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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2010年6月

2010年6月11日 (金)

『競馬王』7月号

先日発売になりました。『競馬王のPOG本』で2歳馬ネタは出尽くしかと思ったらまだまだありました。最新情報が満載です。先日の公開POGの模様を描いたグラサン師匠の『鉄板競馬』は必読です。ぜひ1冊お手元にどうぞ。

母の父フレンチデピュティ

昨年12月14日のエントリー「母系に入って輝く Deputy Minister 系」でも記しましたが、“母の父フレンチデピュティ”はなかなか優秀です。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2009/12/deputy-minister.html

現時点の連対率は以下のとおり。

■母の父フレンチデピュティ
全連対率 23.1%
芝連対率 26.5%
ダ連対率 19.4%

スズカコーズウェイ、ブレイクランアウト、アニメイトバイオなどが代表格です。先日、ツルマルボーイ産駒の3歳馬ワンモアジョー(母の父フレンチデピュティ)が2勝目を挙げたのには驚きました。このクラスの種牡馬まで走らせてしまうのか、と――。

ちなみに、ブルードメアサイアーランキングで首位に立つ“母の父サンデーサイレンス”は以下の成績。現状では“母の父フレンチデピュティ”のほうが数字的に上です(連対率ベース)。

■母の父サンデーサイレンス
全連対率 18.4%
芝連対率 18.8%
ダ連対率 17.9%

今年の公開ドラフトで指名した10頭のうち、アソルータ(牝・父ゼンノロブロイ、母フレンチバレリーナ)とダノンハロー(牡・父ハーツクライ、母ペルヴィアンリリー)の2頭が“母の父フレンチデピュティ”でした。もちろん、狙って獲った馬です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103297/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103317/

6月10日(木)の栗東坂路で一番時計を出した2歳馬ホーマンフリップは「フジキセキ×フレンチデピュティ」。アニメイトバイオの半妹にあたる良血で、阪神2週目の芝1400m戦でデビューとのことです。期待できそうですね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103375/

2010年6月10日 (木)

馬の故障と高速馬場

この問題について触れた本が手元に2冊あります。

『競走馬の科学』(JRA競走馬総合研究所編・講談社・06年4月)
『コースの鬼!』(城崎哲著・競馬王新書・07年11月)

因果関係があるのかないのか議論を深める一助として、ちょっと長いのですが抜粋したいと思います。

~~~~

「記録と馬場の関係については、内・外のほかに『時計が速いのは馬場が硬いため』という考えがある。たしかに、硬い馬場は走行タイムが速い傾向にあるが、『時計の速い馬場=硬い馬場』とは必ずしもいえない。芝が密に生えそろって、クッションの効いた状態でも速いタイムを記録することがある。
 また、『硬い馬場は事故のもとになる』という考えもあるが、これも誤った認識である。実際に、時計の速いレースで事故が多発するという傾向はない。競走馬は馬場が硬ければ硬いなりの、軟らかければ軟らかいなりの走り方をする。これから肢を着こうとする場所の状態が、競走馬の予想どおりであれば、危険はさほど高くない。
 しかし、硬かったり軟らかかったり、また凹凸があったりした場合に、競走馬の肢は競走馬自身の予想とは違う動きをしてしまう。これがもっとも事故につながりやすい。
 馬場は競走馬にとって走りやすく、より安全でなければならない。重要になるのが、馬場の均一性である。」(『競走馬の科学』139頁)

