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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2010年2月

2010年2月10日 (水)

なぜか日本に入らない Green Desert 系

昨日のエントリーで採り上げた Green Desert。世界的にそれなりの地位を占めるこの系統が、なぜか日本には入ってきていません。これは不思議なことです。

以前、シンコウフォレスト(父 Green Desert)という競走馬がいました。母は愛チャンピオンS(G1)を勝った良血馬で、自身は高松宮記念(G1)など3つの重賞を制しました。「Green Desert×Ahonoora」という組み合わせは Cape Cross(Sea the Stars や Ouija Board の父、ロジユニヴァースの母の父)と同じ。血統・競走成績ともに注目すべきものがありました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1993109763/

この馬は、引退後、生まれ故郷のアイルランドから種牡馬オファーを受け、日本を後にしました。かの地で種牡馬として成功し、アイルランド、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリア、香港で重賞勝ち馬を送り出しています。

Green Desert 系の種牡馬は、海外から日本に輸入するどころか、逆に輸出している始末です。これは痛いですね。

Green Desert の良さは、まずスピードがあること。そして馬場を選ばないことです。マイル以下であれば、芝でもダートでも晴れても降っても強い。これが世界各国で成功している理由でしょう。

血統的にも日本向きです。母の父 Sir Ivor は、Halo や Drone と相性抜群。サンデーサイレンス(父 Halo)やダンシングブレーヴ(母の父 Drone)の血が浸透している日本においては、カウンター血脈としてかなり重宝するのではないでしょうか。

Green Desert の有力な後継種牡馬である Oasis Dream は、母の父がダンシングブレーヴなので、Sir Ivor≒Drone 3×4です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a010d4f/
ロジユニヴァースは、Halo≒Sir Ivor 3×5・5です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006103140/

もし私が海外から種牡馬を買ってくるとしたら、この系統を第一候補に考えると思います。

2010年2月 9日 (火)

Green Desert 時代の幕開け?

1月22日のエントリーで、2009年の英愛サイアーランキングが Northern Dancer 系の圧倒的な支配下にあることを書きました。上位10頭中9頭がこの系統です。

では、Northern Dancer 系のなかでどのラインが活発に枝葉を伸ばしているかというと、Danzig と Sadler's Wells が双璧です。昨年の英愛サイアーランキングのベスト10に、Danzig 系は5頭、Sadler's Wells 系は3頭ランクインしています。

Danzig 系といえばデインヒルの名前が真っ先に挙がります。イギリスとアイルランドではここ十数年、Sadler's Wells とデインヒルの激しい角逐が繰り広げられてきました。13年連続リーディングサイアーだった Sadler's Wells を、2005年に王座から引きずり下ろしたのはデインヒルです。昨年の英愛リーディングサイアーに輝いた Danehill Dancer もデインヒルの子です。

しかし、英愛サイアーランキングのベスト10に入った Danzig 系5頭が、すべてデインヒルの子かというとそうではありません。デインヒル系の種牡馬は Danehill Dancer(1位) と Dansili(8位)だけで、残りの3頭――Cape Cross(2位)、Oasis Dream(4位)、Invincible Spirit(9位)――は、いずれも Green Desert を経由しています。

つまり、Danzig 系のくくりで見ると、多数派は Green Desert のラインで、デインヒルのラインは少数派なのです。

この Green Desert の躍進を、一時的な突風と見るか、あるいは新たな盟主誕生の胎動と見るかは人それぞれでしょう。現時点ではなんともいえません。Cape Cross は昨年のカルティエ賞年度代表馬 Sea the Stars の父。今年から種牡馬入りする Sea the Stars が成功すれば、大きな流れは Green Desert 系に傾きます。種牡馬勢力図の変化は10年単位のゆっくりしたものです。すぐに結論は出ません。
http://www.pedigreequery.com/sea+the+stars

2010年2月 8日 (月)

わかりやすい初歩の血統

『栗山求 Official Website』(http://www.miesque.com/)の「Works」に新作を追加しました。新作といっても書き下ろしたわけではなく、かつて『週刊競馬通信』誌上に連載したコラム「血統SQUARE」の復刻掲載です。

