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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2010年10月

2010年10月31日 (日)

スワンSはマルカフェニックス

勝ったマルカフェニックス(3番人気)は1400mのスペシャリスト。これまでで一番強い勝ちっぷりでした。ダンスインザダーク産駒は先週のダノンヨーヨー(富士S)に続いて2週連続重賞制覇です。

10月24日のエントリー「ダンスインザダークの配合的核心」で述べたように、ダンスインザダークは Raise a Native との相性が良好です。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/10/post-599e.html

マルカフェニックスはザッツザプレンティ(菊花賞)と同じく「ダンスインザダーク×Miswaki」の組み合わせ。Miswaki の父は Mr.Prospector で、その父が Raise a Native です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004102206/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2000101398/

そして、この組み合わせにはもうひとつのミソがあります。Flaming Page≒Buckpasser 4×4です。
http://www.pedigreequery.com/flaming+page
http://www.pedigreequery.com/buckpasser

            ┌ Bull Dog
          ┌○┘
        ┌○┤ ┌ Blue Larkspur
Flaming Page ―┤ └○┘
        │ ┌ Menow
        └○┤
          └○┐ ┌ Man o'War
            └○┘

          ┌ Menow
        ┌○┤ ┌ Bull Dog
        │ └○┘
Buckpasser ――┤   ┌ Man o'War
        │ ┌○┘
        └○┤ ┌ Blue Larkspur
          └○┘

Flaming Page は Nijinsky の母。「Nijinsky×Buckpasser」の組み合わせからマルゼンスキー、ヤマニンスキー、ラシアンルーブルと成功種牡馬が現れたのは、この関係に負うところが大きいのではないかと思います。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a0003bd/

「Nijinsky×Buckpasser」については、じつはもう少し詳細に掘り下げなければいけない部分もあるのですが、長くなるので別の機会に譲りたいと思います。

少ないサンプルから2頭も大物を出しているのですから、「ダンスインザダーク×Miswaki」はニックスといっていいでしょう。それを成立させたのは、Miswaki が内包する Raise a Native と Buckpasser ではないかと私は考えます。

ところで、スワンSを見ていて驚いたのはジョーカプチーノ(10番人気)の好走。1年5ヵ月ぶりの実戦ながら3着に粘りました。馬体重は38キロ増(!)。やはり強いですね。伊達にG1を勝っていません。

86年以降、平地重賞で3着以内に入った馬のなかで、前走比の馬体重増が大きかった順に並べてみます。

1位 87年京成杯2着  マイネルダビテ(46キロ増)
2位 02年札幌記念1着 テイエムオーシャン(38キロ増)
〃  10年スワンS3着 マルカフェニックス(38キロ増)

今回のジョーカプチーノは、テイエムオーシャンと並ぶ2番目の数字ですね。

日曜日の天皇賞・秋。土曜日は朝からしっかり雨が降りました。ただ、私の住む東京某所では、午後7時台には雨が上がり、日曜日の午前2時時点ではすでにアスファルトの路面は乾いた状態。日曜日の東京競馬は、メインレースのころには稍重ぐらいになる可能性もあると思います。道悪適性に神経質になる必要はなさそうです。

2010年10月30日 (土)

フィガロ産駒のオリークック、ローレル賞を制覇

土曜日のJRAは、京都と福島は大丈夫そうですが、東京がどうなるかですね~。台風の進路を見るとマズそうな気が……。こんな宙ぶらりんの状態では予想にも身が入りません。とりあえず芝の道悪ならオペラハウスなどの Sadler's Wells 血脈、そしてキングカメハメハ産駒ですか。

日曜日の東京は晴れ予報。インコースから乾いていくお決まりのパターンになりそうなので、天皇賞・秋も内枠の先行馬が良さそうですね。後方から大外に回してしまうと厳しいような気がします。

