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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

時事問題

2011年4月 1日 (金)

ディープインパクト産駒の Barocci がフランスで勝利

Omnium II は19世紀末のフランスの名馬で、仏ダービーをはじめ大レースを勝ちまくり、引退後は仏リーディングサイアーにもなりました。Tourbillon の父として知られる Ksar(凱旋門賞2回、仏ダービー)は Omnium II 3×2です。
http://www.pedigreequery.com/ksar

この馬を記念したオムニウムII賞(芝1600m)は、リステッドレースではありますがそこそこ重要度の高いレースです。フランスの3歳牡馬のトップクラスは、シーズン最初のレースとして、4月半ばにロンシャンで行われるフォンテンブロー賞(G3・芝1600m)か、3月にサンクルーで行われるオムニウムII賞を使ってくることが多いですね。

日本で生まれ、フランスに輸出されたディープインパクト産駒の Barocci は、昨年10月のデビュー戦で2着。今回のオムニウムII賞は約半年ぶりのレースでした。結果は以下のとおり。

■オムニウムII賞(3/31・サンクルー・芝1600m・7頭・不良馬場)
1着 Barocci     1分48秒90
2着 Private Jet     短首
3着 Two for Two      2

見事勝利を飾りました。勝利騎手はクリストフ・スミヨン、調教師はエリー・ルルーシュです。芝1600mで1分48秒90という勝ちタイムですから、ペースが遅かったにしろ馬場は相当悪いですね。母の父 Giant's Causeway や Hypericum≒Aureole 6×6のパワーが活きたように思います。また、Round Table が入るディープインパクト産駒は走るなぁという印象です。
http://www.pedigreequery.com/barocci2

ディープインパクトの母方に潜む Lady Rebecca を刺激する配合は好みなのですが、Sir Gaylord≒Secretariat 6×5・6、Pocahontas 5×7を持つこの馬はまさにそのパターンです。

Giant's Causeway が入るので、あくまでも欧州仕様ながら、配合的には見どころがあります。今後は、仏2000ギニーに直接向かうのか、フォンテンブロー賞あたりを挟むのか、現段階では分かりませんが、いずれにしろ非常に楽しみです。

2011年3月30日 (水)

レーヴディソール骨折

やはり……という言葉が脳裏をよぎった方も多かったのではないかと思います。周知のとおり、父アグネスタキオン、母レーヴドスカーはいずれも体質的に丈夫とはいえない血統。シーズン開幕前からこうした懸念はささやかれていました。今年のアグネスタキオン産駒の有力馬は、途中でリタイアする馬が見当たらず、どれもこれも順調でした。レーヴディソールにしても、潜在的な不安があることを忘れそうなくらい、これまでは何事もなかったのですが……。本当に残念というほかありません。屈腱炎などと異なり骨折は元通りに治ります。そこは不幸中の幸いでした。

2011年3月27日 (日)

ドバイワールドCは日本馬のワン・ツー・フィニッシュ!

競馬に携わってきてよかった、という気持ちを今日ほど強く感じたことはありません。

トランセンドの強気の逃げ。ヴィクトワールピサの早めマクリ。凄かったですね~。“勝つ”という気迫が伝わってくるレース運びでした。最後の直線の粘りは言葉になりません。日本馬のワン・ツー・フィニッシュが決まった瞬間の光景はおそらく一生忘れないでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=BDwNduibQ6w

他国の馬にとってはただの1レースだったかもしれませんが、日本馬にとってはそうではなかったはずです。未曾有の国難のさなか、背負っているものが違いました。レース後、ヴィクトワールピサのデムーロ騎手は右腕の喪章を幾度も示し、天を指差しました。そして、メイダンに流れる君が代。感無量です。

ヴィクトワールピサは元PO馬で、出走レースは可能なかぎり現地観戦してきました。今回も密かに観戦プランを練っていたのですが、大震災でそれどころではなくなってしまいました。日本競馬はいま非常に困難な状況にあります。この1勝が競馬ファンや関係者をどれほど勇気づけたかということは、いまを生きるわれわれにしか理解できないことであり、後世、紙の上の記録からは決して窺い知ることはできないでしょう。

2011年3月 5日 (土)

サニーブライアン逝く

いうまでもなくサラブレッドは成長する生き物です。デビューから引退まで能力がずっと一定ということはありません。充実期に入ると周囲の人々でさえ驚くような変貌を遂げることがあります。サニーブライアンはそれを劇的な形でファンに示した馬でした。

