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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2010年5月

2010年5月13日 (木)

力のいるダートに向くコマンダーインチーフ系

12日に川崎競馬場で行われた重賞・川崎マイラーズ(ダ1600m)は、2番人気のイーグルショウが勝ちました。

父スエヒロコマンダーは、鳴尾記念(G2)と小倉大賞典(G3)の勝ち馬で、種牡馬としてはすでにイナズマアマリリス(ファンタジーS)を出しています。母ジェイドストリークは Number≒Nureyev 2×2という大胆な配合。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004100519/

スエヒロコマンダーの父コマンダーインチーフは、英・愛ダービー馬という実績と、名種牡馬ウォーニングの半弟という良血を引っ提げて種牡馬入りしたのですが、当初かけられていた期待の大きさからすると全体的にはイマイチという成績でした。スピードに乏しく、速い脚がないという欠点があり、ダートに活路を見出す産駒も少なくありませんでした。

ただ、“種牡馬の父”としては意外に悪くなく、スエヒロコマンダーのほかにも、レギュラーメンバーが昨年の東京ダービー馬サイレントスタメン、東海ダービー馬ダイナマイトボディなどを出し、地味ながら成功を収めています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006104877/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006104820/

  コマンダーインチーフ(1990)
    スエヒロコマンダー(1995)
    │ イーグルショウ(2004)……川崎マイラーズ
    レギュラーメンバー(1997)
      サイレントスタメン(2006)……東京ダービー

力のいるダートに向いた血統といえるでしょう。

2010年5月12日 (水)

Sir Gaylord の瞬発力

ヴィクトリアマイルは、ブエナビスタとレッドディザイアの四度目の対決となります。ここまでの対戦成績はブエナ2勝、レッド1勝。それぞれの着差は1/2、ハナ、ハナですからほぼ互角です。この2頭の配合構成が似ていることはよく知られたところですが、ここであらためて振り返っておきたいと思います。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006103319/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006102929/

            ┌ サンデーサイレンス
          ┌○┘
ブエナビスタ ―――┤ ┌ Caerleon
          └○┤
            └○┐
              └ Santa Luciana

            ┌ サンデーサイレンス
          ┌○┤
レッドディザイア ―┤ └○┐
          │   └ Santa Luciana
          │ ┌ Caerleon
          └○┘

サンデーサイレンス、Caerleon、Santa Luciana の三血脈が近い世代にあります。似たような血統構成の2頭が、同じ世代にあってライバル関係にあり、しかも国際級の名馬であるというのは、あらためて凄いことだなぁと感じます。

今回の1番人気はブエナビスタになりそうです。上記の三血脈のコンビネーション以外にこの馬の配合で注目したいのは Sir Gaylord。母系にこの血を持つスペシャルウィーク産駒はよく走っており、シーザリオ、レーヴドリアン、トライアンフマーチなどがこのパターンに当てはまります。

Sir Gaylord の最大の長所は“切れ味”です。その代表産駒 Sir Ivor は、20世紀のイギリスを代表する名騎手レスター・ピゴットが「私が乗ったベストホース」といって憚らなかった名馬で、ゴール前で繰り出す瞬発力が最大の武器でした。68年の英ダービー、ワシントンDCインターナショナルは、いずれも素晴らしい切れ味を発揮して勝ちました。
http://www.youtube.com/watch?v=5ahW6RIfaqE
http://www.youtube.com/watch?v=vtCzut8FyGM

80年代のヨーロッパ最強馬ダンシングブレーヴにも、Sir Gaylord が含まれています。
http://www.pedigreequery.com/dancing+brave

母の父 Drone は Sir Gaylord の息子で、Sir Ivor と血統構成がきわめてよく似ています。
http://www.pedigreequery.com/drone
http://www.pedigreequery.com/sir+ivor

      ┌ Sir Gaylord
      │     ┌ Pharamond
Drone ―――┤   ┌○┤
      │ ┌○┘ └ Alcibiades
      └○┤ ┌ Mahmoud
        └○┘

