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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

雑談

2011年3月15日 (火)

的場文男騎手の通算勝利数が現役トップ間近

地震の影響で南関東公営競馬は現在開催されておりません。今回取り上げたいのは現役最多勝ジョッキーをめぐる争いです。3月11日に終了した第19回大井開催(5日間)で、的場文男騎手は4勝を挙げました。これで地方競馬における通算勝利数は6122勝。石崎隆之騎手の6127勝まであと5勝と迫りました。

石崎騎手は87年から15年連続リーディングジョッキーに輝き、通算勝利数では長らく現役1位をキープしてきましたが、いよいよ的場騎手に逆転されるときが近づいてきました。昨年の勝利数は65勝。的場騎手は198勝。ここ数年で急速に差が縮まってきました。

石崎騎手は55歳。的場騎手は54歳。いずれも73年デビューなので騎手生活は足かけ39年目です。01年に引退した佐々木竹見(地方競馬で7151勝)の42年には及びませんが、それでも気が遠くなるような道のりです。

50代半ばにさしかかっても一線級を維持する的場騎手は超人的ですが、才能あふれる若手が伸びてきたことにより、以前のようなペースでは勝ち星を稼ぐことはできていない印象です。今年はいまのところ大井競馬で第3位。南関東全体では第6位です。以下は3月11日終了時点の南関東騎手勝利数ランキングです(短期免許騎手は除く)。

1位 戸崎圭太(大井) 60勝
2位 御神本訓史(大井)50勝
3位 森泰斗(船橋)  32勝
4位 今野忠成(川崎) 29勝
5位 町田直希(川崎) 26勝
6位 的場文男(大井) 24勝★
7位 石崎駿(船橋)  21勝
8位 真島大輔(大井) 20勝
9位 山崎誠士(川崎) 17勝
10位 佐藤博紀(川崎) 15勝

内田博幸騎手の中央移籍後に南関東の王座に就いた戸崎圭太騎手と、長い騎乗停止から復帰した御神本訓史騎手の二強体制となっています。

的場騎手は佐々木竹見騎手の7151勝まであと1000勝ちょっと。不可能な数字ではありませんが、もちろん簡単な数字でもありません。あとはまだ手にしていない東京ダービーのタイトル。今年で30回目の挑戦となります。

2011年3月13日 (日)

シンボリルドルフ30歳の誕生日

土曜日の夕方、ショッピングセンターまで買い出しに行ったら、水やパンやインスタント食品が陳列棚から消え去っていました。ポリタンクもなし。コンビニへ行くとミネラルウォーターは完売。おそらく首都圏はどこもこんな光景だったのでしょう。停電により断水するとマズイので、街角の自動販売機でミネラルウォーターをまとめ買いしました。多少コストは高くなりますが仕方ありません。

言語を絶する被災地の惨状を目の当たりにすると競馬を楽しめる気分ではなく、数万人の方々の安否や原発の状況を考えると気分が落ち込んできます。何を書くか迷ったのですが、地震の悲惨さを伝えるのはわたしの役割ではなく、いつまでも身辺雑記を書くのもどうかと思うので、簡単ではありますがやはり競馬について書くことにします。不快に思われましたらすみません。

本日はシンボリルドルフが誕生してからちょうど30年目にあたります。昨年のジャパンC当日、東京競馬場にやってきてその雄姿を披露したのは記憶に新しいところです。

まだ現役だった85年12月、『勝つことに憑かれた名馬 シンボリルドルフ』(今井寿恵/角川書店)という本が出版され、発売日に書店で手に入れました。当時、高校生にとって本1冊に2000円を費やすのはかなり勇気のいることでした。しかし、まさにお値段以上、買ってよかったと満足できる作品でした。競走シーンはもちろん、美浦トレセン、シンボリ牧場の貴重な写真が満載。とくにシンボリ牧場で収めた写真は美しすぎます。故・今井寿恵さんの最高傑作ではなかったでしょうか。生産者の和田共弘氏、野平祐二調教師、岡部幸雄騎手だけでなく、シンボリ牧場のスタッフの方々にまで丹念にインタビューを試みているのは貴重な資料です。Amazon で調べてみたところ手頃な値段で中古品が入手できるようです。