~~~~

「馬場造園課の人々にとっての理想の馬場とは、馬・騎手にとって安全で、公平で、たくさんの馬主が自分たちの馬を走らせたいと感じてくれるような馬場である。
 それに対して馬場の速い・遅いは、ファンの関心の中心であっても、馬の故障やアクシデントの議論とかかわってくるため、馬場造園課としたら言いたくないし、聞きたくない。
 彼らは、日本の馬場は外国のそれに比べて路盤が硬い=時計が速すぎる、だから日本は競走馬の故障が多いのだ、というワンパターンの論調で、マスコミ等から長らく――20年以上も――攻撃され続けたために、速いという言葉にやたらと過敏な体質がすっかりできあがってしまっているのだ。
 といって馬場造園課がこの20年間マスコミの意見にまったく耳を傾けてこなかったわけではない。速い芝と言われることにうんざりしながら、それを何とかしたいといちばん思ってきたのは馬場造園課だったはずだ。そのため91年の阪神競馬場の馬場改造を初め、速いものを遅くしようといろんなことを試みてきた。だが結局、馬場の耐久性を犠牲にせずに、日本の馬場の物理的な特性――①アップダウンが少ない、②直線が長い、③労働集約的な管理によってコース面のデコボコが常に平らに修正されている、④洋芝よりも根の張った野芝が使われている――を越えられないというのが現実だった。
 そうやって紆余曲折を経て、ヘタに路盤を軟らかくするくらいなら、もっと芝自体を丈夫にして、全体に均一な、保持力のある馬場を作ったほうがかえって安全な馬場に近づくのではないか、その副産物としてある程度の速さはやむをえないのではないか、という考え方に最近は変わりつつあるようだ。そのところをJRA施設部馬場土木課課長の矢島輝明さんは、
『時計が速いというのと、競走馬の故障しやすさは別のことだと考えている。現実にコース面がデコボコで不均一で遅いよりは、速くてもコース面が平らで硬さが均一な、保持力が十分な馬場のほうが事故や故障が少ないことがわかっている。
 たとえば芝のレースの競走馬の故障率は1999年頃がいちばん高く、約2%だった(出走馬100頭中2頭という意味)が、最近はその半分強(1.1~1.2%)にまで下がっている。それに対してダートの故障率は現在でも1.4%程度だ。
 脚元に不安のある馬がダートに回ることが多いとしても、芝とダートを比べたらダートのほうが断然タイムが遅い。それでいてダートのほうが事故率が高いのは、走破タイムと故障率の間に直接の相関がないことを示している』と説明する。」(『コースの鬼!』28-30頁)

~~~~

日本と諸外国、過去と現在、馬場別・距離別・競馬場別・クラス別……といった故障率の比較データがあれば見てみたいですね。

2010年6月 9日 (水)

御神本訓史騎手が大井競馬復帰

以前書いた話題のフォローといえば、御神本訓史騎手の大井競馬復帰も挙げられます。内部でどのような政治的動きがあったのかは分かりません。今度関係者に会ったときにでも聞いてみます。

5月31日から6月4日まで騎乗し〔2・4・2・30〕という成績。ブランクが長かったわりには騎乗数が集まった印象です。ただ、人気馬に乗る機会はさすがに少ないですね。これから地道に信頼を回復していくしかありません。当面は大井競馬場のみの騎乗となるようです。

ウオッカ、三度目の正直で受胎

レース回顧などをしているうちにここまで後回しになってしまいましたが、ウオッカが無事受胎したという朗報はやはりスルーするわけにはいきません。5月19日のエントリー「ウオッカ、2回目の交配も不受胎」で示した懸念が杞憂に終わりホッとしています。

ウオッカは Northern Dancer も Mr.Prospector もサンデーサイレンスも持ちません。にもかかわらずあれだけの能力を発揮したのですから偉大です。交配相手の Sea the Stars は、Northern Dancer 系×Mr.Prospector 系で、さらにドイツ血統を抱えているので、ウオッカは自身にない新たな活力を取り込むことができるでしょう。
http://www.pedigreequery.com/sea+the+stars
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004104258/

Sea the Stars の2代父 Green Desert については、2月9日のエントリー「Green Desert 時代の幕開け?」、2月10日のエントリー「なぜか日本に入らない Green Desert 系」などで触れました。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/02/green-desert-73.html
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/02/green-desert-73.html

Green Desert 系は、Never Bend クロスを持つ馬が成功しています。したがって、Mill Reef や Riverman(いずれも Never Bend の息子)が入る配合は悪くありません。

“Green Desert+Mill Reef”からは Oasis Dream や Desert Prince が出ましたし、“Green Desert+Riverman”からは Mandesha やメジロダーリングが出ています。
http://www.pedigreequery.com/oasis+dream
http://www.pedigreequery.com/desert+prince
http://www.pedigreequery.com/mandesha
