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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2010年3月

2010年3月22日 (月)

アリゼオ鮮やか、しかし本番は

◎ローズキングダムはパドックでの雰囲気がもうひとつでしたね。もともと見栄えのするタイプではありませんが、朝日杯のときに感じられたキリッとしたオーラがなかったように思います。敗因は状態面に尽きるでしょう。ただ、馬体にあまり成長の跡が見られなかったのも事実で、本番での巻き返しに過大な期待をかけるのは危険ではないかという気がしました。

勝った○アリゼオは横山典弘騎手の好騎乗に負うところが大きいでしょう。シンボリクリスエス産駒は、キャリアの浅い時期に鮮やかな差し脚を披露しても信用できません。ストロングリターンやダノンカモンのようにクラスが上がると案外、というタイプが目に付きます。ちょうどこの馬のデビュー戦がそうでした。父シンボリクリスエスは切れ味を伝える種牡馬ではなく、サンデー系の一線級と対戦したときに、瞬発力比べでどうしても見劣ります。仮に上級のものを持っていても、最上級ではありません。最後の2ハロンが11秒2-11秒3で3着に競り負けた共同通信杯はまさにそんなレースでした。

2番手につけて早めに抜け出した2戦目のホープフルSこそこの馬の競馬です。あのレースは見た目が派手な初戦よりもはるかに高い価値がありました。今回は瞬発力勝負になりにくい中山芝1800m。先手を奪って後続を完封するという、ホープフルSの延長線上にある心憎いばかりの好騎乗でした。本番の皐月賞はヴィクトワールピサにマークされる展開でしょう。これを振り切るのは容易ではないと思います。シンボリクリスエス産駒はトライアルに強く本番に弱い、というイメージもあります。

△ゲシュタルトはデビュー前の調教で圧巻の動きを見せていた素質馬です。前走のこぶし賞(5着)は再三前が詰まって能力を出せなかったものなので参考外。ここで突っ込んでくる可能性は十分ありました。

昨年春に刊行された『競馬王のPOG本』の「栗山ノート」という企画で、マンハッタンカフェ産駒の好配合馬を5頭挙げました。そのリストは以下のとおり。

ハンソデバンド ……… 共同通信杯(G3)
サンディエゴシチー … 札幌2歳S(G3)
ゲシュタルト ………… スプリングS(G2)2着
ブラックゼット ……… 福寿草特別(500万下)2着
サトノアーチ ………… 1戦0勝

131頭から選んだ5頭がこの成績なので悪くないと思います。

ゲシュタルトは、母系に Sadler's Wells を持つマンハッタンカフェ産駒。このパターンの馬には、レッドディザイア、ジョーカプチーノ、ヤマニンウイスカーといった活躍馬がいます。Sadler's Wells とドイツ血統(マンハッタンカフェの母系にあります)の相性の良さは抜群で、ヨーロッパでは多くの活躍馬が出ています。母の父エンドスウィープは Mr.Prospector 系なので血統全体が重くなるのを防ぐ役割を果たし、父方のサンデーサイレンスとはニックスの関係にあるので好感が持てます。フロック扱いされて本番では人気にならないと思いますが、配合的には高い評価を与えられるので必ず押さえたいと思います。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007104975/

2010年3月21日 (日)

急坂で置かれたサンテミリオン

フラワーCの5ハロン通過タイムは62秒5。これは過去10年で最も遅いものです(重馬場だった04年でさえ61秒7)。オウケンサクラは距離ロスなく3番手を進んだことが勝因でしょう。展開に恵まれたのは確かだと思います。「バゴ×リアルシャダイ」という血統なのでオークスでは人気の一角となるはずです。ただ、サンデーを持つ馬に東京の瞬発力勝負で勝てるかというと、そこまでのイメージは湧きません。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007104509/

サンテミリオンはほぼ負けないだろうと思っていたのですが、意外なくらいアッサリ負けてしまいました。最後の2ハロンが11秒7-11秒3というラップなので、4コーナーで中団という位置取りではどう頑張っても苦しいですね。ただ、ほぼ同じ位置取りで斤量が1キロ重かったコスモネモシンに先着を許したのはいただけません。最後の急坂でコスモネモシンが力強く登坂したのに対し、サンテミリオンはモタついて置かれました。このあたりはキャリアの多寡だけでなく適性の違いもあると思います。次走、坂がゆるい東京コースで人気が落ちればおもしろそうです。