今回は「わかりやすい初歩の血統」(初出は1994年2月~3月)。一言でいえば「配合を読めるようにするための方法」を解説したものです。「サイアー・ライン」「ファミリー」「配合」という3つの柱から成っています。

細かく19のパートに分かれていますので、最初から読み通すのはシンドイという方は、気になったところを拾い読みするのがいいと思います。

2010年2月 7日 (日)

共同通信杯はハンソデバンド

ハンソデバンドはスローの2番手につけた蛯名騎手の好判断が大きく、位置取りのアドバンテージを最後まで守りきりました。馬も一戦ごとに成長していますね。ギアチェンジをしてトップスピードに乗った際の豪快なフットワークに凄味が加わっています。1月6日のエントリーにも書きましたが、『競馬王のPOG本』の「栗山ノート」では、マンハッタンカフェ産駒ベスト5に採り上げています(151頁)。コメントは以下のとおり。

「父が柔らかいのでアフリートのような硬質のスピード血脈は好感が持てる。ミスプロとノーザンダンサーを併せ持つマンカフェ産駒の成功パターン。牝系の質も申し分ない」

同誌「渡邊隆オーナーインタビュー」の取材で渡邊さんにお話をうかがった際、ハンソデバンドを、07年生まれの所有馬のなかで「一番の期待馬」と位置づけていらっしゃいました。ドイツ血統という切り口でマンハッタンカフェを語るオーナーは日本広しといえども渡邊さんだけでしょう。すでに数年前、ドイツの大種牡馬モンズンをわざわざドイツまで観に行っているというのですから驚きです。エルコンドルパサーに続く渡邊さんの名作誕生です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007102537

惚れ込んだ配合馬なので心情的には◎を打ちたかったのですが、現時点ではまだ力を付けきっていないと判断して予想は▲でした。◎はダノンシャンティ。『web競馬王』に提供した予想を転載します。

「◎ダノンシャンティは『フジキセキ×マークオブエスティーム』という組み合わせ。母シャンソネットはシングスピールやラーイの半妹にあたる良血。2代母グローリアスソングはカナダ年度代表馬、米最優秀古馬牝馬。『ヘイロー3×3』だけが目立つ単純な配合に見えがちだが、じつはそうではなく、アンガール≒エルバジェ4×4、ミランミル5×6など、重厚な血が全体をしっかり支えている。それ以外にもダンスインザダークなどに見られるブルースウォーズ=ブルーヘイズの全兄妹クロスを持つなど、底力を感じさせる緻密な配合構成で見どころがある。母の父マークオブエスティームから受け継いだ切れ味はアリゼオよりも上だろう。」

今回は出負けして位置取りが悪くなり、しかも頭を上げるシーンもありました。それでいて、あのスローペースでハナ差まで追い込むのですから力があります。素晴らしい切れ味でした。

日曜日は『web競馬王』に提供した特別・重賞予想が3戦3勝と好調だったのですが、萌黄賞、共同通信杯、シルクロードSと、◎を打った馬がいずれも2着。喜びも半分といった結果でした。

2010年2月 6日 (土)

エルフィンSはエーシンリターンズ

時計的には5Rの未勝利戦と大差ないわけですが、上がりの競馬だったので致し方ありません。ポルトフィーノやエアメサイアが勝った年もこんな感じでした。

11番人気だったエーシンリターンズ(父キングカメハメハ)の勝因は、レースの流れにうまく乗って距離ロスなくコーナーを回れたことでしょう。脚を溜めれば弾けるのは前走の未勝利戦で証明済み。同じような展開となったのはラッキーでした。キングカメハメハ産駒らしい立ち回りのうまさが武器で、馬ごみを苦にしない点は多頭数のクラシックでは大きなアドバンテージです。ハイペースの競馬となった際にどう対応するかが今後の課題でしょう。予想は、2着ヴィクトリーマーチに◎を打ったものの、エーシンリターンズには印が回りませんでした。残念。