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1996107035/

ウオッカは Riverman を持っているのでこのパターンに当てはまります。ヨーロッパの馬場にも対応できそうな本格派ですね。無事に誕生して育成も順調ならデビューは2013年です。

2010年6月 8日 (火)

仏ダービー、英ダービー

6月6日、パリ郊外のシャンティ競馬場で行われた仏ダービー(G1・芝2100m)は、2番手追走から最終コーナー手前で先頭に立った Lope de Vega が押し切り、仏2000ギニー(G1・芝1600m)と合わせて二冠を達成しました。前走の仏2000ギニーは後方で脚をためて大外一気という競馬。今回は一転して先行抜け出しという競馬でした。
http://www.youtube.com/watch?v=6cIPiZyMpfU

父 Shamardal、母の父 Vettori はいずれも仏2000ギニー馬で、配合的には Machiavellian 3×3。どちらかといえばマイル向きでしょう。ただ、Shamardal は仏ダービー馬でもあるので、距離が延びてまったくダメというタイプでもなかったようです。 Machiavellian は、ヴィクトワールピサの母ホワイトウォーターアフェアや、米・豪で大成功している Street Cry(Zenyatta や Street Sence が代表産駒)の父でもあります。最近ちょっと目立ってきたかなという気がします。
http://www.pedigreequery.com/lope+de+vega

Lope de Vega は、父 Shamardal 以来の仏二冠制覇です。Shamardal が仏ダービーを制したとき、外からクビ差2着まで追い詰めたのが Hurricane Run。後に愛ダービー、凱旋門賞、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSなどを制した名馬です。じつは、Lope de Vega と Hurricane Run は、同じくドイツのアルメラント牧場が生産所有した馬です。かつて苦杯を舐めさせられた相手の子から新たに名馬をつくり出すのですから因縁めいています。

Shamardal は初年度産駒からいきなり大物を送り出すという幸先のいいスタートを切りました。Giant's Causeway 系はすっかりヨーロッパに根を下ろした感があります。
http://www.pedigreequery.com/giants+causeway

Giant's Causeway は Storm Cat の子ですから、やや一本調子なところを伝えます。日本で走ったスズカコーズウェイやエイシンアポロンといった産駒を見ればお分かりになると思いますが、マイル前後を得意とするスピードタイプで、ヨーロッパではギニー系のレースで産駒の活躍が目立ちます。しかし、意外なことに Giant's Causeway 自身はギニーレースを勝てませんでした。英2000ギニー(G1・芝8f)、愛2000ギニー(G1・芝8f)はともに2着。

デビュー以来4戦全勝だった Giant's Causeway を、英2000ギニーで破ったのは King's Best です。ゴール前で末脚を爆発させて3馬身半差をつけました。
http://www.pedigreequery.com/kings+best

King's Best は、今年の日本ダービー馬エイシンフラッシュの父です。そして、6月5日に行われた英ダービー(G1・芝12f10yds)を制した Workforce の父でもあります。

King's Best は、希代の名牝 Urban Sea の半弟ながら、これまでの種牡馬成績はいまひとつでした。安定性に欠けるマイラー型種牡馬といった感じで、12ハロンのクラシックホースを出せるようなタイプには見えませんでした。現役時代、出走を予定していた英ダービーを筋肉痛により直前回避し、愛ダービーは骨折のため大差シンガリ負け。ダービーにまったく縁のない馬でもありました。それが、一挙に日・英のダービー馬を生み出したのですから分からないものです。

Workforce は、母 Soviet Moon が「Sadler's Wells×Alleged×Star Appeal×ヴィミー」という配合。12ハロンのクラシックに向いた底力とスタミナをここから補給しています。
http://www.pedigreequery.com/workforce

4月30日のエントリーで、ドイツ血統と Sadler's Wells の相性の良さを論じましたが、まさにその通りの配合です。このパターンからはこれまでに、Galileo(英ダービー、愛ダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS)、Hurricane Run(凱旋門賞、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS、愛ダービー)、Fame and Glory(愛ダービー、クリテリウムドサンクルー)、レッドディザイア(秋華賞、アルマクトゥームチャレンジラウンド3)、ジョーカプチーノ(NHKマイルC、ファルコンS)といった多くの活躍馬が出ています。基本的にクラシックディスタンスで強い馬が多いですね。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/04/sadlers-wells-a.html

