 (ラジオNIKKEI競馬実況web)と池添騎手がコメントしました。

■ローズS(G2・芝1800m)はアニメイトバイオ(4番人気)が馬群を割って抜け出しました。「母の父フレンチデピュティ」は優秀で、とくにサンデー系とは合うような気がします。

◎エーシンリターンズ(5番人気)が3着に粘り、3連単を軸1頭流しのマルチでいろいろ勝っていたので、19万馬券が当たったものと思ってニコニコしていたのですが、よく調べてみたらアニメイトバイオが抜けていました(笑)。

○アパパネ(1番人気)の24キロ増はさすがに太かったですね。前半気負って走っていました。典型的なトライアルの走りといっていいでしょう。ただ、早熟馬ソルティビッドの子ですから、体は増えていても能力的な上積みはそれほどないのでは……という可能性も多少は考えておいたほうがいいかもしれません。

2010年9月18日 (土)

中山芝2200mで買える血、買えない血

長年馬券を買っている方ならお分かりだと思いますが、中山芝2200mはスタミナが必要です。中山コースではマイラーが芝2000mをカバーできても、芝2200mとなると苦しいですね。ちょうど東京芝2400mと芝2500mのようなもので、距離はたいして違わないけれど必要とされるスタミナには明確な違いがあります。

私が最初に中山芝2200m向きの血統として意識したのは Herbager でした。これはフランスのステイヤー血統で、かの地でリーディングサイアーとなり、のちにアメリカへ渡ってからも成功しました。

日本には70年代にシーホーク、コインドシルバーといった種牡馬が輸入されました。とくにシーホークは優秀で、日本ダービーを勝ったウイナーズサークルとアイネスフウジンのほか、天皇賞・春を勝ったモンテプリンスとモンテファストの兄弟など、多くの活躍馬を送り出しました。

これらの子は中山芝2200mの重賞でよく活躍しました。

80年 セントライト記念① モンテプリンス(父シーホーク)
83年 オールカマー②   ビンゴカンタ(父コインドシルバー)
86年 アメリカJCC①  スダホーク(父シーホーク)
    オールカマー①   ジュサブロー(父シーホーク)
       〃   ③   テツノカチドキ(父コインドシルバー)
    セントライト記念② アサヒエンペラー(父コインドシルバー)
88年 アメリカJCC②  キタノイチジョー(父シーホーク)

Herbager 系はスタミナ抜群です。その一方で瞬発力はイマイチ。もしモンテプリンスに切れ味があればダービーをはじめいくつもの大レースをモノにしていたでしょう。アサヒエンペラーなどもジリ脚でしたね。

中山芝2200mを得意とするのはこういう血です。切れ味よりも粘り合いのタフなレースに強いタイプです。

今年のセントライト記念に出走馬を送り込んだ父馬の、中山芝2200mの連対率を並べてみます。

Galileo       66.7%
キングカメハメハ  26.3%
マンハッタンカフェ 24.2%
シンボリクリスエス 25.0%
グラスワンダー   19.2%
サッカーボーイ   17.6%
ダンスインザダーク 14.6%
フレンチデピュティ 14.3%
アグネスタキオン  14.0%
ゼンノロブロイ   出走歴なし

トップの Galileo は出走歴が3回(2連対)しかないのでサンプル不足。ただ、得意としていることは確かでしょう。その下のキングカメハメハ、マンハッタンカフェ、シンボリクリスエスは胸を張れる成績です。グラスワンダーとサッカーボーイはまずまず。ダンスインザダーク、フレンチデピュティ、アグネスタキオンはイマイチです。とくにアグネスタキオンは全体の連対率が高い種牡馬なので落ち込みが目立ちます。

中山のスタミナ戦では、Sadler's Wells、Roberto、Ribot 系といった血が頼りになるので、それらを持った馬を重く見たいところです。前述の Galileo も Sadler's Wells 系です。

2010年9月17日 (金)

ディープインパクトとハーツクライの中間決算(後)

ディープインパクトもハーツクライも、夏のローカル向きとは思えないので、秋シーズンが深まるにつれてますます味が出てくるでしょう。昨年のゼンノロブロイ、一昨年のネオユニヴァースもそうでした。

『競馬王』9月号の「POG羅針盤」にディープインパクトについて次のように記しました。

「ディープインパクト産駒は総じてスタートダッシュがイマイチで、終いの脚で勝負するものが目に付く。気性的にカリカリするところもない。したがって、ローカルの短距離戦に向いたタイプではないのは明らかだ。マイル以上のゆったりした距離が合うだろうし、末脚の威力を活かすには直線の長いコースのほうがいい。舞台が中央場所に移ってから本領を発揮するタイプだろう。秋が来れば新馬戦や未勝利戦はもちろん、特別戦や重賞でもディープインパクト旋風が吹き荒れるものと思われる。」

ファーストクロップの2歳戦勝利数記録は、94年にサンデーサイレンスが樹立した30勝。あと4ヵ月の頑張りでこの記録にどこまで迫れるか注目です。

ディープインパクト産駒の配合で意外だったのは、Lyphard クロスを持つ馬が頑張っていること。事前の見立てではネガティヴに考えていたのですが、現時点で勝ち上がった9頭中3頭がこのクロスを持っています。先週土曜日の中山新馬戦(芝1600m)を勝ち上がったディープサウンドはモノが違うというレースぶりでした。
http://www.youtube.com/watch?v=DV_Oj2ueZxM

また、来週日曜日に阪神でデビュー予定のスマートロビンも Lyphard クロス馬。稽古で素晴らしい動きを見せています。このクロスを持つ馬がトップクラスで通用するかどうかの判断は現時点では保留するとして、少なくとも新馬・未勝利戦レベルでは問題なく走りますね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008100685/

今週日曜日の阪神5R新馬戦(芝1800m)はハイレベルなメンバーが揃いました。主な出走馬は以下のとおり。

ヴァレノーヴァ(父アグネスタキオン)
ヴィジャイ(父ディープインパクト)
サトノパンサー(父キングカメハメハ)
ビップセレブアイ(父ゼンノロブロイ)
リフトザウイングス(父ハーツクライ)
レッドデイヴィス(父アグネスタキオン)

間違いなく4回阪神開催の目玉といえる新馬戦です。ディープ産駒のヴィジャイとハーツ産駒のリフトザウイングスは人気を背負うでしょう。しかし、他の馬のレベルも高いので、どれが勝っても不思議はありません。おもしろいレースになりそうです。

2010年9月16日 (木)

ディープインパクトとハーツクライの中間決算(前)

ディープインパクトは期待が大きすぎるので、並の成功では許してもらえそうにありません。ただ、いまのところ産駒の走りは上出来でしょう。JRA2歳種牡馬ランキングではフジキセキに次ぐ第2位。勝利数でも第2位です。新種牡馬ランキングではいずれもトップ。