コスモネモシンは他馬よりも1キロ重い斤量で、展開も向かなかったのによく頑張りました。今回のメンバーのなかでいちばん強いレースをしたと思います。桜花賞でも侮れません。

2010年3月20日 (土)

ダービーへ一歩前進、ペルーサ

若葉Sは“横綱相撲で寄り切った”という内容で、一言でいえば完勝でした。勝ち時計の1分59秒9はレースレコード。毎日杯が芝2000mだった時代にクロフネが出した1分58秒6には及びませんが、当時はコース改修前で時計が出やすく、また今年は道悪競馬が続いたせいでやや馬場が荒れているので、単純比較はできません。

ペルーサについては、2月12日、13日のエントリーにも記したとおり、Hyperion 色の強い血が母系に入る、というゼンノロブロイ産駒の成功パターンに当てはまります。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007102705/

勝負どころで外からマクるようにスッと上昇するところは、父ゼンノロブロイが勝った山吹賞のレースぶりを思い出しました。脚さばきは父よりも柔らかいですね。これは母系に入ったアルゼンチン血統の影響かもしれません。

母アルゼンチンスターの全姉 Different は、アルゼンチンでチャンピオンに輝き、アメリカ移籍後もG1を勝った名牝です。同馬は、ハリウッドパークで行われた96年のブリーダーズCディスタフに出走し、1番人気で3着に敗れたのですが、私はこのときちょうど取材で同地を訪れていて、レース前日の調教時に同馬を観察する機会に恵まれました。均整の取れた明るい栗毛の馬体で、大柄ながら歩様がしなやかだったので芝でも走れそうだな、と思ったことを覚えています。伝統的なアルゼンチン血統は、ヨーロッパのステイヤー血統がベースとなっているので、総じて柔らかさがあります。ちなみに、サンデーサイレンスの柔らかさもアルゼンチン血統(母方の Montparnasse)の影響が大きいのではないかと考えています。

2代母ディフェレンテはややスピード感に欠ける配合なので、産駒のアルファフォーレスとシーディザーブスはダート向きに出ましたが、Candy Stripes が入るとちょっと違いますね。Candy Stripes の代表産駒の1頭 Leroidesanimaux は、ブラジル産馬ながらアメリカへ移籍して米芝牡馬チャンピオンに輝きました。Candy Stripes を母の父に持つ Candy Ride は、アルゼンチンとアメリカの双方でG1を制覇し、アルゼンチン時代は芝1600mで1分31秒01という好タイムでG1を勝っています。

今回の若葉Sは、ペルーサに長距離輸送の負担があるので、ホームグラウンドで戦うヒルノダムールが押さえ込むのではないかと考えたのですが、そんなことは関係ないとばかりにペルーサが能力の違いを見せつけました。次走の青葉賞は負けようがないと思いますし、ダービーでも勝ち負けでしょう。ヒルノダムールはもう少し脚をためて切れを活かすようなレースが向いているかもしれませんね。

『netkeiba』でアルゼンチンスターの血統表を見ると、4代母の父が「スノッブ」となっていますが、日本に入った馬ではないので「Snob」が正しいと思います。日本に種牡馬として入ったスノッブ(父 Mourne)とは別馬です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1996110347/

2010年3月19日 (金)

母の父にサンデーサイレンスを持つと

父として偉大だったサンデーサイレンスは、母系に入っても偉大です。あらためて説明するまでもないでしょう。2007年からブルードメアサイアーランキングで首位を走り続けています。

では、主要な非サンデー系種牡馬が母の父にサンデーを持つ場合、そうでない場合に比べてどれくらい成績が向上するのか、1走あたりの賞金額で比較してみます。

          母の父SS以外 母の父SS   上昇率
ジャングルポケット  160万円  323万円  201%
タニノギムレット   171万円  234万円  136%
クロフネ       144万円  196万円  136%
フレンチデピュティ  171万円  216万円  126%
キングカメハメハ   161万円  199万円  123%
シンボリクリスエス  147万円  156万円  106%

最も上昇率が高いのはジャングルポケット。母の父にサンデーを持つ場合、それ以外の配合と比べて、1走あたりの賞金額が倍以上跳ね上がることがわかります。他の種牡馬と比較してもダントツです。トールポピー、フサイチホウオー、トーセンキャプテン、アプリコットフィズ、ジャガーメイルなど活躍馬が目白押しなので、この数字はうなずけるところです。POGでも、じっさいに馬を買う場合でも、「ジャングルポケット×サンデー」は大きな戦力として期待できます。

