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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2010年11月30日 (火)

ディープインパクト産駒の格上がり戦

11月28日のエントリー「土曜日の2歳戦いろいろ」のコメント欄に、ぎむれっと様から「ディープの仔って、なかなか2勝目あげれませんね、新馬戦でパフォーマンス見せてクラス上がると2着までのパターンが多いような気がします」というご意見を賜りました。

ジャパンCが終わったあと、府中駅近くの居酒屋で、石川ワタルさんご夫妻、宇田川淳さん、村田利之さんなど総勢十数名で宴会をしたのですが、奇遇なことにその席でも「ディープインパクト産駒って、すごく勝ってる割に2勝馬が少ないですよね、栗山さんどう思われますか」と訊かれました。

みなさんが疑問に思われていることなのだなぁと実感しました。正しい答えなのかどうかは分かりませんし、あくまでも仮説ですが、現時点における私の考えを述べたいと思います。

11月末までにディープインパクトが挙げた勝利数は33。勝ち上がりは31頭で、うち2勝馬は2頭です(ディープサウンド、ドナウブルー)。京王杯2歳S(G2)でリアルインパクトが2着となっているのでOP馬は計3頭です。

サンデーサイレンスが新種牡馬だった94年は、23頭が30勝を挙げました。2勝以上は7頭です。重賞2着馬を含めるとOP馬は計9頭。時代背景が異なることを考慮しても驚異的な数字です。

ディープインパクト産駒を見ていてちょっと異様だなぁと思うのは、新馬戦における圧倒的な強さです。長いあいだ競馬を見てきましたが、これほど新馬戦で勝ち上がる種牡馬は記憶にありません。またディープ、またまたディープ……といった感じで、そこそこ人気に推された馬ならほとんどが勝ち上がってしまうという印象です。

94年のサンデーサイレンス、2歳戦で過去最高の勝ち星(54勝)を記録した04年のサンデーサイレンス、そして今年のディープインパクトの新馬戦勝率を比較してみます。94年当時は折り返しの新馬戦があったので、それを除いた新馬初戦のみ対象です。

94年 サンデーサイレンス 21.9%
04年 サンデーサイレンス 20.4%
10年 ディープインパクト 31.3%

今年のディープインパクト産駒がどれほど新馬戦に強いかご理解いただけると思います。サンデーにめぼしいライバルがいなかった94年、全盛期を迎えた04年ですら、今年のディープインパクトには敵いません。

ディープインパクト産駒がデビュー戦に強いのは、能力の高さはもちろんですが、気のいいタイプが多く、競走に対して前向きであることが大きいと思います。それに加えて、デビューさせる各厩舎も、ディープインパクト産駒ということで多少意識が違うのか、新馬戦からキッチリ仕上げてきます。どれも高馬だけに“下手な仕上げでは出せない”という気持ちがあるのかもしれません。トーセンレーヴが万全を期してデビューを再三延期しているのはその典型でしょう。

新馬戦向きのディープインパクト産駒が、いきなり目一杯に仕上げられれば、それは強いと思います。ただ、上がり目は乏しく、馬によっては反動もあるでしょう。2戦目にもうひとつパフォーマンスが伸びないのはこのあたりに原因があるのではないかと考えています。

ですから、藤沢厩舎や角居厩舎のような、馬を作りすぎずにゆっくり仕上げる調整法が、ディープインパクト産駒には合っているのではないかと個人的には考えています。ポンポンと勝ち上がるので手が掛からないように見えて、じつは、大成させるためにはほかの種牡馬の子よりも我慢と忍耐が必要なのかもしれません。

優れた資質を持っていることは明らかだと思うので、やがてどんどんOP馬が誕生していくでしょう。

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ディープインパクト産駒の格上がり戦を参照しているブログ:

コメント

栗山さま、見解ありがとうございます。参考になり早速インプットしました。新馬戦のパドック見てもディープの仔は目をひいてました(高値もあるかも?)しばらくは勝ち上がっても2着付けで楽しみます。本当にありがとうございました。

はじめまして。やはり新種牡馬はそういう傾向が多いんですかね。ただ昇級戦で2、3着が多いことはもどかしい一方で通用してる訳でもあると思います。
こんなに勝ち上がってしまうとオッズにも現れている通りファンの期待値が半端では無いところは気の毒ですが
それは仕方ないことなのかも?