それにしても3歳世代のキングカメハメハ産駒は素晴らしいですね。去年の今頃は、勝ち上がり率はいいものの2勝目が遠く、500万クラス以上はフィフスペトル、スガノメダリスト、キングスレガリアの3頭だけ。“大物を出せる種牡馬”としてうなぎ登りの評価だったネオユニヴァースとは対照的に、うっすらと失望感が漂い始めていました。今年はすでに9頭が2勝以上を挙げています。産駒の傾向が1年でこれほど激変するとは驚きです。

2010年2月 5日 (金)

中京ハンデ重賞の鬼、秋山真一郎騎手

土曜日の中京メインは小倉大賞典(G3・芝1800m)。ドリームサンデーに騎乗する秋山真一郎騎手は、タイトルのとおり中京ハンデ重賞の鬼です。

この条件では過去21戦して7連対。連対率は33.3%(!)、複勝率は47.6%(!!)、単勝回収率は1128%(!!!)というすさまじさです。全4勝の記録は以下のとおり。

98年 愛知杯  カネトシガバナー 1着(1番人気)
04年 中京記念 メイショウキオウ 1着(16番人気)
04年 愛知杯  メモリーキアヌ  1着(9番人気)
09年 中京記念 サクラオリオン  1着(15番人気)

単勝人気がとんでもないことになっています。今回は7番ドリームサンデー(父タイキシャトル)に騎乗予定。私は別の馬に本命を打ちましたが……。

2010年2月 4日 (木)

インペリアルマーチ猛時計

来週のきさらぎ賞(G3・京都芝1800m)に出走するインペリアルマーチ(父ネオユニヴァース)が、木曜朝の栗東坂路で一番時計を叩き出しました。

50.8-37.9-25.8-13.1(馬なり)は出色。ローレルゲレイロが出した前日の一番時計と同タイムです。1月17日に初戦を勝ち上がった際の馬体重は548キロと、まだまだ絞れる余地がありました。上積み十分でしょう。母キョウエイマーチ、半兄トライアンフマーチ。新馬戦を勝ち上がったばかりですが怖いですね。

きさらぎ賞はほかに、ダイワバーバリアン(朝日杯FS-3着)、レーヴドリアン(福寿草特別)、シャイン(シンザン記念-2着)などが出走を予定しています。

2010年2月 3日 (水)

キングカメハメハ+Never Bend 血脈

キングカメハメハは Never Bend 血脈と相性がいい。これは初年度産駒がデビューした当初から言い続けてきたことで、昨年春に刊行された『負けないPOG入門』(競馬王新書)でも、「キングカメハメハの母系はトゥールビヨン-ジェベルの影響が強いので、ネヴァーベンド、ダマスカス、ラジャババ、リュティエ、パーソロンといった血が入るのは好ましい。」と記しています。

マンファスに入る Djeddah と Hugh Lupus には、フランス血統の強い凝縮があります。

Djeddah はフランスのマルセル・ブサックの生産馬。現役生活を引退後、アメリカへ渡り、Never Bend の母の父となりました。Durban≒Heldifann 3×2という強度の全姉妹クロスを持っています。Durban は Tourbillon の母です。
http://www.pedigreequery.com/djeddah

一方、Hugh Lupus は、マルセル・ブサックの生産馬ではないものの、Tourbillon 2×3という強度のクロスを持っています。
http://www.pedigreequery.com/hugh+lupus

やや強引ながら、キングカメハメハの母マンファスは Djeddah≒Hugh Lupus 6×4といえます。それぞれが強い凝縮を持った特殊な配合なので、並のクロスよりもはるかに影響力が強いはずです。

キングカメハメハの交配相手に Tourbillon-Djebel 血脈を持ってくると、マンファスが持つ Djeddah≒Hugh Lupus を強化します。これが『負けないPOG入門』に記した部分の真意です。

Never Bend は2頭の傑出した種牡馬を送り出しました。1頭は Mill Reef。もう1頭は Riverman です。2頭ともキングカメハメハと好相性を示しています。

「キンカメ+Mill Reef」はローズキングダムとアドマイヤテンクウが、「キンカメ+Riverman」はフィフスペトルとコスモセンサーが代表産駒です。成績を示してみましょう。