タニノギムレットはウオッカ1頭の影響が大きすぎるので、もしこれがいないとすると、「母の父サンデー以外」の賞金は152万円となるので、上昇率は153%となります。これも高いですね。

キングカメハメハはここ数ヵ月、ローズキングダムを筆頭に母の父サンデーの活躍が目立ちます。昨年12月以降に限定すると、「母の父サンデー」の1走あたりの賞金額は303万円とジャンプアップ。ただ、それでもジャングルポケットには届きません。

逆に、シンボリクリスエスは上昇率が低く、母の父にサンデーを持っていても持っていなくてもほとんど変わりません。この馬は1走あたりの賞金額そのものが低いですね。

昨年夏に行われたセレクトセール2009(当歳馬&1歳馬)で、「ジャングルポケット×サンデー」は4頭落札され、その平均価格は2137万円でした。一方、シンボリクリスエス産駒は20頭落札され、その平均価格は4095万円でした。

つまり、「ジャングルポケット×サンデー」は1走あたり323万円も稼いでいるのにセレクトセールの平均落札価格は2137万円。一方、シンボリクリスエス産駒は1走あたり147万円しか稼いでいないのに平均落札価格は4095万円。どちらがいい買い物をしているのか一目瞭然です。

“ロジ”の冠名で知られる久米田正明氏は、持ち馬の連対率が50%を超えるという驚異的な成績を挙げているのですが、昨年の同セールで「ジャングルポケット×サンデー」を1頭、しっかり落札しています。馬選びのうまいオーナーはやはりひと味違います。

2010年3月18日 (木)

ラストタイクーンと Mill Reef クロス

今週はスプリングS、若葉S、フラワーCが行われます。これが終われば本番の勢力図はほぼ明らかになります。馬場状態にもよりますが、現時点では大きな波乱はないのでは、と考えています。

スプリングSのローズキングダムとフラワーCのサンテミリオンは、配合構成がよく似ています。近い世代に、サンデーサイレンス、ラストタイクーン、Mr.Prospector、Mill Reef が共通しています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007103404/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007102958/

            ┌ Mr.Prospector
          ┌○┘
        ┌○┤ ┌ラストタイクーン┐ ┌ Mill Reef
        │ └○┘        └○┘
ローズキングダム┤ ┌サンデーサイレンス
        │ │   ┌ Mill Reef
        └○┤ ┌○┘
          └○┘

          ┌サンデーサイレンス
          │   ┌ Mr.Prospector
        ┌○┤ ┌○┘
        │ └○┘
サンテミリオン―┤ ┌ラストタイクーン┐ ┌ Mill Reef
        │ │        └○┘
        │ │   ┌ Mill Reef
        └○┤ ┌○┘
          └○┘

ラストタイクーンは、キングカメハメハの母の父になったことで、このところまた存在感が増しているような気がします。芝向きのマイラーで小回りコースが得意、というタイプです。
http://www.pedigreequery.com/last+tycoon

現役時代はヨーロッパで走り、スプリンター(それも良績は5fのみ)として活躍していたのですが、何を思ったか3歳秋にブリーダーズCマイル(芝8f)に挑戦し、まったくの人気薄ながら鮮やかに抜け出して勝ってしまいました。サンタアニタの小回りコースを器用にこなした姿が印象的でした。
http://www.youtube.com/watch?v=mMmZbFmYmDY

キングカメハメハのレースでいちばん好きなのはNHKマイルCです。マイルにおけるあのスピードは「ラストタイクーンっぽい」と感じたものです。ただ、種牡馬となって産駒が出てみると、東京コースに強く、ダートを苦にしないので、Kingmambo 的な要素も色濃くうかがえます。

ラストタイクーンは、La Troienne 牝系を凝縮した Sex Appeal を父方に持つにもかかわらず、ダートがまるっきり下手なので、母方から受け継いだものが多いのではないかと推察されます。したがって、母の父 Mill Reef を強調した配合は悪くないでしょう。Adlerflug(独ダービー、ドイツ賞)や Viva Pataca(香港年度代表馬、ドバイシーマクラシック-2着)、そして Alinghi(豪で4つのG1を含むGレース9勝の名牝)の母など、ラストタイクーンを含んだ Mill Reef クロス馬は、ここ数年活躍が目につきます。
http://www.pedigreequery.com/adlerflug2
http://www.pedigreequery.com/viva+pataca
http://www.pedigreequery.com/alinghi

