ナカヤマフェスタ、凱旋門賞2着
フォルスストレートの出口でナカヤマフェスタが挟まれたシーンは、競馬場のスクリーンにもはっきり映し出されました。日本から応援に駆けつけたファンから悲鳴があがりました。万事休す――。しかし、ここからの頑張りは周知のとおり。信じられないものを見たという感じですね。
目の前を Workforce とナカヤマフェスタが叩き合って通り過ぎたときは、ビデオカメラを持つ手が軽く震えました。幸い、ソニーの手ブレ補正機能は優秀なので、動画に影響はありませんでしたが^^
9月28日のエントリーに記したように、「2着」という成績は、ヨーロッパ以外でデビューした馬のなかでは最高着順。77年の Balmerino と99年のエルコンドルパサーに並びます。正直なところ、レース前は5着以内に入れば快挙ではないかと思っていました。昨日のエントリーに「本番は20頭立てなので、道悪巧者の伏兵が飛んでくる可能性も十分あるでしょう」と書いたあと、じつは「それが日本馬なら最高なのですが」と付け加えたのですが、すぐに消しました。さすがに今回の馬場状態でヨーロッパの一線級に対抗するのは難儀だろうと考えたからです。
レース当日のパリは気温25度、晴れ。馬場状態は回復しつつありました。前日に比べて馬が走ったときに芝が掘り返されて飛ぶ量は明らかに減っていました。仮柵が外された効果もあったと思います。
しかし、外部の好走要因だけでこの成績は残せません。ナカヤマフェスタの母が持つ「His Majesty 2×4」、これがヨーロッパの一線級と互角以上に渡り合ったパワーと底力の源泉でしょう。His Majesty は Graustark の全弟にあたる名血で米リーディングサイアーです。その父 Ribot は凱旋門賞を2連覇した歴史的名馬。パワーと底力に関してずば抜けたものを伝えます。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006102424/
勝った Workforce については、6月8日のエントリー「仏ダービー、英ダービー」に記しています。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/06/post-f907.html
Workforce は2代父が Kingmambo で、母の父が Sadler's Wells。これは Kingmambo 系の定番のニックスです。Nureyev と Sadler's Wells の4分の3同血クロス(4×2)がその活力の鍵です。
http://www.pedigreequery.com/workforce
┌ Northern Dancer
Nureyev ――――┤
└ Special
┌ Northern Dancer
Sadler's Wells ┤
└○┐
└ Special
この配合パターンから最初に誕生した世界的名馬が、じつは渡辺隆さんが配合をデザインしたエルコンドルパサーでした。エルコンドルパサーが出現したあと、雨後の筍のように同パターンの配合馬が誕生し、それらは欧米のG1を勝ちまくっていきました。Workforce の生産者がこれを知らなかったわけはないでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1995108742/
┌ Kingmambo
┌○┘
Workforce ―――――┤ ┌ Sadler's Wells
└○┘
┌ Kiggmambo
エルコンドルパサー ┤ ┌ Sadler's Wells
└○┘
いうまでもなく、11年前に凱旋門賞で2着となったエルコンドルパサーは、ナカヤマフェスタと同じ二ノ宮調教師&蛯名騎手のコンビでした。今回、日本調教馬初の凱旋門賞制覇の夢は、皮肉にも、かつて陣営が手塩にかけた馬と同パターンの配合馬によって打ち砕かれたのです。なんという歴史のめぐり合わせでしょうか。
凱旋門賞観戦記は競馬総合チャンネルをご覧くださいませ。月曜のお昼ごろに公開予定です。
いやぁ、さすがに日本メーカーの手ブレ補正は優秀ですね…じゃなくって(笑)。
アップダウンの大きい1日でした。
レッドディザイアの余裕綽々のプレップレースに日本馬もやるやん!と高揚し、スプリンターズSでは香港の第二グループ馬にまんまと逃げ切られ唖然呆然…
深夜に思わず声を上げる叩き合い。
あの馬場で団子で進む馬のつばぜり合い、世界有数のレースに大興奮。
ワークフォースが抜けてくるとき、ヴィクトワールピサがもがいているのが画面に映り、あぁアカンか…とワークの隣によく見る勝負服!淡い期待を持っていたものの、まさかまさかの激走。ステイゴールドの仔がロンシャンであと一歩とは感無量です。
ほんとに懺悔したい。
挑戦することが、これほど尊く、素晴らしいと久々に思えました。
今回は栗山さん始め皆様のレクチャーのおかげで、凱旋門賞を今まで以上に楽しめました。ありがとうございます!
日本のニュースなどでもかなり報道されています。
競馬ファンとして、胸を張れる思いに、感謝です。
観戦記も楽しみにしてます。
投稿: ダンディ“ゲッツ”さっさん | 2010年10月 4日 (月) 10:21
父内国産馬がこういう成績を残してくれるのは、外国産馬であったエルコンドルパサーの時よりも嬉しいです。
投稿: キングトップラン | 2010年10月 4日 (月) 11:07
>ダンディ“ゲッツ”さっさん様
いまさらこんなことをいうのもなんですが、競馬ってなんておもしろいんだろう、とあらためて実感する週末でした。
「挑戦することが、これほど尊く、素晴らしいと久々に思えました。」という言葉に同意します。リスクを背負う姿勢がいいですね。
日本でどんな報道がなされているのか、帰ってからが楽しみです。
投稿: 栗山求 | 2010年10月 4日 (月) 11:21
>キングトップラン様
レーシングプログラムを見ると、凱旋門賞の出走馬はそのほとんどが世界に名だたる有名牧場出身なのですが、ナカヤマフェスタは「Arai Bokujo」ですから痛快です。
投稿: 栗山求 | 2010年10月 4日 (月) 11:30
流石に嬉しくて今日は東スポを買って再度読んでしまいました。蛯名騎手は、「横を見ると Workforce は遊んでいた。少し前に出ようとするとそれよりも前に出た。3.5キロ差が響いたのかも」と書いていました。それにしても今回は頑張った。スプリンターズステークスの結果は残念ですが、中距離における日本の馬のレベルの高さを証明してくれて嬉しい限りです。レッドデザイアも頑張ってほしいです。
投稿: Bucchi | 2010年10月 4日 (月) 20:21
キングジョージの Workforce は、陣営も「なんで負けたかよく分からん」ということだったらしいですが、あれが実力ではなかったということですね。あの競り合いで遊んでいたとは……凄いですね。キングジョージで負けて凱旋門賞に直行して勝ったのは、Tantieme、Rainbow Quest に次いで3例目だったと思います。マイケル・スタウト恐るべし!
投稿: 栗山求 | 2010年10月 4日 (月) 22:57