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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2010年1月

2010年1月11日 (月)

マンハッタンカフェの栗山法則

シンザン記念を勝ったガルボは、デビューから6戦、すべて違う騎手が跨っています。ちょっと珍しいですね。前半4ハロン47秒3は、昨年の47秒2とほぼ同じ。前が残ったのも昨年と同じで、勝ち馬の父がマンハッタンカフェなのも昨年と同じです。勝ちタイムの1分34秒3はレースレコード。馬場コンディションがいいとはいえ、昨年より1秒速いわけですから、ガルボの走りは評価できると思います。逃げ馬の直後につけ、11秒5-11秒5で上がられては後ろの馬は手も足も出ません。

ガルボの母系には Nijinsky があります。マンハッタンカフェと Nijinsky は相性がよく、この組み合わせからレッドディザイア、ジョーカプチーノ、マンハッタンスカイ、イコピコ、サンディエゴシチー、レッドアゲート、メイショウレガーロ、マッハヴェロシティなどが出ています。

ただ、母系に Nijinsky があれば何でもいいというわけではなく、(a)Nijinsky と Mr.Prospector を併せ持つもの。(b)Caerleon を持つもの。このふたつのパターンに分類できます。

(a)のパターンは、マンハッタンスカイ、イコピコ、サンディエゴシチー、メイショウレガーロ、レッドアゲートなど。
(b)のパターンは、レッドディザイア、ジョーカプチーノ、レッドアゲート(Caerleon の全妹 Video を持つ)、マッハヴェロシティなど。

つまり、Nijinsky が母系にある場合、基本的には Mr.Prospector を併せ持たなければならず、もし Mr.Prospector がない場合、Nijinsky は Caerleon を経由したものでなければならない、というわけです。これを「マンハッタンカフェの栗山法則」と名付けることにします(笑)。現在までのところ、マンハッタンカフェ産駒の重賞連対馬はすべてこの法則に当てはまっています。

ガルボは母の父がジェネラスで、その父が Caerleon。法則どおりです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007101163/

母ヤマトダマシイは、Nijinsky≒Far North 3×3という4分の3同血クロスを持っています。ちなみに、昨年暮れのラジオNIKKEI杯2歳Sで4着となったヒルノダムール(父マンハッタンカフェ)は、その母シェアエレガンスが Nijinsky≒The Minstrel 2×3。Far North は The Minstrel の全兄なので、ガルボとヒルノダムールの配合構成はきわめてよく似ています。ガルボが重賞を勝ったとなれば、ヒルノダムールも怖いですね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007100727/

ヒルノダムールは母系に Blushing Groom を持ちます。マンハッタンカフェと Blushing Groom の関係は明確なニックスなのですが、これについては別の機会に触れることもあるでしょう。

2010年1月10日 (日)

レーヴドリアン完勝――福寿草特別

馬体の白さは半兄ナイアガラに似ていますが、レーヴドリアンは兄と違って前肢をたぐるピッチ走法ではなく、サンデー系らしい伸びやかなフットワークが持ち味です。ラスト2ハロン、11.5-11.6の流れをスパッと差したのですから脚力は重賞レベル。勝ちタイムの2分01秒1は福寿草特別のレースレコードでした。

配合はなかなかレベルが高いと思います。昨年の春、『赤本』の「私のオススメ10頭」でこの馬を第1位に指名しました。『競馬王のPOG本』の「栗山ノート」でも、スペシャルウィーク産駒のトップに推しています。

配合のポイントはいくつかありますが、いちいち説明すると長大なものになってしまうので、論証を省いて要点だけを書きます。

★兄姉が走っている。

★父スペシャルウィークと相性のいい Sir Gaylord を母レーヴドスカーが4×4で持っている。

★母レーヴドスカーが内包する Nijinsky と Red God のニックスを父スペシャルウィークが継続している。

★父スペシャルウィークは Harina とプリメロの同血クロスを、母レーヴドスカーは Avena と Harina の同血クロスを持っているので、レーヴドリアン自身は Harina=プリメロ=Avena というトリプルの同血クロスを持つことになる。

