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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2010年12月

2010年12月23日 (木)

スカーレットレディの子は鉄板

■日曜阪神3R・未勝利戦(芝2000m)はカーマイン(1番人気)がハナ差競り勝ちました。
http://www.youtube.com/watch?v=j_WXiVljvyE

父キングカメハメハ、母スカーレットレディ。つまり、ヴァーミリアン、サカラート、キングスエンブレムの半弟、ソリタリーキングの全弟です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103188/

母スカーレットレディはダイワメジャーと同血(父が同じで母が全姉妹)で、ダイワスカーレットとは4分の3同血の関係にあります。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1995107900/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2001103114/

           ┌ サンデーサイレンス
スカーレットレディ ―┤ ┌ ノーザンテースト
           └○┤
             └スカーレットインク

           ┌ サンデーサイレンス
ダイワメジャー ―――┤ ┌ ノーザンテースト
           └○┤
             └スカーレットインク

20~30年後、この牝系から生まれた名馬が血統表に同居することで、ビッグレースの勝ち馬が誕生するかもしれませんね。ダイワスカーレット≒スカーレットレディ4×4とか、いかにもありそうです。この牝系はハイレベルな何物かを伝えていますから、クロスさせる効果も大きいのではないかと思います。

カーマインは芝で勝ち上がりましたが、走りっぷりを見ると掻き込みが強いので、仮に芝で頭打ちになってもダート路線に移れば相当やれそうです。ヴァーミリアン、サカラート、キングスエンブレム、ソリタリーキングの下ですからまず間違いないでしょう。

■日曜中山1R・未勝利戦(ダ1200m)はミシックトウショウ(1番人気)が逃げ切り勝ち。後続に9馬身差をつける圧勝でした。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008100661/

サウスヴィグラス産駒なのでダート巧者であるのはわかります。そうした適性以外の部分で注目したいのは母セピアトウショウです。父ロイヤルタッチ、母の父トウショウボーイで、テスコボーイ4×3。名牝オイスターチケット(ブラックシェル、シェルズレイ、ダブルティンパニー、ヴィジャイの母)とそっくりの構造です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2002104952/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1998102634/

          ┌○┐
          │ └ パワフルレディ
セピアトウショウ ―┤
          │ ┌ トウショウボーイ
          └○┘

          ┌○┐
          │ └ パワフルレディ
オイスターチケット ┤
          │ ┌ トウショウボーイ
          └○┘

セピアトウショウにもオイスターチケットと同様の能力が備わっている可能性があります。今回勝ったミシックトウショウはセピアトウショウにとって2番目の子(初子は不出走)。まだ若い繁殖牝馬なので今後に注目です。

2010年12月22日 (水)

アガ・カーン血脈の華、アグネスアンジュ

■日曜小倉4R・新馬戦(芝1200m)はアグネスタキオン産駒の◎アグネスアンジュ(1番人気)が出遅れをものともせず差し切り勝ち。
http://www.youtube.com/watch?v=YbjdnANmoUQ

『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想は◎○で馬単10240円を本線的中。予想を転載します。

「◎アグネスアンジュは『アグネスタキオン×ヘネシー』という組み合わせ。母アグネスバラードはハワイ≒リマンド3×4で、本馬はそれを継続発展させてアグネスレディー3×4という名牝のクロスとなっている。また、母方にバンブーアトラスが入るので、ブルースウォーズ=ブルーヘイズ6×6という全きょうだいクロスが生じる。これは同じ父のホッコータキオン(デイリー杯2歳S)と似ている。大胆でありながら繊細でよく出来た配合。稽古でも動いているので連を外すことはなさそう。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008101643/

本日のエントリーは、特殊な配合を説明するために、やや細部にこだわった筋道になりそうなので、配合に興味のない方は斜め読み、あるいは読み飛ばしてください^^

          ┌○┐
アグネスアンジュ ―┤ └○┐
          └○┐ └ アグネスレディー
            └○┐
              └○┐
                └ アグネスレディー

父アグネスタキオンも、母アグネスバラードも、オークス馬アグネスレディーの一族なので、「アグネスレディー3×4」という名牝のクロスが生じます。このクロスを持つ馬は、通算6戦2勝で引退したアグネスツイスターなど何頭かいます。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2003104019/

アグネスアンジュがそれらよりも優れていると感じるのは、母アグネスバラードに施されたアガ・カーン血脈の丁寧な仕込みです。

2代母アグネスルミエールは Pangani≒Palestine 4×5。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1995106193/
http://www.pedigreequery.com/pangani
http://www.pedigreequery.com/palestine