この本に次のような記述があります。

「1981年3月13日夜10時、北海道門別シンボリ牧場で鹿毛の牡生まれる。細身に出たが筋金入りと思える仔馬は、出生して30分後に立ち上がる。母スイートルナは仔馬をかわいがったが、自分が餌を食べるときに乳を飲みたがると怒り追い払った。普通の仔馬は母親に叱られると馬房の隅でおとなしく待つが、この仔馬は耳をしぼり猫が逆毛を立て威嚇するように母親に立ち向かい、貪欲に乳を飲んだ。感情起伏の激しさは母ゆずりか、シンボリルドルフ。」

目に浮かぶようなエピソードです。生まれつき気位の高い、皇帝という異名にふさわしい名馬です。

シンボリルドルフと現在のトップクラスの競走馬が戦ったら、おそらくルドルフは負けるでしょう。でも、理性ではそう思っても、じっさいに走ってみたらわからないぞ、という気持ちがあるのも事実です。

シンボリルドルフがシンザンの長寿記録を塗り替えるのは、2016年6月24日。ルドルフならやれそうな気がします。

2011年3月12日 (土)

地震で開催中止

地震に見舞われた仕事部屋に入ると、まるで爆撃されたかような惨状。部屋の三方の壁に置かれた本棚から、書籍、雑誌、CD類があらかた落下し、膝丈まで埋まっていました。ここで調べ物をしていたら危なかったかもしれません。片付けをしながら数メートル先のパソコンのある場所にたどりつくまで1時間余りを要しました。幸い、パソコン本体と、電気・ガス・水道などのインフラは問題なく、物的被害は本棚の開き戸が壊れた程度で済みました。

3月11日の大井競馬は第9Rが終了した時点で開催取り止め。中止に至る経緯を大井競馬のサイトより転載します。

>【経緯】
>3月11日(金)
>14:45 地震発生
>15:05 第8競走を5分遅れで発走
>15:10 岩手地区の発売を中止
>15:20 オープス磐梯、ニュートラックかみのやま・松山・いいたて、
>    オフト大郷、道営地区の発売を中止
>15:25 大井競馬場正門・北門を開放
>15:35 浦和・船橋競馬場、オフトひたちなかの発売を中止
>15:47 開催執務委員長が第9競走の確定をもって第10競走以降の開催
>    中止を決定
>15:55 第9競走を20分遅れで発走
>16:02 第9競走確定、以降の競走を中止
http://www.tokyocitykeiba.com/news/news.php?id=2123

「大井競馬場内での怪我人、建物の損壊、競走馬等に大きな被害はありません」とのこと。

心配なのは船橋競馬場です。3月14日(月)~18日(金)に行われる予定だった開催は中止。船橋競馬のサイトによると「馬場が使用不能」になったとのこと。詳細は不明ですが、地割れや液状化現象などの可能性が考えられます。

夜7時過ぎにはJRAも土日の開催中止を発表。95年の阪神・淡路大震災の際は、震源に近い京都開催だけが中止され、中山開催は行われたのですが、今回は三場すべて中止となりました。いまは競馬どころではないと思います。被害に遭われた方々には心からお見舞い申しあげます。そして、犠牲になった方々のご冥福をお祈りいたします。

2011年3月10日 (木)

日本のダートに向く Speightstown 産駒

3月といえば調教セールの季節。アメリカのフロリダ州やカリフォルニア州で、OBS、ファシグティプトン、バレッツなどが主催する大規模なセールが行われます。これに赴く日本人ホースマンも多いことでしょう。

アメリカに繋養されいている種牡馬のなかで、日本の馬場に向いた種牡馬は何頭かいますが、“コンスタントに走るダート向きの種牡馬”として個人的に注目しているのは Speightstown。
http://www.pedigreequery.com/speightstown

現役時代にブリーダーズCスプリント(米G1・ダ1200m)など重賞を4勝した一流馬で、04年に米最優秀スプリンターに選出されました。父 Gone West、母の父 Storm Cat という血統です。

日本では過去3頭が走っています。

グリフィンゲート(OP)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006110141/
ドスライス(準OP)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006110106/
エーシンジェイワン(OP)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008110077/

2頭がOP馬、1頭が準OP馬ですから“歩留まり”は最高。ダートの連対率は43.8%で、1走あたりの賞金額は358万円。これも素晴らしいですね。グリフィンゲートは490キロ前後の馬体重ですが、ドスライスとエーシンジェイワンは520~530キロの大型馬。雄大な馬格から繰り出すパワー型のスピードが日本のダートにジャストフィットするのでしょう。