レーヴドリアンの血統表
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007103392/

ただ、馬体を見ると繋ぎが立っていて、ちょっと怖いなと思わせる部分があったのも事実です。もともとこの一族は体質が丈夫とはいえません。半姉レーヴダムールは爪の故障で戦線離脱したあと復帰調整中に死亡。半兄アプレザンレーヴは頑健な四肢を伝えるシンボリクリスエスの子ながら屈腱炎で引退。もちろん、松田博資調教師はそうした事情について重々承知していることでしょう。このまま無事にクラシックに向かってほしいものです。

『web競馬王』に出した予想は、◎ブラックゼット、○レーヴドリアン。素質は認めてもやや過剰人気になっているような気がしたのと、今回はブラックゼット(2着)が狙い目だと思ったからです。馬券は本線で当たりましたが、悔しさが残る結果でした。

2010年1月 9日 (土)

不忍池競馬を見た最後の生き残り、物集高量

昨日のエントリーで採り上げた立川健治さんの本は、明治17年(1884)11月、上野不忍池競馬場で行われた初めての競馬開催の模様から書き起こされています。共同競馬会社が主催した不忍池競馬は、明治25年(1892)まで行われました。

この競馬を見た、という人物が昭和の末まで存命していたことはあまり知られていません。

その名は物集高量(もずめ・たかかず)。

明治12年(1879)に生まれ、昭和60年(1985)に106歳で亡くなりました。

100歳の誕生日(昭和54年4月3日)に刊行された『百歳は折り返し点』(日本出版社)という本に次のような記述があります。

「切通坂まで使いに行ったときには、不忍池で競馬を見物しました。不忍池の周囲が競馬場だったのを見た人も、現在はいないことと思います。」

明るく闊達なお爺さん、というキャラクターで親しまれ、私が子供のころ、たまにテレビでその姿を見かけたものです。『徹子の部屋』にも招かれたことがあったはずです。きんさんぎんさんよりはるか前に出現した元祖“100歳スター”でした。まさか物集さんが不忍池競馬を見ていたとはつい最近まで知りませんでした。まず間違いなく、共同競馬会社の不忍池競馬(1884~1892)を見た最後の生き残りだったはずです。

何冊か出ているエッセイは、物集さんが生粋の遊び人だっただけに、どれもおもしろく飽きさせません。エッセイの巻末に年表が載っており、昭和4年(1929)には「初めて横浜根岸の競馬場へ行く」「初めて中山競馬場へ行く」といった記述があります。100歳を迎えた昭和54年(1979)には「日本ダービー。カツラノハイセイコ優勝。予想的中」と。

物集さんのエピソードで好きなのは、106歳で亡くなる前日、若い看護婦のスカートに手を入れて婦長に叱られた、というもの。凄いの一語です。

2010年1月 8日 (金)

馬事文化賞

2009年のJRA賞馬事文化賞は、立川健治さんの『競馬の社会史1 文明開化に馬券は舞う―日本競馬の誕生』に決まりました。歴史を尊重することなく文化が成熟することはないと思うので、こうした仕事にしかるべき賞が与えられたのは喜ぶべきことです。750頁を超える大部ですが、記述が柔らかく図版も多いので読みやすいですね。

2010年1月 7日 (木)

千島俊司「ジョッキーの血」

久しぶりに『週刊Gallop』を買ってみたところ、「ジョッキーの血」という連載がありました。作者の千島俊司さんは、1970年代に道営競馬の天才ジョッキーとして名を馳せた故千島武司さんのご子息。

千島俊司さんは以前、父武司さんを題材とした作品で「Gallopエッセー大賞」を受賞されました。そのテーマをさらに深く掘り下げた作品のようです。

故千島武司さんは、道営競馬で年間130勝の新記録(当時)を樹立するなど、72年から77年までの6年間に5回リーディングジョッキーに輝きました。ミスダイリンとのコンビで大井競馬場の全日本アラブ大賞典をレコード勝ちした記録もあります。77年の暮れ、1歳馬の馴致調教中に馬に蹴られるアクシデントにより死去。25歳の若さでした。