      ┌ Sir Gaylord
      │   ┌ Mahmoud
Sir Ivor ―┤ ┌○┘
      └○┤ ┌ Pharamond
        └○┤
          └○┐
            └ Alcibiades

ダンシングブレーヴの瞬発力は凄まじいものでした。この能力の多くは Sir Gaylord-Drone から受け継いだものではないかと思います。大外一気で突き抜けた86年の凱旋門賞は衝撃的でした。
http://www.youtube.com/watch?v=hCucJx2vL-k

スペシャルウィークはピリッと切れるタイプの種牡馬ではないので、Sir Gaylord のような血が入ると弱点を補うという作用もあると思います。

ブエナビスタの配合は、08年のマイルCSを制した“上がり33秒台の女王”ブルーメンブラット(父アドマイヤベガ)とも似ています。いずれもサンデー系で、母方に Sir Gaylord、Round Table、Northern Dancer が入ります。アドマイヤベガの2代母アンティックヴァリューは、Nijinsky とよく似ている(Northern Dancer+Menow+Bull Lea)ので、さらに配合は近いですね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2003102993/

今回のレースは、出走予定馬のプレレーティングを見ても、ブエナビスタとレッドディザイアの実力が抜けていることは明らかです。ただ、それで決まらないのが競馬。体調が整わなければ一昨年のウオッカのように負けてしまいます。帰国緒戦だけに追い切りを見ないことには印は決められません。

2010年5月11日 (火)

トライマイベスト=El Gran Senor

昨年秋に誘拐されたイタリアの種牡馬 Martino Alonso が無事発見されたそうです。事件発生から半年以上が経過していたので、関係者も最悪の事態を想定していたことは想像に難くありません。種牡馬誘拐→無事発見、という流れを目にすると、つい Shergar 生存のエイプリルフールネタを思い出してしまうのですが、今回は本当のようです。

Martino Alonso は、現役時代にイタリアのG1で2着、3着という成績。至って平凡です。種牡馬としても大きな期待は掛けられず、初年度の産駒数はわずか一桁でした。しかし、そのなかからいきなり Ramonti という国際級の大物が出現しました。通算20戦12勝(2着5回)。レコード勝ちしたクイーンアンS(英G1・芝8f)のほか、サセックスS(英G1・芝8f)、クイーンエリザベスS(英G1・芝8f)、香港C(港G1・芝2000m)、ヴィットリオディカプア賞(伊G1・芝1600m)など数多くのGレースを制しています。いまのところ Martino Alonso 産駒の大物は Ramonti だけで、ほかの産駒とはレベルが違いすぎるので鬼っ子というべき存在です。

Ramonti は、トライマイベスト=El Gran Senor 4×2という大胆な全きょうだいクロスを持っています。伝えるものが弱い血は、これぐらい思い切った配合をしないと大物を出せないということでしょう。
http://www.pedigreequery.com/ramonti

トライマイベストを持つ日本の代表的な種牡馬といえばキングカメハメハ。初年度産駒のナサニエルは、フサイチホウオー、トールポピーの半弟にあたる良血で、全日本2歳優駿(G1)で2着となりました。この馬はトライマイベスト=El Gran Senor 4×3です。今年の2歳では、ツルマルグラマーの2008がトライマイベスト=El Gran Senor 4×3。インディゴワルツの2008がトライマイベスト≒ロッタレース4×2です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008101894/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103089/

2010年5月10日 (月)

NHKマイルCはダノンシャンティ

いくら馬場がよかったとはいえ、1000mを57秒9で通過しながら上がりを33秒5でまとめるのですから、展開に恵まれた勝利というわけではありません。

同日の古馬準OP(芝1600m)を勝ったカウアイレーンは、1000mを60秒9で通過(ダノンシャンティより3秒遅い)し、上がりは33秒3(わずか0秒2差)でした。ダノンシャンティの能力の高さがうかがい知れます。どんな流れでも33秒台で上がれる能力は他陣営からすれば脅威でしょう。