父が Kingmanbo 系で母方に Sadler's Wells を入れ、Nureyev と Sadler's Wells の4分の3同血クロスを作るのは、エルコンドルパサー(ジャパンC、サンクルー大賞典)、Henrythenavigator(英・愛2000ギニー、サセックスS)、Divine Proportions(仏オークス、仏1000ギニー)、Virginia Waters(英1000ギニー)などと同じです。
http://www.pedigreequery.com/el+condor+pasa
http://www.pedigreequery.com/henrythenavigator
http://www.pedigreequery.com/divine+proportions
http://www.pedigreequery.com/virginia+waters2

3代母の父 Star Appeal はドイツ血統馬。最低人気で臨んだ75年の凱旋門賞を差し切った馬でもあります。Workforce は父方にも母方にもドイツ血統が含まれていることになります。この点も日本ダービー馬エイシンフラッシュと同じです。
http://www.pedigreequery.com/star+appeal

ラムタラのダービーレコードを1秒近く縮め、さらに後続に7馬身差をつける圧倒的な勝ちっぷり。スーパースター誕生か? という期待が否が応でも高まります。仏二冠馬 Lope de Vega はマイル路線に進むので対決は実現しそうにありません。現在、G1を2連勝中で古馬ナンバーワンと目されている Fame and Glory も、ドイツ血統と Sadler's Wells の組み合わせを持ちます。対決が楽しみです。
http://www.pedigreequery.com/fame+and+glory

2010年6月 7日 (月)

競馬総合チャンネルで『おじゃ馬します!』公開

携帯サイト「競馬総合チャンネル」にて、本日から、POGに関連した栗山求のインタビュー記事が公開されます。聞き役は赤見千尋さん。POGだけにとどまらず、競馬や血統を始めたきっかけ、血統史、配合論、新種牡馬の話題など、思いつくまま縦横に語りました。かなりの長文なので読み応えがあると思います。よろしかったらご覧くださいませ。

安田記念はショウワモダン

G1レースの予想はたいてい、◎を打ちたい馬が複数いて、それをひとつに絞り込むのに苦労します。しかし、今回の安田記念は、◎を打ちたい馬が1頭もいませんでした。妥協に妥協を重ねてもピンとこない馬ばかり。悩んだ末に出した結論は以下のとおり。

◎ビューティーフラッシュ
○トライアンフマーチ
▲ショウワモダン
△リーチザクラウン
△スマイルジャック
△マルカフェニックス

ビューティーフラッシュに◎を打ったのは、冷静に考えて“逃避”だったかなと思います。未知の魅力に「期待する」というより「すがる」感じだったかなと。返し馬を見たときにややフットワークが重いような気がしました。

▲ショウワモダンはパドックで良く見えました。完全に本格化しています。エアジハード産駒は晩成型です。年齢別の連対率は以下のとおり。

2歳  12.2%
3歳  10.3%
4歳  14.7%
5歳  16.8%
6歳  21.0%
7歳~ 16.7%

5歳ぐらいから実が入ってきて、6歳が働き盛り。エアジハードのもう1頭の代表産駒アグネスラズベリが初めて重賞を勝ったのも6歳でした。ショウワモダン、アグネスラズベリはともに母の父にトニービンを持っています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004103318/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2001103044/

          ┌ エアジハード
ショウワモダン ――┤ ┌ トニービン
          └○┘

          ┌ エアジハード
アグネスラズベリ ―┤ ┌ トニービン
          └○┘

父エアジハードは、現役時代に安田記念を勝っているので親子制覇。その父サクラユタカオーは中距離のスピード王で、サクラバクシンオーの父でもあります。エアジハードは、母の父に軽快なロイヤルスキーが入って Nasrullah 4・5×5ですから、父よりも距離適性が短くなってマイルがベストでした。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2001103044/

サクラユタカオーがノーザンテーストとニックスの関係にあった理由は、ノーザンテーストが抱える Hyperion の強いクロス(4×3)が底力をサポートしたからです。エアジハードは、2代母がオークス馬シャダイアイバーで、その父がノーザンテースト。そして Hyperion 5・4×5。このあたりの頑強な血が支えていたからこそ、エアジハードの Nasrullah 4・5×5は活きたのだと思います。底力の裏付けのないスピードはマイルのG1を勝てません。グラスワンダーを差し切った安田記念は、Nasrullah と Hyperion が織りなす名配合の、まさに面目躍如といえるレースだったと思います。

エアジハード産駒の大物2頭は、いずれもトニービン牝馬から誕生しました。トニービンは、Gainsborough-Hyperion のラインを執拗にクロスさせたヨーロッパ血統です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1983109006/

シャダイアイバーとトニービンという同様の構成の血が結びついて大物感を醸し出していくという、オーソドックスな組み立てです。ただ、その一方で、トニービンは母系に潜ると渋さを出すので、アグネスラズベリのように本質的に洋芝向きだったり、ショウワモダンのように道悪の鬼だったりしたわけです。

