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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2010年12月

2010年12月31日 (金)

Hyperion とウォルター・オルストン(3)

次に、Hampton は、Bay Ronald、Ayrshire などの父、Polymelus、Persimmon などの母の父です。重要なのは Tristan と相似な血であることです。
http://www.pedigreequery.com/hampton
http://www.pedigreequery.com/tristan

       ┌ Newminster
     ┌○┘ ┌ Rataplan(=Stockwell)
Hampton ―┤ ┌○┘ ┌ Liverpool
     └○┤ ┌○┘
       └○┤
         └ Queen Mary

       ┌ Newminster
     ┌○┘
Tristan ―┤ ┌ Stockwell(=Rataplan)
     └○┤   ┌ Liverpool
       │ ┌○┘
       └○┤
         └ Queen Mary

Tristan と構成がよく似た Friar's Balsam とも相似な血の関係となります。

先に Selene の配合的核心について、「Tristan≒Friar's Balsam 3×4」をそのひとつとして挙げました。つまり、父方に Hampton を持つ種牡馬を掛け合わせると、「Hampton≒Tristan≒Friar's Balsam」というトライアングルが完成するわけです(4×4・5)。

Selene が遺した偉大な3頭の種牡馬、Sickle、Pharamond、Hyperion は、いずれもこのトライアングルを持っています(ちなみに Pharos、Fairway は Lady Langden≒Thrift≒Blinkhoolie 5×5・5)。もちろん、ウォルター・オルストンほどの男がこれに気付かなかったはずがありません。

Selene はこのほかに、Hunter's Moon(父 Hurry On)という牡馬を産んでいます。この馬は南米アルゼンチンに渡って名種牡馬となったのですが、父 Hurry On には Hampton こそないものの、それとよく似た Dinah という血を持っているため、「Dinah≒Tristan≒Friar's Balsam 4×4・5」という相似な血のクロスが生じます。狙っているとしか思えません。じっさい、そうだったのだと思います。
http://www.pedigreequery.com/hunters+moon
http://www.pedigreequery.com/dinah

1933年7月22日、ウォルター・オルストンはイギリスのニューマーケットにある自宅で死去しました。79歳。『クラシック馬の追求』(ケン・マクリーン著・山本一生訳/競馬通信社)には彼の臨終についてこう書かれています。

「ウォルター・オルストンは Hyperion のイギリス・ダービー制覇をベッド脇のラジオで聞いていたが、それから1ヵ月後、帰らぬ人となる。彼の死亡通知は、その生涯の仕事についてこう要約している。
『ブリーダーと配合の問題で意見が対立した場合、彼は決して抽象的な理論を弄そうとはせず、厳密な事実に基づいて、しかも誰にでも分かる言葉で議論した。彼の成し遂げた仕事こそ、ダービー卿のスタンリー・ハウス・スタッドの輝かしい馬たちである。世界でこれほど素晴らしい馬を生産した牧場は、今までに存在しない』
 ウォルター・オルストンは終生喘息の発作に悩まされ続け、最後はニューマーケットのファルマスにある自宅で、スタッド・ブックと手書きの配合表に囲まれて息を引き取った。家の書斎には本棚が所狭しと並べられ、サラブレッドの競走と生産に関して出版された書物がぎっしりと詰まっていた。オルストンは結婚することもなく、偉大な競走馬の生産に心血を注ぎ、自分の知り得たことに満足せず、最後までチャンピオンを生み出す新しいニックを探し求めてさらなる研究を積み重ねた。ダービー卿やジョージ・ラムトンは言うに及ばず、国内からばかりでなく全世界のブリーダーの尊敬を集めたが、それは人々が、ウォルター・オルストンは生産というものの何たるかを知っているプロフェッショナルだと認めていたからである。」

名馬の血統表は配合の教科書です。たとえ19世紀のものであっても、血統の中身が入れ替わるだけで、名馬を生みだしたパターンは不変です。そのパターンは現代においても古びることはありません。ですから、過去の名馬の血統について考えることは、配合を学ぶために大きな意味があります。

偉大な配合家が凝らした意匠に人知れず気付いたとき、時を超えて、一枚の血統表を通じ、その配合家とじかに対話をしたような気分になります。まさに至福の瞬間といえます。そうした配合的意匠は、誰かに気付かれるのを待ちながら、メッセージボトルのように時間のなかを漂流しています。それを拾い上げることが血統研究家の役割です。

                *

1年間ご愛読誠にありがとうございました。よいお年を!