『web競馬王』の予想は◎△○で馬単2680円、3連単17180円的中。ただ、ウマニティでは欲を掻いて点数を絞ったため失敗しました。予想文を転載します。

「◎ダノンシャンティは『フジキセキ×マークオブエスティーム』という組み合わせ。母シャンソネットはシングスピールやラーイの半妹にあたる良血。2代母グローリアスソングはカナダ年度代表馬、米最優秀古馬牝馬。『ヘイロー3×3』だけが目立つ単純な配合に見えがちだが、じつはそうではなく、アンガール≒エルバジェ4×4、ミランミル5×6など、重厚な血が全体をしっかり支えている。それ以外にもダンスインザダークなどに見られるブルースウォーズ=ブルーヘイズの全兄妹クロスを持つなど、底力を感じさせる緻密な配合構成で見どころがある。母の父マークオブエスティームから受け継いだ切れ味は非凡。前々走の共同通信杯は展開のアヤで2着に敗れたが、前走の毎日杯は上がり33秒4、左ムチ一発で楽々と差し切った。レース前半は掛かり気味だったのでペースが速くなるのはプラスだろう。東京芝マイルはほぼベスト条件なのでしっかり結果を出すはず。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007105709/

英気に満ちた末脚は爽快の一語。フジキセキがついに傑作を送り出したという感が強いですね。共同通信杯、毎日杯、NHKマイルCと◎を打ち続けたのは、それだけ配合を高く評価していたからです。ちなみに『競馬王』誌上では、毎日杯の前からNHKマイルCの本命馬として挙げていました(5月号の亀谷敬正氏との巻頭対談をご参照ください)。

ダノンシャンティと人気を分け合ったサンライズプリンス(4着)は、強さは認めても▲しか打てませんでした。そのフットワークは、よくいえば力強く、悪くいえば緩慢です。スローから平均ペースの切れ味勝負になればダノンシャンティに歯が立たず、ハイペースでもマークされたら苦しいだろうという見立てでした。したがって、同じく切れ味に特長のあるリルダヴァルを○とし、サンライズは▲にとどめました。レース後、横山典弘騎手はいみじくも「タメて切れるタイプでもない」(ラジオNIKKEI競馬実況web)と語っています。もっとも、今回はあまりにもハイペースだったので、潰れたのは仕方のないところでしょう。

それにしても、今年の3歳牡馬はレベルが高いですね。ヴィクトワールピサ、ペルーサ、ダノンシャンティの3頭は世界のどこへ出てもトップを争える逸材でしょう。今年のダービーは空前絶後の大決戦となりそうです。

2010年5月 9日 (日)

プリンシパルSはルーラーシップ

デビュー以来、さまざまなアクシデントに遭遇し、回り道をしながら、それでもしっかりとダービーへのパスポートを手にしたのですから大したものです。『web競馬王』の予想では◎を打ったものの、2着のクォークスターが抜けてしまい不的中。予想を転載します。

「◎ルーラーシップは『キングカメハメハ×トニービン』という組み合わせ。母エアグルーヴは現役時代に年度代表馬に輝いた女傑で、繁殖牝馬としてもアドマイヤグルーヴ(エリザベス女王杯2回)、フォゲッタブル(ステイヤーズS、ダイヤモンドS)を出しておりきわめて優秀。父母ともにサンデーを持たない配合としてはこれ以上望めないレベルにある。キングカメハメハ産駒は東京コースを得意としており、本馬もトビの大きいダイナミックなフットワークなので、十中八九、東京コースは合うはず。出遅れて後方インに押し込められた前走は力を出し切れなかった。条件が変わった今回はいいだろう。」

手綱をとった横山典弘騎手は「フットワークが現状無駄に大きい」(ラジオNIKKEI競馬実況web)とコメント。角居勝彦調教師は「まだ体も緩いし、もう少し待ってあげたらと横山騎手から言われました」(同)。