ショウワモダンに▲を打った理由は2つあります。ここ2走のレースぶりに本格化の気配が見て取れたことがひとつ。もうひとつは、高速馬場の平均して速いフラットなラップが案外合うかもしれないと思ったことです。

道悪に強い馬は、大きく分けてふたつのタイプに分類できると思います。タイムの遅い決着が得意な馬と、一定のペースで粘り強く走る能力に秀でた馬です。前者は時計が速くなると用なしですが、後者は問題ありません。むしろ、一定のペースで粘り強く走れるので、ハイペースに強く、レコードが出るようなレースを得意とします。

約20年前にランニングフリーという馬がいました。道悪巧者で、一定のペースで粘り強く走る能力に秀でた馬でした。ホーリックスがレコード勝ちした89年のジャパンC(勝ちタイム2分22秒2)で、同馬は14番人気ながら7着と頑張り、2分23秒3というタイムを記録しました。当時は、勝ちタイムの別次元ぶりが話題を集めると同時に、「ランニングフリーがこんなタイムで走るなんて!(笑)」とネタにされましたが、非常に学ぶところの多いレースでした。

ショウワモダンはこのタイプでしょう。正確にいえば、本格化するにつれて徐々に速い時計に対応できる能力を身につけていったという感じです。

ただ、弱かったころのイメージをそう簡単に頭からぬぐい去れるものではなく、このメンバーに入って自信をもって本命に推せるほどの根拠は見いだせなかったので、評価は▲どまりでした。とはいえ、暴風のように吹き荒れるサンデー系旋風のなかで、古色蒼然たるテスコボーイ系が勝利を収めたのですから凄いことです。ぜひ種牡馬となって成功してほしいものです。

2010年6月 6日 (日)

月曜11時30分から『馬券師倶楽部』再放送

『馬券師倶楽部』の「半笑いVS栗山求(前編)」です。CS放送の“MONDO21”で観ることができます。よろしかったらどうぞ。

高速馬場とシンボリクリスエス

土曜東京11R・湘南S(準OP・芝1600m)は、勝ちタイムが1分31秒7。先日のNHKマイルCでダノンシャンティが出した日本レコードにコンマ3秒と迫る快時計でした。ここ2週、雨が降ったり馬場が使い込まれたりで、時計が掛かり始めたなと思ったら、今週は春開催が始まった当初のコンディションに戻ったようです。

土曜日の競馬で戦果を挙げたのがシンボリクリスエス産駒。芝レースで2勝、2着1回という成績。第9Rのロベリア賞(3歳500万下・芝1800m)でオリエンタルジェイが1着、第11Rの湘南Sでソーマジックが2着と、とくに特別戦でその走りが目立ちました。

シンボリクリスエスは「Roberto 系×Seattle Slew 系」という組み合わせ。Roberto も Seattle Slew も、一瞬の切れ味には欠けるものの持続力に秀でた血です。このタイプの配合は、荒れ馬場専用のパワー型に出ることが多いのですが、シンボリクリスエスのいいところは時計の速い決着にも対応できることですね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1999110099/

シンボリクリスエス産駒は東京芝1600mの鬼です。連対率は36.8%。この数字は、東京競馬場がリニューアルした03年4月以降、当コースで50走以上した種牡馬のなかでは断然トップです(2位はキングカメハメハの27.8%)。単勝回収率102%、単勝適正回収率120.5%ですから馬券的にも信頼できます。

この戦績を勝ちタイムで色分けするとおもしろいことがわかります。サンプルは良馬場のみで、2歳戦は除外します。

★1分34秒未満で決着したレース…………連対率50.0%
★1分34秒以上で決着したレース…………連対率22.2%

速いタイムで強く、遅いタイムでイマイチ、という傾向が表れています。一般的に、勝ちタイムの速いレースは道中のペースが緩みません。湘南Sのラップは以下のとおり。

12.4 - 11.1 - 11.5 - 11.2 - 11.3 - 11.3 - 11.1 - 11.8

11秒台前半のラップがフラットに続きます。おそらくシンボリクリスエス産駒はこういう展開に向いているのでしょう。

2代父 Roberto は、72年のベンソン&ヘッジズゴールドC(英G1・芝10.5f)で、アメリカ人のブラウリオ・バエザ騎手を背に、ハイペースで飛ばして逃げ切り勝ちを収めました。名馬 Brigadier Gerard の連勝記録を「15」で止めたことでも知られる歴史的なレースです。コースレコードを1秒7も短縮する快走でした。
http://www.youtube.com/watch?v=GNsATgJA50g

母の父の父 Seattle Slew は、アメリカ馬らしい先行力を武器とする米三冠馬。同じ三冠馬の Affirmed を相手に逃げ切った78年のマールボロC(米G1・ダ9f)は、Seattle Slew の持ち味が活きたベストレースのひとつでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=RBHczmcKS5M

こうした名馬から影響を受けたシンボリクリスエスは、決め手には乏しいもののハイペースへの耐久力とスピードの持続力に優れています。遅いタイムでイマイチ、というのは、おそらく道中のペースが緩んで決め手勝負に持ち込まれるケースが多いからでしょう。「ハイペースへの耐久力とスピードの持続力」を活かす展開になれば、シンボリクリスエス産駒は生き生きと躍動します。そうした競馬になりやすい高速馬場ではつねにマークが必要です。

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!