Dr.Fager と In Reality のニックス(1)
この季節、佳境に入った国内G1シリーズの話題を優先していると、海外競馬のフォローが追いつきません。
5月21日に行われたプリークネスS(米G1・ダート9.5f)をいまさら取り上げるのも……という気はしますが、米三冠シリーズの第2戦であり、勝ち馬の配合にも見どころがあるので振り返っておきます。
勝った Shackleford(6番人気)は直線早め先頭から押し切りました。2着はケンタッキーダービー馬 Animal Kingdom(1番人気)。
http://www.youtube.com/watch?v=K8jx_DqyPHg
Shackleford は Storm Cat 系の Forestry が父。重要なのは系統ではなく「Dr.Fager と In Reality のニックス」です。80年代末からこのニックスはアメリカにおける重要な配合上のポイントであり続けています。
http://www.pedigreequery.com/shackleford
奇遇なことに、Dr.Fager と In Reality は、ともに1964年にフロリダ州で生まれました。前者はタータンファームで生まれ育ち、後者は別牧場で生まれたあとタータンファームで育ちました。幼駒時代から顔見知りだったわけです。
どちらもビッグレースを勝ちまくった名馬でしたが、競走馬として格上だったのは Dr.Fager のほう。通算22戦18勝でのちに名誉の殿堂入りを果たしました。1968年のワシントンパークH(ダート8f)では、約61キロを背負って1分32秒1/5という世界レコードを樹立。レース映像を見るとゴール前では手綱を抑えています。
http://www.youtube.com/watch?v=6wVBNbmcaAE
このあたりは「栗山求 Official Website」の「Works」にある「甦るオールド・グローリー」で触れておりますのでご参照ください。
http://www.miesque.com/motomu/
血統表を並べてみると一目瞭然ですが、Dr.Fager と In Reality はいずれも近い世代に Rough'n Tumble を持っています。
http://www.pedigreequery.com/dr+fager
http://www.pedigreequery.com/in+reality
Rough'n Tumble は現役時代、サンタアニタダービー(ダート9f)を勝ちましたが、16戦4勝という戦績が示すとおり、目立つ存在ではありませんでした。引退後はメリーランド州のウィンディヒルファームで2シーズン種付けをし、そのあとフロリダ州のオカラスタッドに移りました。アメリカの馬産の中心地は今も昔もケンタッキー州です。メリーランド州→フロリダ州という道筋をたどった Rough'n Tumble への期待度がどの程度のものだったのか想像できます。しかし同馬は、上質とはいえない繁殖牝馬から何頭かの大物を送り出し、フロリダを代表する名種牡馬にのし上がりました。それだけでなく、現代のサラブレッドに与えた影響は決して小さくありません。
http://www.pedigreequery.com/roughn+tumble
Rough'n Tunble が送り出した牡の代表馬が Dr.Fager であり、牝の代表馬が My Dear Girl(米2歳牝馬チャンピオン)、すなわち In Reality の母です。
Dr.Fager と My Dear Girl は配合構成が似ています。これが Dr.Fager と In Reality のニックスの核心ではないかと思います。Bee Mac と Iltis の関係についてはここでは述べませんが、興味のある方は調べてみてください。(続く)
http://www.pedigreequery.com/my+dear+girl
┌ Rough'n Tumble
Dr.Fager ―――┤ ┌○┐
└○┘ └ Bee Mac(≒Iltis)
┌ Rough'n Tumble
My Dear Girl ―┤
└ Iltis(≒Bee Mac)
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血 統 屋 http://www.miesque.com/
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こんばんは。
My Dear Girlのクロスを持つ、レッドチリペッパーは素晴らしい配合の馬だったのですね。
当時は何も知らずに馬券を買い続けていましたが(笑)
投稿: たくぼん | 2011年6月 4日 (土) 22:14
こんにちは。レッドチリペッパーについて触れるのを忘れてましたね。ご指摘ありがとうございます。レッチリは繁殖牝馬としてはもうひとつ弾けませんが、孫世代では Dr.Fager、In Reality あたりを刺激した配合を期待したいところです。
投稿: 栗山求 | 2011年6月 5日 (日) 16:36