要するにまだ未完成ということなので、ダービーではやや足りないかもしれません。しかし、今回のパフォーマンスを見てのとおり、器の大きさは歴然としています。荒削りなレースぶりで勝つ馬は得てして過大評価されがちですが、この馬はその種のハッタリ屋ではなく、やはり何物かを持っていると思います。ダイナミックなフットワークはサッカーボーイを思い出します。
http://www.youtube.com/watch?v=7nfXGPxiKBw

2010年5月 8日 (土)

京都新聞杯はゲシュタルト

08年のメイショウクオリア、09年のベストメンバー、そして今年のゲシュタルトと、3年連続でマンハッタンカフェ産駒が優勝しました。この条件がよっぽど合っているのでしょう。『web競馬王』の予想は○▲で馬連1060円を的中しました。

何度か記しているように、ゲシュタルトについては昨年の春からその配合に注目していました。『競馬王のPOG本 2009~2010』の「栗山ノート」で、“マンハッタンカフェのA級配合馬”としてピックアップした5頭(131頭から選抜)に含まれています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007104975/

母系に Sadler's Wells を持つマンハッタンカフェ産駒には、レッドディザイア、ジョーカプチーノ、ヤマニンウイスカーといった活躍馬がいます。ドイツ血統と Sadler's Wells の相性の良さについては、4月30日のエントリーで論じていますのでご参照ください。ちなみに、今年の2歳世代には、母系に Sadler's Wells が入る配合パターンでゲシュタルトを上回るものは残念ながら見当たりません。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/04/sadlers-wells-a.html

◎レーヴドリアンは3着。33秒9というメンバー中最速の上がりをマークしたものの及びませんでした。こういう競馬しかできない馬なので仕方ないですね。今回はペースが速くなるので届くという読みでしたが、向正面で思ったよりもペースが落ち着いてしまいました。気性が成長しないことには同じような競馬の繰り返しでしょう。

2010年5月 7日 (金)

ギリシャのサラブレッド

ギリシャ危機が世界を揺るがしています。昨晩、94円だったドル円の為替レートは、今朝起きてみると91円。未明には一時87円台をつけました。アメリカで100万ドルの馬を買うとすると、昨晩は9400万円必要でしたが、今朝は9100万円で買えるわけです。そういう意味ではお得感があるとはいえ、日本経済への悪影響が深刻なので喜んでいる場合ではありませんね。

ギリシャの競馬については何一つ知りません。ただ、昨年のちょうどいまごろ、ギリシャ出身の Ialysos というスプリンターがイギリスに遠征したことは覚えています。

Ialysos は2004年にギリシャで誕生。父 So Factual、母 Vallota は Polish Precedent の娘ですから、いわゆる持込馬です。
http://www.pedigreequery.com/ialysos

ギリシャのオールウェザーコースで7戦全勝のあとイギリスへ渡り、ヘイドックで行われた移籍緒戦(芝5ハロンのリステッドレース)を勝ったときにはニュースになりました。続くロイヤルアスコットのゴールデンジュビリーS(英G1・芝6f)はさすがに相手が強く、道悪にも脚をとられ14頭立ての12着と惨敗。しかし、続くサンダウンのスプリントS(英G3・芝5f)では巻き返して優勝しました。ギリシャ出身馬がイギリスのGレースを勝つのは史上初ではないでしょうか。Ialysos はその後、シーズン終了までに2戦し、13着、10着という成績を残しています。

Ialysos の半妹 Irida は、地元ギリシャの Filandros という種牡馬を父としています。この父系は見たことがありませんでした。
http://www.pedigreequery.com/irida2

  Teddy(1913)
   Brumeux(1925)
    Borealis(1941)
     Atromitos(1949)
      Nilefs(1966)
       Stavraetos(1971)
        Evippos(1981)
         Filandros(1994)

Borealis はディープインパクトの4代母の父でもあります。こんなラインが残っていたとは驚きです。月並みな感想ですが世界は広いですね。

2010年5月 6日 (木)