2010年12月30日 (木)

Hyperion とウォルター・オルストン(2)

①Pilgrimage 3×4、②Tristan≒Friar's Balsam 3×4。このふたつが歴史的な名繁殖牝馬 Selene の配合的核心でしょう。
http://www.pedigreequery.com/selene

Selene は競走馬のみならず繁殖牝馬としても大成功を収め、Hyperion の母となりました。また、Native Dancer の3代父 Sickle や、Buckpasser の3代父 Pharamond も産んでいます。ちなみに、Sickle と Pharamond は「Phalaris×Chaucer」という有名なニックスの産物です。このパターンは Pharos(Nearco の父)、Fairway(英愛リーディングサイアー4回)の兄弟も出しており、サラブレッドの歴史のなかで最も有名なニックスのひとつといえるでしょう。この4頭はすべてウォルター・オルストンが配合を考案しました。
http://www.pedigreequery.com/sickle
http://www.pedigreequery.com/pharamond2

名繁殖牝馬 Selene の主な産駒は以下のとおり。

 Selene(f.1919.Chaucer)
  Sickle(c.1924.Phalaris)……Native Dancer の3代父
  Pharamond(c.1925.Phalaris)……Buckpasser の3代父
  Hyperion(c.1930.Gainsborough)……大種牡馬

Sickle と Pharamond はいずれもアメリカへ渡り種牡馬として成功。前者は Native Dancer の、後者は Buckpasser の父系先祖となりました。とくに前者は、Native Dancer の孫にあたる Mr.Prospector を通じてサイアーラインを発展させ、現在、世界の主流ラインのひとつとして君臨しています。

Selene は、Phalaris と Gainsborough との配合で成功しました。この2頭の種牡馬にはある共通点があります。

St.Simon と Hampton を近い世代に持つことです。

まず、St.Simon は当時の血統シーンにおいては別格で、ちょうど現在の日本におけるサンデーサイレンスのような存在でした。父としても、父の父としても、母の父としても優秀で、クロスさせても大きな効果がありました。

Phalaris×Selene、Gainsborough×Selene、いずれの組み合わせでも St.Simon 4×3というクロスが生じます。これは当時の一流馬にとっては基本条件のようなものです。

2010年12月29日 (水)

東京大賞典はスマートファルコン

凄いレースでした。ダート2000mで2分00秒4という勝ちタイムは何なのでしょう??? アジュディミツオーのコースレコードを1秒7更新するだけでなく、JRAレコードの2分01秒0(ワンダースピード・阪神競馬場)を0秒6も上回りました。
http://www2.keiba.go.jp/KeibaWeb/TodayRaceInfo/RaceMarkTable?k_raceDate=2010%2f12%2f29&k_raceNo=10&k_babaCode=20

75年に札幌競馬場でツキサムホマレが樹立した2分01秒6という当時の大レコードも、前出のワンダースピードの2分01秒0も、不良馬場の高速ダートで記録したものでした。今回のスマートファルコンは良馬場。現在の大井競馬場はやや速い時計が出るコンディションではありますが、このタイムは驚きです。かなり長い期間破られないのではないでしょうか?

