ジャパンCの外国招待馬
節目の30回目ということで、今年はJRAが頑張って出走馬を8頭も集めてきました。03年(9頭)以来の大量出走です。
1頭ずつ簡単にコメントしてみたいと思います。
■1番 ヴォワライシ Voila Ici(伊・牡5歳)
http://www.pedigreequery.com/voila+ici
父 Daylami はBCターフ、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS、英チャンピオンSをはじめG1を勝ちまくった名馬ですが、種牡馬としては期待外れの成績です。昨年のジャパンC4着馬コンデュイットは、父が Daylami の半弟 Dalakhani、母の父が Sadler's Wells ですから、Daylami×Barathea(その父 Sadler's Wells)の本馬と配合構成がよく似ています。コンデュイットでさえ4着ですから、それよりはるかに実績が劣るこの馬では……。
■3番 ダンディーノ Dandino(英・牡3歳)
http://www.pedigreequery.com/dandino2
父 Dansili はデインヒル系の2400mタイプでは最も成功している種牡馬で、ハービンジャー(キングジョージ6世&クイーンエリザベスS)、Rail Link(凱旋門賞)などを出しています。本馬は重賞勝ちのない3歳馬ですから明らかに格下。母の父がジェネラスでは高速馬場への対応力にも疑問です。
■5番 モアズウェルズ Mores Wells(仏・牡6歳)
http://www.pedigreequery.com/mores+wells
母は芝16ハロンのクイーンズヴァーズ(英G3)の勝ち馬。これに日本では実績のない Sadler's Wells が父ですから、Shirley Heights とのニックスがあるといっても、日本の馬場に対応できるような軽快なスピードは期待できません。6歳秋ですから上がり目もないでしょう。
■9番 ティモス Timos(仏・牡5歳)
http://www.pedigreequery.com/timos
ドイツ血統と Sadler's Wells の相性の良さについては当ブログでも何度か記してきました。本馬は2代父が Sadler's Wells、母の父が Surumu。このパターンは Hurricane Run(凱旋門賞、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS、愛ダービー)と同じです。ただ、地元フランスでナカヤマフェスタ、ヴィウトワールピサに先着できなかったこの馬が、アウェーで逆転するという計算は成り立ちません。
■12番 ジョシュアツリー Joshua Tree(愛・牡3歳)
http://www.pedigreequery.com/joshua+tree3
父 Montjeu は軽快なスピードに欠けるため、日本ではサトノコクオーのように芝よりもダート向きの産駒が目立ちます。母方に Shirley Heights が入る Montjeu 産駒なので、Fame and Glory(愛ダービー、コロネーション、他)と似ています。ただ、血統的に日本向きではないので、空き巣のカナダG1を勝った程度の実力では厳しいでしょう。
■15番 フィフティープルーフ Fifty Proof(加・セン4歳)
http://www.pedigreequery.com/fifty+proof
父 Whiskey Wisdom は、Skip Away が勝った97年のBCクラシックに5戦全勝の成績を引っ提げて挑戦したものの4着(3位入線も降着)。このレースを最後に引退し、カナダで供用されました。サンライズプリンス(ニュージーランドT)の母メインリーは Whiskey Wisdom の全妹です。低レベルだったカナディアン国際Sで5着ですから力が足りないでしょう。
■17番 マリヌス Marinous(仏・牡4歳)
http://www.pedigreequery.com/marinous
父 Numerous はジェイドロバリーの全弟にあたるマイラー型種牡馬。母の父 Panoramic の「Rainbow Quest×Roberto」というスタミナによって中長距離への対応力を獲得しました。「ジェイドロバリー×オペラハウス」のマームードイモンが長距離を苦にしないのと同じです。Nijinsky と Blushing Groom のニックスを持つなど全体的な配合も悪くなく、凱旋門賞6着という成績も良好なので、外国招待馬のなかでは最先着する可能性が高いと思います。ただ、馬券になるかというと微妙ですね。
■18番 シリュスデゼーグル Cirrus Des Aigles(仏・セン4歳)
http://www.pedigreequery.com/cirrus+des+aigles
父 Even Top は英2000ギニーの2着馬。種牡馬としてはまったくの無名です。昨年はコンセイユドパリ賞(仏G2・芝2400m)を勝って臨んだ香港ヴァーズ(G1・芝2400m)で5着。今年はコンセイユドパリ賞2着のあとここに臨んできました。香港ヴァースで5着程度の実力では厳しいでしょう。日本の馬場はこなすと思いますが、決め手のない馬なので上位進出は望み薄です。
【結論】
今年の日本勢の層の厚さは過去最高レベル。それに対し、外国招待馬は頭数こそ多いもののレベルはイマイチ。苦戦必至でしょう。マリヌスが大駆けしたときに掲示板に載れるかどうか、といったところですね。
ジャパンカップの外国招待馬のレベル低下が心配ですね。個人的にヨーロッパやアメリカの競馬全体のレベルも落ちている(世界を見ても核となる種牡馬がいない)と思っているので、モンジュークラスの馬は期待していませんが、それにしても寂しいメンバーに感じます。ジャパンカップに高い実績を持った外国馬(実績=能力ではないですが)が来ない理由は何故だと思いますか?自分の中では、芝の高速化(堅い馬場もこなせる馬以外は苦戦→勝つ確率が低いなら来日しない)が一番の原因ではないかと感じています。他にもBCとの間隔の短さや、欧州馬場に近い香港国際競走の魅力もあるかと思います。栗山さんの考えを聞かせてください。
投稿: ユウ | 2010年11月27日 (土) 18:34
一番大きいのは、おっしゃるとおり、勝てる見込みが薄いのにわざわざ遠い日本まで行きたくない、ということでしょうね。過去に海外からのビッグネームがたくさんやってきましたが、ほとんど馬券になった試しがありません。日本のファンはそれを知っています。同じように、海外の競馬関係者も分かっています。馬場が速いのは昔からなので、その認識が一般化し、適性が定かでない馬をおいそれと遠征させなくなったということでしょうね。
これは私の考えではないのですが、10年ほど前に合田直弘さんから「香港競馬には“顔”で馬を呼べる人がいる」というお話をうかがって印象に残りました。招待馬を募る際に、海外の馬主や厩舎に顔が利く方がその役にあたれば非常に有利なわけです。香港にはそういう人材がいて、しかもホスピタリティが素晴らしいので、日本は負けてしまうというお話でした。日本と香港では検疫ルールにも差があります。
もちろん、ここに書いたことなどはJRAはとっくに承知していることでしょうから、今後のがんばりに期待したいですね。
投稿: 栗山求 | 2010年11月27日 (土) 23:30