7年前に『競馬最強の法則』で「埋もれた地方の天才たち」という文章を書いたとき、故千島武司さんについて触れたことがありました。ただ、当時の資料から再構成したものだったので、通り一遍の内容でしかありません。

千島俊司さんの作品は、まさに当事者の生々しい記録なので興味が尽きません。70~80年代の道営競馬の空気がありありと浮かんできます。連載11回目の今回は、最近読んだ競馬に関する文章のなかで群を抜いて素晴らしいと思いました。この続きを読むために来週も『週刊Gallop』を買うでしょう。

2010年1月 6日 (水)

ハンソデバンドがOP特別勝ち

中山のジュニアC(芝1600m)で1番人気に応えました。直線で窮屈になったとき、包まれて負けたデビュー戦が頭をよぎりましたが、前が開いてから一気に伸びました。

昨年の春、『競馬王のPOG本』で「渡邊隆オーナーインタビュー」をさせていただいた際、07年生まれのなかで「一番の期待馬」とおっしゃっていたのがこの馬でした。あらためて説明するまでもなく渡邊さんはエルコンドルパサーの生産者兼馬主です(海外では繁殖牝馬の所有者が生産者としてクレジットされます)。

記事から渡邊さんのコメントを引用します(126頁)。

「実際に馬が凄いらしいんですよ。北海道で馬を見た多田信尊君(グローブエクワインマネージメント代表)が、『どこか行くところ決まっているんですか?』と聞くから『尾形(充弘)さんに決めちゃったよ』と答えると、『はぁ、そうですか』残念そうだったね。古賀(慎明)調教師もたまたま行った先でこの馬を見て、『参考のために見せてもらいましたが凄いですね』と言ってました。まぁ、実際に走ってみないとわからないけどね。いまのところは順調です」

同誌に掲載した「栗山ノート」の、マンハッタンカフェ産駒ベスト5に採り上げた馬でもあります(151頁)。コメントは以下のとおり。

「父が柔らかいのでアフリートのような硬質のスピード血脈は好感が持てる。ミスプロとノーザンダンサーを併せ持つマンカフェ産駒の成功パターン。牝系の質も申し分ない」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007102537/

同世代のトップクラスとはまだ差がありますが、成長の余地は十分あるので春が楽しみです。

2010年1月 5日 (火)

マカニビスティー快勝

2010年の中央競馬が始まりました。本日の勝負レースは京都3R(3歳500万下・ダ1400m)。マカニビスティーの単勝でした。

ウマニティに提供した予想を転載します(ウマニティのサイトの「プロ予想DX」をクリックし、「栗山求」を探してください)。

「◎マカニビスティーはサクセスブロッケンと同じくアワーミスレッグスの孫で、この2頭はいずれもサンデーサイレンスとロベルトを持っているので血統構成がきわめてよく似ている。母の父にブライアンズタイムを持つのは、エスポワールシチー、ブルーコンコルド、ヴァンクルタテヤマなどダートの鬼によく見られるパターンでもある。1勝クラスで停滞する器ではない」

マカニビスティー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007106231/
サクセスブロッケン
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2005106204/

ナムラアトラクトが単勝1.9倍という断然人気に推されていたので、マカニビスティーの単勝は6.1倍もつきました。正直このオッズにはビックリしました。レースは4馬身差の圧勝。実力どおりの結果が出たと思います。

マカニビスティーについては昨年12月22日のエントリーでもちょっと触れました。母サクセスウイッチは Graustark=His Majesty 3×4の全兄弟クロスを持ち、これらは底力の塊のようなヨーロッパ血統なので、ゼンノロブロイをサポートする血統としては申し分ありません。ゼンノロブロイの配合の要点については1月2日のエントリーをご参照ください。

サクセスブロッケンと血統構成が似ていると書きましたが、カネヒキリやエスポワールシチーにも似ていますね。大物感があります。

2010年1月 4日 (月)