      ┌ Fair Trial
Pangani ――┤
      └○┐
        └○┐
          └ Uganda

      ┌ Fair Trial
Palestine ―┤
      └○┐
        └ Uganda

母アグネスバラードはそれを発展させる形で、Hawaii≒リマンド3×4、 Mehrali≒Clovelly 5×6です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2002103118/
http://www.pedigreequery.com/hawaii
http://www.pedigreequery.com/remand

      ┌○┐ ┌ Alycidon
      │ └○┤ ┌ Fair Trial
Hawaii ――┤   └○┘
      │ ┌○┐
      └○┘ └ Una

        ┌ Alycidon
      ┌○┘ ┌ Fair Trial
リマンド ―┤ ┌○┤
      └○┘ └ Una

http://www.pedigreequery.com/mehrali
http://www.pedigreequery.com/clovelly3

      ┌ Mahmoud
Mehrali ――┤
      └○┐
        └ Uganda

      ┌ Mahmoud
Clovelly ―┤
      └○┐
        └ Uganda

アグネスアンジュ自身は、前述のとおり、リマンドの娘アグネスレディー3×4というクロスを持ちます。これは、上記のクロスの集積を丸ごと継続することでもあります。また、アグネスタキオンの母の父ロイヤルスキーに含まれる Umidwar は、Udaipur(Clovelly の母)の全弟であり、Una(Palestine と Mehrali の母)の半弟です。アガ・カーン血脈が執拗に絡められています。

「アグネスタキオン×Wild Again」という組み合わせはJRAでたった4頭しか走っていませんが、そのうちの2頭、サンライズプリンスとランザローテが重賞を勝ちました。ニックスといえるかもしれません。じつは、Wild Again の3代母は前出の Clovelly。したがってアグネスアンジュと似ています。このパターンは走るのでしょう。

そして、もうひとつの配合的なポイントは「Blue Swords=Bluehaze 6×6」。母方にバンブーアトラスを持つアグネスタキオン産駒といえば、デイリー杯2歳S(G2)を勝ったホッコータキオンがいます。バンブーアトラスの父ジムフレンチは、その2代母 Bluehaze が Hail to Reason の母の父 Blue Swords の全弟。したがって、Hail to Reason 系とジムフレンチが掛け合わされると、この全きょうだいクロスが生じます。ちなみに、Bluehaze はダンシングキイの3代母でもあります。ダンスパートナー、ダンスインザダーク、ダンスインザムードはすべてこの全きょうだいクロスを持っています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1979101247/
http://www.pedigreequery.com/hail+to+reason
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2001103133/

言葉で説明すると非常にややこしく、血統表をプリントアウトしながら読み進めないと理解が大変かと思います。要するにアグネスアンジュの配合は、基礎工事から作り上げた精緻な建造物のようなもの。即席のプレハブ住宅にはない堅牢さがあります。テーマが明確で、代々そのストーリーを追うことができる配合は好感が持てますし、読み解くのが楽しいですね。

母の父ヘネシーは Storm Cat 系。父アグネスタキオンは Storm Cat 系と相性が良くないのですが、そのマイナスを補って余りある効果を、それ以外の部分の配合構成が生みだしているのではないかと考えます。ただ、好配合馬といっても、やはりヘネシーはヘネシー。芝向きの底力という面では限界があるかもしれません。もう少し長い距離で見てみたい馬ですね。

2010年12月21日 (火)

「ロック×SS」は芝1800~2000mが得意

■先週はディープインパクト産駒が勝てず、新馬戦の連続週勝利記録も「11」でストップしました。そのかわりというわけではありませんが、同じ新種牡馬のロックオブジブラルタル産駒が新馬戦で3勝(アドマイヤクーガー、リルバイリル、ヒシカルメン)と固め打ち。通算でも15勝目となり、新種牡馬2位のハーツクライにあと1勝と迫りました。トップがズバ抜けているので目立ちませんが、例年の水準に照らせば十分に優秀といえる成績です。

土曜阪神7R・新馬戦(芝1800m)を勝った△アドマイヤクーガー(3番人気)は「ロックオブジブラルタル×サンデーサイレンス」。この組み合わせは連対率36.4と走っています。芝1800~2000mに限定すると7戦6連対(連対率85.7%)と驚異的な成績。もちろん、まだサンプルが少ないので、ずっとこのペースで連対するわけではありませんが、得意の条件であるのは確かでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=z-2VwEZ-QGo
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102644/