主催者が発表したラップは以下のとおり。
12.2- 11.1- 11.5- 12.2- 11.9- 12.1- 12.1- 12.3- 11.9- 13.1

スマートファルコンは、7馬身差で圧勝した前々走のJBCクラシックから馬が変わった印象がありました。前走の浦和記念は6馬身差勝ち。そして今回の大レコード。完全に本格化しています。同じく逃げ・先行タイプのエスポワールシチーが復帰したら凄まじい戦いになりそうです。来年のダート戦線はゴールドアリュールが送り出した傑作2頭の対決が最大の焦点でしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2005100097/

Hyperion とウォルター・オルストン(1)

12月10日のエントリー「Hyperion 没後50年(後)」で、以下のように記しました。

「オルストンが Hyperion をどのようにして作ったか、という具体的なプロセスについては、書き始めると長くなるので、来週あたりに概要を記したいと思います。感嘆すべきテクニックがそこには込められています。」
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/12/hyperion-4e5d.html

重要なレースが目白押しの師走は、先に書くべきことが山ほどあるため、それを優先しているうちに気がつけば年末になってしまいました。ちょっと遅れましたが、年末のエアポケットのような時間を利用して、約束どおり Hyperiion の配合について書きたいと思います。

こみ入った話になってしまうかと思いますが、時間とやる気のある方は血統表をプリントアウトし、チェック用のカラーサインペンを用意するなどして、読み進めてみてはいかがでしょうか。こみ入ってはいますが決して難しくはありません。特殊な公式も指数も出てきません。やる気さえあれば誰にでも読めるものです。そのように書いたつもりです。

                *

第17代ダービー伯爵のエドワード・スタンリーは、当時名の知れた血統研究家だったウォルター・オルストンを血統アドバイザーとして雇いました。Hyperion を作ったのは彼です。

オルストンがまず着目した血統は Pilgrimage。現役時代にクラシックレースの英1000ギニーを勝っただけでなく、牡馬相手に英2000ギニーも制した女傑です。繁殖牝馬としても英ダービーを勝った Jeddah を産み、孫の代には Swynford(英セントレジャー馬で Blandford の父)と Chaucer(ジムクラックS)を出しました。

特別な能力を備えた繁殖牝馬をインブリードによって強化する、という配合パターンは、サラブレッドの黎明期から繰り返し成功を収めてきたものです。種牡馬と違い、繁殖牝馬が一生のあいだに産む子はごくわずか。その子孫から高い確率で名馬が出現するとすれば、その繁殖牝馬は遺伝的に特別な何かを持っていると考えるべきです。

Pilgrimage のインブリードからオルストンは、Sansovino(英ダービー)、Ferry(英1000ギニー)、Selene(英3歳牝馬チャンピオン)などを生産しました。
http://www.pedigreequery.com/sansovino
http://www.pedigreequery.com/ferry
http://www.pedigreequery.com/selene

なぜオルストンが Pilgrimage のインブリードを考えたかというと、Selene の2代母 Gondolette(Ferry と Sansovino の母でもある)が、「The Palmer=Rosicrucian 3×3」という全きょうだいクロスを持っていたからでしょう。The Palmer は Pilgrimage の父なので、Pilgrimage のインブリードを作ると、自動的にこの全きょうだいクロスが継続されます。オルストンは、Gondolette の特殊な配合パターンを活かすために Pilgrimage のインブリード(The Palmer=Rosicrucian の継続)を試みたというわけです。
http://www.pedigreequery.com/gondolette

Selene は Pilgrimage 3×4のほかにも、Tristan≒Friar's Balsam 3×4を持っています。
http://www.pedigreequery.com/tristan
http://www.pedigreequery.com/friars+balsam

     ┌ Hermit
Tristan ―┤ ┌ Stockwell
     └○┤
       └○┐
         └ Queen Mary

         ┌ Hermit
         │   ┌ Stockwell
Friar's Balsam ―┤ ┌○┤
         └○┘ └○┐
               └ Queen Mary