総じてサンデー系の種牡馬は、初年度産駒がデビューしたその年に、夏のローカルからガンガン走るということはありません。例外はアグネスタキオンぐらいです。

主なサンデー系種牡馬の初年度産駒が、秋の中央開催の第1週終了時点でどれだけ勝ち星を挙げていたか、その数を書き出してみます。

11勝 アグネスタキオン(05年)
 9勝 ディープインパクト(10年)
 6勝 アドマイヤベガ(04年)
  〃  ハーツクライ(10年)
 4勝 フジキセキ(98年)
  〃  ネオユニヴァース(08年)
 3勝 スペシャルウィーク(03年)
  〃  マンハッタンカフェ(06年)
  〃  ゼンノロブロイ(09年)
 2勝 ダンスインザダーク(00年)
 1勝 ステイゴールド(05年)

ちなみに、サンデーサイレンス自身は12勝(94年)です。ディープインパクトはアグネスタキオンに次ぐ9勝ですから優れた成績といえるでしょう。ハーツクライの6勝もいいですね。この2頭はやがてリーディングサイアー争いに加わってくるはずです。

ハーツクライは現在、〔6.4.3.8〕という成績で、連対率47.6%、複勝率61.9%。これはディープインパクトの数字(連対率40.0%、複勝率57.1%)を上回っています。内容が濃いですね。産駒の粒も揃っているように思います。

今週土曜日に阪神競馬場で行われる野路菊S(OP・芝1800m)には、メイショウナルト、ウインバリアシオンという2頭のハーツクライ産駒が出走します。おそらく1、2番人気でしょう。3番人気と思われるのがディープインパクト産駒のモスカートローザ。熱い戦いとなりそうです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008101384/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103206/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103387/

2010年9月15日 (水)

『吉田善哉 倖せなる巨人』

昨日のエントリーで吉田善哉について記しました。『血と知と地』を取り上げたのですが、もう一冊、忘れてならないのが『吉田善哉 倖せなる巨人』(木村幸治著・徳間書店)です。善哉だけでなく3人の息子たち(照哉、勝己、晴哉)の姿も丹念に描かれており、また血統に関する話題も豊富です。いいお仕事をされているなぁと感心させられる傑作です。

病魔に冒され、自らの死期を悟った吉田善哉は、部下に命令を出します。その部分を引用します。

~~~~~~~~~~~

少しずつ善哉はロッジでの生活に慣れていき、七月も終わりが近づいた。
「おばさん、獣医の角田に来いと伝えろや」
角田が来た。
「おい、シンボリの和田(共弘)と連絡を取れ」
「で、どうするんですか?」
「おまえ、ぼんくらか?」
「はい?」
「シンボリの和田と、この俺が一緒だとほかにすることがあるのか?」
「すると?」
「一緒に、和田と馬が見てえんだよ、和田さんとじっくり馬が見たいんだ。来いと、お前から伝えろ」
角田は心の震えを覚えた。
吉田善哉が、長い馬産家人生のなかで、同じ世界で馬づくりをし、いちばん何かを感じてきた日本人が、和田共弘であったということを、いま知らされた気がしたからだ。(304頁)

~~~~~~~~~~~

和田共弘は吉田善哉の1歳年下で、スピードシンボリ、メジロアサマ、サクラショウリ、シンボリルドルフ、シリウスシンボリの生産者です。

両者とも妥協知らずの強烈な個性の持ち主ですから、その関係は必ずしも良好とはいえなかったと聞きます。対抗心もあったでしょう。しかしながら、死期が迫ったとき、吉田善哉が一番会いたいと願った人物は、ほかならぬ和田共弘だったのです。このエピソードは心を打ちますね。

残念ながら吉田善哉の希望は叶いませんでした。和田と会うことなく半月後の93年8月13日に死去。72年の生涯でした。

Amazon で検索してクリックすれば、こんな良書が安価で手に入るのですからいい時代になったものです。中古品が193円より出品されています。

2010年9月14日 (火)

消えた種牡馬ボアドグラース

1955年に吉田善哉は社台牧場から独立し、社台ファームを設立しました。場所は千葉県、繁殖牝馬はわずか8頭でした。ここから日本一の大牧場に育て上げていくサクセスストーリーは『血と知と地』(吉川良著・ミデアム出版社)に詳しく描かれています。社台グループについて興味のある方には一読をお勧めしたい傑作評伝です。

草創期の社台ファームを支えた種牡馬は61年にアイルランドから輸入したガーサントでした。現役時代に仏2000ギニー、ガネー賞、コロネーションSなどを勝った一流馬です。60~70年代にかけて、ニットエイト(菊花賞、天皇賞)、ヒロヨシ(オークス)、コウユウ(桜花賞)、シャダイターキン(オークス)といった名馬を送り出し、69年にはリーディングサイアーに輝いています。
http://www.pedigreequery.com/guersant

父系はヨドヒーロー(シャダイターキンの4分の3同血)によって受け継がれましたが、90年代に絶滅しました。しかし、ガーサントを含む繁殖牝馬は膨大な数にのぼります。その代表格はエアグルーヴ。現役時代に年度代表馬となり、母としてアドマイヤグルーヴ、フォゲッタブル、ルーラーシップなどを送り出しています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1993109154/

吉田善哉は血統のエキスパートでした。成人してから仕入れた付け焼き刃のものではなく、子供のころから大人を驚かすぐらいの知識があったといいます。シンボリ牧場などに比べると、アメリカ型のコマーシャルブリーダーとしての側面が強かったせいか、血統家としての吉田善哉の姿は見えづらいところがありますが、ごく稀に“こだわりが見える血統”を発見することができます。

その代表例がボアドグラースです。82年のグレフュール賞(仏G2・芝2100m)を勝ち、仏ダービー(G1・芝2400m)は3着。ちなみに、このときの2着馬リアルシャダイも社台によって購買されています。父 Luthier と2代母の父 Ocarina は同牝系。したがって Montagnana 3×4という牝馬クロスを持っています。この Ocarina という種牡馬はガーサントの全兄にあたります。
http://www.pedigreequery.com/bois+de+grace

ボアドグラースを種牡馬として導入したのは、ガーサントと Ocarina の全きょうだいクロスを作るためでしょう。

私はふとした瞬間、ボアドグラースがそれなりの成績を挙げていたらどうなっていただろうか、と考えることがあります。ガーサント=Ocarina という全きょうだいクロスが優れた効果を挙げ、社台血統に新風を吹き込んだかもしれません。

ボアドグラースは子を残せませんでした。84年から150万円の種付料で供用されたものの、ほどなく受精能力がゼロであることが判明。その後、去勢されて乗馬となりました。

社台グループはこれまで数多くの種牡馬を導入しましたが、初期に成功したのはガーサントのみ。この馬がいなければ現在の社台グループはなかったでしょう。ひょっとしたら倒産していたかもしれません。ガーサントが礎を築き、ノーザンテーストが飛躍させ、サンデーサイレンスが天下統一を果たしました。

ガーサントの血に対する吉田善哉のこだわり――。これがボアドグラース購買の動機だったと思います。産駒がいないため日本血統への痕跡は一切なく、もはや人々の記憶にも残っていません。

2010年9月13日 (月)