2011年2月18日 (金)

船橋の天才少女? ボールドスマッシュ

ミルコ・デムーロ騎手の13歳下の弟、クリスチャン・デムーロ騎手が南関東で連日騎乗しています。まだ18歳ですが、昨年はイタリアで153勝を挙げて勝利数ランキング第2位。先週土曜日には中央でも騎乗しました。

さすがに上手いですね。鞍嵌りがよく、コースロスを押さえる意識が徹底し、鞭の持ち替えは自由自在、狭いところを抜ける技術もあります。一言でいって、そりゃ勝つでしょう、という感じです。もちろん減量恩典などありません。2月17日の大井競馬では2勝。第10Rの東風特別では9番人気のワールドベアハートを持ってきました。騎乗期間は1月17日から3月4日までの予定なので、あと2週間ほどで帰国します。

デムーロ家の家族構成はどうなっているんでしょうね? 詳しいことはまるで分からないのですが、ミルコの妹パメラが調教師をやっているらしいので、兄弟で少なくとも3人は競馬の仕事についています。ミルコとクリスチャンは13歳も離れているので、その間にいるのはパメラだけでなく、何人かいるのかもしれません。もしビッグダディ的な大家族だったりすると、第三、第四のデムーロが来日する可能性も……? そして彼らの息子たちもやがて騎手になり、将来、大挙して来日して、わが国の競馬がデムーロだらけになる可能性も……?

くだらない妄想はさておき、クリスチャン・デムーロ騎手が初めて騎乗した1月の船橋開催で、2着馬をはるか後方にちぎり捨てて話題になった3歳牝馬がいました。ネオユニヴァース産駒のボールドスマッシュ(岡林光浩厩舎)。同馬にとってこれがデビュー戦でした。

2011年1月21日 船橋第2R(ダ1200m)
http://www.youtube.com/watch?v=SUQnAH6wDKE

最後の1ハロンは手綱を抑えて流し、2着馬に3秒8もの大差をつけました。メジロラモーヌ、メイショウホムラ、サクセスブロッケンなど、デビュー戦で3秒以上の大差をつけて勝つ馬はたまにいるのですが、3秒8差は見たことがありません。もちろん、ボールドスマッシュは地方競馬所属で、しかも相手に恵まれたものなので単純比較はできません。ただ、楽しみな素材であるのは確かでしょう。

生産者は社台ファーム。馬主は吉田照哉氏の名義で、地方競馬オーナーズクラブの募集馬です。全兄アサクサハンター(中央未勝利)は当歳時にセレクトセールで6600万円の値がつきました。2代母はローミンレイチェル。したがって年度代表馬ゼンノロブロイの姪にあたります。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102774/

             ┌ サンデーサイレンス
           ┌○┘
ボールドスマッシュ ―┤
           └○┐
             └ ローミンレイチェル

           ┌ サンデーサイレンス
ゼンノロブロイ ―――┤
           └ ローミンレイチェル

今年の南関東3歳牝馬戦線は、元旦のエントリーで取り上げたクラーベセクレタがリード。先週、浦和競馬場で行われた桜花賞トライアルの重賞・ユングフラウ賞(ダ1400m)を、ほぼ持ったままで後続に5馬身差をつけました。このほか、桃花賞を勝って6戦4勝としたマニエリスムもかなりの器です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103178/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103001/

少なくとも現時点においては、ボールドスマッシュがクラーベセクレタ、マニエリスムよりも上ということはないと思います。ただ、今後順調に成長し、5月の東京プリンセス賞や6月の関東オークスあたりに間に合えば、あるいはいい勝負になるかもしれません。現在の賞金では桜花賞には間に合いません。クラーベセクレタの馬主はサンデーレーシング、マニエリスムはボールドスマッシュと同じ地方競馬オーナーズですから、中央と同じように社台系強し、ですね。

2011年2月11日 (金)

カラー画像で見る1950年代の阪神競馬場

「Flickr」という画像共有コミュニティサイトがあります。ここには世界各国の人々が撮った膨大な画像がアップロードされており、眺めていると時間がいくらあっても足りません。検索機能があるので興味に沿った画像を探すことができます。
http://www.flickr.com/

競馬関係で良かったのは、Herbert T. Gouldon(1923~2006)という方が撮った1950年代の阪神競馬場(キャプションでは「Nigawa Racetrack」)。カラー画像なのできわめて貴重だと思います。