これも Pilgrimage のクロスと同じ考えに基づくものです。というのも、Friar's Balsam の娘 Mother Siegel(Minoru の母)は、Hermit=Chanoinesse 2×3という特殊な全きょうだいクロスを持っており、Tristan≒Friar's Balsam という相似な血のクロスを作ると、自動的にこの全きょうだいクロスが継続されます。オルストンは、 Mother Siegel の特殊な配合パターンを活かすために Tristan≒Friar's Balsam という相似な血のクロス(Hermit=Chanoinesse の継続)を試みたのだと思われます。
http://www.pedigreequery.com/mother+siegel

2010年12月28日 (火)

やはり強かったグルヴェイグ

■土曜阪神5R・未勝利戦(芝1800m)はハンドインハンド(3番人気)が評判馬アドマイヤカーリン(1番人気)にクビ差競り勝ちました。4戦目での初勝利。父はマンハッタンカフェ、母はニュージーランドT4歳S(G2)の勝ち馬シェイクハンド。4分の3兄インプレッション(父サンデーサイレンス)は重賞3着の成績があります。

母シェイクハンドは「Mr.Prospector×Nureyev」ですから Kingmambo と同じ組み合わせ。したがって、「マンハッタンカフェ×Kingmambo」のダイワバーバリアン(NHKマイルC-2着)、アントニオバローズ(シンザン記念)と構成がよく似ています。整ったいい配合です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008104814/

■土曜阪神7R・新馬戦(芝1600m)は注目の良血馬◎グルヴェイグ(1番人気)が勝ちました。
http://www.youtube.com/watch?v=FSEZkY121sQ

『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想は◎△★で3連単14210円的中。予想文を転載します。

「◎グルヴェイグは『ディープインパクト×トニービン』という組み合わせ。母エアグルーヴは牝馬ながら年度代表馬に輝いた女傑で、繁殖牝馬としてもアドマイヤグルーヴ(エリザベス女王杯〔2回〕)、フォゲッタブル(ステイヤーズS、ダイヤモンドS)、ルーラーシップ(鳴尾記念)など次々と活躍馬を送り出している。『ディープ×トニービン』は滑り出し良好で、現在、デビューした3頭が5走して連対率100%という成績。稽古でも動いているのでここは連を外さないだろう。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103099/

「ディープインパクト×トニービン」は、この土日に4頭出走して〔1・2・1・0〕という成績。通算では〔4・4・1・0〕です。唯一連対を外したのがラジオNIKKEI杯2歳S(G3)のコティリオン(3着)ですから走ります。グルヴェイグは着差こそわずか(半馬身)でしたが、上がり最速でしっかりとしたフットワーク。強かったと思います。名繁殖牝馬と交配してちゃんと結果を出せるところがディープインパクトの素晴らしさです。2着デウスウルト(5番人気)もなかなかの器でしょう。

■日曜阪神7R・500万下(芝1600m)は進路妨害を受けたサトノオー(1番人気)が2位入線から繰り上がりで勝利。
http://www.youtube.com/watch?v=zm7IJRr7mis

中山競馬場の場内テレビで観戦していたのですが、直線に入ってすぐ、先頭のレッドデイヴィスが大きくヨレた瞬間、「降着だな」という声がいくつか挙がりました。サトノオーは不利を受けた影響なのか、初戦で見せた豪快なフットワークは影を潜めたままでした。ディープインパクト産駒はトビが大きいタイプが多いので、不利を受けて減速すると元のリズムに戻すのが容易ではないのかもしれません。

配合については11月22日のエントリー「サトノオー圧勝」をご覧くださいませ。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/11/post-bd89.html

■日曜中山7R・ホープフルS(OP・芝2000m)はベルシャザール(4番人気)が競り勝ちました。
http://www.youtube.com/watch?v=fsVTFrTeWVs

前走の萩S(OP)では、巨体を持て余して勝負どころで置かれ気味になるなど、やや器用さに欠けるように映ったのですが、今回は進境を見せて上手に走っていました。1、2戦目に手綱を取った安藤勝己騎手がキングカメハメハの子で一番父に似ていると発言したり、今回はルメール騎手が素晴らしい馬と論評したり、乗り手の評価が高い馬です。