■土曜阪神3R・未勝利戦(芝1400m)はハーツクライ産駒のツルマルレオン(1番人気)が4馬身差で圧勝。1分21秒4というタイムを余力をもって記録しました。翌日の1000万特別の勝ちタイム(1分21秒5)を上回っているのですから優秀です。
http://www.youtube.com/watch?v=05Q1EQ38dn8

母方に Roberto が入るハーツクライ産駒はリフトザウイングスと同じ。このパターンは父が持つ Northirdchance≒Revoked 4×5を継続するので好ましいですね。また、Mr.Prospector や Amerigo が入るのもいいと思います。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008105965/

じつは、今年のPOGではツルマルレオンと同じく Roberto、Mr.Prospector、Amerigo を併せ持つハーツクライ産駒を指名していました。その馬、テーオーアポロン(オーロマイスターの半弟)は、新馬戦9着→未勝利戦17着とまったく走りません……。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008106611/

■土曜阪神6R・新馬戦(芝1400m)は△アフロディシアス(5番人気)が勝利。完全に逃げ切り態勢だった○エーシンハーバー(4番人気)をとらえ、この2頭で後続に6馬身の差をつけたのですから強かったと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=Mc3JBaYcPpc

「ジャングルポケット×サンデーサイレンス」はジャガーメイル、トールポピー、フサイチホウオー、アプリコットフィズ、アヴェンチュラなど多くの活躍馬が出ているニックス。1走あたりの賞金「343万円」という数字はズバ抜けています。「ジャンポケ×SS+Mr.Prospector」というパターンは、良さそうに見えて意外に走らないパターンで、一言でいって味がありません。この馬はスピード型としてうまく出たようです。桜花賞向きでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008105107/

2010年12月20日 (月)

朝日杯フューチュリティSはグランプリボス

レースが終わり、勝ち馬が引き揚げてくるのを待っている間、検量室前にいた矢作芳人調教師は笑顔ひとつなく神妙な表情。グランプリボスとミルコ・デムーロ騎手が脱鞍所に戻ってくると、「あそこは(外に)出さないとしゃあない」と、4コーナーでアドマイヤサガスを外に弾き飛ばした騎乗をかばうように日本語で語りかけました。別の関係者がデムーロ騎手に「危なくない?」と声を掛けると、彼は馬から鞍を外しながら「危ない危ない。ホント危ない」。その関係者は失格の危険性について尋ねたようですが、デムーロ騎手は4コーナーでアドマイヤサガスと接触したシーンの物理的な危険性として受け取ったようでした。
http://www.youtube.com/watch?v=SCO_GYA1UAA

結局、入線順位のとおりに確定。初G1制覇の矢作調教師は大勢の関係者と握手、抱擁。目にはうっすらと涙が浮かんでいました。

勝った△グランプリボス(5番人気)は京王杯2歳S(G2)に続く重賞連覇。2歳牡馬チャンピオンの座を確定させました。父サクラバクシンオーにとってはショウナンカンプ(02年高松宮記念)以来2頭目のG1ウィナーです。“母の父がサンデーサイレンスではないサクラバクシンオー産駒”は芝1600mで連対率14.0%。一方、「サクラバクシンオー×サンデーサイレンス」は21.8%。この組み合わせは距離の融通性があります。ただ、専門分野の芝1200mでもなかなかG1を獲れない種牡馬ですし、グランプリボス自身も、G1を勝つほどの底力に恵まれた配合とは思えなかったので、高い評価はできませんでした。馬が予想以上に強かったですね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103388/

2着◎リアルインパクト(4番人気)はフランシス・ベリー騎手が最高に上手く乗りました。あの騎乗で負けたのなら力が足りなかったということです。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想は△◎で馬連4990円、△◎△で3連複8830円的中。『ウマニティ』に提供した予想は馬単11750円、3連単67910円的中。予想を転載します。

「◎リアルインパクトは『ディープインパクト×メドウレイク』という組み合わせ。半兄アイルラヴァゲインはオーシャンS(G3)の勝ち馬で、中山コースを得意としている。母トキオリアリティー(準OP)も小回りコースで強かった。1、2戦目はいずれも東京コースで走ったが、中山で変わり身を見せる可能性が大きいと思われる。
 基本的にディープインパクトはアメリカ血脈と相性がよく、本馬はサンデー系とニックスの関係にあるヘリオポリスが入るほか、ノーサードチャンス≒ブルームーン5×4・5などを持つ。なかなかの好配合馬。ダービー向きの本格派ではないものの、ハイペースで展開するマイル前後のレースでは強いだろう。
 前走の出遅れはタイミングのズレが原因。初戦では好スタートからすんなり好位につけたように、ディープインパクト産駒にありがちなテンに行けないタイプではない。今回は好枠を活かして好位で立ち回るはず。早めスパートで先頭に立ってしまえばしぶといだろう。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103244/