ローズキングダムは Mill Reef 5×4、サンテミリオンは母が Mill Reef 3×3なので、このパターンに当てはまります。

サンデーサイレンスとラストタイクーンの組み合わせから誕生した最高傑作は、父フジキセキの豪州産馬 Sun Classique(ドバイシーマクラシックなどG1を4勝)。同馬は Mill Reef クロスこそ持っていませんが、その母 Milan Mill のクロス(5×5)を持っています。やはりラストタイクーンに関しては、Mill Reef 近辺の血を強化するのが有効なテクニックのひとつではないかと思います。
http://www.pedigreequery.com/sun+classique

ローズキングダムとサンテミリオンは、Sun Classique と配合が似ています(近い世代でサンデーとラストタイクーンが共通)。気の早い話ではありますが、洋芝適性はあるでしょうし、オールウェザーを苦にするタイプとも思えないので、来年はドバイに行ってほしいですね。今週の競馬だけでなくこの先どんな競走生活を送るのか興味深く見守りたいと思います。

2010年3月17日 (水)

世紀の女傑対決、お流れに

Rachel Alexandra と Zenyatta の世紀の女傑対決(4月9日、アップルブラッサム招待S-米G1)は、結局、お流れとなってしまいました。Rachel Alexandra が休み明け緒戦で思わぬ敗戦を喫し、陣営が回避を決めたからです。

オールウェザーを主戦場とする Zenyatta が、対決を実現するためにダートへの出走に踏み切るという歩み寄りを見せたのに、ホーム側の Rachel Alexandra がさっさと回避を決めたのでは、逃げているという批判が出ても仕方ありません。こうした姿勢は、直接対決で負けるよりも Rachel Alexandra の名誉を傷つけると思うのですが。

ただ、今回は負け方が悪かったのも事実です。いくら休み明けで体調がイマイチとはいえ、4コーナーでマクられて直線でねじ伏せられるという、力負けとしか思えないレースぶりでした。
http://www.youtube.com/watch?v=thcV_9NDqVA

勝った Zardana は、Zenyatta と同じジョン・シレフス調教師の管理馬。ライバルの実力を測ろうと僚馬を出走させたら思いがけず勝ってしまったわけです。驚くべきことにこれが初ダート。眠っていた能力が目覚めた可能性もあります。Sadler's Wells の孫にあたるブラジル産馬で、母の父はサザンヘイロー、2代母の父 Merce Cunningham は Caerleon の全弟です。配合を見てレッドディザイア(とジョーカプチーノ)を思い出しました。近い世代で Sadler's Wells、Halo、Caerleon(=Merce Cunningham)が共通します。
http://www.pedigreequery.com/zardan
http://www.pedigreequery.com/red+desire2

          ┌ Sadler's Wells
        ┌○┘
Zardana ――――┤   ┌ Halo
        │ ┌○┘         ┌ Nijinsky
        └○┤ ┌Merce Cunningham ┤
          └○┘         └ Foreseer

            ┌ Halo
          ┌○┘
        ┌○┘     ┌ Nijinsky
レッドディザイア┤ ┌ Caerleon ┤
        └○┤     └ Foreseer
          │ ┌ Sadler's Wells
          └○┘

一方の Zenyatta は、休み明け緒戦のサンタマルガリータ招待H(米G1)をいつもどおりの強さで快勝しました。
http://www.youtube.com/watch?v=S0SwxIi11aI

4月9日のアップルブラッサム招待Hは、これで Zenyatta の独壇場かといえばそうでもなく、2月16日のエントリーで採り上げたベネズエラの女傑 Bambera(通算18戦16勝)が挑戦してきます。
http://www.pedigreequery.com/bambera2

Rachel Alexandra が回避し、総賞金が10分の1に減額されてもなお、興味深いレースには違いありません。

2010年3月16日 (火)

フィフスペトル復活

先週日曜日の東風S(OP・中山芝1600m)でフィフスペトルが復活しました。2歳夏の函館2歳S(G3)以来1年7ヵ月ぶりの勝利です。この馬の配合についての見解は、08年7月の新馬戦で◎を打ったとき以来ほとんど変わっていません。当時、『web競馬王』に掲載した予想を再録します。