父はキングカメハメハ、母マルカキャンディは府中牝馬S(G3)の勝ち馬。半姉ライムキャンディ(父タニノギムレット)はクイーンC(G3)の2着馬です。2代母の父セクレトは「Northern Dancer×Secretariat」ですからローザネイ(Lyphard×Secretariat)と似ており、しかも父の配合を考える上で鍵となる Tourbillon 系の血が入っています。キングカメハメハの代表産駒ローズキングダムと似た構成です。このあたりが気に入って某POGでコッソリ指名した馬なので頑張ってほしいものです。距離はもっと延びても大丈夫です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103004/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007103404/

2010年12月27日 (月)

有馬記念はヴィクトワールピサ

有馬記念の乗り方が最も上手かったのは田原成貴騎手だと思います。リードホーユー(83年)、トウカイテイオー(93年)、マヤノトップガン(95年)と3回制覇しました。なかでもリードホーユーの手綱さばきはいまだに私のなかで有馬記念の理想型というべきものです。ハナっ速いハギノカムイオーを先に行かせて2番手につけ、3コーナーで自然に先頭に立つと、早めスパートで差を広げてギリギリ残しました。何度見ても美しい騎乗です。
http://www.youtube.com/watch?v=29cUwWFZkNo

今回の◎ヴィクトワールピサ(2番人気)のレースぶりは、まさにリードホーユーを彷彿させるものでした。仮にブエナビスタと同じ位置から仕掛けたらまず勝てません。ジャパンCと同じく先手必勝で早めに抜け出すしか勝機はないと陣営は承知していたはずです。デムーロ騎手も勝利騎手インタビューで“早めの競馬をしてほしい”と指示されたことを口にしていました。2コーナーから向正面で13秒台にラップが落ちたとき、デムーロ騎手はためらわずに行きました。ここが勝負のポイントです。ブエナビスタはこのとき馬群に包まれて動くに動けませんでした。明暗はここで分かれたと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=W2JKHbt72Z0

『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想は◎○で馬単1640円を本線的中。『ウマニティ』では単勝840円と馬単的中。『ウマニティ』の年間予想成績は「回収率132%」とプラス収支を達成しました。予想を転載します。

「◎ヴィクトワールピサは『ネオユニヴァース×マキアヴェリアン』という組み合わせで、スウィフトカレント(小倉記念、天皇賞・秋-2着)の4分の3弟、アサクサデンエン(安田記念)の半弟にあたる。3着と健闘したジャパンC(G1・芝2400m)では、騎乗したマキシム・ギュイヨン騎手が『この距離は少し長い』とコメントした。今回は距離が100m延びるものの、中山芝2500mは小回りでコーナーが多いためごまかしがきく。東京芝2400mを乗り切った馬であれば不安はない。過去、中山コースで2戦2勝、小回りコースと内回りコースでは5戦5勝。この条件では強い。今年はスローペースが予想されるので、前に行く馬、内枠の馬が有利。1枠1番のこの馬にとっては追い風だ。序盤はゆったりとしたペースで進み、残り5ハロンのロングスパートで勝負が決まると思われるので、2歳時(京都2歳S)にすでにラスト5ハロンを58秒0で駆け抜けた能力は重く見たい。ブエナビスタを倒せるのはこの馬しかいない。」

12月25日のエントリー「今年の有馬記念はロングスパート型!?」のなかで次のように記しました。

「マンハッタンカフェが勝った01年と、シンボリクリスエスが勝った02年。このふたつは残り5ハロンからペースアップするロングスパート型のレースでした。今年はこれに近い競馬になるのでは、と思います。最後の5ハロンが57秒9だった01年は超スローペース。今年はさすがにこれほど遅い流れにはならないと思うので、59秒1だった02年に近くなるような気がします。残り5ハロンからスパートして上がり3ハロンを34秒台の後半でまとめる力が要求されます。」
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/12/post-3aff.html

