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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年9月17日 (土)

父譲りの切れ味で完勝、レッドアーヴィング

■日曜札幌5Rの新馬戦(芝1800m)は、4番手追走の▲レッドアーヴィング(1番人気)が直線で鮮やかに突き抜けました。
http://www.youtube.com/watch?v=fVyDWlNFKAY

好調アドマイヤムーン産駒は、先々週までの時点で1600m以上では連対率6.3%(16戦1連対)。したがって、2倍を切る1番人気でもやや不安があったのですが、杞憂に終わりました。

アドマイヤムーン自身は現役時代に2400mをこなしたので、もともと産駒に距離の壁などないのかもしれませんし、母エンプレスティアラの全弟ゴールデンハインドは、函館芝2600mでレコード勝ちするなど、全5勝のうち4勝を2400m以上で挙げました。距離をこなせる素地はありましたね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106100/

そもそも今回はスローペースの上がり勝負で、むしろ瞬発力が問われるレースでした。アドマイヤムーン産駒の最大の長所は瞬発力。ゴール前でピリッとしたいい脚を使います。レッドアーヴィングは、母の父クロフネ、2代母ゴールドティアラ(南部杯-G1)ですから、芝向きの切れ味という面では心もとない血統です。そうした血を抱えながら、ラスト2ハロン11秒4-11秒6という決め手勝負をスパッと抜け出してきたわけですから、アドマイヤムーンが伝える瞬発力は優秀だと思います。このあたりはサンデーサイレンスの影響でしょうか。

今年の新種牡馬戦線は、ダイワメジャーとアドマイヤムーンの2頭が抜け出しており、現時点で両馬とも8勝を挙げています。出走数はダイワメジャーの90回に対し、アドマイヤムーンは半分以下の34回なので、勝率ではアドマイヤムーンの圧勝です。持ち前の瞬発力を活かしてゴール前でしっかり競り勝っていることが分かります。ただ、2着を比べてみると、ダイワメジャーの19回に対し、アドマイヤムーンは3回。連対率ベースではほとんど差がありません(30.0%と32.4%)。夏競馬が終わって間もない段階なので、これから秋競馬が進んでいけば、傾向も変わってくるかもしれません。引き続き注視していきたいですね。

これまでにデビューしたアドマイヤムーン産駒は、良くも悪くもローカル向きの軽いスピードタイプが多かったと思います。中央開催の中距離レースに対応できそうなレッドアーヴィングのような馬をどれだけ出せるか、という点がこれからの課題となるでしょう。

■日曜中山6Rの新馬戦(ダ1800m)は、中団追走の★ブラックビーン(6番人気)が3コーナーから大外をマクって進出し、4コーナーで先頭に立つとそのまま押し切りました。
http://www.youtube.com/watch?v=SNfMKVXTSEs

これぞダートホース、という豪快な勝ち方でした。2代母は20番人気でエリザベス女王杯(G1)を勝ったサンドピアリス、母サンドコロネットはタマモストロング(ダート重賞4勝)の半姉。これにワイルドラッシュを掛けて本馬は誕生しました。血統表のどこを切り取ってもパワー満点です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009103361/

ワイルドラッシュはトランセンドを筆頭にコンスタントに活躍馬を送り出しており、その多くはダート馬です。昨年あたりまではセールで落札される産駒の価格も安く、実力と価格のアンバランスさからお買い得といえる種牡馬だったのですが、今年に入ってからさすがに価格が上がってきて、実力相応の評価をされるようになりました。10、11年と、中央地方を総合したダート重賞の勝利数は全種牡馬中トップです。

5月14日のエントリー「羽田盃はクラーベセクレタ」に記したとおり、ワイルドラッシュ産駒の大物は、Flower Bowl-Graustark(=His Majesty)の母子を強化した配合が目につきます。前出のトランセンドや、クラーベセクレタ、クリールパッション、ヒシウォーシイなどがそうです。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/05/post-5ff1.html

ブラックビーンは母方にチャイナロックが入ります。Flower Bowl とチャイナロックはいずれも Hyperion と Son-in-Law で構成されており、底力の強化には有効な血です。

           ┌ Hyperion
         ┌○┘ ┌ Son-in-Law
Flower Bowl ―――┤ ┌〇┘
         └○┘

           ┌ Hyperion
         ┌○┘ ┌ Son-in-Law
チャイナロック ―┤ ┌〇┘
         └○┘

しっかり乗り込んではいたものの、時計的にはそれほど目立つものではなかったので、配合的に注目という★しか打てませんでした。ダート路線で注目したい1頭です。

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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父譲りの切れ味で完勝、レッドアーヴィングを参照しているブログ:

コメント

はじめまして栗山先生

最近このブログのことを知りまして、拝見させていただいております。

私も血統のことにすごく興味があるので、これからいろいろと配合のことなどを学べたらいいなと思っております。

ところでサドンストームが2歳500万を勝ったのですが、父ストーミングホームの種牡馬としての能力についてどう思われるのか教えてもらえないでしょうか。

たびたびお邪魔します。

アドマイヤムーンのファーストクロップは夏競馬では大活躍でした。仰るように中央場所での2勝目の勝ち上がりを上げる産駒がどれだけいるかで真価が問われそうです。

勝ち上がった産駒の血統を見ると、GraustarkやSecretariatなどを母系に持つ馬が多いことに気付かされます。今後ダートで勝ち上がってくる馬にブライアンズタイムやStorm Catなどの血があるのかどうか、個人的に注目しています。

>ディープエックス様

はじめまして。お読みいただきありがとうございます。ストーミングホームは Mr.Prospector 2×3で、Northern Dancer が入り、Halo≒Sir Ivor が近い世代にあるので、主流血統を凝縮したような配合です。配合的な引き出しはたしかに多いのですが、やや煮詰まっている感があるので、配合相手にはアウトクロスとなる牝馬を持ってくるほうがいいのでは、という気はします。

サドンストームは Halo≒Sir Ivor と Northern Dancer を継続しています。つまり、アウトクロスではなく、内包する血をさらに重ねています。この方向性でOKならサンデー牝馬との配合にも楽しみが出てきたのではないかと思います。周知のとおりサンデーの父は Halo なので、サドンストームと同じように Halo≒Sir Ivor を継続します。

サドンストームのようにアメリカ血統を重ねたタイプはスピードタイプに、母にサンデー系を持ってくれば2000m前後、茫洋としたヨーロッパ血脈の場合は2400mも問題ない、というタイプでしょう。ストーミングホーム自身は名血の集積なので、ハマれば大物も出せると思います。

>TACO様

2歳夏のローカル戦はとにかく素軽さがモノを言います。来春のクラシックで活躍できるかどうかは、これから秋、冬と季節が深まってからのパフォーマンスである程度判断できそうですね。

中央開催の中距離レースで活躍するには、素軽さだけではない+αが必要です。その部分は Graustark=His Majesty、Roberto、Sadler's Wells、Rockefella といった重厚な血を補給して賄うのでしょう。

自分なりの仮説を立てて、実際のレースでそれが正しいかどうかを検証していく作業は配合研究の醍醐味のひとつですね^^

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