Sir Gaylord の瞬発力
ヴィクトリアマイルは、ブエナビスタとレッドディザイアの四度目の対決となります。ここまでの対戦成績はブエナ2勝、レッド1勝。それぞれの着差は1/2、ハナ、ハナですからほぼ互角です。この2頭の配合構成が似ていることはよく知られたところですが、ここであらためて振り返っておきたいと思います。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006103319/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006102929/
┌ サンデーサイレンス
┌○┘
ブエナビスタ ―――┤ ┌ Caerleon
└○┤
└○┐
└ Santa Luciana
┌ サンデーサイレンス
┌○┤
レッドディザイア ―┤ └○┐
│ └ Santa Luciana
│ ┌ Caerleon
└○┘
サンデーサイレンス、Caerleon、Santa Luciana の三血脈が近い世代にあります。似たような血統構成の2頭が、同じ世代にあってライバル関係にあり、しかも国際級の名馬であるというのは、あらためて凄いことだなぁと感じます。
今回の1番人気はブエナビスタになりそうです。上記の三血脈のコンビネーション以外にこの馬の配合で注目したいのは Sir Gaylord。母系にこの血を持つスペシャルウィーク産駒はよく走っており、シーザリオ、レーヴドリアン、トライアンフマーチなどがこのパターンに当てはまります。
Sir Gaylord の最大の長所は“切れ味”です。その代表産駒 Sir Ivor は、20世紀のイギリスを代表する名騎手レスター・ピゴットが「私が乗ったベストホース」といって憚らなかった名馬で、ゴール前で繰り出す瞬発力が最大の武器でした。68年の英ダービー、ワシントンDCインターナショナルは、いずれも素晴らしい切れ味を発揮して勝ちました。
http://www.youtube.com/watch?v=5ahW6RIfaqE
http://www.youtube.com/watch?v=vtCzut8FyGM
80年代のヨーロッパ最強馬ダンシングブレーヴにも、Sir Gaylord が含まれています。
http://www.pedigreequery.com/dancing+brave
母の父 Drone は Sir Gaylord の息子で、Sir Ivor と血統構成がきわめてよく似ています。
http://www.pedigreequery.com/drone
http://www.pedigreequery.com/sir+ivor
┌ Sir Gaylord
│ ┌ Pharamond
Drone ―――┤ ┌○┤
│ ┌○┘ └ Alcibiades
└○┤ ┌ Mahmoud
└○┘
┌ Sir Gaylord
│ ┌ Mahmoud
Sir Ivor ―┤ ┌○┘
└○┤ ┌ Pharamond
└○┤
└○┐
└ Alcibiades
ダンシングブレーヴの瞬発力は凄まじいものでした。この能力の多くは Sir Gaylord-Drone から受け継いだものではないかと思います。大外一気で突き抜けた86年の凱旋門賞は衝撃的でした。
http://www.youtube.com/watch?v=hCucJx2vL-k
スペシャルウィークはピリッと切れるタイプの種牡馬ではないので、Sir Gaylord のような血が入ると弱点を補うという作用もあると思います。
ブエナビスタの配合は、08年のマイルCSを制した“上がり33秒台の女王”ブルーメンブラット(父アドマイヤベガ)とも似ています。いずれもサンデー系で、母方に Sir Gaylord、Round Table、Northern Dancer が入ります。アドマイヤベガの2代母アンティックヴァリューは、Nijinsky とよく似ている(Northern Dancer+Menow+Bull Lea)ので、さらに配合は近いですね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2003102993/
今回のレースは、出走予定馬のプレレーティングを見ても、ブエナビスタとレッドディザイアの実力が抜けていることは明らかです。ただ、それで決まらないのが競馬。体調が整わなければ一昨年のウオッカのように負けてしまいます。帰国緒戦だけに追い切りを見ないことには印は決められません。
こんにちは。栗山さんのファンです。
スペシャルウィークのいま一頭の活躍馬リーチザクラウンの母方にも、Sir Gaylordの両親が別々に入っていますね。^^
Halo、Sir Gaylord、Nijinsky、Buckpasser、Round Table、Regal Gleam、Fairy Bridge。
じつに相性の良い血脈群だなあとあらためて感心です。
ほかにこのあたりの血と相性が良さそうなのはBlushing Groomですが、レーヴドリアンを見ているとBlushing Groomを混ぜてもキレを出す方向には作用しないのかなとも。
ご賢察をうかがえれば幸いです。
投稿: h | 2010年5月12日 (水) 18:57
こんにちは。いつもお読みいただきありがとうございます。
ご指摘のとおり、リーチザクラウンには Turn-to と Somethingroyal が入っていますね。いわれてみればなるほど、という感じです。やはりこのあたりの血が入るといいのでしょう。
スペシャルウィークに Blushing Groom を加えても、おっしゃるとおり切れ味というベクトルには向かわないという気はしますね。レーヴドリアンのレースぶりに関しては、気性的な問題が大きいのかなと思います。同馬はセントクレスピン4×6。その父は Aureoleなので、気性面で何かおかしなものを伝えている可能性も……?
投稿: 栗山求 | 2010年5月12日 (水) 22:38