月曜18時30分から『馬券師倶楽部2』再放送
『馬券師倶楽部2』の「栗山求(後編)」です。CS放送の“MONDO21”で観ることができます。よろしかったらどうぞ。
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | |||
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
『馬券師倶楽部2』の「栗山求(後編)」です。CS放送の“MONDO21”で観ることができます。よろしかったらどうぞ。
コーラルS(OP・阪神ダ1400m)はナムラタイタンが勝ち、これで戦績を5戦全勝としました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006101408/
父サウスヴィグラスはラブミーチャンの父でもあり、このところ名前を目にする機会が増えたように感じます。母ネクストタイムは不出走馬ながら、ゴールデンジャック(サンスポ賞4歳牝馬特別など重賞2勝)、スターリングローズ(JBCスプリントなど重賞6勝)の姉妹と4分の3同血の関係にある良血です。
┌ アフリート
ネクストタイム ――――┤
(ナムラタイタンの母) └○┐
└ コマース
┌ アフリート
ゴールデンジャック ――┤
(=スターリングローズ) └ コマース
『競馬王のPOG本 2009~2010』の「栗山ノート」で、マンハッタンカフェ産駒の注目馬5頭のなかにハンソデバンド(共同通信杯)を入れたのは、その母クラウンアスリートがゴールデンジャック&スターリングローズの姉妹とよく似た配合構成だったことも理由のひとつです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2000105411/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1991105227/
┌ アフリート
│ ┌ Danzig
クラウンアスリート ――┤ ┌○┘
(ハンソデバンドの母) └○┤ ┌ Buckpasser
└○┘
┌ アフリート
ゴールデンジャック ――┤ ┌ Danzig
(=スターリングローズ) └○┤ ┌ Buckpasser
└○┘
すでにゴールデンジャックはサイドワインダーを出しており、競走馬のみならず繁殖牝馬としても能力を証明していました。
ナムラタイタンの母、ゴールデンジャック(=サイドワインダーの母)、スターリングローズ、ハンソデバンドの母。――これらはいずれも「アフリート、Danzig、Buckpasser」のトライアングルによって誕生しています。この関係は頭の隅に留めておいたほうがいいかもしれません。
ファンタストといえば現在はファンタストクラブのことを指しますが、その名称の元となったのは1978年の皐月賞馬ファンタスト(「夢みる人」の意)です。皐月賞制覇から3ヵ月後、滞在中の函館競馬場で腸捻転を発症し、短い生涯を閉じました。
父イエローゴッド、母ファラディバはオークス2着馬、2代母ソーダストリーム。典型的な“伊達血統”でした。Pharos=Fairway 5・5×3・5、Fair Trial 4×4、Hurry On 5×5、Buchan 5×5という鮮やかな父母相似配合で、笠雄二郎の『日本サラブレッド配合史』にも採り上げられているほどです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a010208/
とくにソーダストリームと、イエローゴッドの母 Sally Deans は、いずれも3代以内に Fair Trial、Hurry On、Buchan を持ちます。偶然とは考えづらい共通点です。
http://www.pedigreequery.com/soda+stream
http://www.pedigreequery.com/sally+deans
┌ Hurry On
┌○┘
┌○┤ ┌ Buchan
ソーダストリーム ―┤ └○┘
│ ┌ Fair Trial
└○┘
┌ Fair Trial
┌○┘ ┌ Hurry On
Sally Deans ――――┤ ┌○┘
└○┤ ┌ Buchan
└○┘
伊達さんがお亡くなりになったいまとなっては想像でしかないのですが、イエローゴッドに目を付けて輸入した真の目的は、ソーダストリーム系と交配するためだったのではないか、という気がします。もしそうであれば、計画どおりに作ったファンタストが自身に初のクラシックタイトルをもたらした喜びはひとしおだったでしょう。「一番欲しかったのが、この皐月賞だったのです」と伊達さんは語っています。俗に「最も速い馬が勝つ」といわれる皐月賞は、スピードを第一義として生産を行ってきた伊達さんへの最大の勲章だったのではないでしょうか。
栄光からわずか3ヵ月後に訪れたファンタストの死は、現役クラシック馬の急逝というだけでなく、その血統的な価値からみても惜しまれるものでした。叔父のアローエクスプレスが初年度からテイタニヤ(桜花賞、オークス)を送り出し、種牡馬として大成功していたからです。