ニエル賞、フォワ賞

ヴィクトワールピサ4着、ナカヤマフェスタ2着は、前哨戦としてはまずまずだったと思います。

まず3歳馬のニエル賞。勝った Behkabad、2着 Planteur は、本番の凱旋門賞でも勝ち負けになるであろう強豪です。下馬評どおりワンツーフィニッシュを決めたわけですが、ヴィクトワールピサも残り300mぐらいで外から並びかけるシーンがありました。能力的にお話にならない馬であれば、ああいった見せ場を作ることはできません。それ以前のフォルスストレートあたりから手が動いて追走に手一杯になるはずです。

Behkabad と Planteur は、少なくともロンシャンの芝2400mではかなり強い馬です。私は同じ舞台設定でこの2頭を負かせる馬はほとんどいないと思います。ひょっとしたら他にいないかもしれません。レースが終わり、現在の凱旋門賞のアンティポストを見ると、イギリスの主要ブックメーカー14社中、Behkabad を1番人気に推す社は8つ、Behkabad と Fame and Glory を同オッズとする社は4つ、Fame and Glory を1番人気に推す社は2つです。Behkabad が1番人気に躍り出たわけです。その強豪を相手に直線半ばまで見せ場を作ったわけですから、悲観するような内容ではなかったと思います。

最後に失速した理由として、武豊騎手は「レース間隔が開いた」ことを挙げています。それならば本番へ向けて期待が持てると思います。遠い日本から遠征して初物尽くしだったわけですから、今回の敗戦を糧として前進できるはずです。

ただ、絶好の手応えできて失速するというのは、距離に問題があるケースも多いので、仮にそうした点が絡んでいるのだとすれば厄介です。日本で走る分には2400mに問題はないと思います。しかし、ヨーロッパの重い馬場ではどうなのか……ということですね。このあたりは杞憂であってほしいものです。

次は古馬によるフォワ賞。戦前から書いているように出走メンバーの質はニエル賞には及びません。今回勝った Duncan はうまく乗ったという感じで、凱旋門賞で人気になることはないでしょう。事実、レースを終えた後のアンティポストでも21~26倍と伏兵の1頭に過ぎません。

ナカヤマフェスタの2着は本番前の試走としては十分な内容だったと思います。しかし、レースレベルに疑問符がつくことも確かなので、これで凱旋門賞の有力候補になったということはありません。Duncan と同じくあくまでもアップセット狙いの伏兵陣、という位置づけでしょう。

「かなり太い」という二ノ宮調教師のコメントからすると大きな上積みがありそうですね。11年前のエルコンドルパサー(二ノ宮厩舎所属)は、遠征初戦のイスパーン賞(G1)で2着と敗れたあと、2戦目のサンクルー大賞典(G1)で見違えるような強さを発揮し、2馬身半差で完勝しました。陣営は、今回のレースはまったくの試走と割り切っていたでしょうから、レースレベルとは関係なしに、本番は期待できると思います。幸いなことに勝ち時計が遅かったので消耗も少ないはずです。母ディアウィンクは Ribot 系の His Majesty 2×4というクロスを持ち、ヨーロッパで大成功しているデインヒルの血が入ります。パワーを必要とするヨーロッパの馬場によくフィットしていますね。

凱旋門賞のアンティポストは、ヴィクトワールピサが26倍、ナカヤマフェスタが26~34倍です。イギリスのブックメーカーは両馬をほぼ同格と扱っています。もちろん、2頭とも伏兵評価なので、厳密に力量比較しているわけではなく、だいたいこのぐらい、というおおざっぱなものでしょう。競馬新聞の印で表現するとしたら、2頭とも△が1~2個つくぐらいといった感じですね。

今回の衛星生中継に関して、レース以外で良かったなと思う点は、アガ・カーン四世殿下(Behkabad のオーナーブリーダー)のお姿をたっぷり拝見できたことと、イギリス競馬界の名物男ジョン・マクリリック氏がほんの数秒間画面に映ったことです。マクリリック氏はジョン・レノンと同い年で今年70歳を迎えましたが、相変わらずド派手ないでたちでしたね~。10年ぐらい前まではジャパンCの取材に毎年いらっしゃっていたはずです。最近はお姿をお見かけしません。

この動画はけっこう笑えます。
http://www.youtube.com/watch?v=UXAK-2TQ_bA

2010年9月12日 (日)

京成杯オータムH、セントウルS

■京成杯オータムH(G3・芝1600m)は◎ファイアーフロート(4番人気)が競り勝ちました。4ハロン通過「47秒1」はスローペース。開幕週でこの流れでは前が止まりません。予想は◎△で馬単7430円、◎△△で3連単66000円的中。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想を転載します。

「◎ファイアーフロートは『スペシャルウィーク×タバスコキャット』という組み合わせ。スペシャルウィークとストームキャットはニックスの関係にあり、この組み合わせからオースミダイドウ、タガノエリザベート、ダイレクトキャッチ、ダンツクインビー、モズ、ラナンキュラスなどの活躍馬が出ている。いかにも小回りコースに強い配合で、逃げ先行タイプなので開幕週の馬場は合うだろう。輸送でイレ込まなければ勝ち負けに持ち込める。」

懸念されたイレ込みは大丈夫でした。日曜日の栗東坂路の2歳一番時計を出したピユカンタービレは「スペシャルウィーク×Storm Cat」ですから、ファイアーフロートと同じニックスを持っています。この配合はやはり走ります。
http://premium.netkeiba.com/db/horse/ped/2008102793/

ピユカンタービレの母はBCクラシックを勝った Cat Thief と同じ組み合わせ(Storm Cat×Alydar)なのでパワーが前面に出ています。どちらかといえばダートのほうが……という気はしますね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102793/

「スペシャルウィーク×Storm Cat」の好相性は、つまるところ「マルゼンスキーと Storm Cat」の関係に起因すると考えています。4月14日のエントリー(「マルゼンスキーと Storm Cat」)をご参照ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/04/storm-cat-897-1.html

■セントウルS(G2・芝1200m)は○ダッシャーゴーゴー(4番人気)と▲グリーンバーディー(2番人気)で決着。

グリーンバーディーが能力的に抜けているのは明らかでしたが、どう見ても七分のデキで、しかも59キロ。4年前に同斤で2着となったテイクオーバーターゲット(豪)は59キロを背負い慣れていたのですが、グリーンバーディーは近走57キロまでしか背負っていませんでした。結局、強い馬は強いということですね。Rocket Man と雌雄を決する10月3日のスプリンターズS(G1)は“アジア最強スプリンター決定戦”といった様相です。

◎ショウナンカザン(9番人気)は10着。直線は前が詰まってまったく追えなかったのですが、不利がなかったとしても勝ち負けには持ち込めなかったでしょう。

ニエル賞、フォワ賞のオッズ

いよいよ本日夜に発走です(ニエル賞は23時15分、フォワ賞は23時45分)。オッズはイギリスのブックメーカーのものなので、現地で発表される公式オッズとは異なります。日本馬がどの程度評価されているかという目安にはなるでしょう。数字は発走時間に近づくにしたがって変わっていきます。数字は主な6社のものです(オッズ表示は日本式に直しています)。

■ニエル賞(G2・芝2400m)