パドックを見て思ったのですが、500キロを超す大柄な馬体でありながら、なんとなくまだ幼いというか、成長の余地を残しているように見えました。もちろん、2歳のこの時期から成長がなければ困るわけですが、この馬はとくにそんな気がしましたね。

3着△リベルタス(2番人気)は位置取りが下がらないようにうまく好位で競馬を進めていました。血統的にはこの距離向きではないですし、トビが大きいのでラチ沿いで窮屈な競馬を強いられると苦しいのでは、と思っていたのですが、ここまで頑張るのですから能力が高いということでしょう。距離が延びて楽しみです。

4着○サダムパテック(1番人気)は能力の高さは認めても、出遅れ癖や馬の適性から、中山芝1600mではどうしても本命を打ちたくありませんでした。出遅れて外を回して直線で伸びあぐねるという、このコースにおける典型的な失敗パターンでした。それでも坂の途中で一瞬突き抜けるかという勢いがあったので、やはり強い馬であるのは間違いありません。次走、人気が落ちるようなら狙い目でしょう。

4コーナーの出来事に関する裁定については、ツイッターで蛯名正義騎手が不満の声を挙げていました。私はリアルタイムで見たときは完全にアウトだと思いました。ただ、公開されたパトロールフィルムを何度か見直しているうちに、ギリギリセーフという判定もありかな、と思い直しました。外に出したいグランプリボスと、内に押し込めたいアドマイヤサガスの、互いに譲れないポイントでのバトルであり、結果としてグランプリボスの力が勝ってアドマイヤサガスを弾き飛ばしましたが、もし逆にアドマイヤサガスの力が勝っていたら、グランプリボスの勢いからして正面のブラウンワイルドに乗り上げていたかもしれません。デムーロ騎手の騎乗は、衝突を回避するために仕方がなかった側面もあり、それが冒頭で発した彼の「危ない危ない。ホント危ない」という発言の真意だったのではないかと想像します。そのあたりの情状酌量によって降着だけは免れたということではないでしょうか。
http://www.jra.go.jp/JRADB/asx/2010/06/201005060611p.asx

2010年12月19日 (日)

阪神カップはキンシャサノキセキ

■阪神11R・阪神カップ(G2・芝1400m)は◎キンシャサノキセキ(2番人気)が競り勝ちました。2連覇達成。この距離では安定して強い馬です。
http://www.youtube.com/watch?v=8WJmPHTmaPY

『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想は◎▲で馬単4900円的中。予想を転載します。

「◎キンシャサノキセキは『フジキセキ×プレザントコロニー』という組み合わせ。一見、もう少し長い距離が良さそうな血統だが、母方に入るリボー系の血の難しさが出ているのか、見てのとおり短距離がフィットしている。前走のマイルCSは弾けなかったが、距離が長く引っ掛かったという明確な敗因があるので度外視できる。1400mなら話は別。昨年はスタートの出遅れをものともせず差し切った。連覇の可能性十分。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2003110212/

阪神カップはマイルチャンピオンシップで大敗した馬がよく巻き返すレースです。過去、ジョリーダンスとサンカルロが2ケタ着順から連対を果たしました。キンシャサノキセキはマイルチャンピオンシップで13着。しかし、専門外のマイル戦だったので仕方のない結果であり、今回はこの馬のテリトリーですから、力関係からみても順当だったと思います。序盤に掛かり気味になっても勝ったように能力が一枚上でした。

2着の▲レッドスパーダ(5番人気)は10ヵ月の休み明けでしたが、これぐらいの距離では地力が上。新馬戦からその配合を高く評価してきました。「タイキシャトル×Storm Cat」はメイショウボーラー(フェブラリーS、デイリー杯2歳S)と同じで、従兄弟に米年度代表馬 Curlin がいます。Halo≒Sir Ivor 3×4が綺麗に決まっています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006105511/

○ゴールスキー(1番人気)は5着。ネオユニヴァース産駒だけに距離短縮では頭から買いづらいところがありました。

■中山9R・黒松賞(2歳500万下・芝1200m)と小倉10R・つわぶき賞(2歳500万下・芝1200m)は、いずれもサクラバクシンオー産駒が勝利。前者はダンシングロイヤル(1番人気)、後者はスギノエンデバー(1番人気)。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008105189/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103919/