97年にクラシックを戦った世代は個性派ぞろいで強く印象に残っています。なかでもサニーブライアンは皐月賞、日本ダービーの二冠をいずれも逃げ切り、個性派でありながらチャンピオン、という魅力的なキャラクターでした。好きな馬だったのでいくつかの媒体で原稿にしたことがあります。『競馬王』にも数年前、400字詰め原稿用紙15枚ほどの文章を書きました。そこから抜粋します。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 のちに大西直宏騎手にお会いしたときに、97年の皐月賞からダービーまでの状況について伺う機会があった。
「たしかに、皐月賞の直線のバテ方は酷かったですし、有力馬が馬場に泣いたという評価もありました。馬場が良くて広い東京に移れば、直線も長いし、有力馬が差し切れるんじゃないかとは誰もが思ったでしょうね。皐月賞を勝った時点では僕も評価は一緒で、あんだけバテちゃえば東京ではもたないな、という気はしてましたよ」
 手綱を取った大西騎手自身も、われわれ一般ファンとほぼ同じ見方をしていたというのは驚きだ。だがしかし、と彼はいう。
「皐月賞が終わってからダービーまでの7週間、馬がすごく成長して、それこそ1日1日変わっていくんですよ。他の馬に蹴られてプリンシパルSを使えなかったというアクシデントはあったんですが、稽古を休ませたのは1日だけでしたし、影響はなかったですね。本当に状態のいい馬というのは皮膚の表面に“銭型”が出るというじゃないですか。あの馬の場合、それこそ全身、首のほうまで出ていて、ああ凄いんだなぁと思いましたよ。乗っていても皐月賞前とは全然違う感じがしましたし、競走馬というのは短期間でこれだけ変わるんだなという感じがしましたね。調子の上がる馬というのは何頭も見てきましたけど、あれだけ変わったというのはあの馬だけです」
 皐月賞からダービーまでの短い期間に、サニーブライアンは別馬のように変化していたというのだ。さらに直前には、勝利を予感させる奇妙な出来事が立て続けに起きる。
「ダービーの枠順抽選では大外の18番が出るんじゃないかと予感していて、自分で抽選を引いたら18番。『やっぱり出たな』と思いましたよ。ダービーの前日には南井さん(現調教師)たちと調整ルームでマージャンをやったんですが、緑一色四暗刻というダブル役満をあがったんです。その瞬間、ああ、明日は勝てるなと確信しました」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

当時をご存じない方のために補足しますと、サニーブライアンの皐月賞制覇は、11番人気とノーマークの存在で、しかも逃げ切りだったため「フロック」という評価が大勢を占めていました。ダービーは6番人気。皐月賞の勝ち馬としてはダービー史上最低の人気でした。レースの模様は以下の映像をご参照ください。
http://www.youtube.com/watch?v=FOdVYsByiyo

春のクラシックが近づいてくると、毎年必ずサニーブライアンの教訓が脳裏をかすめます。デビュー当時に足踏みをした馬は、それ以降あまり人気にはなりません。弱かったころのイメージはなかなか払拭できないものです。3歳春はサラブレッドが大きく成長し、それまでの序列がレースごとに入れ替わる時季でもあるので、この見極めが馬券の勝敗に直結します。

今週は土曜日にチューリップ賞、日曜日に弥生賞というクラシックに向けての重要ステップレースが行われます。サニーブライアンの訃報を耳にして「サラブレッドの成長」についてあらためて考えさせられました。短期間にびっくりするような成長を見せる馬が、今年もまた現れないとも限りません。

ちなみに、大西騎手が語ったマージャンのエピソードですが、これは通常の四人マージャンではなくサンマです。念のため。

2011年2月26日 (土)

黛弘人騎手、油断騎乗により9日間の騎乗停止

土曜日の小倉最終レースで、メジロガストンに騎乗した黛弘人騎手が「決勝線手前で2完歩ほど追う動作を緩め2着」(JRAホームページより)となりました。
http://www.youtube.com/watch?v=QCNcvxI0dDs

87年10月の東京競馬で、天間昭一騎手(現調教師)がゴール前で手綱を緩めて後続に差されたことが問題になったとき、騎乗停止期間は「4ヵ月」でした。わたしはこういうケースで仮に半年間の騎乗停止処分が下ったとしても重いとは思いません。