英1000ギニーは Special Duty

5月2日に行われた英1000ギニー(G1・芝8f)は、単勝67倍の Jacqueline Quest がハナ差で先頭ゴールインしたものの、進路妨害のため2着降着。1番人気のフランス調教馬 Special Duty が繰り上がって優勝しました。ゴール前の競り合いで、Jacqueline Quest は Special Duty をかなり押圧していたので、この判定は仕方がないかなという気がします。
http://www.youtube.com/watch?v=LwvParJLCdo

イギリスのクラシックレースにおいて1位入線馬が降着または失格したのは、Nureyev(80年の英2000ギニー)、Aliysa(89年の英オークス)に次いで3頭目だったと思います。Special Duty の馬主アブデュラ殿下は、ちょうど30年前に Nureyev の失格で英2000ギニーをものにした Known Fact の馬主でもありました。つまり繰り上がりによる英クラシック制覇は二度目です。ただ、06年の仏1000ギニー(G1・芝1600m)では、逆に1位入線の Price Tag が3着に降着するという憂き目にあっています。

「ヘネシー×Distant View」という組み合わせなので、いかにも一本調子のスピード馬という感じです。昨年秋にチェヴァリーパークS(英G1・芝6f)を勝ったときは、たしかに強かったものの2歳戦向きのタイプと感じたので、クラシックでは楽な戦いにはならないだろうと考えていました。今回のレースは、ニアサイドとファーサイドに馬群が二分し、ファーサイド組が全滅するという馬場コンディションのアドバンテージがあったのも事実です。
http://www.pedigreequery.com/special+duty

1位入線も2着降着となった Jacqueline Quest は、ノエル・マーティン氏の持ち馬。彼は14年前の96年に、滞在中のドイツでネオナチに襲撃され負傷。以来、手足が動かなくなり車椅子生活を余儀なくされています。降着を告げられると目に涙を浮かべていたそうです。人情としては勝たせてあげたかったですね。
http://www.youtube.com/watch?v=ygMuXQdqZT0

2010年5月 5日 (水)

英2000ギニーは Makfi

5月1日に行われた英2000ギニー(G1・芝8f)は、中団待機のフランス馬 Makfi が後半鋭く伸びて快勝しました。通算成績は3戦全勝。
http://www.youtube.com/watch?v=1UTQ3yg0HsU

父 Dubawi は、わずか1世代を残して急逝した Dubawi Millennium の忘れ形見。現役時代にジャックルマロワ賞、愛2000ギニーなどG1を3勝した名馬で、初年度産駒となる今年の3歳世代から、この Makfi と伊2000ギニー(G3)を勝った Worthadd を出しています。出足好調ですね。

Makfi は、父 Dubawi(愛2000ギニー)、母の父 Green Desert(英2000ギニー2着)、2代母の父 Irish River(仏2000ギニー)ですから、ギニーレースに向いた血統です。父が持つ Sir Ivor≒Drone のクロスを継続している(6・6×4)ほか、Mill Reef≒Riverman 5×4などもあるので、配合的にはよくできていると思います。スローペースの切れ味勝負をズバッと突き抜けたので日本向きかもしれません。
http://www.pedigreequery.com/makfi

騎乗したクリストフ・ルメール騎手は、いまや世界を代表する名手のひとりですね。今年からアガ・カーン四世殿下の主戦ジョッキーとなったので、これからさらにビッグタイトルを手にするでしょう。ただ、Makfi は殿下の所有馬ではありません。

2010年5月 4日 (火)

ケンタッキーダービーは Super Saver

まず印象に残ったのはカルヴィン・ボレル騎手の巧みな手綱捌き。ラチ沿いを通って鮮やかに抜け出しました。白い帽子、白い勝負服のゼッケン4番が Super Saver です。
http://www.youtube.com/watch?v=1HIX4SX07m8

彼はここ4年間のダービーで1、3、1、1着という成績。チャーチルダウンズは地元コースなので特性を知り尽くしています。まさに“ダービーマスター”です。07年の Street Sense、09年の Mine That Bird、今年の Super Saver に共通するのは、道中インぴったりを回り、コースロスなくポジションを上げていったこと。