高齢になってもなおサクラバクシンオーが種牡馬ランキングのベスト10から落ちない理由がよく分かります。餅は餅屋、ワンアンドオンリーのスペシャリストは強い、ということです。

2010年12月18日 (土)

朝日杯フューチュリティS有力馬プチ診断

■リベルタス
配合的には2000m以上に向いた馬だと思います。ただ、角居調教師がここにぶつけてきたのですから、相当な手応えを感じているのかなぁとは思います。ディープインパクト産駒はトビが大きくダッシュが鈍いので、2番枠だと包まれて後方まで下がってしまう危険性も。4年前のドリームジャーニーのように後方から大外をマクって差し切り、という芸当ができるかどうか。

■マイネルラクリマ
人気にならないタイプですがちょっと怖いです。マイネルレコルト(04年朝日杯FS)を出したチーフベアハートが父。ここ2戦、直線の長いコースでよく粘っていますが、中山ならさらにいいところがありそうな配合ですね。枠も絶好。

■リアルインパクト
リベルタスと同じディープインパクト産駒。こちらは出脚がつくタイプだと思います。前走の出遅れはゲートのタイミングが原因。新馬戦は上手に出ました。半兄アイルラヴァゲイン、母トキオリアリティーは小回り巧者ですから、この馬も中山に替わって良さが出るはずです。あとは急坂をこなせるかどうか。

■リフトザウイングス
ハーツクライ産駒はいまのところ、京都よりも阪神、東京よりも中山のほうがいい、という傾向が出ています。中山替わりは良さそうです。ただ、マイル戦では全般的にやや勝ち味が遅い傾向も。母の父 Cozzene は逃げたり追い込んだりという極端な戦法で結果を出す気難しいタイプ。要するに揉まれ弱いので馬群が苦手です。前走後の武豊騎手のコメントを読むと、どうもそうした特徴が伝わっているような気が……。小回りの多頭数競馬でどう立ち回るか、ルメール騎手の手腕に期待です。

■サダムパテック
脚長の体型。直線の長いコースで伸び伸び走るのが合っているタイプだと思うので、小回りコースに替わるのはプラスとはいえません。毎回出遅れるのでおそらく今回も出遅れるでしょう。位置取りが悪くなったときに、焦ったスミヨン騎手が無理に馬群を捌こうとして他馬の進路を妨害するというのが最悪のシナリオです。懸念材料ばかり並べましたが、これは実力を認めた上での話。現時点の能力は一枚上だと思うので、スムーズな競馬さえできればアッサリ突き抜ける可能性は一番高いと思います。

■グランプリボス
「サクラバクシンオー×サンデーサイレンス」はわりと距離がもつ傾向があります。マイルはギリギリOKでしょう。サクラバクシンオー産駒はこれまで2歳G1で10回走って一度も馬券になっていません。問題は底力です。

■シゲルソウサイ
2代父はこのレースと相性のいい Storm Cat。初めての芝、2ハロンの距離延長、相手強化とハードルはあまりにも高いのですが、マイペースで逃げたときに、3年前のゴスホークケンのように残ってしまわないとも限りません。ゴスホークも Storm Cat 系でした。

■アドマイヤサガス
朝日杯の13番枠から外は、逃げの手を打たないかぎり死刑宣告を受けたようなものですから、15番枠はちょっと厳しいですね。強い馬だとは思いますが、ニュージーランドTのサンライズプリンスのような競馬ができるほど相対的に抜けた力はないと思います。オースミイージーとシゲルソウサイの逃げ争いでハイペースになることが望み。

2010年12月17日 (金)

ダノンシャンティ有馬へ

アヴェンチュラ骨折、と聞いてガッカリしていたら、骨折が癒えたダノンシャンティの有馬緊急参戦、というニュースが。

いや~、ビックリしました。と同時に、これまで数々の常識を打ち破ってきた松田国英調教師らしいローテーションだと思いました。仮に負けたとしても、さすがに条件が厳しかったね、ということで馬の評価は下がりません。逆に、もし勝ち負けに絡めば、常識破りの好走ということで評価はうなぎ登り。松田国英調教師が常々口にしている「種牡馬の価値」も揺るぎないものとなるでしょう。

配合については一貫して高く評価してきました。共同通信杯、毎日杯、NHKマイルCといずれも◎を打ちました。見解については5月10日のエントリー「NHKマイルCはダノンシャンティ」をご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/05/post-ce80.html