向正面でヴィクトワールピサが仕掛け、残り5ハロンから急激にペースアップした今年は、11秒5-12秒0-11秒7-11秒1-11秒8でフィニッシュ。予想どおり絵に描いたようなロングスパート型のレースとなりました。ラスト5ハロンが58秒1で、上がり34秒6ですからほぼ計算どおり。デムーロ騎手は、ヴィクトワールピサが勝つためのモデルケースとぴったり同じレースをしてみせました。私のなかでは83年のリードホーユーと並ぶ有馬記念の“殿堂入り騎乗”ですね。

ヴィクトワールピサはJRA賞最優秀3歳牡馬のタイトルをほぼ確実なものとしました。父ネオユニヴァースはこれまでに手にした4つのG1のうち、3つが中山競馬場でのものです。このコースにおける強さは格別です。デムーロ騎手はネオユニヴァースの主戦ジョッキーだったので、彼は親子二代でG1を勝ったことになります。

2着○ブエナビスタ(1番人気)の上がり3ハロンは33秒8。ディープインパクトやマンハッタンカフェと同レベルの、中山芝2500mでは極限といえる脚です。明らかに馬のレベルは一枚上で、これで勝てなかったのですから結果的にスミヨン騎手のミスでしょう。ただ、スミヨン騎手も周りを囲まれて、行きたいところで行けなかったのは事実だと思います。ブエナビスタの外側に馬体を併せていたのはメイショウベルーガ。騎乗していた蛯名騎手は、外国人騎手が関わる諸問題に対してツイッターで積極的に主張していたので、遺恨絡みのブロックか?と短絡的に考えてしまいがちですが、もちろんたまたまでしょう。父スペシャルウィークと同じくハナ差で有馬記念を勝てなかったのは因縁めいています。

3着トゥザグローリー(14番人気)は、スローペースの有馬記念(01年)で3着に逃げ粘ったトゥザヴィクトリーの子。そして、前走の中日新聞杯(G3)は内容的にきわめて優秀でした。しかし、押せ押せのローテーションや本質的に広いコース向きではないかという点が引っ掛かって印が回りませんでした。中日新聞杯の回顧で「来年はG1戦線の常連となるでしょう」と書きましたが、常連どころか主役を狙える器ですね。決してフロックではありません。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/12/post-82cc.html

レース後、検量室前で印象的だったのは、ヴィクトワールピサを付きっきりで仕上げてきた松田全史調教助手の雄叫び。レース直後、気持ちが高ぶっていたのか、ターフビジョンに映ったゴール前の静止画像を見て、天を仰ぎガッツポーズをしながら「ウォーーーー!!」と一発目。写真判定の結果が出た瞬間「ウォーーーー!!」と二発目。熱くて最高です。頬に涙が光っていました。

2010年12月26日 (日)

12月27~29日に『馬券師倶楽部2』再放送

「栗山求(前編・後編)」です。放送スケジュールは以下のとおり。

  栗山求(前編)
   12/27(月) 10:30~11:30
   12/27(月) 16:00~16:30
   12/28(火) 00:30~01:00
  栗山求(後編)
   12/28(火) 10:30~11:30
   12/28(火) 16:00~16:30
   12/29(水) 00:30~01:00

CS放送の“MONDO TV”で視聴することができます。よろしかったらどうぞ。

ラジオNIKKEI杯2歳Sはダノンバラード

2010年の競馬をあと1日残してディープインパクト産駒は40勝に到達しました。その40勝目がラジオNIKKEI杯2歳S(G3・芝2000m)の△ダノンバラード(4番人気)。ディープインパクトと同じ池江泰郎厩舎、武豊騎手のコンビで父に初めての重賞タイトルをもたらしました。上がり34秒7は出走馬中最速です。
http://www.youtube.com/watch?v=Mur54ujyUzk

配合については10月28日のエントリー「ディープインパクト産駒、土日で4勝(3)」をご覧くださいませ。ダノンシャンティ(NHKマイルC)と配合構成がよく似ています。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/10/post-add6.html