メジロガストンの馬主であるメジロ牧場のブログに以下のような記述があります。

「黛ジョッキーから牧場に電話がありました。ガストンがもたれて斜行しそうになり、それを立て直すために上体が起きてしまったとのこと。しかもムチを入れようとおもった手が勝ったときのガッツポーズにとられてしまったそうです。」
http://ameblo.jp/mejiro308/entry-10813960180.html

JRAの説明は以下のとおり。

「黛騎手本人から事情聴取を行うとともに、パトロール映像を精査した結果、この行為は騎手としての注意義務を著しく怠った油断騎乗であると認め、騎乗停止30日としました。」
http://www.jra.go.jp/news/201102/022602.html

JRAは黛騎手の言い分を認めていません。「騎乗停止30日間」は競馬開催日に直すと「9日間」ということになります。

ゴール前の競り合いの最中、不用意に手綱を緩めたり腰を上げたりする騎手がよく目に付きます。今回は1着と2着が入れ替わったので目立ちましたが、2着と3着、あるいは3着と4着の争いでは、「最後までしっかりと追っていたら着順が入れ替わっていたのでは?」というシーンをたまに目にします。たった数メートル手綱を緩めたぐらいで馬のスピードは変わらないよ、という意見もあります。しかし、ファンの目にはそうは映らないでしょう。レースの公正性に対して疑念を抱かせる行為が競馬ファンの増加につながるとは思えません。

公正というものに厳格な態度を貫くJRAが、なぜこうした行為を放置しているのかよく分かりません。騎手を調整ルームに缶詰にすることよりも重要だと思うのですが。

2011年2月25日 (金)

オーストラリアのスピードクイーン Black Caviar(後)

Black Caviar の重要な構成要素である Vain(1966年生)は、日本ではあまり馴染みのない血で、過去にこの系統の種牡馬が導入されたこともありません。オーストラリアでは83-84年にリーディングサイアーに輝くなどメジャーな血です。現役時代は14戦12勝(2着2回)。圧倒的なスピードで大レースを勝ちまくり、69-70年の豪年度代表馬に選ばれました。名誉の殿堂入りも果たしています。
http://www.pedigreequery.com/vain2

その父 Wilkes(1952年生)は、Worden(ボンモーやマリーノの父、ディクタスやサンシーの母の父)の半弟、ブランブルー(タニノチカラの父)の半兄にあたる良血。父 Court Martial 譲りの非凡なスピードを伝え、1960年代にオーストラリアで3回リーディングサイアーとなりました。Vain と同じく名誉の殿堂入りを果たした Wenona Girl など多数の一流馬を送り出しています。
http://www.pedigreequery.com/wilkes

Vain は、父が Fair Trial 系で、母の父が Nasrullah 系。これら Lady Josephine 牝系の影響を受けた血からスピードを受け継ぎ、Gainsborough-Hyperion を重ねて底力を補強しています。当時のイギリスでよく見られたスピード型の配合パターンで、イギリス血統の影響を強く受けたオーストラリアでもよく見られました。自国で生まれ育った名馬が種牡馬としても成功し、新たな名馬を作り出すための糧となっている、というサイクルが Black Caviar の血統表からは見て取ることができます。オーストラリア生産界の歴史と底力を感じさせる配合ですね。

Black Caviar の母の父 Desert Sun は、現代のスピード血統の新たな主流ラインを形成しつつある Green Desert の子。名誉の殿堂入りを果たした名牝 Sunline(通算48戦32勝)の父でもあります。Black Caviar と Sunline は近い世代に Nijinsky と Desert Sun を持っているという共通点があります。
http://www.pedigreequery.com/sunline

父 Bel Esprit は First Rose≒Tom Fool 4×5。娘の Black Caviar は、Tom Fool の息子 Silly Season 5×5によってこの相似な血のクロスを継続しています。これもポイントのひとつかもしれません。
http://www.pedigreequery.com/first+rose
http://www.pedigreequery.com/tom+fool

       ┌ Menow
First Rose ―┤ ┌ Sir Gallahad(=Bull Dog)
       └○┤ ┌ Broomstick
         └○┤
           └ Cherokee Rose(=Pennant)

       ┌ Menow
Tom Fool ――┤ ┌ Bull Dog(=Sir Gallahad)
       └○┤   ┌ Pennant(=Cherokee Rose)
         │ ┌○┤ ┌ Broomstick
         └○┘ └○┘