JRA関連では語れそうなことがないので、本日は地方競馬関連の小ネタを。9月9日のエントリー「戸塚記念はハーミア」のなかで、サンシャイン牧場が生産したフィガロ産駒の活躍について触れました。アンパサンド(東京ダービー、報知オールスターC)とハーミア(戸塚記念)が似たような配合から誕生している、という内容です。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/09/post-05b7.html

10月27日、川崎競馬場で行われた2歳牝馬の重賞ローレル賞(南関東SIII・ダ1600m)を、フィガロ産駒のオリークックが勝ちました。中団から外をマクって直線で先頭に立ち、最後は2馬身突き抜けるという好内容。この馬もサンシャイン牧場の生産馬で、ハーミアと配合がそっくりです。さらにいえば厩舎も同じ(荒山勝徳厩舎)です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008105509/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007105461/

        ┌ フィガロ
オリークック ―┤   ┌ Mr.Prospector
        │ ┌○┘ ┌ Nijinsky
        └○┤ ┌○┘
          └○┤ ┌ イエローゴッド
            └○┘

        ┌ フィガロ
ハーミア ―――┤   ┌ Mr.Prospector
        │ ┌○┤ ┌ Nijinsky
        └○┤ └○┘
          └○┐ ┌ イエローゴッド
            └○┘

同じような配合がどんどん走るのですから見事なものです。もし仮に南関東限定のPOGに参加するなら、この配合パターンは押さえたいですね。順調なら次走は東京2歳優駿牝馬(12月31日・大井ダ1600m)。南関東の2歳牝馬チャンピオン決定戦です。