Street Sense で勝った際は、3コーナーから前詰まりすることなく最内をスイスイ上昇するという、カッパーフィールド顔負けのイリュージョン騎乗でした。上空からの映像でそのコース取りの妙を堪能することができます。
http://www.youtube.com/watch?v=sS6q36Xqcps

振り返れば、チャーチルダウンズで行われた91年のブリーダーズCジュヴェナイルで、パット・バレンズエラ騎乗のアラジがああいう競馬をして勝ちましました。
http://www.youtube.com/watch?v=mYIQttbYOOs

チャーチルダウンズでは、前半飛ばしすぎると3コーナーあたりから全体のラップが落ちるので、ああいうマクリが可能になるわけですが、多頭数の競馬でインを突くというのは捨て身の覚悟が必要です。ボレル騎手は狭いスペースを突く技術と度胸がズバ抜けているのでしょう。

父 Maria's Mon にとっては、01年の Monarchos に続く2頭目のケンタッキーダービー馬。ここ半世紀で複数の優勝馬を出した種牡馬は、Bold Bidder(74年 Cannonade、79年 Spectacular Bid)、Exclusive Native(78年 Affirmed、80年 Genuine Risk)、Halo(83年 Sunny's Halo、89年サンデーサイレンス)、Alydar(87年 Alysheba、91年 Strike the Gold)に次いで5頭目となります。

Maria's Mon は Seattle Slew と相性がよく、これまでにG1を勝った7頭の産駒のうち、3頭(Wait a While、Super Saver、Latent Heat)がこのパターンから誕生しています。とくに Wait a While と Super Saver は、いずれも母の父に A.P.Indy を持っています。この2頭は、Maria's Mon 産駒の賞金獲得順で1、2位を占めており、偶然とは思えません。
http://www.pedigreequery.com/wait+a+while
http://www.pedigreequery.com/super+saver3

Maria's Mon の父の母 Uncommitted と、Seattle Slew の母 My Charmer には、いずれも War Admiral と La Troienne の強い凝縮があります。これが脈絡することで好結果を生んでいると考えられます。
http://www.pedigreequery.com/uncommitted
http://www.pedigreequery.com/my+charmer

       ┌○┐ ┌ War Admiral
       │ └○┤
Uncommitted ―┤   └○┐
       │     └ La Troienne
       │   ┌○┐
       │ ┌○┤ └ La Troienne
       └○┘ │ ┌ War Admiral
           └○┘

       ┌○┐
       │ └○┐ ┌ War Admiral
       │   └○┤
My Charmer ―┤     └ Baby League(その母 La Troienne)
       │
       │ ┌○┐ ┌ War Admiral
       └○┘ └○┤
             └ Baby League(その母 La Troienne)

Seattle Slew 産駒の A.P.Indy は、「War Admiral+La Troienne」を抱える Buckpasser を母系に持つので、上記の特長をさらに強化した形となっています。
http://www.pedigreequery.com/ap+indy

       ┌○
Buckpasser ―┤ ┌ War Admiral
       └○┤
         └○┐
           └ La Troienne

Super Saver の母系は優秀で、母 Supercharger の全妹の子には、06年のケンタッキーダービーとベルモントSで2着となった Bluegrass Cat がいます。
http://www.pedigreequery.com/bluegrass+cat2

また、2代母は本邦輸入種牡馬リズムの全妹。4代母はこれまた War Admiral と La Troienne の強い凝縮を持つ Numbered Account です。

         ┌○┐ ┌ War Admiral
         │ └○┤
Numbered Account ┤   └○┐
         │     └ La Troienne
         └○┐
           └○┐ ┌ War Admiral
             └○┤
               └○┐
                 └ La Troienne

ここまでやるか、というぐらい「War Admiral+La Troienne」の血を重ねています。しかし、アイドルアワーファームから生まれたこの血統が、現代アメリカ血統の中核を形成していることを考えれば、別段奇異なこととは思いません。むしろ保守本流、といえるでしょう。

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!