「常識は、敵だ」という皐月賞のCMコピーが脳裏に甦りました。3歳馬がここで勝つという発想はなかったですね~。参りました。リアルインパクト(9番人気)は奇策を弄したわけではなく、真っ向勝負で堂々と勝ったのですから文句のつけようがありません。
http://www.youtube.com/watch?v=0mHpPzalyDc
安田記念がG1に生まれ変わった84年以降、しばらくは3歳馬に出走権が与えられていませんでした。96年に門戸が開放され、昨年まで4頭が挑戦して〔0・0・1・3〕という成績。重賞未勝利のリアルインパクトとは違い、いずれも重賞勝ちの戦績がありました。
96年 ゼネラリスト 14着
97年 スピードワールド 3着
00年 イーグルカフェ 13着
04年 メイショウボーラー 11着
3着に食い込んだスピードワールドは Woodman 産駒の外国産馬。いまだに早熟馬の代名詞として名前が挙がることもあります。2歳時からその能力を含めて古馬のような雰囲気を漂わせていた馬でした。3着といっても3番人気に推されていたので意外性はありませんでした。アメリカ産馬は総じて早い時期に完成します。
米ニューヨーク州のベルモント競馬場で毎年5月末に行われるメトロポリタンH(G1・ダート8f)には、3歳馬も出走することができます。過去50年間で3歳馬が6頭優勝しています。
69年 Arts and Letters
82年 Conquistador Cielo
87年 Gulch
92年 Dixie Brass
94年 Holy Bull
96年 Honour and Glory
ハンデはいずれも50~51キロ。古馬の一流どころが出てくればだいたい56キロぐらいは背負わされるので、安田記念に比べれば3歳馬が若干有利といえるかもしれません。
イギリスでは距離によって3歳と古馬の重量差が異なります。6~7月のG1では、6ハロン戦は3キロ差、8ハロン戦は4キロ差、10~12ハロンは5.5キロ差です。安田記念(芝1600m)の3歳と古馬の重量差は4キロですから、イギリスに習ったのかもしれません。ちなみに宝塚記念(芝2200m)は5キロ差です。
イギリスで7月上旬に行われるファルマスS(G1・芝8f)や7月下旬に行われるサセックスS(G1・芝8f)では、3歳馬がしょっちゅう勝っています。安田記念が6月上旬に行われているといっても、イギリスの例に倣うなら、3歳馬には注意を払うべきでしたね。狭い範囲の常識にとらわれて失敗しました。リアルインパクトの勝利をきっかけに、来年以降、NHKマイルC→安田記念という進路をとる馬が増えると思います。“3歳馬VS古馬”という新しい対抗軸ができればレースはさらに盛り上がるでしょう。
リアルインパクトはディープインパクト産駒。昨年暮れの朝日杯フューチュリティS(G1・芝1600m)で本命を打った馬でした。3歳春に古馬混合マイルG1を勝ったのは、母トキオリアリティーのアシストが大きいと思います。母は「Meadowlake×In Reality」という組み合わせのアメリカ産馬で、距離面に限界のある芝・ダート兼用のスプリンターでした。アメリカ産馬が早い時期に完成するというのは前述のとおりで、また、ディープインパクトは基本的にスプリンター血統と相性が良好です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103244/
母の父 Meadowlake はデビュー戦(ダート6f)で後続を22馬身引き離して勝ち、「Secretariat の再来」と騒がれたスピード馬で、続くアーリントンワシントンフューチュリティ(米G1・ダート6.5f)も9馬身差で圧勝、通算3戦全勝で引退しました。Blue Moon≒Nothirdchance 2×3が配合上のキーポイントです。
http://www.pedigreequery.com/meadowlake
┌○┐ ┌ High Time
│ └○┤ ┌ Man o'War
Blue Moon ―――┤ └○┘
│ ┌ Blue Larkspur
└○┤ ┌ Sir Gallahad
└○┘
┌ Blue Larkspur
┌○┤ ┌ Man o'War
│ └○┤ ┌ High Time
Nothirdchance ―┤ └○┘
│ ┌ Sir Gallahad
└○┘
Meadowlake の代表産駒はG1を6勝した名牝 Meadow Star。トキオリアリティーと Meadow Star は配合構成が酷似しています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1994109536/
http://www.pedigreequery.com/meadow+star
┌ Meadowlake
トキオリアリティー ―┤ ┌ In Reality
└○┤ ┌ My Babu
│ ┌○┘
└○┘
┌ Meadowlake
Meadow Star ―――――┤ ┌ In Reality
└○┤
└○┐ ┌ My Babu
└○┘
トキオリアリティーは現役時代に3勝し、準OPまで出世しました。繁殖牝馬としてはリアルインパクトのほかにアイルラヴァゲイン(オーシャンS)を出しています。この好成績は Meadow Star と配合構成が似ているという部分が影響しているのではないかと思います。
スタミナ色が強かったエルコンドルパサーを相手にしても、アイルラヴァゲインのようなスプリント職人を産むのですから、トキオリアリティーは頑固なスピードを伝えています。このような繁殖牝馬を相手にマイルG1の勝ち馬を出したディープインパクトは、しっかりとしたスタミナを伝えることのできる種牡馬だと思います。ディープインパクト自身はスタミナに不安のない中距離血統で、ディープインパクト産駒の買いどころは基本的にマイル以上――というのはこれまでたびたび主張してきたところです。オークスとダービーで討ち死にしたのは主に馬場状態の影響であって、距離適性の問題ではないと思います。
リアルインパクト自身は、Nothirdchance≒Blue Moon 5×4・5。母の父 Meadowlake が持つクロスを継続しています。このあたりの血脈構成については2月13日のエントリー「クイーンCはホエールキャプチャ」でも触れておりますのでご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/02/post-6544.html
Meadowlake 牝馬はサンデー系と掛け合わせるとこのクロスが生じますが、アメリカ血統と相性のいいディープインパクトの場合、とくに効果が大きかったということでしょう。ディープインパクトは今後、中・長距離のビッグレースで活躍する馬をたくさん出すでしょうし、マルセリーナとリアルインパクトによってマイル戦でもまったく問題ないところを示しました。奥の深い種牡馬です。
○ストロングリターン(5番人気)は2着。石橋脩騎手の追いっぷりが凄かったですね。勝ち馬にクビ差まで迫ったのですから負けたのは勝負のアヤ。大健闘といえる内容でした。完全に本格化しています。前にも記したとおり元POG所有馬なのでこのところの活躍は嬉しいかぎり。
▲アパパネ(1番人気)は6着と掲示板を外しました。単勝2.2倍というオッズはちょっとかわいそうな気もしました。蛯名騎手は目に見えない疲れを敗因に挙げています。
◎ダノンヨーヨー(2番人気)は出遅れ。スタートでリズムが狂ってしまいレースになりませんでした。
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血 統 屋 http://www.miesque.com/
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