1955年
http://www.flickr.com/photos/herb450/4138799649/
http://www.flickr.com/photos/herb450/4139559382/
http://www.flickr.com/photos/herb450/4138796903/

1956年
http://www.flickr.com/photos/herb450/4142982386/
http://www.flickr.com/photos/herb450/4142981174/
http://www.flickr.com/photos/herb450/4142980170/
http://www.flickr.com/photos/herb450/4142223111/
http://www.flickr.com/photos/herb450/4142218439/
http://www.flickr.com/photos/herb450/4142217203/
http://www.flickr.com/photos/herb450/4142972030/
http://www.flickr.com/photos/herb450/4142970734/
http://www.flickr.com/photos/herb450/4142969244/

下から4番目の画像などは、年代と馬番と勝負服が分かっているので、調べようと思えば人馬を特定することも可能でしょう。枠の帽色が現在のとおり決められたのは1957年。それ以前の時代なので1番ゼッケンなのに赤い帽子を被っています。

ちなみに1955年のダービー馬はオートキツ、56年はハクチカラ。アラブの怪物セイユウがデビューしたのは56年夏で、第1回有馬記念が行われたのは56年暮れです(当時のレース名は中山グランプリ)。55、56年のリーディングサイアーは内国産のクモハタです。

Gouldon 氏はカメラマンではなく実業家。ここに挙げた以外の画像を見ると、1950年代半ばに神戸あたりにお住まいだったようです。家族で出かけたときに写したスナップ写真のコレクションを、「Flickr」にアップロードされています。おそらく競馬が好きだったんでしょうね。

名所旧跡よりも日常風景を主体に収めている点がいいですね。1950年代の素顔の日本がカラーで切り取られています。これなどはなんともいえず郷愁にかられる風景です。
http://www.flickr.com/photos/herb450/4138708293/
http://www.flickr.com/photos/herb450/4145543981/

あの時代に惜しげもなくカラーフィルムを使っていることから分かるように、経済的にかなり恵まれた方だったようです。世界各国を旅されている写真があります。当時のアメリカの豊かな国力が伝わってきます。
http://www.flickr.com/photos/herb450//

2011年1月28日 (金)

トウショウボーイ系最後の競走馬

川崎記念の前日、川崎10Rガーネットフラワー賞を、牡3歳のスベスベヨークン(父マイネルスマイル)が勝ちました。2歳時はホッカイドウ競馬で走り、今年から川崎で出走。これが12戦目にして初めての勝利です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008101195/

父マイネルスマイル、という種牡馬はまったく耳馴染みがありません。サクラロータリー産駒で、現役時代はJRAで4勝(うち障害1勝)。この成績でよく種牡馬になれたなぁと思い、JBISのデータベースで調べてみたところ、99年以降、毎年律儀に1頭ずつ種付けをしています。相手はすべてマイネポラリスという牝馬。つまり、マイネルスマイルはマイネポラリス以外の牝馬を知りません。スベスベヨークンもその交配によって生まれた1頭です。

マイネポラリス(f.1992.ダイナオリンピア)
  ピーチヨークン(c.2000.マイネルスマイル)
  ニコニコヨークン(c.2002.マイネルスマイル)
  ウキウキヨークン(c.2003.マイネルスマイル)
  ワクワクヨークン(c.2004.マイネルスマイル)
  ドキドキヨークン(c.2005.マイネルスマイル)
  プニプニヨークン(c.2007.マイネルスマイル)
  スベスベヨークン(c.2008.マイネルスマイル)
  名前未定(c.2009.マイネルスマイル)

圧巻です……。感動しました。初期の擬態語は心の様子を表すものでしたが、最近は質感を表すものに変化してきているので、09年の産駒もその方向でしょうか? 牡馬ばかり連続して生まれているのもユニークです。

馬主の鍵谷篤宏さんは、父マイネルスマイル、母マイネポラリスの一口出資者だったそうです。それらを引き取って子を作り、地方競馬で走らせているようです。持ち馬はこの両馬から誕生した産駒のみ。世の中にこんな方がいらっしゃるとは……と感心します。

マイネルスマイルはサクラロータリー産駒。その父はトウショウボーイ。鍵谷さんの保護によってマイネルスマイルが種牡馬生活を続けているうちに、ほかのトウショウボーイ系はほとんど断絶してしまいました。

