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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年6月 6日 (月)

安田記念はリアルインパクト

「常識は、敵だ」という皐月賞のCMコピーが脳裏に甦りました。3歳馬がここで勝つという発想はなかったですね~。参りました。リアルインパクト(9番人気)は奇策を弄したわけではなく、真っ向勝負で堂々と勝ったのですから文句のつけようがありません。
http://www.youtube.com/watch?v=0mHpPzalyDc

安田記念がG1に生まれ変わった84年以降、しばらくは3歳馬に出走権が与えられていませんでした。96年に門戸が開放され、昨年まで4頭が挑戦して〔0・0・1・3〕という成績。重賞未勝利のリアルインパクトとは違い、いずれも重賞勝ちの戦績がありました。

96年 ゼネラリスト    14着
97年 スピードワールド  3着
00年 イーグルカフェ   13着
04年 メイショウボーラー 11着

3着に食い込んだスピードワールドは Woodman 産駒の外国産馬。いまだに早熟馬の代名詞として名前が挙がることもあります。2歳時からその能力を含めて古馬のような雰囲気を漂わせていた馬でした。3着といっても3番人気に推されていたので意外性はありませんでした。アメリカ産馬は総じて早い時期に完成します。

米ニューヨーク州のベルモント競馬場で毎年5月末に行われるメトロポリタンH(G1・ダート8f)には、3歳馬も出走することができます。過去50年間で3歳馬が6頭優勝しています。

69年 Arts and Letters
82年 Conquistador Cielo
87年 Gulch
92年 Dixie Brass
94年 Holy Bull
96年 Honour and Glory

ハンデはいずれも50~51キロ。古馬の一流どころが出てくればだいたい56キロぐらいは背負わされるので、安田記念に比べれば3歳馬が若干有利といえるかもしれません。

イギリスでは距離によって3歳と古馬の重量差が異なります。6~7月のG1では、6ハロン戦は3キロ差、8ハロン戦は4キロ差、10~12ハロンは5.5キロ差です。安田記念(芝1600m)の3歳と古馬の重量差は4キロですから、イギリスに習ったのかもしれません。ちなみに宝塚記念(芝2200m)は5キロ差です。

イギリスで7月上旬に行われるファルマスS(G1・芝8f)や7月下旬に行われるサセックスS(G1・芝8f)では、3歳馬がしょっちゅう勝っています。安田記念が6月上旬に行われているといっても、イギリスの例に倣うなら、3歳馬には注意を払うべきでしたね。狭い範囲の常識にとらわれて失敗しました。リアルインパクトの勝利をきっかけに、来年以降、NHKマイルC→安田記念という進路をとる馬が増えると思います。“3歳馬VS古馬”という新しい対抗軸ができればレースはさらに盛り上がるでしょう。

リアルインパクトはディープインパクト産駒。昨年暮れの朝日杯フューチュリティS(G1・芝1600m)で本命を打った馬でした。3歳春に古馬混合マイルG1を勝ったのは、母トキオリアリティーのアシストが大きいと思います。母は「Meadowlake×In Reality」という組み合わせのアメリカ産馬で、距離面に限界のある芝・ダート兼用のスプリンターでした。アメリカ産馬が早い時期に完成するというのは前述のとおりで、また、ディープインパクトは基本的にスプリンター血統と相性が良好です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103244/

母の父 Meadowlake はデビュー戦(ダート6f)で後続を22馬身引き離して勝ち、「Secretariat の再来」と騒がれたスピード馬で、続くアーリントンワシントンフューチュリティ(米G1・ダート6.5f)も9馬身差で圧勝、通算3戦全勝で引退しました。Blue Moon≒Nothirdchance 2×3が配合上のキーポイントです。
http://www.pedigreequery.com/meadowlake

        ┌○┐ ┌ High Time
        │ └○┤ ┌ Man o'War
Blue Moon ―――┤   └○┘
        │ ┌ Blue Larkspur
        └○┤ ┌ Sir Gallahad
          └○┘

          ┌ Blue Larkspur
        ┌○┤ ┌ Man o'War
        │ └○┤ ┌ High Time
Nothirdchance ―┤   └○┘
        │ ┌ Sir Gallahad
        └○┘

Meadowlake の代表産駒はG1を6勝した名牝 Meadow Star。トキオリアリティーと Meadow Star は配合構成が酷似しています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1994109536/
http://www.pedigreequery.com/meadow+star

           ┌ Meadowlake
トキオリアリティー ―┤ ┌ In Reality
           └○┤   ┌ My Babu
             │ ┌○┘
             └○┘

           ┌ Meadowlake
Meadow Star ―――――┤ ┌ In Reality
           └○┤
             └○┐ ┌ My Babu
               └○┘

トキオリアリティーは現役時代に3勝し、準OPまで出世しました。繁殖牝馬としてはリアルインパクトのほかにアイルラヴァゲイン(オーシャンS)を出しています。この好成績は Meadow Star と配合構成が似ているという部分が影響しているのではないかと思います。

スタミナ色が強かったエルコンドルパサーを相手にしても、アイルラヴァゲインのようなスプリント職人を産むのですから、トキオリアリティーは頑固なスピードを伝えています。このような繁殖牝馬を相手にマイルG1の勝ち馬を出したディープインパクトは、しっかりとしたスタミナを伝えることのできる種牡馬だと思います。ディープインパクト自身はスタミナに不安のない中距離血統で、ディープインパクト産駒の買いどころは基本的にマイル以上――というのはこれまでたびたび主張してきたところです。オークスとダービーで討ち死にしたのは主に馬場状態の影響であって、距離適性の問題ではないと思います。

