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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年6月

2011年6月 2日 (木)

Dr.Fager と In Reality のニックス(1)

この季節、佳境に入った国内G1シリーズの話題を優先していると、海外競馬のフォローが追いつきません。

5月21日に行われたプリークネスS(米G1・ダート9.5f)をいまさら取り上げるのも……という気はしますが、米三冠シリーズの第2戦であり、勝ち馬の配合にも見どころがあるので振り返っておきます。

勝った Shackleford(6番人気)は直線早め先頭から押し切りました。2着はケンタッキーダービー馬 Animal Kingdom(1番人気)。
http://www.youtube.com/watch?v=K8jx_DqyPHg

Shackleford は Storm Cat 系の Forestry が父。重要なのは系統ではなく「Dr.Fager と In Reality のニックス」です。80年代末からこのニックスはアメリカにおける重要な配合上のポイントであり続けています。
http://www.pedigreequery.com/shackleford

奇遇なことに、Dr.Fager と In Reality は、ともに1964年にフロリダ州で生まれました。前者はタータンファームで生まれ育ち、後者は別牧場で生まれたあとタータンファームで育ちました。幼駒時代から顔見知りだったわけです。

どちらもビッグレースを勝ちまくった名馬でしたが、競走馬として格上だったのは Dr.Fager のほう。通算22戦18勝でのちに名誉の殿堂入りを果たしました。1968年のワシントンパークH(ダート8f)では、約61キロを背負って1分32秒1/5という世界レコードを樹立。レース映像を見るとゴール前では手綱を抑えています。
http://www.youtube.com/watch?v=6wVBNbmcaAE

このあたりは「栗山求 Official Website」の「Works」にある「甦るオールド・グローリー」で触れておりますのでご参照ください。
http://www.miesque.com/motomu/

血統表を並べてみると一目瞭然ですが、Dr.Fager と In Reality はいずれも近い世代に Rough'n Tumble を持っています。
http://www.pedigreequery.com/dr+fager
http://www.pedigreequery.com/in+reality

Rough'n Tumble は現役時代、サンタアニタダービー(ダート9f)を勝ちましたが、16戦4勝という戦績が示すとおり、目立つ存在ではありませんでした。引退後はメリーランド州のウィンディヒルファームで2シーズン種付けをし、そのあとフロリダ州のオカラスタッドに移りました。アメリカの馬産の中心地は今も昔もケンタッキー州です。メリーランド州→フロリダ州という道筋をたどった Rough'n Tumble への期待度がどの程度のものだったのか想像できます。しかし同馬は、上質とはいえない繁殖牝馬から何頭かの大物を送り出し、フロリダを代表する名種牡馬にのし上がりました。それだけでなく、現代のサラブレッドに与えた影響は決して小さくありません。
http://www.pedigreequery.com/roughn+tumble

Rough'n Tunble が送り出した牡の代表馬が Dr.Fager であり、牝の代表馬が My Dear Girl(米2歳牝馬チャンピオン)、すなわち In Reality の母です。

Dr.Fager と My Dear Girl は配合構成が似ています。これが Dr.Fager と In Reality のニックスの核心ではないかと思います。Bee Mac と Iltis の関係についてはここでは述べませんが、興味のある方は調べてみてください。(続く)
http://www.pedigreequery.com/my+dear+girl

        ┌ Rough'n Tumble
Dr.Fager ―――┤ ┌○┐
        └○┘ └ Bee Mac(≒Iltis)

        ┌ Rough'n Tumble
My Dear Girl ―┤
        └ Iltis(≒Bee Mac)

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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2011年6月 1日 (水)

Nureyev≒Sadler's Wells は道悪で花開く

日曜京都5Rの未勝利戦は、クレバーキング(3番人気)が後方から徐々に進出し、早め先頭で押し切りました。

道悪になるとキングカメハメハ産駒が台頭するケースが目につきます。とくに不良馬場の成績が良好です。「血統屋」ホームページに「Web 種牡馬辞典」というデータコンテンツがあるのですが、キングカメハメハの項を読むと「道悪は鬼」とあります。
http://www.miesque.com/j06-03.html

クレバーキングは母の父が Sadler's Wells。父キングカメハメハはそれと4分の3同血にあたる Nureyev を持っているので、Nureyev≒Sadler's Wells 4×2です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008101330/

         ┌ Northern Dancer
Nureyev  ――――┤
         └ Special

         ┌ Northern Dancer
Sadler's Wells ―┤
         └○┐
           └ Special

キングカメハメハの父 Kingmambo は、Nureyev≒Sadler's Wells の4分の3同血クロスを持つ産駒が大成功しました。エルコンドルパサー(ジャパンC、サンクルー大賞典)、Henrythenavigator(英・愛2000ギニー)、Divine Proportions(仏1000ギニー、仏オークス)、Virginia Waters(英1000ギニー)など錚々たる顔ぶれです。したがって、キングカメハメハもこのクロスが成功するだろうと考え、初年度産駒はこの配合パターンをPOGで指名したりもしました。たしかショウナンサミットがそうです。しかし、走りませんでしたね。キングカメハメハ産駒におけるこの配合は総じて芝向きの軽いスピードを欠きます。

Sadler's Wells はヨーロッパ向きの重厚な血なので、道悪の適性が高いことで知られています。キングカメハメハ産駒の場合、この血が入ると重苦しさが前面に出てしまいます。ただ、その分、道悪は上手です。クレバーキングはこれまで5戦して4着が最高成績でしたが、不良馬場の今回、見事初勝利を挙げました。

エルコンドルパサーは父が Kingmambo で、母の父は Sadler's Wells。不良馬場の凱旋門賞で2着に粘ったのは血統的な背景のなせる業です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1995108742/

日曜東京4Rの未勝利戦(芝1800m)、水しぶきが上がる不良馬場のレースを勝ち上がったのはアルカセット産駒のファンフェアでした。アルカセットはキングカメハメハと同じく Kingmambo の息子です。そして、ファンフェア自身は2代母の父が Sadler's Wells。クレバーキングやエルコンドルパサーと同じ構造です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008105784/

Nureyev≒Sadler's Wells の4分の3同血クロスを持つ馬は、道悪になったら買いです。5代以内にこのクロスを持つ馬(エルコンドルパサーはすでに自身が持っているのでその産駒は除外)の馬場状態別連対率(芝)は以下のとおり。

良 ……14.9%
稍重……13.0%
重 ……25.8%
不良……35.0%

まさに道悪の鬼です。

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!