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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2010年12月27日 (月)

有馬記念はヴィクトワールピサ

有馬記念の乗り方が最も上手かったのは田原成貴騎手だと思います。リードホーユー(83年)、トウカイテイオー(93年)、マヤノトップガン(95年)と3回制覇しました。なかでもリードホーユーの手綱さばきはいまだに私のなかで有馬記念の理想型というべきものです。ハナっ速いハギノカムイオーを先に行かせて2番手につけ、3コーナーで自然に先頭に立つと、早めスパートで差を広げてギリギリ残しました。何度見ても美しい騎乗です。
http://www.youtube.com/watch?v=29cUwWFZkNo

今回の◎ヴィクトワールピサ(2番人気)のレースぶりは、まさにリードホーユーを彷彿させるものでした。仮にブエナビスタと同じ位置から仕掛けたらまず勝てません。ジャパンCと同じく先手必勝で早めに抜け出すしか勝機はないと陣営は承知していたはずです。デムーロ騎手も勝利騎手インタビューで“早めの競馬をしてほしい”と指示されたことを口にしていました。2コーナーから向正面で13秒台にラップが落ちたとき、デムーロ騎手はためらわずに行きました。ここが勝負のポイントです。ブエナビスタはこのとき馬群に包まれて動くに動けませんでした。明暗はここで分かれたと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=W2JKHbt72Z0

『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想は◎○で馬単1640円を本線的中。『ウマニティ』では単勝840円と馬単的中。『ウマニティ』の年間予想成績は「回収率132%」とプラス収支を達成しました。予想を転載します。

「◎ヴィクトワールピサは『ネオユニヴァース×マキアヴェリアン』という組み合わせで、スウィフトカレント(小倉記念、天皇賞・秋-2着)の4分の3弟、アサクサデンエン(安田記念)の半弟にあたる。3着と健闘したジャパンC(G1・芝2400m)では、騎乗したマキシム・ギュイヨン騎手が『この距離は少し長い』とコメントした。今回は距離が100m延びるものの、中山芝2500mは小回りでコーナーが多いためごまかしがきく。東京芝2400mを乗り切った馬であれば不安はない。過去、中山コースで2戦2勝、小回りコースと内回りコースでは5戦5勝。この条件では強い。今年はスローペースが予想されるので、前に行く馬、内枠の馬が有利。1枠1番のこの馬にとっては追い風だ。序盤はゆったりとしたペースで進み、残り5ハロンのロングスパートで勝負が決まると思われるので、2歳時(京都2歳S)にすでにラスト5ハロンを58秒0で駆け抜けた能力は重く見たい。ブエナビスタを倒せるのはこの馬しかいない。」

12月25日のエントリー「今年の有馬記念はロングスパート型!?」のなかで次のように記しました。

「マンハッタンカフェが勝った01年と、シンボリクリスエスが勝った02年。このふたつは残り5ハロンからペースアップするロングスパート型のレースでした。今年はこれに近い競馬になるのでは、と思います。最後の5ハロンが57秒9だった01年は超スローペース。今年はさすがにこれほど遅い流れにはならないと思うので、59秒1だった02年に近くなるような気がします。残り5ハロンからスパートして上がり3ハロンを34秒台の後半でまとめる力が要求されます。」
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/12/post-3aff.html

向正面でヴィクトワールピサが仕掛け、残り5ハロンから急激にペースアップした今年は、11秒5-12秒0-11秒7-11秒1-11秒8でフィニッシュ。予想どおり絵に描いたようなロングスパート型のレースとなりました。ラスト5ハロンが58秒1で、上がり34秒6ですからほぼ計算どおり。デムーロ騎手は、ヴィクトワールピサが勝つためのモデルケースとぴったり同じレースをしてみせました。私のなかでは83年のリードホーユーと並ぶ有馬記念の“殿堂入り騎乗”ですね。

ヴィクトワールピサはJRA賞最優秀3歳牡馬のタイトルをほぼ確実なものとしました。父ネオユニヴァースはこれまでに手にした4つのG1のうち、3つが中山競馬場でのものです。このコースにおける強さは格別です。デムーロ騎手はネオユニヴァースの主戦ジョッキーだったので、彼は親子二代でG1を勝ったことになります。