リアルインパクト自身は、Nothirdchance≒Blue Moon 5×4・5。母の父 Meadowlake が持つクロスを継続しています。このあたりの血脈構成については2月13日のエントリー「クイーンCはホエールキャプチャ」でも触れておりますのでご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/02/post-6544.html

Meadowlake 牝馬はサンデー系と掛け合わせるとこのクロスが生じますが、アメリカ血統と相性のいいディープインパクトの場合、とくに効果が大きかったということでしょう。ディープインパクトは今後、中・長距離のビッグレースで活躍する馬をたくさん出すでしょうし、マルセリーナとリアルインパクトによってマイル戦でもまったく問題ないところを示しました。奥の深い種牡馬です。

○ストロングリターン(5番人気)は2着。石橋脩騎手の追いっぷりが凄かったですね。勝ち馬にクビ差まで迫ったのですから負けたのは勝負のアヤ。大健闘といえる内容でした。完全に本格化しています。前にも記したとおり元POG所有馬なのでこのところの活躍は嬉しいかぎり。

▲アパパネ(1番人気)は6着と掲示板を外しました。単勝2.2倍というオッズはちょっとかわいそうな気もしました。蛯名騎手は目に見えない疲れを敗因に挙げています。

◎ダノンヨーヨー(2番人気)は出遅れ。スタートでリズムが狂ってしまいレースになりませんでした。

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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安田記念はリアルインパクトを参照しているブログ:

コメント

リアルインパクトに騎乗した戸崎騎手の完璧な騎乗ぶりに脱帽です。ファンが漠然と考える「こんなふうに乗ってほしい」というイメージを、より素晴らしい形で具現化してみせた騎乗ぶりは、さすが南関東のトップジョッキーと唸らされました。
また、リアルインパクトは山元トレセンで被災して仕上げが遅れましたが、そのぶん今回のレースに余力が残っていたのかもしれませんね。当初は、スプリングS→皐月賞→NHKマイルCと駒を進める青写真だったようですが、このローテーションなら安田記念は使わず放牧となっていた可能性も高かったと思われます。
日本の3歳馬が、春シーズンに古馬と対戦して好成績を残せないのは、やはりクラシック戦線のローテーション的な厳しさが大きいでしょう。今年は震災でローテーションが狂った馬が多かったですが、そのことが結果として3歳馬の安田記念初制覇の一因になったと言えそうです。
惜しかったのは、4着のクレバートウショウで、前が詰まる不利がなければ、手応え的に勝ち負けだったのではないでしょうか。
アパパネは、前走でブエナビスタに勝ったものの、その疲れが抜けず強い調教が出来なくて大幅プラス体重ということで、ちょっと気の毒でした。ただ、個人的には、ブエナやウオッカのような牡馬を蹴散らすタイプとは違うのではないかという気もしています。

なるほど。災い転じて……というヤツですね。当初の予定から方向転換を余儀なくされながら、しっかり結果を残す堀調教師は素晴らしいと思います。2着に突っ込んできたストロングリターンも管理されているので、ゴール前はどんな様子で何を口走ってレースを眺めていらっしゃったのか、見てみたかった気がします(笑)。

ご指摘のとおり、戸崎圭太騎手の手綱さばきも見事でした。レースの流れに乗る、というのはまさにああいった騎乗のことでしょう。馬に掛かる負担も極小だったはずです。

クレバートウショウはもったいなかったですね。あの場面、もし勝ちにはやる若手騎手なら、後先を顧みずわずかなスペースを強引に割って行ったかもしれませんが、武豊騎手は昨年大きな落馬事故もありましたし、範となるべきベテランですから、あそこは自重せざるを得ませんね。土曜10Rの湘南Sでは、ランリョウオーに騎乗して同じように前が壁になりながら、最後は開いて差し切ったのですが……。クレバートウショウは秋の富士Sに出走してきたら買いたい馬です。

アパパネは体調を立て直してもう一度牡馬に挑んでほしいですね。個人的には◎は打ちませんが……。

アパパネですが叩き2走目の走りが異常すぎますよね。キングカメハメハ産駒はパフォーマンスの維持が難しいのでしょうか?
近年強さを見せるキングカメハメハ産駒ですが、そういう脆さも垣間見える気がします。
彼女がデビュー以来、個人的にアパパネの出るレースは非常に馬券が難しいです…
勝つときは、何というか…極端な例えですがテイエムオペラオー的な勝負根性とパワーで押しきるイメージがあります。それが牝馬相手の競馬なので未だに牡馬相手だと信用しきれない感じです。
クラシック三冠なのに馬券では信用できない…こんな名馬初めてです…

「TARGET frontier JV」でキングカメハメハ産駒の休み明け後の戦績を調べてみました。

         連対率
休み明け2戦目 19.8%
    3戦目 23.7%
    4戦目 28.8%
    5戦目 25.9%

これを見ると叩きつつ良さが出てくるタイプのようです。休み明け2戦目に強いアパパネは、アパパネ固有の特長といえるかもしれません。ただ、キングカメハメハ産駒は連闘の成績がイマイチであるように、間隔を詰めて使うとあまりよくありません。レースで力を出し切るタイプなので、体力を回復するのに時間が必要なのかもしれませんね。

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