Black Caviar は楽勝の連続で、これまで辛勝というものがありません。今回のライトニングSでもゴール前で手綱を抑えていました。勝ちっぷりがあまりに楽なので、弱い相手と戦っているように見えますが、今回の2着馬 Hay List は通算13戦11勝のG1ウィナーで、これも相当な強豪です。よほど調子が悪かったり、長すぎる距離を使ったり、常識外の斤量でも背負わないかぎり、連勝は続いていきそうです。

2011年2月24日 (木)

オーストラリアのスピードクイーン Black Caviar(前)

オーストラリアで注目を集める女傑スプリンター、Black Caviar が無傷の9連勝を飾りました。2月19日に豪フレミントン競馬場で行われたライトニングS(G1・芝1000m)を3・1/4馬身差で快勝。すでに歴史的名牝との評価を獲得しています。
http://www.youtube.com/watch?v=J6QktlVEydw

オーストラリアの芝短距離は世界ナンバーワンの水準。そこで抜きん出た強さを誇っているので、いま世界で一番速い馬かもしれません。
http://www.pedigreequery.com/black+caviar

父 Bel Esprit は前肢に難があるため、1歳時のセールでわずか9000ドル(当時の邦貨で約55万円)の値しか付きませんでした。しかし、競走馬としては何の問題もなく、2つのG1を含めて重賞6勝という成績を収めました。Nijinsky 系のロイヤルアカデミー産駒で、重賞勝ち距離は1000mから1350mです。
http://www.pedigreequery.com/bel+esprit2

昨シーズンの豪種牡馬ランキングは21位。今シーズンは現時点で10位。Black Caviar のほかにロバートサングスターS(豪G1・芝1200m)を勝った Bel Mer などを出しています。
http://www.pedigreequery.com/bel+mer

Black Caviar と Bel Mer は、いずれも「Vain 3×4」というクロスを持っています。Bel Esprit 産駒のこの配合パターンは要注目です。

2011年2月10日 (木)

ファイングレインがフランスで種牡馬入り

2月2日、JRAのサイトに、サクセスブロッケンとファイングレインの競走馬登録抹消の記事がありました。前者は東京競馬場で誘導馬に、後者はフランスで種牡馬となるそうです。

ファイングレイン(父フジキセキ)は Pure Grain(愛オークス、ヨークシャーオークス)の全妹を母に持つ良血で、競走生活の晩年は衰えが目立ったものの、全盛期の5歳春に高松宮記念(G1・芝1200m)を制しています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2003102667/

海外のホースマンにとって、フジキセキとは“Sun Classique の父”という認識でしょう。Sun Classique はフジキセキがシャトル種牡馬でオーストラリアへ渡った際、そこでの種付けで誕生した世界的名牝です。
http://www.pedigreequery.com/sun+classique

オーストラリア生まれの南アフリカ育ち。南アフリカでケープフィリーギニーズ(G1・芝1600m)など3つのG1を制して同国の3歳牝馬チャンピオンとなり、その後、ドバイへ渡ってドバイシーマクラシック(G1・芝2400m)をレコードで勝ちしました。
http://www.youtube.com/watch?v=mY0dfCsmJkQ

Sun Classique は母方に Mill Reef を持ち、その母 Milan Mill 5×5というクロスを持ちます。ファイングレインも同パターンです。それだけでなく、配合構成がかなり似ています。ファイングレインの母ミルグレインと、Sun Classique の母ラストタイクーンは相似な血です。

              ┌ Northern Dancer
            ┌○┘
          ┌○┤ ┌ Buckpasser
ミルグレイン ―――┤ └○┘
          │ ┌ Mill Reef
          └○┘

            ┌ Northern Dancer
          ┌○┤ ┌ Buckpasser
ラストタイクーン ―┤ └○┘
          │ ┌ Mill Reef
          └○┘

フジキセキの成功パターンは幾通りかあるわけですが、こうした血統的共通項を見ると、ファイングレインと Sun Classique は似たような原理で走ったのだろうと想像できます。

Pure Grain の近親で、Sun Classique ときわめてよく似た配合構成を持ち、しかもG1勝ちの競走成績。フランスの生産者がファイングレインに白羽の矢を立てた理由が分かります。成功するかどうかは別として、目の付けどころの良さには感心しました。

昨年暮れ、マルカシェンクがフランスで種牡馬となるニュースが流れ、当ブログでも取り上げました(12月24日のエントリー)。しかし、その後、話は流れてしまったようで、日本で種牡馬入りすることになりました。さすがに2回連続でそんなことにはならないと思うので、何ごともなくフランスに渡ってほしいところです。