2着○ブエナビスタ(1番人気)の上がり3ハロンは33秒8。ディープインパクトやマンハッタンカフェと同レベルの、中山芝2500mでは極限といえる脚です。明らかに馬のレベルは一枚上で、これで勝てなかったのですから結果的にスミヨン騎手のミスでしょう。ただ、スミヨン騎手も周りを囲まれて、行きたいところで行けなかったのは事実だと思います。ブエナビスタの外側に馬体を併せていたのはメイショウベルーガ。騎乗していた蛯名騎手は、外国人騎手が関わる諸問題に対してツイッターで積極的に主張していたので、遺恨絡みのブロックか?と短絡的に考えてしまいがちですが、もちろんたまたまでしょう。父スペシャルウィークと同じくハナ差で有馬記念を勝てなかったのは因縁めいています。

3着トゥザグローリー(14番人気)は、スローペースの有馬記念(01年)で3着に逃げ粘ったトゥザヴィクトリーの子。そして、前走の中日新聞杯(G3)は内容的にきわめて優秀でした。しかし、押せ押せのローテーションや本質的に広いコース向きではないかという点が引っ掛かって印が回りませんでした。中日新聞杯の回顧で「来年はG1戦線の常連となるでしょう」と書きましたが、常連どころか主役を狙える器ですね。決してフロックではありません。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/12/post-82cc.html

レース後、検量室前で印象的だったのは、ヴィクトワールピサを付きっきりで仕上げてきた松田全史調教助手の雄叫び。レース直後、気持ちが高ぶっていたのか、ターフビジョンに映ったゴール前の静止画像を見て、天を仰ぎガッツポーズをしながら「ウォーーーー!!」と一発目。写真判定の結果が出た瞬間「ウォーーーー!!」と二発目。熱くて最高です。頬に涙が光っていました。

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コメント

デムーロ騎手の早仕掛けが、勝敗を分けましたね。
久々に騎手の腕で勝ったレースを見ましたが、日本人騎手にも頑張ってもらいたいです。

ピサかっこよかった〜ほんま。
海外遠征して秋競馬活躍してくれたのもうれしかったです^^馬も角居厩舎もすごいですな。
漠然と距離は大丈夫なんなじゃないかと思っているので天皇賞(春)に行ってほしいと勝手に思ってます。
来年が楽しみだなと思う有馬記念でした!

>キングトップラン様

デムーロ騎手はトゥザグローリーで勝った中日新聞杯でも向正面でスーッと位置取りを上げましたね。ペースと位置取りに関する感覚が鋭敏です。今年は外国人騎手の重用が加速して日本人騎手の存在感が薄れてしまった一年だったと思います。彼らはみな本国ではトップジョッキーですから、それに対抗するのは大変だとは思いますが、頑張ってほしいものです。

>たくぼん様

ピサかっこよかったですね~。直線で早め先頭に立ったときはアドレナリンが出てきました(笑)。成績を残している厩舎は例外なく優秀なスタッフを抱えているのですが、角居厩舎も例に漏れません。松田調教助手はいずれ調教師になるかもしれませんね。ピサは来春ドバイ(ドバイワールドカップかドバイデューティフリー)へ行くらしいです。

そうですか、来年はドバイに行くのですのね。それはそれで楽しみです。
いつも私のとりとめのないコメントにお返事をくださいましてありがとうございます。
栗山さんのブログやホームページに出会ってから競馬の世界観が広がりました。血統の話はもちろんのこと、それにまつわるエピソードや歴史など読んでいて勉強になりますし楽しいです。ファンタストとプリモディーネの話は読んでいてジーンときました。
今年もまだ東京大賞典など大きなレースもありますが一年間ありがとうございました。これからも楽しみにしています。

一般受けしそうもない拙文にお付き合いいただき、こちらこそ感謝の気持ちでいっぱいです。この1年間本当にありがとうございました。これからも独りよがりな文章をどんどん書いていけたらと思います(笑)。ちなみに、年末年始は所用で遠出しなければならないのですが、ネットが通じるかどうか微妙です。万が一ブログの更新が止まったらそういうことですので何卒よろしくお願いします。

松田さんってたしか森厩舎にいてエアシャカールの調教つけてなかったですか?
藤沢厩舎にいた優秀な助手も堀厩舎に移籍したと聞きましたし血統とは関係ないんですが最近は有力助手の引き抜きも多いんですかね?

たしかに、松田全史調教助手は以前は森秀行厩舎に所属されていました。厩舎を移動することは珍しくなく、角居勝彦調教師自身も助手時代に中尾謙太郎厩舎から松田国英厩舎へ移った経験があります。内情はどうあれ表面上は本人の希望で移ったという形になると思います。

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