あと気になるのはハーツが今までの貯金を食いつぶしそうな勢いで下降しているのとキンカメが勝ち星こそ挙げているものの初年度に近い気がします。
まあディープの2勝目同様早とちりなんですが

栗山さんの見解、興味深く読ませていただきました。
自分もこの件について、ずっと考えてきたのですが、栗山さんの指摘される理由の他にも、2つほどそれらしい原因を考えてみました。

1つは、サンデーサイレンス産駒に較べると、ディープインパクト産駒の成長速度がやや遅めなのではないかということです。
ディープ産駒は、小柄で丈夫で仕上がり早ということで次々デビューしていきますが、ただ仕上がっているというだけで成長途上の産駒も多いのではないでしょうか。新馬こそ素質だけで勝ち上がれますが、クラスが上がると壁にあたることになります。
古い例で恐縮ですが、リアルシャダイの初年度産駒は、19頭がデビューして13頭が勝ち上がりましたが、2歳時に2勝目をあげた馬はゼロでした。そのため、今では考えられないことですが、リアルシャダイ産駒=早熟論が盛んに言われたものでした。もちろん、晩成タイプの多いリアルシャダイ産駒はその後どんどん成長し、最終的には父をリーディングサイアーにまで押し上げました。
サンデー産駒やタキオン産駒やネオユニヴァース産駒などの活躍馬は、ポンポンと勝ち上がっていく馬多いですが、ディープ産駒やハーツクライ産駒は勝ったり負けたりしながらゆっくり強くなっていく馬の割合が多めになるのではないでしょうか。

次に第2の理由ですが、これはディープ産駒のレース運びのある特徴に関するものです。
新馬を勝ちあがるようなディープ産駒に広く見られる共通点として、ラスト1ハロンの速さがあげられます。
これはディープ譲りの長所ですが、反面、ディープに似ていない短所として、3~4角から直線の前半くらいのいわゆる勝負所でモタつく馬が非常に多いのです。
最も典型的な例として、この土曜に新馬勝ちしたナリタキングロードのレースをあげてみます。
このレースは、3~4角でナリタの武豊騎手の手が激しく動き、このありさまでは直線で馬群に沈むのではないかと思われましたが、最後の1ハロンで豪快に差し切って勝利をおさめました。
とすると、あの手綱の動きは3~4角でレースがペースアップしたせいと思われるのですが、実は全く逆で、あのあたりはペースダウンしてレース中で最も遅いラップだったのです。その遅いラップでも激しく手綱が動いているのに、最後の1ハロンは推定11秒台前半の凄い脚を使っているのです。
こうしたレース振りは多くの新馬勝ちしたディープ産駒に共通しており、最後の1ハロンだけで豪快に決着をつけているケースがかなりの割合を占めています。
おそらくディープ産駒は、繊細なサンデー産駒に較べ、おっとりとした気性の馬が多いのではないでしょうか。そのため、騎手のゴーサインへの反応が遅れるのだと思います。
そうしたレース振りは、新馬戦なら通用しますが、クラスが上がると勝負所で置かれて、慌てて巻き返しても届かず2着3着といった結果になってしまうのです。格上げ戦で負ける場合でも、意外に惜敗が多いのもディープ産駒の特徴となっています。典型的な例としては、京王杯2歳Sのリアルインパクトがあげられるでしょう。
ディープ自身は武騎手のゴーサインに素早く反応しましたが、意外にこの点だけは産駒に伝わっていないのではないかと疑われるのです。