Behkabad       2.1   2.25   2.1   2   2   2.1
Planteur        3   3  2.875  2.875   3   3
ヴィクトワールピサ   8   6   8   8   8   8
Apres Vous       8   7.5   7.5   8   8   8
Shamalgan        29   21   26   26   26   21
Kidnapping       29   23   26   34   34   34
Vivre Libre      201   251   201   201   251   201

パリ大賞典(G1)の1、2着馬、Behkabad と Planteur が人気を分け合う形です。これにヴィクトワールピサと Apres Vous が続きます。

Apres Vous (父 Monsun)はアンドレ・ファーブル厩舎が送り込んできた刺客。戦績は1戦1勝ながら Manduro(ジャックロマロワ賞、プリンスオブウェールズS、イスパーン賞)の4分の3同血にあたる良血馬です。
http://www.pedigreequery.com/apres+vous3

未知の魅力が買われて穴人気になり、あっけなく飛ぶというパターンではないかと思いますが、血統、厩舎、馬主(マイケル・テーバー氏のグループ)を見るとかなり怖いですね。相当な大物である可能性も否定できません。もし仮にここを勝つようなら凱旋門賞へ向けた勢力図が一変します。

■フォワ賞(G2・芝2400m)

Byword         2   2.1   2.2  1.95   2   2
Daryakana       4.5   4  3.75   5   4.5   4.5
ナカヤマフェスタ    7   5.5   6   6   6   7
Duncan         10   9   11   9   9   9
Chinchon        9   10   12   11   11   10
Timos         19   17   17   21   17   21

ナカヤマフェスタが3番人気というのは妥当なところでしょう。

ライブカメラで現在のパリの天候を確認したところ、雲は多いものの晴れています。できればこのまま行ってほしいですね。

2010年9月11日 (土)

レーヴディソール鮮やか

才能の違いをハッキリと見せつけた一戦でした。

札幌5R新馬戦(芝1500m)。

私の本命は昨日のエントリーに記したラプリメーラ(4番人気)でしたが、結果は7着。残念ながら Alcide≒パラディシアの重さが勝っていましたね。母の父メジロライアンを思わせる硬い走法で、向正面の走りを見た段階でこれは弾けないだろうなぁ……と。残念。

一方のレーヴディソール(1番人気)はいい意味での軽さと躍動感があります。これが同じアグネスタキオン産駒かと思うぐらいラプリメーラとはフットワークが違っていました。12秒8-12秒1-11秒5-11秒4と尻上がりに速くなるラップであの末脚ですからケタが違います。ここ2年ほどアグネスタキオン産駒はもうひとつの成績ですが、こういう鮮やかなレースを目の当たりにすると、やはり特別なものを持っているなぁと感心せざるをえません。

母レーヴドスカーは、ナイアガラ(父ファンタスティックライト)、レーヴダムール(父ファルブラヴ)、アプレザンレーヴ(父シンボリクリスエス)、レーヴドリアン(父スペシャルウィーク)、レーヴディソール(父アグネスタキオン)と、すべて違う父から連続して良駒を送り出しています。尋常ではありません。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103374/

怖いのは怪我ですね。父も母も脚部不安の影がつきまとう血統です。「栗山ノート」に含めなかったのは脚もとが怖かったからです。

才能はG1級だと思うので大事に行ってほしいですね。それにしても今年の2歳世代は牝馬が大豊作です。アヴェンチュラ、アドマイヤセプター、そしてレーヴディソール……。秋の京都、東京開催でも何かしら出てくるでしょう。

関係ありませんが、愛セントレジャー(G1・芝14f)に出走したポップロックはまったくダメでしたね。さすがにG1では荷が重すぎました。

ニエル賞、フォワ賞展望(後)

フォワ賞といえば99年にエルコンドルパサーが勝ったレースですが、日本馬ではもう1頭、86年にシリウスシンボリが2着していることは意外と忘れられがちかもしれません。アジア以外の重賞で日本馬が複数頭連対したレースは、アメリカンオークス、メルボルンC、そしてこのフォワ賞の3つです。

今年のフォワ賞(G2・芝2400m)は古馬ナンバーワンの Fame and Glory が回避。本番に直行する模様です。ナカヤマフェスタにもチャンスが出てきました。

Byword は今年のプリンスオブウェールズ(英G1・芝10f)の勝ち馬。半姉に現在アメリカで芝G1を3連勝している Proviso がいます。8~10fで使われてきた馬なので、ここに出てくるとは思いませんでした。前走、8月17日のインターナショナルS(英G1・芝10f88yds)は Rip Van Winkle の3着。今回のメンバーのなかでは格上ですが、問題は12ハロンをこなせるかどうか。付け入る隙はあると思います。現在、凱旋門賞のアンティポストは5~10番人気ぐらい(11~17倍)です。
http://www.pedigreequery.com/byword

牝馬の Daryakana はサンクルー大賞典(G1)3着、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)4着とまずまずの成績。昨年暮れに香港ヴァーズ(G1・芝2400m)を勝ったとき、4着がジャガーメイルでした。メンバーが手薄とみてヴェルメイユ賞(G1)からこちらに回ってきたのかもしれません。凱旋門賞のアンティポストは12~15番人気ぐらい(21~34倍)です。
http://www.pedigreequery.com/daryakana

Chinchon は7月にアメリカ遠征をして弱敵相手にユナイテッドネイションズS(米G1・芝11f)を勝ちました。ただ、フランスではG3しか勝ったことがありません。トライマイベスト=Northern Prancer 3×3、Mill Reef≒Riverman 4×4はかっこいいですね。
http://www.pedigreequery.com/chinchon2

Duncan は6月19日に行われたハードウィックS(英G2・芝12f)で2着(勝ち馬は Harbinger)と健闘したのですが、続く7月30日のグローリアスS(G3・芝12f)は1番人気に推されて4着と凡走。安定して力を発揮するまでには至っていない感じです。http://www.pedigreequery.com/duncan7

Fame and Glory という誰もが認める主役が回避したので、脇役だけのレースとなった感があります。1番人気が予想される Byword は2400mという距離が未知数なので、ナカヤマフェスタにも十分チャンスはあるでしょう。Byword に適性があった場合は厳しいのですが。

9月1日のエントリーで凱旋門賞のアンティポストについて書きましたが、ここにきてようやくヴィクトワールピサとナカヤマフェスタのオッズが付いてきました。数字は左がコーラル、右がウイリアムヒルです。オッズは日本式に直しています。

ヴィクトワールピサ  26  26
ナカヤマフェスタ   41  34

ナカヤマフェスタには26倍をつけるブックメーカーもあります。ニエル賞とフォワ賞が終わればオッズは固まってくるでしょう。レースの模様は9月12日の23時からグリーンチャンネルで放送されます。

2010年9月10日 (金)

ラプリメーラを応援

土曜札幌5R(芝1500m)は目移りすぐるらい良質なメンバーが揃いました。出馬表を見渡したところ「栗山ノート」の指名馬を1頭発見。

2番ラプリメーラ(父アグネスタキオン)です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103311/