これらと似た配合パターンを持ち、9月9日のエントリーで軽く触れたデリスも、じつはローレル賞に出走していたのですが12着に敗れました。牝馬限定の新馬戦を勝ったばかりで11番人気と低評価だったので仕方がありません。

~~~~~~~~~~~~~~~~

注)土曜日の東京競馬は中止となりました。代替競馬は11月1日(月)に行われます。

2010年10月29日 (金)

ディープ産駒 Sunday Bess、英デビュー戦で2着

10月28日、英リングフィールド競馬場で行われたオールウェザー7ハロンのメイドン(新馬・未勝利戦)に、日本生まれのディープインパクト産駒 Sunday Bess(牝2歳、トム・ダスカム厩舎)が出走。見事2着となりました。着差はハナ。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008100010/

出走馬は7頭で、Sunday Bess 以外の6頭はすべて牡馬&セン馬。しかも、勝ち馬を含めて5頭が既出走馬でした。上々のデビュー戦ではないでしょうか。

母リーサはチリ産で、同国のサンチアゴ1000ギニー(智G1・芝1700m)、ナシオナルリカルドリヨン賞(智G1・芝2000m)などを制し、チリ2歳牝馬チャンピオン、チリ芝牝馬チャンピオンに輝きました。母の父 Hussonet(父 Mr.Prospector)は00年から7年連続リーディングサイアーとなった大種牡馬。その母 Sacahuista はブリーダーズCディスタフ(米G1・ダ10f)の勝ち馬で、米3歳牝馬チャンピオンとなった名牝です。
http://www.pedigreequery.com/hussonet

Sunday Bess 自身は社台コーポレーション白老ファームの生産馬。セレクトセール2008で3300万円の値が付き、1歳時にイギリスへ輸出されました。

サンデーサイレンス、ウインドインハーヘア、Raja Baba、Mr.Prospector が同時に入るパターンは、リルダヴァル、ダノンパッション、シゲルキョクチョウなどと同じ。一見、素軽く淡泊なイメージですが、母方には Ribot 系や重厚な南米血統も入っているので、粘りも感じられます。

ディープインパクト産駒の海外デビュー馬はこれが2頭目。10月7日に仏サンクルー競馬場でデビューした Barocci は2着でした。
http://www.pedigreequery.com/barocci2

ヨーロッパで〔0・2・0・0〕は素晴らしいと思います。2頭ともこれから重賞戦線に加わってほしいですね。このほか、海外デビュー予定のディープインパクト産駒は3頭です。

★イギリス
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008100011/
★フランス
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008100001/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008100007/

2010年10月28日 (木)

ディープインパクト産駒、土日で4勝(3)

本日紹介する2頭は、いずれも『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』で◎を打って的中した馬なので、手っ取り早く説明するためにその予想文を転載します。カギ括弧の部分です。

■日曜東京5R新馬戦(芝1400m)リアルインパクト
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103244/

「◎リアルインパクトは『ディープインパクト×メドウレイク』という組み合わせ。アイルラヴァゲイン(オーシャンS)の半弟にあたる。母トキオリアリティーは、配合構成がメドウレイクの代表産駒メドウスター(BCジュベナイルフィリーズなど米G1を6勝)と酷似しているので、繁殖牝馬としての好成績もうなずける。基本的にディープインパクトはアメリカ血脈と相性がよく、本馬はサンデー系とニックスの関係にあるヘリオポリスが入るほか、ノーサードチャンス≒ブルームーン5×4・5などを持つ。なかなかの好配合馬。稽古で抜群の時計が出ており、このメンバーが相手なら問題なく通過しそう。」

パドックでは馬っ気を出していました。レース後、後藤浩輝騎手は気性面のコントロールについてコメントしていたので、ネックとなりそうなのはメンタル面だけですね。直線でエンジンが点火するまでにやや間を感じましたが、初戦なので何の問題ないでしょう。フットワークが豪快で惚れ惚れします。直線でグイッと伸びて後続を突き放したときに、スタンドにいた私の周囲に軽くどよめきが起こりました。気性面のケアを優先して大事に使っていくようですね。

■日曜京都5R新馬戦(芝1800m)ダノンバラード
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103548/

「◎ダノンバラードは『ディープインパクト×アンブライドルド』という組み合わせ。半兄にロードアリエス(京都新聞杯-2着)がいる。母レディバラードは現役時代にクイーン賞(G3・ダ1800m)とTCK女王盃(G3・ダ2000m)を勝った。本馬はヘイロー3×3を持っているが、これは父ディープインパクトのヘイロー≒サーアイヴァー2×4を継続するものなので好感が持てる。今年のNHKマイルCを勝ったダノンシャンティとも配合構成が似ている(ヘイロー3×3、2代母が全姉妹、ルファビュルーが入る)。抜群の稽古を消化しているのでしっかり勝ち負けに持ち込むだろう。」

文中でダノンシャンティとの比較について語りましたが、文章だけでは分かりづらいので表にしてみます。

           ┌ サンデーサイレンス
         ┌○┘
ダノンバラード ―┤ ┌○┐ ┌ Le Fabuleux
         └○┤ └○┘
           │ ┌ Halo
           └○┤
             └ Ballade

           ┌ サンデーサイレンス
         ┌○┤ ┌ Le Fabuleux
ダノンシャンティ ┤ └○┘
         └○┐ ┌ Halo
           └○┤
             └ Ballade

ダノンバラードの母の父 Unbridled は名配合の産物。しかし、性質としてはダート向きです。芝で走ったレッドチリペッパー(父 Unbridled)にしても、繁殖牝馬としては決め手を伝えていません。ですから、この血を取り込んで芝向きのA級中距離馬を作るには少々厄介なところがあります。ディープインパクトは、Halo≒Sir Ivor 3・5×3の効果があるにせよ、しっかり手なずけています。このあたりの懐の深さは魅力ですね。ちなみに、今週デビュー予定のダコール(父ディープインパクト)も母の父 Unbridled です。

ダノンバラードが年末に阪神へ行くのか、それとも中山へ向かうのかは分かりませんが、どちらでも好勝負でしょう。

今週の出走馬はまだ確定していません。ただ、10頭以上出てくることは間違いなさそうです。注目のレースは土曜京都6Rの新馬戦(芝2000m)。トーセンレーヴ(池江泰寿厩舎)とオンリーザブレイヴ(角居勝彦厩舎)が出走を予定しています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103273/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102980/

前者はノーザンファームのエース格。水曜日の坂路で好時計を出しました。私が今年のPOGで1位指名した馬です。後者は3月30日のエントリー「ディープインパクトの牝系をクロスさせてみると」で取り上げました。「Burghclere≒Height of Fashion 3×4」という4分の3同血クロスがどう出るか、ですね。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/03/post-fc82.html

このままいくと週末は台風14号の影響で道悪必至。その適性が問われそうです。芝の重・不良でディープインパクト産駒は〔1・1・0・2〕。サンプルは少ないものの悪くない結果が出ています。今週の競馬である程度傾向が鮮明になりそうです。