2011年1月22日 (土)

Miesque 死亡

『BloodHorse.com』の報道によると、80年代を代表する世界的名牝であり名繁殖牝馬であった Miesque が、1月20日、米ケンタッキー州のレーンズエンドファームで死亡したとのことです。27歳。
http://www.bloodhorse.com/horse-racing/articles/60909/miesque-top-racehorse-and-broodmare-dies

アメリカで生まれ、フランスのフランソワ・ブータン厩舎からデビュー。マイル路線で歴史的な強さを発揮し、2~4歳時に仏英米で16戦12勝(うちG1を10勝)という成績を残しました。アメリカへ遠征してブリーダーズCマイルを2連覇(87、88年)したのですが、1年目の勝ちタイムは1分32秒8(トラックレコード)、2年目は1分38秒6と、まったく異なる馬場コンディションにもかかわらず変わらぬ強さで圧勝したのは驚きでした。軽やかでいて力強いという、一見矛盾するような特長を併せ持った世紀の傑作でした。
http://www.youtube.com/watch?v=tMb5776H2aA
http://www.youtube.com/watch?v=NdZ7b_FErOA

繁殖牝馬としてもきわめて優秀で、Kingmambo(仏2000ギニー、ムーランドロンシャン賞、セントジェームズパレスS)、East of the Moon(仏1000ギニー、仏オークス、ジャックルマロワ賞)という2頭のクラシックホースを送り出し、このうち Kingmambo は名種牡馬となって、日本でもエルコンドルパサー、キングカメハメハなどの父となりました。
http://ahonoora.web.fc2.com/miesque.html

私事ですが、個人ホームページを作ったとき、ドメインに Miesque の名前を拝借しました。それぐらい好きな馬でした。
http://www.miesque.com/

Miesque を所有したニアルコス家は、「Miesque は我々の人生の一部でした」と声明を出しました。「彼女は唯一無二であり、我々に計り知れない喜びをもたらしました」。

2011年1月21日 (金)

ザッツザプレンティ乗馬に

03年の菊花賞馬ザッツザプレンティが種牡馬引退となり、乗馬となることが決定したそうです。

菊花賞のレースぶりは素晴らしいものでした。この馬のスタミナを信頼した安藤勝己騎手は、2周目の3コーナーで自ら動いて早めに先頭に立ち、後続になし崩しに脚を使わせてそのまま押し切りました。瞬発力勝負となることを封じるために、スタミナにものをいわせて自らレースを作っていくという、ステイヤーの乗り方としては完璧なものだったと思います。それに応えたザッツザプレンティも見事でした。
http://www.youtube.com/watch?v=KCZE87fe7Zw

配合の構成はバブルガムフェロー(天皇賞・秋、朝日杯3歳S)とよく似ています。ただ、バブルガムフェローもザッツザプレンティも、種牡馬としてはスピードが足りません。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2000101398/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1993109219/

             ┌ サンデーサイレンス
           ┌○┘
ザッツザプレンティ ―┤
           └○┐
             └ バブルカンパニー

           ┌ サンデーサイレンス
バブルガムフェロー ―┤
           └ バブルカンパニー

たとえステイヤーであっても、産駒が走れば重宝されます。スピード血統ばかりが重用される感のあるアメリカでは、そのイメージとは裏腹に、世界各地からさまざまなスタミナ血統が導入され、Princequillo、Ribot、Herbager などが成功を収めました。スタミナを伝えるこれらの種牡馬は、アメリカのスピード血脈とうまく結びついて多くの一流馬を送り出しました。優秀であれば距離適性がどうであろうと成功し、生産者はその血を求めます。スタミナ血統として貴重だから、という理由で冴えない種牡馬に繁殖牝馬が集まることはまずありません。競争原理と市場原理が貫く生産界では当然のことです。

ザッツザプレンティはこれまで2世代がデビューし、JRAで勝ち上がったのが2頭だけで、2勝馬はゼロ。この成績では……。同じくダンスインザダークを父に持つ菊花賞馬デルタブルースは、古馬になってからオーストラリアに遠征してメルボルンC(G1)を制したのですが、結局、種牡馬にすらなれませんでした。それに比べればまだ恵まれているのかもしれません。今後はノーザンホースパークで乗馬となるようです。

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!