『競馬王のPOG本』に掲載したコメントを転載します。

「母はローズS3着馬。メジロライアン産駒にしてはいい切れ味を持っていた。アルサイド≒パラディシア5×5は非常におもしろい。大物感があるのでホームランの可能性も。」

母はベストアルバムです。本馬と同じく沖芳夫厩舎に所属し、18戦5勝の成績を残しました。主な戦績はローズS(G2)3着。

Alcide≒パラディシアの関係は以下のとおり。かなりユニークです。

          ┌ Donatello
        ┌○┤ ┌ Hyperion
Alcide ――――┤ └○┘
        └ Chenille

          ┌ Hyperion
        ┌○┤ ┌ Donatello
パラディシア ―┤ └○┘
        └ Chenille

誤解のないように付言しておくと、このクロスはほとんど成功例がありません。スピードがないからです。メジロ牧場で何度も試みられたのですが重すぎて走りませんでした。しかし、だからダメというのは短絡的ではないかと思います。活かし方ひとつでしょう。

現代的な血統のなかでこのクロスを展開させれば案外成功するのではないか、という考えはいつも心の片隅にありました。具体的にいえばアグネスタキオンです。サンデー系のなかでもスピードと切れ味に特長があるので、Alcide≒パラディシアの重さを活かす血として魅力的です。アグネスタキオンにはリマンドがあり、その父が Alcide です。

母方にパラディシアを持つアグネスタキオン産駒は、過去に1頭デビューしています。メジロドーベルの娘メジロアレグレットです。同馬は〔0.3.2.1〕という成績が示すとおり決め手がなく、6戦目のレース中に骨折して予後不良となってしまいました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2003103357/

じつはアグネスタキオン産駒が出始めのころ、Alycidon≒Aureole(つまり Alcide の父とパラディシアの父)を狙ってPOGで指名したこともあったのですが(例:カレンスターボーイ)、決め手がありませんでした。アグネスタキオン産駒においてリマンドに含まれる部分を強調するのはリスキーだと学びました。

メジロアレグレットは、母が著名馬ではあるものの、瞬発力不足を補う配合的な仕掛けがありません。しかし、ラプリメーラには Halo≒Sir Ivor 3×5があります。Halo 的な軽さや瞬発力を増幅するクロスです。これがなければ指名することはなかったでしょう。

Alcide≒パラディシアの重さが勝つか、Halo≒Sir Ivor の軽さが勝つか、明日のレースは注目してみたいと思います。ダメなようなら Alcide≒パラディシアは諦めます。

ニエル賞、フォワ賞展望(前)

レースは9月12日(日)ですから明後日です。8日の追い切りは雨の中で行われました。関係者のコメントを読むかぎり、ヴィクトワールピサもナカヤマフェスタも順調のようですね。

9日は晴れときどき雨で、10、11日は晴れの予報(両日とも降水確率5%)。レース当日は雨のち曇りの予報(降水確率95%)ですから、馬場状態は日本でいうところの稍重ぐらいではないかと思います。両馬とも良馬場以外はダメというタイプではなく、おそらく対応できるでしょう。

ヴィクトワールピサが出走するニエル賞(G2・芝2400m)は、パリ大賞典の1、2着馬 Behkabad と Planteur のラインに、ヴィクトワールピサが対抗できるかどうか、というところですね。

7月14日のパリ大賞典(G1・芝2400m)は、今回と同じコースで行われ、この2頭が後続を5馬身ちぎりました。3着 Jan Vermeer は、6月27日の愛ダービー(G1・芝12f)で Cape Blanco(先日の愛チャンピオンSを5馬身半差で圧勝)から2馬身差の3着ですから弱い馬ではありません。
http://www.youtube.com/watch?v=IMq9eEl911Q

現在、凱旋門賞のアンティポストでは、Bahkabad が2番人気(5~7倍)、Planteur が3~5番人気(8~11倍)。個人的には古馬の Fame and Glory(現在1番人気)よりも伸び盛りの3歳勢のほうが怖いと思います。もし仮にヴィクトワールピサがここを勝つようなら凱旋門賞の最有力候補に昇格します。負けたとしても悲観する必要はありません。大きく離されなければ十分だと思います。

Behkabad は文句なしの名配合です。バランス、風格、血脈構成、すべてにおいて申し分ありません。アガ・カーン四世殿下の配合には感動があります。財力と配合哲学を併せ持つオーナーブリーダーにのみ許される“名血を育むための歴史的視点”が感じられるからです。父は Sea the Stars を送り出した Cape Cross。牝系は3代連続でパターンレースを勝っており、2代母 Behera は凱旋門賞で2着となりました。ここを勝てば凱旋門賞は1番人気でしょう。すでにいくつかのブックメーカーは1番人気に推し始めています。
http://www.pedigreequery.com/behkabad

Planteur は、母の兄弟に02年のニエル賞勝ち馬 Pushkin、ジャパンC4着の Policy Maker がいます。仏ダービー(2着)でもパリ大賞典(2着)でも、直線でムチが入るとヨレるところが見られました。気性的な成長によりこのあたりが解消すれば楽しみですね。配合的に決め手が甘そうなところも見受けられます。馬場が渋ったほうがいいタイプかもしれません。
http://www.pedigreequery.com/planteur

Shamalgan はフランス産のチェコ調教馬で、仏2000ギニー(G1)3着、ユジェーヌアダム賞(G2)2着という成績。ユジェーヌアダム賞を勝った Shimraan はドーヴィル大賞典(G2)4着ですから、ここではやや荷が重い感じです。
http://www.pedigreequery.com/shamalgan

ニエル賞とフォワ賞を比べると、今年はニエル賞のほうがメンバーが揃っています。フォワ賞に出走していれば断然人気を背負うはずだった Fame and Glory は回避してしまいました。ニエル賞には本番の凱旋門賞で有力と目されている Behkabad と Planteur が出てくるわけですから、ヴィクトワールピサにとってハードルは決して低くありません。ただ、私は好勝負に持ち込めると思っています。

フォワ賞については明日。

2010年9月 9日 (木)

戸塚記念はハーミア

9月8日夜、川崎競馬場で行われた戸塚記念(ダ2100m)は、1番人気に推された牝馬のハーミア(父フィガロ)がビクトリースガのマクリを封じて勝ちました。これが重賞初制覇です。

父フィガロは懐かしいですね。新馬-京都3歳S(OP)を連勝し、グラスワンダーが勝った朝日杯3歳S(G1)で3着に食い込んだ馬です。朝日杯は Storm Cat を持つ馬がやたらと走るのですが、その一番最初の例だったと記憶しています。通算成績3戦2勝。伊達秀和さんの持ち馬でした。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1995108837/

種牡馬としては地味な存在で、02年から昨年まで8年間の平均種付け頭数は14頭。伊達さんが所有するサンシャイン牧場に繋養され、自家牝馬を中心に種付けを行ってきました(現在は優駿スタリオンステーションで種付け)。代表産駒のアンパサンドは東京ダービーと報知オールスターCの勝ち馬です。

ハーミアとアンパサンドは配合構成がよく似ています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007105461/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004105545/