トウショウボーイ産駒で重賞を2勝したセキテイリュウオーは、産駒のスピードリュウオー(セン7歳)、タツノクイン(牝5歳)、ファンシーベル(牝4歳)、ハートオブハート(牝3歳)がまだ現役ですが、すでに種牡馬生活を引退しており、09年生まれの2歳馬はいません。現在は荒木克己育成牧場(新ひだか町)で余生を送っています。

マイネルスマイルは09年生まれの2歳馬が1頭います。名前はまだ決まっていませんが、おそらくこれがトウショウボーイ系の最後の競走馬だと思います。09年は種付けしたものの受胎しなかったようで、10年は種付けを行っていない模様です。

2011年1月16日 (日)

社台グループが欧米セリで良血牝馬を大量購入(後)

社台スタリオンステーションにサンデー系が増殖しているのは周知のとおり。サンデー系が増えすぎて血の飽和を起こすのではないか、という意見もありますが、私はそうは思いません。たとえば仮に、サラブレッドを生産している国が日本だけだったり、あるいは欧米でも日本と同じようにサンデー系が大繁栄しているのなら、そうなる可能性もあるでしょう。しかし、もちろんそのようなことはなく、欧米では Northern Dancer 系や Mr.Prospector 系などの、旧来からある系統が相変わらず繁栄しています。サンデー系と交配可能な他系の牝馬は、海外に出向いてお金さえ出せばいくらでも買えます。幸いなことに社台グループは、それを可能にするだけの潤沢な資金に恵まれています。こんな状況で飽和など起こるはずがありません。あと10年もすれば、サンデーサイレンスのクロスを持つ馬が大レースを勝ち、サンデー系同士の配合も珍しくなくなるでしょう。

種牡馬事業で得た莫大な資金を、海外の良血牝馬の購買に注ぎ込むことは、サンデー系の発展を促すための投資です。サンデー系が健全に成長するために必要となる新鮮な栄養分を、どんどん海外から運んできているわけです。繁殖牝馬のレベルが上昇し、しかもサンデー系が強くなるわけですから一石二鳥です。

「種馬は数打たなきゃ当たらない」という哲学のもと、かつて社台グループは海外の種牡馬を毎年のように導入していましたが、最近は繁殖牝馬の導入に力点を置き換えているような気がします。ある時期を境に、海外から種牡馬を導入して新たな系統を見つけ出そうという考えが後退し、サンデー系を筆頭とする内国産ラインをしっかり育てていこう、という方向に舵を切ったのではないでしょうか。新たな系統を導入するにしても、国内で走った馬のなかで優秀なものを用いれば事足りる、と。“種牡馬による血の更新”から“繁殖牝馬による血の更新”に比重が移っているような気がします。

種牡馬の分野でも、繁殖牝馬の分野でも、国内においては比肩するものが見当たらない社台グループ。これではほかの牧場は追いつけないではないか、とお考えになる方が多いと思います。しかし、ひとつだけやっていない(であろう)ことがあります。それは、アガ・カーン四世殿下がやっているような血統表をベースとした交配種牡馬の選定です。これを社台グループが始めたら半永久的に追いつけないと思います。しかし、やっていないとしたら、その王権は絶対的なものではなく、知恵を使って闘えばまだ革命の起こる余地はあるでしょう。

2011年1月15日 (土)

社台グループが欧米セリで良血牝馬を大量購入(前)

北半球ではだいたい春から秋にかけて1、2歳のセールが行われ、秋冬に繁殖牝馬や現役牝馬などが出場するミックスセールが行われます。良血の繁殖牝馬を手に入れようとするならば、秋冬のミックスセールに出かける必要があります。

1月10日から米ケンタッキーで始まったキーンランドジャニュアリーセールでは、社台ファームが140万ドルの最高価格で Ave(父 Danehill Dancer)を、吉田勝己氏が2番目の価格である80万ドルで Wickedly Perfect(父 Congrats)を落札しました。

Ave は、昨年10月のフラワーボウル招待S(米G1・芝10f)でレッドディザイアを破って優勝した馬です。一方の Wickedly Perfect も米G1ホースですが、明け3歳なのでまだしばらく現役を続けるのではないでしょうか。
http://www.pedigreequery.com/ave5
http://www.pedigreequery.com/wickedly+perfect

