仏ダービー、英ダービー
6月6日、パリ郊外のシャンティ競馬場で行われた仏ダービー(G1・芝2100m)は、2番手追走から最終コーナー手前で先頭に立った Lope de Vega が押し切り、仏2000ギニー(G1・芝1600m)と合わせて二冠を達成しました。前走の仏2000ギニーは後方で脚をためて大外一気という競馬。今回は一転して先行抜け出しという競馬でした。
http://www.youtube.com/watch?v=6cIPiZyMpfU
父 Shamardal、母の父 Vettori はいずれも仏2000ギニー馬で、配合的には Machiavellian 3×3。どちらかといえばマイル向きでしょう。ただ、Shamardal は仏ダービー馬でもあるので、距離が延びてまったくダメというタイプでもなかったようです。 Machiavellian は、ヴィクトワールピサの母ホワイトウォーターアフェアや、米・豪で大成功している Street Cry(Zenyatta や Street Sence が代表産駒)の父でもあります。最近ちょっと目立ってきたかなという気がします。
http://www.pedigreequery.com/lope+de+vega
Lope de Vega は、父 Shamardal 以来の仏二冠制覇です。Shamardal が仏ダービーを制したとき、外からクビ差2着まで追い詰めたのが Hurricane Run。後に愛ダービー、凱旋門賞、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSなどを制した名馬です。じつは、Lope de Vega と Hurricane Run は、同じくドイツのアルメラント牧場が生産所有した馬です。かつて苦杯を舐めさせられた相手の子から新たに名馬をつくり出すのですから因縁めいています。
Shamardal は初年度産駒からいきなり大物を送り出すという幸先のいいスタートを切りました。Giant's Causeway 系はすっかりヨーロッパに根を下ろした感があります。
http://www.pedigreequery.com/giants+causeway
Giant's Causeway は Storm Cat の子ですから、やや一本調子なところを伝えます。日本で走ったスズカコーズウェイやエイシンアポロンといった産駒を見ればお分かりになると思いますが、マイル前後を得意とするスピードタイプで、ヨーロッパではギニー系のレースで産駒の活躍が目立ちます。しかし、意外なことに Giant's Causeway 自身はギニーレースを勝てませんでした。英2000ギニー(G1・芝8f)、愛2000ギニー(G1・芝8f)はともに2着。
デビュー以来4戦全勝だった Giant's Causeway を、英2000ギニーで破ったのは King's Best です。ゴール前で末脚を爆発させて3馬身半差をつけました。
http://www.pedigreequery.com/kings+best
King's Best は、今年の日本ダービー馬エイシンフラッシュの父です。そして、6月5日に行われた英ダービー(G1・芝12f10yds)を制した Workforce の父でもあります。
King's Best は、希代の名牝 Urban Sea の半弟ながら、これまでの種牡馬成績はいまひとつでした。安定性に欠けるマイラー型種牡馬といった感じで、12ハロンのクラシックホースを出せるようなタイプには見えませんでした。現役時代、出走を予定していた英ダービーを筋肉痛により直前回避し、愛ダービーは骨折のため大差シンガリ負け。ダービーにまったく縁のない馬でもありました。それが、一挙に日・英のダービー馬を生み出したのですから分からないものです。
Workforce は、母 Soviet Moon が「Sadler's Wells×Alleged×Star Appeal×ヴィミー」という配合。12ハロンのクラシックに向いた底力とスタミナをここから補給しています。
http://www.pedigreequery.com/workforce
4月30日のエントリーで、ドイツ血統と Sadler's Wells の相性の良さを論じましたが、まさにその通りの配合です。このパターンからはこれまでに、Galileo(英ダービー、愛ダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS)、Hurricane Run(凱旋門賞、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS、愛ダービー)、Fame and Glory(愛ダービー、クリテリウムドサンクルー)、レッドディザイア(秋華賞、アルマクトゥームチャレンジラウンド3)、ジョーカプチーノ(NHKマイルC、ファルコンS)といった多くの活躍馬が出ています。基本的にクラシックディスタンスで強い馬が多いですね。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/04/sadlers-wells-a.html
父が Kingmanbo 系で母方に Sadler's Wells を入れ、Nureyev と Sadler's Wells の4分の3同血クロスを作るのは、エルコンドルパサー(ジャパンC、サンクルー大賞典)、Henrythenavigator(英・愛2000ギニー、サセックスS)、Divine Proportions(仏オークス、仏1000ギニー)、Virginia Waters(英1000ギニー)などと同じです。
http://www.pedigreequery.com/el+condor+pasa
http://www.pedigreequery.com/henrythenavigator
http://www.pedigreequery.com/divine+proportions
http://www.pedigreequery.com/virginia+waters2
3代母の父 Star Appeal はドイツ血統馬。最低人気で臨んだ75年の凱旋門賞を差し切った馬でもあります。Workforce は父方にも母方にもドイツ血統が含まれていることになります。この点も日本ダービー馬エイシンフラッシュと同じです。
http://www.pedigreequery.com/star+appeal
ラムタラのダービーレコードを1秒近く縮め、さらに後続に7馬身差をつける圧倒的な勝ちっぷり。スーパースター誕生か? という期待が否が応でも高まります。仏二冠馬 Lope de Vega はマイル路線に進むので対決は実現しそうにありません。現在、G1を2連勝中で古馬ナンバーワンと目されている Fame and Glory も、ドイツ血統と Sadler's Wells の組み合わせを持ちます。対決が楽しみです。
http://www.pedigreequery.com/fame+and+glory
Machiavellianが最近目立って来てるのは母系がCoup de Folie でAlmahmoudの直系であり、またミスプロ・Halo・Nasrullahのスピード、Ribotのスタミナを補給しやすいからでしょうか?
投稿: Bucchi | 2010年6月10日 (木) 23:43
この件につきましては、多少考えるところがございますので、6月12日のエントリーであらためてご説明したいと思います。ただ、本日からオーストラリアへ競馬視察に出かけるため、現地でネットがうまく繋がったら、という条件付きですが……。繋がらなかったらブログはお休みとなります。帰国後にあらためてアップロードいたします。
投稿: 栗山求 | 2010年6月11日 (金) 03:14