        ┌ フィガロ
ハーミア ―――┤
        └○┐
          └ ボニータ

        ┌ フィガロ
アンパサンド ―┤
        └○┐
          └ ボニータ

両馬ともサンシャイン牧場の生産馬。ボニータの母は伊達さんが所有した桜花賞馬ブロケードです。フィガロとボニータの組み合わせはよほど合うようで、まったく同じ配合パターンを持つデリスという2歳牝馬が、先週大井で新馬戦(ダ1200m)を勝ちました。同馬はハーミアと同じく荒山勝徳厩舎に所属しています。いずれ重賞戦線を賑わす馬に成長するかもしれません。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008105499/

        ┌ フィガロ
デリス ――――┤
        └○┐
          └ ボニータ

2010年9月 8日 (水)

橋本邦治さん死去

先月19日にお亡くなりになったとのことですが、9月に入ってから知りました。87歳。大川慶次郎さんより7歳年上で、大正生まれ(大正11年/1922年生)では最も長く現役でいらした競馬関係者ではないでしょうか。つい数年前までラジオNIKKEIの競馬中継に出演されていたイメージがあります。

『日本の名馬』(サラブレッド血統センター)の118頁に、「私と競馬」と題する橋本さんの文章が載っています。抜粋します。

「私の家は、昔府中にあった。そんな関係もあり、父が野戦重砲兵だったりしたため、子供のころから馬が好きだった。そのうえ、目黒から東京競馬場が移転してきたりしたため、なにもわからないうちから、競馬は見ていた。だから、ガヴアナーが『ダービー』に勝った後で急死して、墓地に運ばれる、悲運な姿を見たことを覚えている。」

ガヴアナーは第4回のダービー馬。死んだのは1935年(昭和10年)ですから75年前です。橋本さんはそのときの光景を目撃しています。

また、『優駿』04年10月号にはこんな記述があります。

「私も、馬房によこたわるトキノミノルを見舞ったが、“これがあのダービー馬か”と、目を疑いたくなるような寂しい姿だった。」

トキノミノルは1951年(昭和26年)の二冠馬で、通算10戦全勝。ダービー制覇から17日後に破傷風により死亡しました。橋本さんは死の床にあるトキノミノルも目撃しています。

時代が下り、日本テレビの名物番組『11PM』で、大橋巨泉氏と競馬コーナーを持ったと聞きますが、残念ながら記憶にありません。私にとって橋本さんは『話のかいば』の著者です。NAR地方競馬全国協会の機関誌『地方競馬』に連載されたコラムをまとめたもので、91年にJRA馬事文化賞を受賞しました。競馬に関する幅広い蘊蓄を90のチャプターに分けてエッセイ風に記したものです。読みやすくて好きな本でしたね。「父は、明治の日本画家、橋本雅邦の六男」というプロフィールの記述を見て、へぇ~と感心したりもしました。この本を Amazon で検索しても引っ掛かってきません。現在入手は困難かもしれません。晩年はJRA賞の記者投票でたびたび独創的な票を投じることで話題になりました。

私はよく中山競馬場行きのバスでお見かけしました。雨の日も風の日も変わることなく座席に腰掛けていらっしゃいました。奥様らしきお連れの方と一緒のことが多かったですね。自分はあの歳まで競馬場に通う気力を保てるだろうか……と、そのお背中を見ながら思ったものです。合掌。

2010年9月 7日 (火)

9月の中山開幕週とダンスインザダーク

ダンスインザダーク産駒の競馬場別連対率(芝)を調べると、中山コースは「14.0%」で最下位。“ダンスインザダーク産駒は中山芝では信用できない”ということは、血統で馬券を買う人にとっては経験的・感覚的に身についていることだろうと思います。たとえば、中山のG1レースで同産駒を切るのは昔からのセオリーです(過去22戦して一度も連対していません)。

ただ、1年のうちここだけは狙えるというポイントがあります。9月の中山開催です。連対率「21.5%」ですから普通に買えます。開幕週に限れば「29.4%」。むしろ積極的に狙ってみたい、という数字ですね。

開幕週は馬場コンディションがいいので、時計が速く前が止まりません。ハイペースのままバテずにゴールになだれ込むという競馬になりがちです。ラップの起伏が少なく、平均して速くなります。したがってギアチェンジや決め手はあまり必要とされません。

ダンスインザダーク産駒の弱点は、ほかのサンデー系に比べると瞬発力がイマイチで、エンジンの掛かりが遅いこと。ギアチェンジが上手くないので機動力に欠けます。基本的にこういうタイプは中山では買いづらいですね。ただし、9月の開幕週は話が別です。一本調子の競馬になりやすいため、こうした弱点が露呈しづらいのだろうと思います。とくに注目したいのは芝1600mと芝2000m。この2つのコースでは抜群の成績を誇ります。昨年の京成杯オータムH(G3・芝1600m)はダンスインザダーク産駒のザレマが勝ちました。

サンプルは少ないものの、シンボリクリスエス産駒も9月の中山開幕週を得意としています。芝で9戦して3連対。連対率33.3%です。同馬については6月6日のエントリー(「高速馬場とシンボリクリスエス」)でその特徴を分析しました。抜粋してみます。

「『ハイペースへの耐久力とスピードの持続力』を活かす展開になれば、シンボリクリスエス産駒は生き生きと躍動します。そうした競馬になりやすい高速馬場ではつねにマークが必要です。」
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/06/post-5cad.html

開幕週に強い、という条件を備えた種牡馬であることがわかります。ダンスインザダーク産駒と同じくマークが必要です。昨年の紫苑S(OP・芝2000m)を11番人気で制したダイアナバローズはシンボリクリスエス産駒でした。

9月8、9日に『馬券師倶楽部2』再放送

『馬券師倶楽部2』の「栗山求(後編)」です。放送スケジュールは以下のとおり。

   9/8(水) 16:00~16:30
   9/9(木) 10:00~10:30

CS放送の“MONDO21”で観ることができます。よろしかったらどうぞ。

2010年9月 6日 (月)

日曜日のレースあれこれ

■小倉2歳S(G3)は◎ブラウンワイルド(1番人気)がギリギリ差し切りました。前走のフェニックス賞(2着)は馬を見てピンと来なかったのですが、今回は良かったと思います。稽古の動きからしてまったく違っていたので、体調がグンと上向いていたのでしょう。予想は◎○△で3連単23440円的中。血統解説は7月17日のエントリー(「ブラウンワイルド、新馬戦レコード勝ち」)をご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/07/post-66b2.html

毎年思うのですが、同日同距離で行われる2歳未勝利戦と勝ち時計がほとんど変わりません。この日も未勝利戦が1分08秒8で、小倉2歳Sが1分08秒7。重賞に出ている馬たちは、仮にマイペースで逃げたり少頭数で走れば、たいていこのぐらいの時計では走れるはずです。ただ、多頭数のゴチャゴチャした競馬になると勝手が違ってきます。精神的なたくましさや経験値が大きくモノをいうレースですね。

■札幌日経オープン(OP)はトウカイメロディ(1番人気)が完勝。前走のみなみ北海道S(OP)で2着に負かしたホクトスルタンと斤量差が一気に4キロ縮まっていたものの、伸び盛りの勢いが買われて1番人気となり、堂々とそれに応えてみせました。