ファンタストの死とともに、この馬に関わる多くの人々の夢も墓石の下に葬られました。しかし、21年後、同じソーダストリーム系から出た1頭の牝馬が、ごくささやかながらその夢の一部を果たすことになります。
1999年の桜花賞馬プリモディーネです。
2代母イザベラは、「父イエローゴッド、2代母ソーダストリーム」という配合。ファンタストとほとんど同じ構造です。
┌ イエローゴッド
ファンタスト ―┤
└○┐
└ ソーダストリーム
┌ イエローゴッド
イザベラ ―――┤
└○┐
└ ソーダストリーム
イザベラにマルゼンスキーをかけて母モンパリが生まれ、それにアフリートをかけてプリモディーネが生まれました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1996101283/
もう少し図式化していえば、父母相似配合の傑作といえるイザベラ(≒ファンタスト)に、Northern Dancer 系→Mr.Prospector 系という順に主流血統を入れ、見事に現代競馬に対応してみせたのです。母モンパリは Nijinsky と Red God のニックスを持ち、プリモディーネ自身はアフリートと Nijinsky のニックスを持っていました。たんにイザベラ(≒ファンタスト)の血を引くだけでなく、配合全体もきわめて優秀なものだったのです。サンデー全盛期にありながらそれと無縁の血で世代の頂点に立ったのですから賞賛に値します。そして、これを作った伊達さんの手腕には感嘆するしかありません。
現在、プリモディーネはアメリカで繁殖生活を送っており、産駒は日本に輸入されて走っています。残念ながら成績は芳しくありません。日本で走らせるならサンデー系以上の種牡馬は世界のどこを探してもいないのでは、と思います。もし私が種牡馬を選ぶならマンハッタンカフェにするでしょう。
http://www.jbis.or.jp/topics/simulation/result/?sire=0000324971&broodmare=0000303071&x=63&y=21
血統派のオーナーとしても知られた伊達秀和氏が亡くなりました。81歳。昭和20年代に馬主となり、以来50年以上の長きにわたって第一線で活躍されました。主な所有馬は、アローエクスプレス、ファンタスト、ブロケード、パーシャンボーイ、プリモディーネなど。
中長距離が競馬の主役だった時代から「私はマイラー指向です」と公言し、スパニッシュイクスプレス、イエローゴッド、テュデナムといったスピード豊かな種牡馬や、名牝系の祖となったソーダストリームを輸入しました。
『競馬四季報』(77年秋号)に「アローエクスプレスとそのファミリー」という特集があるのですが、そのなかで伊達さんはご自身の血統観を語っています。いくつか抜粋してみます。
「私はよくいうんだけど、競走馬の場合、スタミナとスピードのうち、どちらを重視するかといったら、それは絶対スピードだと。スピードこそが競馬の基本だという考えを持ってますからね。」
「ファミリーというのは自らつくり出すものでね。どんな名血だってこつ然としてできるんではなくて、つくられるものである。最初から名血というのはないんだと。」
「種馬の選択っていうのも難しくてね、外国で走ったからといって日本で走るとは限らんし。やはりその国に合ったものを探さなきゃいかん訳ですよ。いい例がネヴァーセイダイでしょ。欧米じゃ、あの程度の種馬ならたいしたことないですが、だけど日本は別。ネヴァーセイダイの子というだけで走る。なにしろ、コントライト級の種馬から、テンポイントが出るんだから。みんな同じ系統の馬をワッと入れる割には、この系統的な相性というのに、意外に無関心なんだな。だから私は、外国の成績が良くても、日本に向かない系統は避けますね。」
伊達さんが輸入した馬の配合を見てまず感じるのは、その質の高さと品の良さです。そして、アガ・カーン血脈への傾倒の跡がうかがえます。ソーダストリームはアガ・カーンの牝系から出た馬ですし、その母 Pangani は Lady Josephine 3×5です。スパニッシュイクスプレスやイエローゴッドを購入したのは Nasrullah への信頼でしょう。馬選びの視線に、スピードを重んじる哲学が感じられます。
http://www.pedigreequery.com/pangani
http://www.pedigreequery.com/spanish+express
http://www.pedigreequery.com/yellow+god
スパニッシュイクスプレスとソーダストリームの間に誕生したアローエクスプレスは、伊達さんの血統理論の結晶といえるもので、現役時代に朝日杯3歳Sなど4つの重賞を制したほか、1980、81年にリーディングサイアー(中央+地方)となりました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a000afe/
もし伊達さんが馬と関わっていなかったら、日本の競馬は現在と違ったものになっていたでしょう。ご冥福をお祈りします。