~~~~~~~~~~~~~~~~

注)トーセンレーヴは出走投票がなかったため、今週のデビューは見送られました。

2010年10月27日 (水)

ディープインパクト産駒、土日で4勝(2)

先週勝ち上がった馬の配合をざっと見ていきたいと思います。

■土曜京都5R新馬戦(芝1600m)ドナウブルー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103250/

ディープインパクトの母は Court Martial(父 Fair Trial)のクロスを持ちます。また、Fair Trial 3×3の Queen's Hussar も入ります。このあたりを刺激すると大物感が出づらいのではないかと考えたので、今年の馬選びでは、Fair Trial やその息子 Court Martial の影響が感じられる血――Danzig や Lyphard など――が入った馬は、積極的に評価しませんでした。ドナウブルーには両方入っています(笑)。

ただ、この馬にはサンデー系と相性のいい Revoked が入るので、そのあたりがポジティヴに作用したのかもしれません。このニックスについては昨年12月5日のエントリー(ミカエルビスティーと「Nothirdchance≒Revoked」)で触れています。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2009/12/nothirdchancere.html

今年のPOGでは、ディープインパクト産駒のレッドセインツ(新潟2歳S-3着)を指名しました。この馬はまさに Nothirdchance≒Revoked のニックスを持っています。

■日曜東京3R未勝利戦(芝2000m)サトノペガサス
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103131/

この馬もドナウブルーと同じく Lyphard クロスを持ち、しかも4×4・4ですから、あまり指名したくないタイプです(笑)。ただ、薔薇一族に属しており、母クラシックローズも3勝馬ですから、牝系の質はなかなかいいですね。

そして、なんといっても「Halo≒Sir Ivor≒Drone 3・5×5」です。父ディープインパクトは「Halo≒Sir Ivor 2×4」が配合構造のひとつの核。これを継続する配合は悪かろうはずがありません。これらとよく似た構造の Drone を入れると、同じような血がトリプルで重なるわけですから、その効果は大きいのではないかと思います。このあたりについては3月26日のエントリー(ディープインパクト産駒の成功する配合パターンとは?)で詳しく触れています。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/03/post-1f90.html

サトノペガサスは中山のほうがいいタイプではないでしょうか。京成杯あたりに向きそうな気がします。(続く)

2010年10月26日 (火)

ディープインパクト産駒、土日で4勝(1)

10月22日のエントリー(ディープインパクト産駒、今週10頭出走)に記したように、今週はうまくいけば3~4頭は勝てそうな情勢でした。期待どおりしっかり勝てるというのはいいですね。

土曜日
 東京2R 未勝利戦  芝1400m フジハヤブサ    9着
 東京4R 新馬戦   芝1800m エアジョイント   5着
 東京9R いちょうS 芝1600m ヒラボクインパクト 取消
 京都3R 未勝利戦  芝2000m スマートロビン   2着
 京都5R 新馬戦   芝1600m ドナウブルー    1着

日曜日
 東京2R 未勝利戦  芝1600m ナイスアゲイン   3着
 東京3R 未勝利戦  芝2000m サトノペガサス   1着
 東京5R 新馬戦   芝1400m リアルインパクト  1着
 京都5R 新馬戦   芝1800m ダノンバラード   1着
 京都5R 新馬戦   芝1800m フェアープライド  7着

夏ごろは明らかに期待先行で、7月から8月にかけてちょっと苦しい時期もありました。しかし、秋風が吹いたあたりからエンジンが掛かり、10月に入ってさらに加速しています。10月の成績は〔8・4・2・9〕。勝率34.8%、連対率52.2%、複勝率60.9%です。