秋競馬でデビューしたディープインパクト産駒が1、3、5着と上位に食い込みました。先週の朝日杯フューチュリティSの2、3着馬も同様です。秋の中央開催でデビューする馬がハイレベルなのは毎年のこと。今年は秋デビューのディープインパクト産駒が破竹の勢いで勝ちまくっていたので、同産駒のレベルは高いといえるでしょう。

ひと足早くデビューし、新馬戦-萩S(OP)を連勝して高い評価を得ていた○ショウナンマイティ(1番人気)は、次々と勝ち上がるディープインパクト産駒に無言のプレッシャーを与える怖い存在でした。しかし、道中引っ掛かったこともあり8着と大敗。この結果を見ると、これからは秋デビューのディープ産駒に予想の軸足を移したほうがいいのかもしれないなぁと思いました。

今回、鮮やかに勝ったダノンバラードは、前走の京都2歳S(OP)では3着に敗れています。これは、新馬戦を勝ったディープインパクト産駒によく見られる2走目の反動だったのかもしれません。

11月30日のエントリー「ディープインパクト産駒の格上がり戦」で以下のように述べました。

「ディープインパクト産駒がデビュー戦に強いのは、能力の高さはもちろんですが、気のいいタイプが多く、競走に対して前向きであることが大きいと思います。それに加えて、デビューさせる各厩舎も、ディープインパクト産駒ということで多少意識が違うのか、新馬戦からキッチリ仕上げてきます。どれも高馬だけに“下手な仕上げでは出せない”という気持ちがあるのかもしれません。トーセンレーヴが万全を期してデビューを再三延期しているのはその典型でしょう。

新馬戦向きのディープインパクト産駒が、いきなり目一杯に仕上げられれば、それは強いと思います。ただ、上がり目は乏しく、馬によっては反動もあるでしょう。2戦目にもうひとつパフォーマンスが伸びないのはこのあたりに原因があるのではないかと考えています。」
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/11/post-9e63.html

また、京都2歳Sは、道中のペースがめまぐるしく変化する出入りの激しい競馬でもありました。トビが大きく緩急がきかない傾向があるディープ産駒にとっては得意とはいえない競馬で、このあたりも影響したのかもしれません。

2着△コティリオン(5番人気)は潜在能力ではピカイチだと思っていましたが、前走の引っ掛かり方を見ると重い印は打てません。今回も序盤に引っ掛かり、3コーナーでは挟まれて下がり、直線では最内から外へ持ち出すというロスの大きな競馬。それでも3着に追い込んでくるのですから強いの一語です。気性面の成長がなければこのポジションのままでしょうが、それさえクリアできれば大化けの可能性を秘めています。

ディープインパクト産駒は、日曜日に6頭が出走を予定しており、とくに阪神7R・500万下(芝1600m)のサトノオー、中山7R・ホープフルS(OP・芝2000m)のディープサウンドは注目です。

ラジオNIKKEI杯2歳Sの結果によって、ディープインパクト産駒のJRAにおける収得賞金はついに5億円の大台を突破。これは2歳戦において歴代4位に相当する優秀な数字です。1~3位はすべてサンデーサイレンス。あのサンデーでさえ3回しか記録していない2歳戦の5億超えを、初年度にあっさり達成してしまったのですから価値があります。

勝ったダノンバラードを5番手評価にしかできず、しんがり負けを喫したレッドセインツ(11番人気)に◎を打っているのですから予想は完敗。顔を洗って出直してきます。

2010年12月25日 (土)

今年の有馬記念はロングスパート型!?