このところ欧米のセールにおいて、社台グループ(社台ファームと吉田勝己氏)がどんどん良血牝馬を購入しています。昨年12月に仏ドーヴィルで行われたアルカナディセンバーセールでは、社台グループが落札価格順の上位3頭(Celimene、Lune d'Or、La Boum)までをお買い上げ。また、11月末から12月初めにかけて英ニューマーケットで行われたタタソールズディセンバーセールや、11月に米ケンタッキーで行われたファシグティプトン、キーンランドの両ノベンバーセールでも、目玉商品を続々と落札していきました。

社台グループが落札した主な牝馬は以下のとおり。いずれ日本に輸入され、社台スタリオンステーションの種牡馬群と交配されるのでしょう。どんな実績を持つ牝馬であるかは説明は省きます。興味のある方はURL内にある説明をご覧ください。

http://www.pedigreequery.com/celimene5
http://www.pedigreequery.com/lune+dor2
http://www.pedigreequery.com/la+boum
http://www.pedigreequery.com/serious+attitude2
http://www.pedigreequery.com/gabbys+golden+gal
http://www.pedigreequery.com/dubai+majesty
http://www.pedigreequery.com/franny+freud
http://www.pedigreequery.com/lucky+one3
http://www.pedigreequery.com/fit+right+in
http://www.pedigreequery.com/baroness+thatcher
http://www.pedigreequery.com/moneycantbuymelove2
http://www.pedigreequery.com/pretty+carina2
http://www.pedigreequery.com/cooden+beach
http://www.pedigreequery.com/exhibit+one
http://www.pedigreequery.com/belle+allure3
http://www.pedigreequery.com/limelight11
http://www.pedigreequery.com/pollenator

2011年1月14日 (金)

チャイナマネーと競馬(後)

世界的に存在感を増しているチャイナマネーは、JRAにとってもビジネスの対象となりうるのではないでしょうか。現在、JRAは、ロンドン、パリ、ニューヨーク、シドニー、香港に駐在員事務所があります。中国本土には競馬場はありませんが、上海あたりに事務所を作ってもいいのではないかと思います。馬事とは関係なく、純粋に観光客を誘致するための拠点です。

一般的な傾向として中国人はギャンブル好きだと思います。マカオのカジノへ遊びに行くような、外国でギャンブルを楽しみたいと考える富裕層を取り込むことができれば、売り上げに大きく寄与するだろうと思います。

彼らへ向けて、さまざまな形で日本競馬の魅力をアピールし、観光&競馬を楽しむツアーを組みます。ホテルから直接、貸し切りの大型バスで競馬場の入口まで運んであげれば親切でしょう。中国語対応のレーシングプログラムを作成するのもいいかもしれません。

たとえば、凱旋門賞の当日などは、ロンシャン競馬場の外周路の道端に、世界各国のツアー会社が手配した大型観光バスが数十台も停車し、それはそれは壮観です。ディープインパクトが出走した06年は、大量の日本人観光客が押し寄せたおかげで、場内の1日の売り上げ額が、過去最高だった91年の凱旋門賞当日を34%も上回る新記録でした。場内には日本語の案内板と簡単なパンフレット、日本人向けの馬券売り場などがありました。

また、ナカヤマフェスタとヴィクトワールピサが出走した昨年は、土産物ショップの女性店員が日本語をしゃべっていました。買い物をしようと彼女に近づいていったところ、「日本語で大丈夫ですよ~」とニッコリ。純フランス風の顔立ちと癖のない綺麗な日本語のギャップに感動し、思わず「日本にいらっしゃったことがあるんですか?」と問いかけると、「留学していたことがあるんです」と返ってきました。おそらく統括団体のフランスギャロが、日本人の来場を見越して臨時で雇ったアルバイトなのでしょう。そうした企業努力はたいしたものだと思います。外国人マネーは売り上げ増加の切り札である、と認識しているからだと思います。

昨年4月、超党派のカジノ議連が発足し、昨年12月には「2011年の通常国会でカジノ解禁の法案を議員立法で提出、成立を目指す」と報じられました。これを受け、昨年末の東京株式市場では、カジノ関連株が軒並み値を飛ばし、盛り上がりを見せました。もし仮に、法案が可決され、カジノ解禁という事態になれば、おそらく競馬は長期的に見てきわめて深刻なダメージを受けるでしょう。そうなった際の対抗策としても、外国人マネーを取り込むための準備を、いまのうちにしておいたほうがいいのではないかと思います。

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!