夏のローカル短距離戦に向いたタイプではない、ということは常々言ってきたことですが、それよりも単純に、ここにきて期待馬が続々とデビューを迎えているということでしょう。1年で最もレベルが高いこの時期の新馬戦を、ディープインパクト産駒がどんどん勝ち上がっているわけですから、今後の重賞戦線は同産駒が中心となって展開していきそうな予感がします。もちろん、一方の雄ハーツクライも大物を揃えているので、これから来年春にかけて両産駒の大決戦となりそうですね。楽しみです。

初年度のサンデーサイレンス(94年)は、まったく同時期に18勝ですから、現在18勝のディープインパクトはこれにぴったり並びます。産駒数はディープのほうが多いので、サンデーサイレンスが記録した初年度産駒の勝利数記録「30勝」は、高い確率で更新できるのではないかと思います。

明日は勝ち上がった馬の血統を解説します。(続く)

2010年10月25日 (月)

菊花賞はビッグウィーク

前走の神戸新聞杯(G2・芝2400m)は、ローズキングダムとエイシンフラッシュに切れ負けして3着でした。1、2着馬の上がり3ハロンはは33秒3。バゴ産駒のビッグウィークにこんな脚はありません。

特殊な上がり勝負だった神戸新聞杯とは違い、菊花賞(G1・芝3000m)は別物のレースになることが予想されたので、凱旋門賞を勝った父バゴのスタミナが活きる流れになればあるいは……と考え、今回は4番手評価(△)。切れ味勝負を回避するために早めの競馬を心がけた川田騎手の好騎乗が光りました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007100208/

2代母タニノブーケはデイリー杯3歳S(G2・芝1400m)の勝ち馬。小柄で切れ味のある馬でした。繁殖牝馬としては成功し、タニノボレロ(新潟記念)、タニノクリエイト(神戸新聞杯)を出しており、ビッグウィークの母タニノジャドールはこの2頭の半妹にあたります。

 タニノブーケ(f.1982.ノーザンディクテイター)
   タニノボレロ(c.1988.トレボロ)新潟記念(G3)
   タニノクリエイト(c.1992.クリエイター)神戸新聞杯(G2)
   タニノジャドール(f.1998.サンデーサイレンス)
     ビッグウィーク(c.2007.バゴ)菊花賞(G1)

サンデーサイレンスの血は偉大というほかありません。今回の菊花賞は非サンデー系のワン・ツー・フィニッシュでしたが、母の父はいずれもサンデーサイレンス。母方に潜っても絶大な威力を発揮します。

日本に種牡馬として導入された凱旋門賞馬は13頭を数えますが、種牡馬としてまずまず成功したといえるのはセントクレスピン、ダンシングブレーヴ、トニービンぐらいで、あとは日本向きとはいえない鈍重なタイプがほとんどです。ビッグウィークの父バゴにもややそういった面が見られます。

バゴの父 Nashwan は現役時代に英2000ギニー(G1・芝8f)と英ダービー(G1・芝12f)の二冠を制覇。名騎手として名高いウィリー・カーソンが引退した際、騎乗した馬のなかでベストホースに挙げたほどの名馬でした。種牡馬としてはスタミナ型で、決め手もイマイチ。息子のバゴにもこうした特徴が伝わっているように思います。とはいえ、初年度産駒からビッグウィーク(菊花賞)とオウケンサクラ(フラワーC)を出したのですからたいしたものです。当たれば飛距離は出る、というキャラクターですね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2001190004/

バゴの父 Nashwan はディープインパクトの近親で、母 Moonlight's Box は Kingmambo と逆配合(Nureyev×Mr.Prospector)。血統構成的にややおもしろい布石があるので、遠い先の話になりますが、バゴの血を抱えた繁殖牝馬はそれらの血と組み合わせることでいい馬を出せるかもしれません。