マイネルセレクト

昨日のエントリーを書いてからハッと気づいたのですが、マイネルセレクトのことを忘れていました。

2歳戦で4勝(すべてダート)という数字は、社台系の種牡馬に比べて繁殖牝馬の質に恵まれない状況では上々といえるものです。地方競馬のファーストシーズンサイアーランキングでは、収得賞金、勝利数、勝利頭数、いずれも第2位です。

種牡馬として成功するケースが多いフォーティナイナー系で、母系はいわゆる“華麗なる一族”。Nijinsky、サンシー、ヴェンチアと、内包する血も優れています。配合のアイディアがいろいろ湧いてくる種牡馬です。これで種付料は「受胎確認後20万円」ですから、かなりお得ではないでしょうか。

2010年1月 3日 (日)

ダート戦で馬券になる新種牡馬

成績的に新種牡馬御三家には及ばないものの、狙い方次第では馬券になる種牡馬もいます。アドマイヤドンとサンライズペガサスはパワーを伝えているのでダート戦では必ずチェックしたい種牡馬です。

アドマイヤドンはダート王に君臨した名馬。名牝ベガの子で、ダービー馬アドマイヤベガの半弟という良血です。ただ、ティンバーカントリー産駒ということもあり、サンデー系の名馬に比べると種牡馬人気はもうひとつ。産駒はやはりダートに強く、現在のところ芝連対率12.5%に対してダートは20.0%。暮れの中京最終週、樅の木賞(2歳500万下・ダ1700m)をブルーソックスが快勝しています。ダート新馬戦は連対率50.0%(6戦3連対)と強く、この条件は狙えます。このブルーソックスと、ダート新馬戦を勝ち上がったトーセンアレスは Mr.Prospector のクロスを持っています。

サンライズペガサスはサンデー産駒ですが、母ヒガシブライアンが「ブライアンズタイム×Alydar」なので、ダートへの適性があります。番組のなかでダート戦が増えてきた秋後半からちょこちょこ目立つようになりました。前出の樅の木賞で3着となったペガサスヒーローはサンライズペガサス産駒です。1月、2月のダート戦では引き続き注意したいですね。

2010年1月 2日 (土)

2009年のファーストシーズンサイアー

2009年のファーストシーズンサイアーランキング(JRA)のベスト3は以下のとおり。

1位ゼンノロブロイ
2位デュランダル
3位ロージズインメイ

このうち、首位のゼンノロブロイが「勝利回数」「賞金」の双方で突出した成績を挙げ、2位デュランダル、3位ロージズインメイが並んで追い上げるという形。4位以下はガクッと落ちます。

ゼンノロブロイ産駒は、本賞金1位のアニメイトバイオ、2位ギンザボナンザ、3位アグネスワルツ、4位ウイントランザムまで、いずれも母系にノーザンテーストを持っています。ゼンノロブロイは Northern Dancer の近似血脈である Icecapade を持ち、全体的にアメリカ血統が強すぎます。したがって、Northern Dancer 系で Lady Angela 3×2(Hyperion 4×3)という配合を持つノーザンテーストと相性がいいのでしょう。

ギンザボナンザとモンテエン(百日草特別3着)はトニービンを持っています。トニービンも、ヨーロッパ血統の王様である Hyperion の塊といえる血なので、ゼンノロブロイとは相性がよさそうです。昨年5月に刊行された『負けないPOG入門』(競馬王新書)のなかで、ゼンノロブロイ産駒の配合について「ノーザンダンサーやナスルーラの強い血を入れ、それがヨーロッパ血統ならベター」と書きましたが、おおむねそのとおりの傾向が出ていると思います。

ギンザボナンザの血統表
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007103127/

デュランダルはダートの成績が上がってこないので冬場は厳しそうですね。ロージズインメイは母系の血の影響を受けやすいタイプ。正直なところ、これほど芝で走るとは思っていませんでした。現在、芝連対率14.9%、ダートは7.4%です。

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!