もちろん、懸念材料はいくつかあります。まず、誰もが思うであろう距離面の不安。ハイペースになればスタミナ切れ、スローペースになれば引っ掛かる心配があります。ハイペースのNHKマイルCでは折り合いましたが、スローペースの毎日杯では行きたがっていました。休み明けでテンションが高くなると危ないですね。

松田国英調教師は半年以上の休み明けの成績があまり芳しくありません。このクラスの調教師ですから、もちろん技術がないというわけではありません。調教でキッチリ仕上げるか、使いつつ仕上げるか、という考え方の違いで生じる部分です。角居勝彦厩舎や橋口弘次郎厩舎も、同じように長期休養からのカムバック戦はイマイチという傾向が見られます。逆に、音無秀孝厩舎は半年以上の休み明けは断然買いです。もちろん、今回はいきなり有馬記念に出てくるわけですから、使いつつ……という仕上げでは臨んでこないと思います。すでに坂路で2ヵ月乗り込んでいるので、体調面に大きな問題はないでしょう。

今年の有馬記念は、大げさではなくレース史上最高のメンバー構成ではないでしょうか? 活きのいい3歳馬が多いと盛り上がります。

『競馬王』1月号発売

告知するのを忘れていました。早くも2011年の新年号ですね。私もいくつか書いています。ぜひ1冊お手元にどうぞ。

2010年12月16日 (木)

全日本2歳優駿はビッグロマンス

現存する地方競馬の重賞のなかで、川崎競馬場の全日本2歳優駿(JpnI・ダ1600m)は最も長い歴史を誇ります。1950年に創設され、今年61回目。中央馬が出られるようになった97年以降、アグネスワールド、アグネスデジタル、ユートピアと、のちに海外重賞を制した馬が3頭も勝ち名乗りを受けています。

今年の勝ち馬はJRAのビッグロマンス(父グラスワンダー)。好位追走から直線に入ってすんなり抜け出しました。田中勝春騎手はこのレースと相性がよく、98年のアドマイヤマンボ、05年のグレイスティアラに続く三度目の制覇です。

「グラスワンダー×ダンシングブレーヴ」という組み合わせからはダート巧者の匂いがしないのですが、2代母が“女オグリ”の異名を取った東海の女傑マックスフリート(通算23戦15勝)。この馬から受け継がれたダート適性が大きいのでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008104881/

ミラクルオペラ(白山大賞典、マーキュリーC、帝王賞-2着)はマックスフリートの息子で、孫にサンライズマックス(エプソムC、小倉大賞典、中日新聞杯)が出ています。今回勝ったビッグロマンスはサンライズマックス(父ステイゴールド)の半弟です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1997105240/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004100730/

この牝系をもう少し掘り下げて表にしてみました。

 ホマレタカイ(f.1960.ハクリョウ)
  ヒカルタカイ(c.1964.リンボー)天皇賞・春、宝塚記念
  タカイホーマ(f.1969.スパニッシュイクスプレス)重賞3勝
  ヒカルオーバー(f.1960.セダン)
   ヒカリホマレ(f.1980.テスコボーイ)
    マックスフリート(f.1987.ダンサーズイメージ)東海の女傑
    │ミラクルオペラ(c.1997.オペラハウス)重賞2勝
    │グリーンヒルマック(f.1999.ダンシングブレーヴ)
    │ サンライズマックス(c.2004.ステイゴールド)重賞3勝
    │ ビッグロマンス(c.2008.グラスワンダー)全日本2歳優駿
    マックスブレイン(c.1988.タイテエム)東海ダービー
    ナリタホマレ(c.1995.オースミシャダイ)ダービーGP

牝系図の上から2行目にあるヒカルタカイは、南関東初の三冠馬で、中央移籍後、天皇賞・春と宝塚記念を制しました。天皇賞・春は2着に18馬身差をつける記録的な圧勝でした。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a000aa7/

日高の名牝系のひとつといっていいでしょう。100年近く前に輸入された牝系が生きながらえて活力を保っているのですから素晴らしいですね。

12月17、18日に『馬券師倶楽部』再放送

『馬券師倶楽部』の「半笑いVS栗山求(前編)」です。放送スケジュールは以下のとおり。

  12/17(金) 10:30~11:30
  12/17(金) 16:00~16:30
  12/18(土) 00:30~01:00

CS放送の“MONDO TV”で視聴することができます。よろしかったらどうぞ。

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!