今回の菊花賞は△コスモラピュタ(11番人気)が大逃げを打ちました。もう少し強い逃げ馬なら逃げ切っているペースです。1コーナーから2周目3コーナーまでの5ハロンで、13秒台のラップを4回刻んでいます。不思議なことに、1周目のゴール板前では5馬身のリードだったのが、ラップが落ちたこの区間で10馬身以上の大逃げとなっています。

先頭はこの5ハロンを65秒で走りました。直前の降雨を考慮に入れたとしても遅いペースです。そして、後続馬群はここで引き離されたわけですから、もっと遅いペースだったわけです。ビッグウィークはここで3番手から2番手に上昇しました。位置取りの勝利といえるでしょう。

ニホンピロムーテー(福永洋一)の菊花賞、テツノカチドキ(佐々木竹見)の二度目の東京大賞典、ライスシャワー(的場均)の二度目の天皇賞・春などのように、長丁場で道中のペースが遅いと見るや、レース途中から果敢に動いてハナに立ち、そのまま逃げ切るといった冒険的な騎乗を以前は目にすることがありました(ニホンピロムーテーはリアルタイムで見ていませんが)。チャレンジングスピリットが感じられる競馬はいつだって感動しますし、興行的なコンテンツとしても優れていると思います。たとえ馬券が外れても「いい競馬を見せてもらった」と満足できるからです。要するに“カネを取れる競馬”ですね。

ペースを読める騎手がいなくなったのか、あるいは現代の競馬ではそもそもその類の冒険は成立しないのか、馬乗りに関して素人の私には分かりません。ただ、3000mのレースで上がり33秒台後半~34秒台前半の馬たちが枕を並べて討ち死にしているのを見ると、違和感を感じずにはいられません。「動くに動けない」「先に動いたら負け」という言葉はよく耳にしますが、動かずに負けてしまったら元も子もないと思うのですが。

◎トウカイメロディ(2番人気)は6着。向正面から微妙に手応えが悪かったですね。このメンバー相手に横綱相撲で勝てるほどの力はまだありませんでした。

2010年10月24日 (日)

ダンスインザダークの配合的核心

富士S(G3・芝1600m)は、実績上位馬が体調面でパッとしなかったので、上がり馬ダノンヨーヨー(父ダンスインザダーク)が突き抜けました。それにしてもフローラルマジックの一族は走りますね。

 フローラルマジック(f.1985.Affirmed)
   ペイパーレイン(f.1991.Bel Bolide)
   │ マツリダゴッホ(c.2003.サンデーサイレンス)
   │      有馬記念(G1)、オールカマー(G2)[3回]、
   │      日経賞(G2)、アメリカJCC(G2)
   ホウシュウサルーン(c.1993.ベリファ)全日本3歳優駿
   グリーンプレゼンス(c.1995.ロドリゴデトリアーノ)
   │                   ④京都記念(G2)
   ナリタトップロード(c.1996.サッカーボーイ)
   │        菊花賞(G1)、阪神大賞典(G2)[2回]、
   │        弥生賞(G2)、京都大賞典(G2)、
   │        京都記念(G2)、きさらぎ賞(G3)
   フローラルグリーン(f.1998.フォーティナイナー)
     ダノンヨーヨー(c.2006.ダンスイザダーク)富士S(G3)

ダノンヨーヨーはナリタトップロードの甥、マツリダゴッホの従兄弟にあたります。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006103340/

「ダンスインザダーク×フォーティナイナー」は兵庫チャンピオンシップ(G3・ダ1870m)を勝ったインタータイヨウと同じ。ダノンヨーヨーが芝向きに出たのは2代母の父 Affirmed の影響でしょう。同馬は78年の米三冠馬。現役時代は一度も芝のレースに出走しませんでしたが、種牡馬としては Flawlessly、Zoman、Bint Pasha、Trusted Patner、The Tin Man など、むしろ芝向きの大物が目立ちました。サンデー系との相性も良好です。スティンガー、サイレントハピネス、アーバニティの3きょうだい(いずれも母の父 Affrimed)は、いずれもサンデーサイレンスまたはサンデー系種牡馬から誕生しています。