「◎フィフスペトルは『キングカメハメハ×バーリ』という組み合わせ。キングカメハメハはトゥールビヨン-ジェベルのラインが母系の構成要素の核となっているので、ここを強化した配合は買える。本馬の母の父バーリは英マイルG1を2勝した名馬で、ジェベル5×5。配合相手に入る血脈としては好ましい。本馬はミルリーフ≒リヴァーマン5×3。底力に秀でた本格的な血で構成されており、新馬戦だけでなく先々まで楽しめそう。」

キングカメハメハは Never Bend と相性がいいだろう――ということは、産駒がデビューする前から赤本(POGの達人)などで指摘してきました。2月3日のエントリーでも触れた箇所なのでご参照ください。

新馬戦の予想をした時点ではうっかりスルーしてしまったのですが、フィフスペトルの母ライラックレーンには、Never Bend≒Nanticious 3×3があります。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a00fed6/
http://www.pedigreequery.com/never+bend
http://www.pedigreequery.com/nanticious

      ┌ Nasrullah
Never Bend ┤     ┌ Tourbillon
      │   ┌○┘
      │ ┌○┘
      └○┤
        └ Be Faithful

        ┌ Nasrullah
      ┌○┘
Nanticious ┤   ┌ Tourbillon
      │ ┌○┘
      └○┤
        └ Be Faithful

このほか、Nijinsky 3×3、My Babu≒Ambiorix 5×5、Bull Page≒Rerelea 5×4・5、Nasrullah≒Royal Charger 4・6×5・5・5など、眩暈がするような父母相似配合です。

こういう特殊な凝縮を持つ配合馬は、競走馬としてはダメでも、母や2代母となって真価を発揮することがよくあります。たとえばトキツダイヤなどはその一例です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a0034f9/

この悪夢のような配合は孫の代で花開きました。70年代末から80年代前半にかけて地方競馬を賑わしたタガワ四兄弟(タガワエース、タガワキング、タガワテツオー、タガワリュウオー)は、トキツダイヤの孫です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1977102855/

フィフスペトルの母ライラックレーンは、Blushing K.D.(ケンタッキーオークス-米G1)や Electronic Unicorn(香港の名マイラー)の半妹でもあり、繁殖牝馬としてかなりの器かもしれないと考え、昨年のPOGではフィフスペトルの半弟ヴァルガリスを指名したのですが、いまだに仕上がらずデビューに至っていません。その全妹にあたる今年の2歳馬は早々と故障してしまいました。こういう配合なので体質的な弱さを伝えるのかもしれません(しかも2頭の父はアグネスタキオンです)。

東風Sを快勝したフィフスペトルは、次走、中2週でダービー卿チャレンジトロフィー(G3)か、中4週でマイラーズC(G2)に挑むはずです。そこからぜひ安田記念(G1)に駒を進めてほしいものです。

2010年3月15日 (月)

関口房朗氏が苦境に

3月14日付けの『東京スポーツ』によれば、先日、船橋のダイオライト記念(G2)を勝ったばかりのフサイチセブンが裁判所に差し押さえられたそうです。

数年前から苦境が漏れ伝わっていた馬主の関口房朗氏は、1990年代半ば以降、競馬界有数のスポンサーでした。本業や私生活に関してはうかがい知るところではありませんが、少なくとも競馬にまつわる活動については、ほかの誰にも真似できないことをなさった方だと思います。経済的に厳しくなってからは、セリで落札した馬の代金支払いに窮し、たびたびトラブルを起こしていました。

いまをときめくレッドディザイアは、じつは関口氏と深い関わりがあります。父マンハッタンカフェを最初にセリで落札(1億3000万円)したのは関口氏でした。その後、キャンセルとなったため西川清氏と吉田照哉氏の共同持ち馬となりました。イギリス生まれの母グレイトサンライズは、関口氏の名義で生産された馬です。しかし、自ら走らせることはなく、歌手でタレントのやしきたかじん氏の名義で走りました。数年後、この2頭が結びつき、レッドディザイアが誕生しました。