■キンカメ産駒全体
全連対率 20.9%
芝連対率 20.2%
ダ連対率 22.2%

■キンカメ+Mill Reef
全連対率 25.3%
芝連対率 25.4%
ダ連対率 25.0%

■キンカメ+Riverman
全連対率 27.1%
芝連対率 21.9%
ダ連対率 33.3%

 いずれもキングカメハメハ産駒全体の成績よりも上昇しています。母系に Mill Reef または Riverman を持つキングカメハメハ産駒は今年のPOGでも要注目です。

 Mill Reef と Riverman は血統構成がきわめてよく似ているため、仮にある血脈と Mill Reef が好相性を示した場合、たいてい Riverman との組み合わせでもうまくいきます。その逆もしかり、です。
http://www.pedigreequery.com/mill+reef
http://www.pedigreequery.com/riverman

      ┌ Never Bend
Mill Reef ―┤ ┌ Princequillo
      └○┤ ┌ Count Fleet
        └○┘

      ┌ Never Bend
Riverman――┤   ┌ Princequillo
      │ ┌○┤ ┌ Count Fleet
      └○┘ └○┘

 Mill Reef は、母 Milan Mill が「Princequillo×Count Fleet」。Riverman は、母の父 Prince John が「Princequillo×Count Fleet」です。

 じつは、キングカメハメハの父 Kingmambo は、4代母 Neriad がこれらと同じ「Princequillo×Count Fleet」です。

http://www.pedigreequery.com/milan+mill
http://www.pedigreequery.com/prince+john
http://www.pedigreequery.com/neriad

       ┌ Princequillo
Milan Mill ―┤ ┌ Count Fleet
       └○┘

       ┌ Princequillo
Prince John ―┤ ┌ Count Fleet
       └○┘

       ┌ Princequillo
Neriad  ―――┤ ┌ Count Fleet
       └○┘

 キングカメハメハの母系に Mill Reef または Riverman が入ると、マンファスが持つ Djeddah≒Hugh Lupus を強化するだけでなく、「Neriad≒Milan Mill」または「Neriad≒Prince John」が生じることになります。これも相性の良さの補強材料です。

2010年2月 2日 (火)

ライ麦畑の山田太郎

 先週、『ライ麦畑でつかまえて』の作者J・D・サリンジャーが91歳で亡くなりました。『ライ麦畑――』の原題は『The Catcher in the Rye』。血統屋の悲しさでデインヒル系の種牡馬 Catcher in the Rye をすぐに頭に浮かべてしまいます。08年の独オークス馬 Rosenreihe が代表産駒です。
http://www.pedigreequery.com/rosenreihe

発表されてから半世紀以上が経過したいまも読み継がれ、そのタイトルが馬の名前にまでなってしまうのですから小説は傑作なのでしょう。私は読んでいません。いや、正確には3分の1ぐらいまでは読みました。

たしか高校生ぐらいのときに友達に勧められて本を手に取りました。小説は一人称形式で、主人公がフリーダムな語り口で大人社会の欺瞞を斬っていくのですが、「~ということなんだな」とか「~と思うんだな」といった語尾が頻繁に出てくることに引っ掛かりを覚えました。そのため、最初は神経質そうな白人少年だった主人公のイメージが、だんだん裸の大将に変貌していったのです。

さらに、別の友達が「これって原題を直訳すると『ライ麦畑の捕手』だよね」といったのを耳にした瞬間、ランニングシャツを着てリュックサックを背負った山田太郎にしか思えなくなり、静かに本を閉じました。何年か前に出た村上春樹の新訳ではあの語尾は直ったのでしょうか? 気になります。

2010年2月 1日 (月)

レッドスパーダがフェブラリーSへ?

先週土曜日の東京新聞杯を勝ったレッドスパーダが、次走、フェブラリーS(2月28日・G1・東京ダ1600m)を視野に入れているとのこと。05年の優勝馬メイショウボーラーと同じ「タイキシャトル×Storm Cat」、従兄弟に米年度代表馬 Curlin、530キロを超える雄大な馬格。もし出走してくれば相当怖いと思います。リーチザクラウンに続く芝戦線からの刺客登場でエスポワールシチーもうかうかできません。俄然盛り上がってきました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006105511/

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!