ダンスインザダークの3代母 Native Partner は、Raise You≒Flaming Swords 2×3という変わった構成です。
http://www.pedigreequery.com/native+partner

         ┌○┐ ┌ Ultimus
         │ └○┘
Raise You ――――┤   ┌ Man o'War
         │ ┌○┤
         └○┘ └ Lady Comfey
http://www.pedigreequery.com/raise+you

         ┌ Man o'War
Flaming Swords ―┤   ┌ Ultimus
         │ ┌○┘
         └○┤
           └ Lady Comfey
http://www.pedigreequery.com/flaming+swords

そして、ダンスインザダーク自身は、「Blue Swords=Bluehaze 5×5」という全きょうだいクロスを持っています。Blue Swords は Hail to Reason の母の父、Bluehaze はダンスインザダークの5代母。2頭はいずれも Flaming Swords の子です。

つまり、ダンスインザダークは、3代母 Native Partner が内包するユニークな相似な血のクロスを増幅することによって誕生したわけです。私はこの効果があまりにも強烈だったため、全きょうだいのダンスパートナー、ダンスインザムードがそろって走ったのだと考えています。

これがダンスインザダークの配合的核心だとするなら、その部分(Raise You、Flaming Swords)を刺激するのは配合テクニックの常道です。ダンスインザダークは Mr.Prospector(父 Raise a Native、その母 Raise You)と相性がいいのですが、これは単純に“ダンスインザダークのスタミナに Mr.Prospector のスピードが合う”といったバランス論に還元する話ではないしょう。Raise You と Flaming Swords の相似な血のクロスを継続することが効果を挙げているのだと考えます。

ダノンヨーヨーの母は Raise a Native 3×4ですから成功パターンに合致しています。牝系の優秀さを含めて配合水準は非常に高いですね。まだまだ上を目指せる器でしょう。

それにしても惜しかったのはブレイクランアウト。今回は12ヵ月の休養明けだったのですが、直線残り300mで前が詰まる不利。それで小差の5着ですから並の馬ではありません。まともなら勝っていた可能性もあります。

残念なことに、レース中に脚を痛めてしまったようで、入線後に馬運車で運ばれて行ってしまいました。命に関わる症状ではないとのことですが、どうやらこのまま引退のようです。高い素質を秘めながらついに本領を発揮できなかったという印象です。もったいないですね。

2010年10月23日 (土)

京都芝1600mのキングカメハメハ

馬券検討に「TARGET frontier JV」を利用される方は多いのではないでしょうか? “血統”というファクターからさまざまな切り口を見つけるのは楽しいものです。

たとえば、土曜日の京都9R三年坂特別(芝1600m)。

上位人気に推されるであろうカネトシディオスの父はキングカメハメハですが、TARGETで調べてみると、同種牡馬が京都芝1600mであまり走っていないことが分かります。

京都芝コースにおけるキングカメハメハ産駒の距離別連対率を並べてみましょう。

芝1200 20.0%
芝1400 26.9%
芝1600  9.5%
芝1800 22.4%
芝2000 20.8%
芝2200 37.5%
芝2400 11.1%

サンプル数が少ない芝2400mを除けば、おおむね20%を超えているのですが、芝1600mだけが抉られた谷間のようにガクンと成績を落としています。これを見てしまうとカネトシディオスの評価を控えめにしたくなります。

しかし、ちょっと待った!