毀誉褒貶はさまざまですが、ファンサービスの姿勢は徹底していたので、関口氏のことを悪く言うファンは少なかったような気がします。

数年前、『それでも悲しき日本競馬』(東邦出版)という関口氏の著書の編集に関わったのですが、そのなかで関口氏は、フサイチペガサスが勝った2000年のケンタッキーダービーにおける“舞妓パフォーマンス”について触れています。ちょっと長いのですが引用します。

「私は生来パフォーマンスをするのが平気な性質で、もっと言えば目立つのが大好きな性分である。だからこれからもいろいろな場面で、さまざまなパフォーマンスをお見せすることになるだろう。だが、これだけは知っておいていただきたい。私はただウケたいためだけに、パフォーマンスをやっているわけではないということを。道化を演じる裏には、私なりのメッセージが隠されている。」

「ケンタッキーダービーの舞妓は、日本人のプライドを表現したつもりだった。所有馬であるフサイチペガサスが、ケンタッキーダービーで本命に推されるほど有力視されたことは、大げさに言えば、日本の誇りだと思ったのだ。そのオーナーである私が、チャーチルダウンズ競馬場で縮こまっているわけにはいかない。(中略)精一杯目立たなければならない。そのために、アメリカ人が日本と聞いてすぐに思い出す『ゲイシャ、フジヤマ』を連れて行こうと決意した。残念ながら、フジヤマをアメリカに持っていくことはできない。だったら、ゲイシャだろう。というわけで、私の傍らには舞妓たちが陣取ったというわけである。」

「舞妓はアメリカでは大ウケだった。ケンタッキーダービーの前夜祭では、ステージに上げて舞を踊ったり、私とタンゴを踊ったりして、大喝采を浴びている。それが、チャーチルダウンズ競馬場の場長の耳に入り、パーティーを盛り上げたお礼ということで、私は舞妓らとともにVIPルームに招待されているのだ。」

カッコイイですね。つねにド派手で、つねに豪快。これほどの傑物は関口氏のほかに二度と現れることはないと思います。

2010年3月14日 (日)

フィリーズレビューはサウンドバリアー

800mの通過は例年よりもやや遅め。ただ、今年は道悪競馬が続いた影響で馬場が荒れており、スローというよりむしろやや速めのラップだったと思います。

勝ったサウンドバリアーは、2走前の未勝利戦は強い内容で、前走は展開不向き。ラブミーチャンが速いペースで引っ張る今回は、好走してもおかしくない馬でした。ただ、印が回りませんでしたね~。

Mr.Prospector、Seattle Slew、Secretariat という70年代のアメリカの名血を集め、2代母は米年度代表馬。緩急のある競馬はともかく平均して速いラップを刻むレースには強そうです。△ぐらいはつけておくべきでした。リーチザクラウンの母クラウンピースと配合構成がよく似ています(Mr.Prospector、Seattle Slew、Secretariat、Six Crowns が共通)。気の早い話ですが繁殖牝馬としても楽しみですね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007101512/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1997103429/

◎を打ったレディアルバローザは3着。ゴール前数十メートルの地点では勝ったと思ったのですが……。残念。

2010年3月13日 (土)

ゼンノロブロイ×トニービン

土曜中山11RのアネモネSはギンザボナンザ、阪神9Rのゆきやなぎ賞はハートビートソングが勝ちました。この2頭はいずれも「ゼンノロブロイ×トニービン」という組み合わせです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007103127/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007102887/

このブログで繰り返し指摘しているように、ゼンノロブロイの配合は、アメリカ血統過多といったところがあるので、重厚なヨーロッパ血脈のサポートが必要です。トニービンがフィットするのはそういう理由です。2月18日、1月25日、1月2日のエントリーでも触れていますのでご覧ください。

予想は、アネモネSは○◎、ゆきやなぎ賞は◎▲で的中。アネモネSで1番人気に推されたアニメイトバイオは休み明けで気負ってましたね。序盤に引っ掛かった分、追って弾けませんでした。

土曜日は「ゼンノロブロイ×トニービン」のほかにもうひとつ、「ホワイトマズル×サンデーサイレンス」も走りました。中京記念を勝ったシャドウゲイト、中山の館山特別を勝ったクレスコワールドはこの組み合わせです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2002100621/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004103462/
日曜日の中山牝馬Sにはこれらと同じ配合のコロンバスサークル(土曜日の前売りでは単勝1番人気)が出走します。ちょっと怖いですね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006103088/

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!