素人が長々と失礼いたしました。
最近考え込んでいるテーマだったもので、つい長文になってしまい、申し訳ありませんでした。

これから書くことは個人的な見解で、まったく信頼性のないものですが(笑)、自分なりの見解を書かせて貰います。現状では勝ち上がり馬の数に比べて2勝馬の数は多くはありませんね。ですが2勝馬自体は年末からクラシックにかけて飛躍的に増えてくると思っています。ただ、勝ち上がった産駒の走りを見ると「大物感」という点では物足りなさを感じます。それは「アベレージタイプ」であることが一番大きな要因だと考えています。自分の中では種牡馬は「アベレージタイプ」と「一発タイプ」に分けています。アベレージタイプは産駒に平均的な能力は伝わりやすい反面、爆発的な力は伝わりにくい(伝わらないわけではないが、確率的な問題です)。一発タイプはその逆です。サンデー後継種牡馬で分けると、アベレージタイプは(アグネスタキオン、マンハッタンカフェ、フジキセキなど)、一発タイプは(スペシャルウィーク、ネオユニヴァースなど)と考えています。アベレージタイプは平均以上の能力を持った産駒が多いので、レースで上位に来る割合が高く、賞金も増えやすいのでリーディングの順位やアーニングインデックスが高くなりやすいです。一発タイプはその逆で一部の産駒は重賞レースで大活躍しますが、凡走をする産駒も多くリーディング順位やアーニングは低くなりがちです。ディープは先ほども述べた通りアベレージタイプ(あくまで予想ですが)で平均以上の能力を持った産駒が多いので、勝ち上がりはしますが上のクラス(重賞など)でも通用する産駒はそれほど多くないと思っています。サンデーサイレンスもアベレージタイプだったと考えていますが、基本性能が違いすぎたので上のクラスでも即通用していたと思っています。正直な所、ディープ産駒の基本性能はサンデーとは差があるかなと思っています(全てのサンデー後継種牡馬もですが)。なので、「超」がつく大物はなかなか出ないかもしれませんが、アベレージタイプは一発タイプに比べると2勝馬自体は出やすいと思っているので、2勝馬が少ないという話自体は来年の今頃は消えていると思います。勿論、G1クラスの大物は出てくると思いますし(ドナウブルーやディープサウンドは重賞でも通用すると思っています)、リーディングサイアーも獲得すると予想しています。

>ぎむれっと様

いえいえ、こちらこそ、話のテーマを振っていただきありがとうございました。

>kreva 様

はじめまして。昇級戦で2、3着なら、通常は2~3戦以内に勝ち上がるので、こういうことが話題になるのはいまだけなのかもしれませんね。ディープインパクト産駒の過剰人気ぶりは驚くほどで、稽古が平凡でどう考えても厳しいだろうという馬が上位人気に推されたりします。そういう馬が結構頑張っちゃったりするところがまた凄いんですけどね……。おっしゃるとおり、今年は種牡馬ごとにそれぞれ興味深い傾向が目に付きます。適宜ブログに取り上げていけたらと考えています。

>toku 様

ディープインパクトの母方はどちらかといえば晩成血統なので、これだけ早い時期から勝ち馬が続出するのは驚きでした。たしかに、いまは素質の高さで勝ち上がっている状況で、馬に実が入ってくるのはもっと後なのかもしれませんね。3歳春にある程度完成するようだとクラシックは凄いことになりそうです。

勝負どころの反応の鈍さについても、気性面に原因を求めるとすると、なるほど、と納得がいきます。2勝を挙げた2頭はいずれも Danzig を持っていますが、この血は競走意欲に優れた前向きな気性を伝えます。のんびり屋ディープの欠点を補っていると考えることは可能だと思います。

興味深い論考ありがとうございました。勉強になりました。

種牡馬マンカフェが思った以上にスピードを伝えてるのも、Tom Rolfeのパワーで突進しているのもあるでしょうが、Halo≒Boldnesian2×4がONになりやすいからかもしれないですね~
Rahyとかもってきたら間違いなくマイラーになるもんなあ…
ハーツクライも例のNothirdchance≒Revokedでしか産駒のスピード平均値の高さは説明できないし、でもマンカフェがレッドディザイアを出したように、クラシックタイプの母との配合でディープもハーツも大物中距離馬を出すのかもしれないし、とにかくダービーまで考察を続けるしかないですな~

>ユウ様

種牡馬にはいろいろなタイプがいるので、それを見極めてPOGで指名したり、馬券を買ったり、という面白さがあります。サンデー系でも千差万別ですから、興味が尽きることはありません。ディープインパクトがどんな種牡馬であるか、いまの時期は議論百出、ワイワイ推理しているのが楽しいですね。

>MJ様

先週はサンディエゴシチーとジャズピアノの共演でしたね~。的中お見事でした。マンカフェはかっちり成功パターンが決まってるんで、血統評論家にとってのお助けボーイ、いや“お助けマン”ですね(笑)。基本スピードがあって、サドラーみたいな欧州血脈とも和合性があって……という種牡馬はホントに楽でいいですよ。複雑な方程式は必要なく、基本的に足し算だけの世界ですから。ディープとハーツもそうだったらいいんですけど、もう少し複雑そうかなぁ……。3月ぐらいまでにはある程度の目処は付けたいですけどね。

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