父チーフベアハートは薄味の種牡馬で、自身の特徴を産駒に伝えるというよりは交配相手の特徴を出しやすいタイプです。母方からスタミナを受ければマイネルキッツ(天皇賞・春)になり、スピードを受ければビービーガルダン(阪急杯、キーンランドC)になります。トウカイメロディの場合、母が「ジェネラス×リアルシャダイ」ですからスタミナタイプ。菊花賞(10月24日・G1・京都芝3000m)で買おうと密かに狙っていた方は多いかと思いますが、この快進撃では密かどころではなくなってしまいましたね。春のクラシック上位組が前哨戦で躓けば1番人気の可能性も……。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007106596/

■札幌4Rの新馬戦(芝1800m)は、9月3日のエントリー(「今週の新馬戦はルルーシュに注目」)で取り上げたルルーシュがハナ差で勝利を飾りました。着差はわずかでしたが、中だるみのないラップはなかなか優秀。終始外を回っていたので内容は悪くなかったと思います。藤沢流の仕上げでしょうから使って変わりそうですね。

2010年9月 5日 (日)

テレグノシス産駒が重賞勝ち

新潟2歳S(G3)はマイネイサベル(9番人気)が差し切り勝ち。残念ながら予想の印は回りませんでした。7月17日の新馬戦(新潟芝1400m)を勝ち上がった際に『Web競馬王』に記した評価を再掲します。

「『テレグノシス×サンデーサイレンス』という組み合わせで、母マイネレジーナはクイーンS(G3)2着、函館3歳S(G3)2着という成績がある。父テレグノシスはNHKマイルC(G1)など3つの重賞を制した追い込み馬。今年の2歳世代が初年度産駒で、これがJRA初勝利(地方では兵庫でシークレットベースが勝っている)。トニービンの代表産駒ジャングルポケットがサンデー牝馬と抜群の相性を示しているように、テレグノシスもサンデー牝馬と掛け合わせて成功するだろう。本馬はトニービンと相性のいいニジンスキーが母方に入るのでこの点も評価できる。バランスのとれた好配合馬。稽古は平凡だったが実戦タイプなのだろう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008104086/

今年の春、必要に迫られてテレグノシス産駒27頭の配合を調べた際、まっさきに目に付いたのがマイネイサベルでした。母マイネレジーナは重賞戦線で活躍したので、たいていの人はトップクラスに評価する馬でしょう。それに加えて配合も文句なし。まさに“群鶏の一鶴”でした。

テレグノシスは「トニービン×ノーザンテースト×Secretariat」という配合なので、カンパニー(天皇賞・秋、マイルCS)と構成がよく似ています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1999106851/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2001103435/

        ┌ トニービン
テレグノシス ―┤ ┌ ノーザンテースト
        └○┤ ┌ Secretariat
          └○┘

          ┌ トニービン
        ┌○┘
カンパニー ――┤ ┌ ノーザンテースト
        └○┤
          └○┐ ┌ Secretariat
            └○┘

テレグノシスもカンパニーも東京コースを得意としました。同じように直線の長い新潟外回りコースで鮮やかな差しを決めたマイネイサベルは、その特長を受け継いでいるような気がします。初戦の内容からこのメンバーに入ってどうかと思ったのですが、同じトニービン系のジャングルポケット産駒と同じく、ここ一番の強さがありますね。外回りコースでの変わり身をもっと重く見るべきでした。

テレグノシスは初年度に46頭に種付けして産駒は27頭。2年目は28頭に種付けして産駒は14頭。3年目は22頭に種付けしました(現時点で産駒数は明らかになっていません)。交配頭数は年々減っていますが、今回の勝利で来年は増加が見込まれます。それなりのレベルの繁殖牝馬と交配すれば重賞級の産駒を出せると証明できたのは大きいですね。母方にはまずサンデーサイレンスを入れるのが基本でしょう。それに加えて Nijinsky、Mr.Prospector、Sir Ivor といった血があればおもしろそうです。

◎レッドセインツ(5番人気)は3着。人気どころが見せ場を作れずに終わったなかでよく頑張りました。精神的にしっかりしているという印象です。まだ未完成なので秋になればさらに成長するでしょう。

2010年9月 4日 (土)

Harbinger 日本へ

社台グループが Harbinger を獲得したと複数の海外メディアが報じています。値段は明らかになっていません。円高傾向が続いているので、このクラスの馬としてはそれほど高い価格ではなかったのでは、と思います。

社台ファーム代表の吉田照哉氏は「種馬は数打たなきゃ当たらない」「失敗するのが当たり前」が口癖です。社台グループといえばサンデーサイレンス、トニービン、ノーザンテーストといった華々しい成功種牡馬にばかり目が行きがちですが、その陰には膨大な数の失敗種牡馬が死屍累々と横たわり、それだけで一冊の本が書けるほどです。種牡馬というものは本来きわめて低い確率でしか成功しません。

競走成績からある程度見分ける方法はあります。2歳時からトップクラスで活躍し、3歳時にスプリントまたはマイルのG1を勝つようなタイプは当たる確率が高いといわれています。ただ、こんなことはプロなら誰でも知っているでしょう。

ヨーロッパでそうした馬を買ってこようとしても、種牡馬ビジネスで激しい火花を散らすクールモア、ダーレー、ジャドモントなどいくつかの巨大資本がまず押さえてしまうので簡単ではありません。当ブログでも Green Desert 系がいいとか Oasis Dream はサンデーと合うだろうとかたびたび書いてきましたが、欲しいといって買えるなら誰も苦労はしません。

現実的には、成功パターンから外れた Harbinger のような大物を狙うしかないのだろうと思います。最前線でしのぎを削る欧米の種牡馬事業グループ群は、クラシックディスタンスを得意とする晩成タイプに強く執着することはなく、だからこそ社台グループが手に入れることができたのだと思います。社台グループには「種馬は数打たなきゃ当たらない」という哲学と、リスクを承知の上でそれに挑むだけの資力があります。たとえ低い確率でも当たれば儲けもので、運良くヒットすれば牧場は20年間安泰です。失敗したとしても屋台骨が揺らぐことはないので、買ってみる価値はあるでしょう。

思えばサンデーサイレンスは血統的なリスクの大きな買い物でした。トニービンもクラシックディスタンスを得意とする晩成タイプ、という成功しづらいカテゴリーに属していました。種牡馬ビジネスというものは常識では割り切れませんし、かといって当てずっぽうでもダメ、という難しさがあります。Harbinger がトニービンになるのかエリシオになるのか分かりませんが、ワールドサラブレッドランキングでは過去最高クラスの評価を得た馬なので期待したいですね。

11馬身差のレコード圧勝、という今年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英G1・芝12f)は、この一戦だけでアスコット競馬場に銅像が建つレベルのパフォーマンスだと思います。ニコニコ動画に生涯全9戦をダイジェストでまとめたものがアップロードされていました。戦績表と合わせて鑑賞すると楽しめます。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm11808925
http://ahonoora.web.fc2.com/harbinger.html