事はそう単純ではありません。周知のとおり、京都の芝コースには“内回り”と“外回り”があります。同距離のレースであっても内回りで行われたり外回りで行われたりするのですからややこしいですね。これらは別コースですからちゃんと区別しなければなりません。

“内回り芝1600m”は、2、3歳限定の新馬、未勝利、500万クラスで使用されます。“外回り芝1600m”は、それ以外の条件で使用され、上級条件や重賞はすべてこちらで行われます。

項目集計を「距離」にして解析すると、内回りと外回りが合算されてしまうので正確な数字は出てきません。両者をそれぞれ表示するには「コース」を選択する必要があります。すると、以下のような数字が出てきます。

芝1600内  6.8%
芝1600外 20.0%

外回りコースでは他の距離と同程度の成績を残しているのですが、内回りコースでは惨憺たる有様です。59戦して4連対ですから酷いですね。

芝1200、1400、2000mなど、他の内回りコースでは普通に走っているので、両者の成績の差を直線の長さに求めるのは危険です。なんだか分からないけど走らない、と現状では結論づけるしかありません。

三年坂特別は外回りで行われるので、カネトシディオスをコース適性の観点から評価下げするのは間違い、ということです。同じケースは新潟芝2000mでも発生します。この2つのコースは適性を調べる際に注意が必要です。

2010年10月22日 (金)

ディープインパクト産駒、今週10頭出走

10月に入ってからディープインパクト産駒の出走頭数が増えつつあります。第1週から順に3頭→5頭→7頭ときて、今週は大量10頭。

もともと産駒数が多いのですが(初年度は152頭)、秋競馬が佳境に入り、デビューする馬がグンと増えました。それに加えて、競馬に下ろしてから故障により脱落する馬をあまり目にしません。したがって未勝利戦にもどんどん出てきます。育成に携わる方々が口にするように、脚もとが丈夫なのは大きいですね。馬体のサイズがあまり大きく出ないので、四肢への負担が小さいのでしょう。

体質が丈夫でないと2歳の早い時期から活躍することはできません。2歳戦で活躍した競走馬が種牡馬として好まれるのは、早熟さのなかに「体質の強さ」という要素が含まれるからです。晩成型の種牡馬は、成長力というセールスポイントがある一方、じつは体質面に不安のあるタイプも少なくありません。無事是名馬、という格言を引き合いに出すまでもなく、競走馬は走ってナンボですから、体質に難のあるタイプは成績が上がりませんね。

今週出走するディープインパクト産駒は以下のとおり。

土曜日
 東京2R 未勝利戦  芝1400m フジハヤブサ    牡
 東京4R 新馬戦   芝1800m エアジョイント   牡
 東京9R いちょうS 芝1600m ヒラボクインパクト 牡
 京都3R 未勝利戦  芝2000m スマートロビン   牡
 京都5R 新馬戦   芝1600m ドナウブルー    牝

日曜日
 東京2R 未勝利戦  芝1600m ナイスアゲイン   牡
 東京3R 未勝利戦  芝2000m サトノペガサス   牡
 東京5R 新馬戦   芝1400m リアルインパクト  牡
 京都5R 新馬戦   芝1800m フェアーブライド  牡
 京都5R 新馬戦   芝1800m ダノンバラード   牡

半分ぐらいの馬は連対圏にあるので、うまくいけば3~4頭は勝てるかもしれません。新馬戦に出るエアジョイント、リアルインパクトあたりは評判になっています。前者は、エアシェイディとエアメサイアの4分の3弟にあたり、JRAレーシングビュアーで追い切りの映像を見ることができるのですが、首を使った柔らかみのある動きで好感が持てます。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102787/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103244/

先週のディープインパクト産駒は7頭出走して〔2・2・0・3〕と大活躍。秋が深まるにつれて本領を発揮しています。勝利数はライバルのハーツクライと14勝ずつで並んでおり、今週、ハーツクライは3頭しか出走がないので、ディープインパクトが上に出る可能性が高いですね。ただ、現時点では勝率、連対率ともハーツクライのほうが上です。

9月21日のエントリー「ハーツクライ固め打ち」のなかでこう書きました。

「2歳のこの時期は週によって成績に波があるので、調子のいい週もあれば悪い週もあります。ハーツクライとディープインパクトについては、これから毎週上がったり下がったりするでしょう。この2頭はいずれリーディングサイアーを争う種牡馬になると思います。」
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/09/post-714d.html

この2頭の角逐は、フレッシュマンサイアーの争いにとどまらず、末永く続いていきそうです。

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!