天皇賞・秋、ジャパンCは力どおりに決まりやすい東京コースなので、予想をするときは戦力比較に割く時間が多くなるのですが、中山コースの有馬記念はマギレがあるので、展開や位置取りの予想に神経を使います。

今年はどう見てもスローペースでしょう。みんながそう思うと得てして逆になることも多いのですが、今年はやはり速くならないと思います。というか、そう決め打ちしないと予想が始まりません。

有馬記念の過去の歴史を振り返ると、スローで流れた場合でも、残り3ハロンの上がり勝負にはなりません。残り5~6ハロンから速くなるロングスパート型のレースになります。中山競馬場の内回りコースは、残り6ハロン付近から下り坂が始まります。ですから、自然とこのあたりからペースが速くなってしまうわけです。

マンハッタンカフェが勝った01年と、シンボリクリスエスが勝った02年。このふたつは残り5ハロンからペースアップするロングスパート型のレースでした。今年はこれに近い競馬になるのでは、と思います。最後の5ハロンが57秒9だった01年は超スローペース。今年はさすがにこれほど遅い流れにはならないと思うので、59秒1だった02年に近くなるような気がします。残り5ハロンからスパートして上がり3ハロンを34秒台の後半でまとめる力が要求されます。

01年と02年にはいくつか共通点があります。

①逃げ馬が3着以内に残っている
スローペースですから前で競馬をしたほうが当然有利です。01年はトゥザヴィクトリーが3着に、02年はレース途中から先頭を奪った(奪い返した)タップダンスシチーが2着に粘っています。といっても、今年は何が逃げるのかもよくわからないのですが……。

②1、2番枠がいずれも馬券に
ペースが遅いと馬群が固まる傾向にあるので、外枠の馬は馬群に潜り込めず、ずっと外を回されることになります。工夫しないと厳しいですね。逆に内枠は距離ロスなく走れるので最後の伸びが違ってきます。01、02年に連対した1、2番枠の計4頭はすべて好位でレースを進めました。

③3歳馬が勝ち、1番人気は5着
01年のマンハッタンカフェ、02年のシンボリクリスエスはいずれも3歳馬でした。1番人気に推された01年のテイエムオペラオー、02年のファインモーションはいずれも5着。

④13番人気が連対
オカルト的にはこれもひとつのデータでしょうか。

今年はこれらのデータを基礎に予想を組み立てたいと思います。有馬記念を長年見てきた方なら分かると思うのですが、何が起きても不思議のないレースです。難易度が高いので外れてもともと。たとえ外れても後悔のない印が打てればいいなぁと思います。

2010年12月24日 (金)

マルカシェンクがフランスで種牡馬に

先週土曜日、JRAのサイトに告知がありました。最近では日本馬が海外で種牡馬入りすることは珍しくなくなりましたね。アチチさんという方の個人サイト「火傷でアッチッチ! Annex」に、海外で種牡馬となった日本馬のリストがまとめてあります。「DATA」→「海外で活躍する日本関連種牡馬」というルートでご覧いただけます。
http://atiticlinic.web.fc2.com/index.html

これによると、海外で種牡馬入りしたサンデーサイレンス産駒は30頭を超えています。フランスだけでもすでに8頭。

アグネスカミカゼ
グレイトジャーニー
サムソンハッピー
ペールギュント
ボーンキング
ミレニアムバイオ
レゴラス
ローゼンカバリー

現在トルコにいるディヴァインライトは、当初、フランスで種付けを行っていたので、これを含めると9頭です。マルカシェンクがリストに加われば10頭目。

なぜこれほど多いかというと、やはり Natagora 効果ではないでしょうか。いうまでもなくディヴァインライトの代表産駒で、07年のカルティエ賞最優秀2歳牝馬に輝き、08年の英1000ギニー(G1・芝8f)を制した名牝です。
http://www.pedigreequery.com/natagora

日本から連れてきた名もない種牡馬の子が、並み居る強豪をしりぞけて本場イギリスのクラシックを勝ってしまったのですから、その衝撃は小さくなかったと思います。ディープインパクトの凱旋門賞(06年)におけるパフォーマンスと相俟って、サンデーサイレンスが日本のみで通用するローカル種牡馬ではないという認識に至ったのでしょう。その子供たちにどんどんオファーが来たのは当然だと思います。

第二の Natagora が出現!というニュースが聞きたいですね。

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!