2010年9月 3日 (金)

今週の新馬戦はルルーシュに注目

日曜日の札幌4R新馬戦(芝1800m)は、良血馬・好配合馬が集まった好カード。なかでも注目は藤沢和雄厩舎のルルーシュ。ゼンノロブロイの子で、ステージプレゼンス(きさらぎ賞-3着)の半弟です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102912/

『競馬王のPOG本』の「栗山ノート」で指名した馬でもあります。コメント欄にはこう記しました。

「父はアメリカ血統過多なのでヨーロッパ血統が豊富なこの母は好ましい。相性がいいと思われるリヴァーマンも入る。サンデー系+ダンシングブレーヴも成功例が多く楽しみ。」

字数の制約により詳しく書けなかった部分を補足します。

ゼンノロブロイと Riverman の関係は悪くなく、アグネスワルツ(オークス-3着、フローラS-2着)を筆頭に、ゲームマエストロ、トレイルブレイザーなどの好素質馬が出ています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007102955/

この組み合わせを持つ馬の成績は以下のとおり。かなり優秀です。

全連対率 38.1%(単勝回収率214%)
芝連対率 43.5%(  〃  249%)
ダ連対率 31.6%(  〃  172%)

父ゼンノロブロイは、Admiral Drake≒Roman 6×5という隠し味的なクロスを持っています。ディープインパクトにも見られるクロスですね。

         ┌ Sunstar
       ┌○┤
Admiral Drake ┤ └ Maid of the Mist
       └ Plucky Liege

       ┌○┐
Roman ――――┤ └ Plucky Liege
       │   ┌ Sunstar
       │ ┌○┤
       └○┘ └○┐
             └ Maid of the Mist

Riverman の2代母の父は Roman。したがって、ゼンノロブロイと Riverman が出会うとこのクロスが継続されます。それが好結果の一因ではないかと推理しています。
http://www.pedigreequery.com/riverman

サンデーサイレンスとダンシングブレーヴの関係は、当ブログでも何度か説明した記憶があります。サンデーの父 Halo とダンシングブレーヴの母の父 Drone の血統構成がよく似ていることが好相性の鍵でしょう。ルルーシュの場合、母ダンスーズデトワールが Hairbrush≒Drone 3×4なので、ここで強調された要素を父方の Halo によって継続する効果は大きいのではないかと思います。

このほか Buckpasser クロスも好感が持てます。ゼンノロブロイ産駒の重賞好走馬のなかではサンテミリオンとアグネスワルツに見られます。ルルーシュの場合、La Troienne 血脈(Buckpasser)の活力を取り入れつつ、周辺にある豊富なヨーロッパ血脈によってパワー的な要素が表れるのを抑えている、というイメージですね。いいトコ取りができそうな気がします。

JRAレーシングビュアーで調教映像を観たのですが、フットワークがダイナミックなのに捌きが軽く、首の使い方がいいので全身で走れています。なかなか好印象です。初戦から行けるのではないでしょうか。

2010年9月 2日 (木)

G1サラブレッドクラブ誕生

今週発売の『週刊競馬ブック』の表紙をめくると、「G1 Thoroughbred Club 誕生」という広告があります。もちろんサイトも存在しており、8月30日付けで「G1サラブレッドクラブが誕生しました!」というインフォメーションが記されています。
http://www.g1tc.co.jp/

サイトのどこにも謳ってはいませんが、社台サラブレッドクラブ、サンデーサラブレッドクラブに続く、社台系第三のクラブ法人なのでしょう。社台グループが新しく何かを始めるらしいという噂は、こうした事情に疎い私の耳にも入っていました。サイトの作り、育成先やリンク先などを見ても、社台グループ以外にないだろうと思います。

驚いたのは「G1サラブレッドクラブは前身のないまったく新しい愛馬会法人」という一文です。この問題について10年前に取材した際に、新規のクラブ法人はもう作れないという規制があることを知り、それはいまなお生きているものと思っていました。事情が変わったのでしょうか。

1頭の総額は1400~3600万円(一口35~90万円)と比較的安く、月会費は1575円ですから社台やサンデーの半額。このご時世ですから大衆化路線は受けるかもしれませんね。

2010年9月 1日 (水)

凱旋門賞のアンティポスト

気がつけば暦は9月、フランスに遠征したヴィクトワールピサとナカヤマフェスタの勝負が迫ってきました。前哨戦のニエル賞(G2・芝2400m)とフォワ賞(G2・芝2400m)は9月12日(日)に、本番の凱旋門賞(G1・芝2400m)は10月3日(日)に行われます。

イギリスのブックメーカーが発表しているアンティポストをご紹介したいと思います。アンティポストとは“事前オッズ”のようなものと考えればいいでしょう。この賭けは、早ければ対象競走の数ヵ月前から受け付けられます。直前オッズよりも当然倍率は高いのですが、出走しなかったとしても掛け金は返ってきません。もし当たれば、賭けた時点のオッズで配当が支払われます。POGが盛んな日本では、もしアンティポストベットが実現したら相当売れると思うのですが。法改正して発売を目指すという動きはないのでしょうか。

多数のブックメーカーのなかで、世界三大ブックメーカーといわれる三社のものをご紹介します(9月1日現在)。数字は左から順にラドブロークス、コーラル、ウイリアムヒルです。オッズは日本式に直しています。

Fame and Glory   4  4  4
Behkabad      7  7  7
Planteur      11  11  11
Workforce      11  9  9
Sarafina      13  13  11
Byword       17  17  15
St Nicholas Abbey     13  13
Sariska       17  13  17
Rewilding         17  21
Youmzain      26  26  26
Cape Blanco        17  21
Cavalryman     17  34  26
Dar Re Mi      34  17  26
Snow Fairy     26  34  26
Daryakana      34  34  34
Goldwaki      41     26
Jan Vermeer        26  34
Ice Blue         41  34
Cutlass Bay     26  41  51
Simon De Montfort     26  34
Midas Touch        51  51

三社とも重賞4連勝中の Fame and Glory が1番人気、パリ大賞典(G1)の勝ち馬 Behkabad が2番人気です。
http://www.pedigreequery.com/fame+and+glory
http://www.pedigreequery.com/behkabad

Fame and Glory は古馬代表で、次走はフォワ賞。一方の Behkabad は3歳代表で、次走はニエル賞。つまり、前者はナカヤマフェスタと、後者はヴィクトワールピサと対決します。

表のなかに日本馬2頭の名前がないのは、まだオッズが付けられていないからです。日本馬の実力が把握できずにオッズが付けられないのか、それとも挑戦することすら知らないのか、事情はよく分かりません。前哨戦が終われば数字が出てくるでしょう。

現時点で数字を発表しているブックメーカーもあります。ヴィクトワールピサには3社がつけており、それぞれ35倍、39倍、44倍。ナカヤマフェスタには2社がつけており、それぞれ107倍、130倍。はっきり“圏外”という扱いです。こういうのを見ると燃えてきますね~。

両馬のオッズが付いている二社は以下のとおり。ご参考までに。
http://www.betfair.com/
http://www.wbx.com/

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!