2024年5月

      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

« 土曜日のロンシャン | メイン | 「Tzukinokero!」 »

2010年10月 4日 (月)

ナカヤマフェスタ、凱旋門賞2着

フォルスストレートの出口でナカヤマフェスタが挟まれたシーンは、競馬場のスクリーンにもはっきり映し出されました。日本から応援に駆けつけたファンから悲鳴があがりました。万事休す――。しかし、ここからの頑張りは周知のとおり。信じられないものを見たという感じですね。

目の前を Workforce とナカヤマフェスタが叩き合って通り過ぎたときは、ビデオカメラを持つ手が軽く震えました。幸い、ソニーの手ブレ補正機能は優秀なので、動画に影響はありませんでしたが^^

9月28日のエントリーに記したように、「2着」という成績は、ヨーロッパ以外でデビューした馬のなかでは最高着順。77年の Balmerino と99年のエルコンドルパサーに並びます。正直なところ、レース前は5着以内に入れば快挙ではないかと思っていました。昨日のエントリーに「本番は20頭立てなので、道悪巧者の伏兵が飛んでくる可能性も十分あるでしょう」と書いたあと、じつは「それが日本馬なら最高なのですが」と付け加えたのですが、すぐに消しました。さすがに今回の馬場状態でヨーロッパの一線級に対抗するのは難儀だろうと考えたからです。

レース当日のパリは気温25度、晴れ。馬場状態は回復しつつありました。前日に比べて馬が走ったときに芝が掘り返されて飛ぶ量は明らかに減っていました。仮柵が外された効果もあったと思います。

しかし、外部の好走要因だけでこの成績は残せません。ナカヤマフェスタの母が持つ「His Majesty 2×4」、これがヨーロッパの一線級と互角以上に渡り合ったパワーと底力の源泉でしょう。His Majesty は Graustark の全弟にあたる名血で米リーディングサイアーです。その父 Ribot は凱旋門賞を2連覇した歴史的名馬。パワーと底力に関してずば抜けたものを伝えます。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006102424/

勝った Workforce については、6月8日のエントリー「仏ダービー、英ダービー」に記しています。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/06/post-f907.html

Workforce は2代父が Kingmambo で、母の父が Sadler's Wells。これは Kingmambo 系の定番のニックスです。Nureyev と Sadler's Wells の4分の3同血クロス(4×2)がその活力の鍵です。
http://www.pedigreequery.com/workforce

        ┌ Northern Dancer
Nureyev ――――┤
        └ Special

        ┌ Northern Dancer
Sadler's Wells ┤
        └○┐
          └ Special

この配合パターンから最初に誕生した世界的名馬が、じつは渡辺隆さんが配合をデザインしたエルコンドルパサーでした。エルコンドルパサーが出現したあと、雨後の筍のように同パターンの配合馬が誕生し、それらは欧米のG1を勝ちまくっていきました。Workforce の生産者がこれを知らなかったわけはないでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1995108742/

            ┌ Kingmambo
          ┌○┘
Workforce ―――――┤ ┌ Sadler's Wells
          └○┘

          ┌ Kiggmambo
エルコンドルパサー ┤ ┌ Sadler's Wells
          └○┘

いうまでもなく、11年前に凱旋門賞で2着となったエルコンドルパサーは、ナカヤマフェスタと同じ二ノ宮調教師&蛯名騎手のコンビでした。今回、日本調教馬初の凱旋門賞制覇の夢は、皮肉にも、かつて陣営が手塩にかけた馬と同パターンの配合馬によって打ち砕かれたのです。なんという歴史のめぐり合わせでしょうか。

凱旋門賞観戦記は競馬総合チャンネルをご覧くださいませ。月曜のお昼ごろに公開予定です。

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://bb.lekumo.jp/t/trackback/427673/25169567

ナカヤマフェスタ、凱旋門賞2着を参照しているブログ:

コメント

いやぁ、さすがに日本メーカーの手ブレ補正は優秀ですね…じゃなくって(笑)。
アップダウンの大きい1日でした。
レッドディザイアの余裕綽々のプレップレースに日本馬もやるやん!と高揚し、スプリンターズSでは香港の第二グループ馬にまんまと逃げ切られ唖然呆然…
深夜に思わず声を上げる叩き合い。
あの馬場で団子で進む馬のつばぜり合い、世界有数のレースに大興奮。
ワークフォースが抜けてくるとき、ヴィクトワールピサがもがいているのが画面に映り、あぁアカンか…とワークの隣によく見る勝負服!淡い期待を持っていたものの、まさかまさかの激走。ステイゴールドの仔がロンシャンであと一歩とは感無量です。

ほんとに懺悔したい。
挑戦することが、これほど尊く、素晴らしいと久々に思えました。

今回は栗山さん始め皆様のレクチャーのおかげで、凱旋門賞を今まで以上に楽しめました。ありがとうございます!

日本のニュースなどでもかなり報道されています。
競馬ファンとして、胸を張れる思いに、感謝です。

観戦記も楽しみにしてます。

父内国産馬がこういう成績を残してくれるのは、外国産馬であったエルコンドルパサーの時よりも嬉しいです。

>ダンディ“ゲッツ”さっさん様

いまさらこんなことをいうのもなんですが、競馬ってなんておもしろいんだろう、とあらためて実感する週末でした。

「挑戦することが、これほど尊く、素晴らしいと久々に思えました。」という言葉に同意します。リスクを背負う姿勢がいいですね。

日本でどんな報道がなされているのか、帰ってからが楽しみです。

>キングトップラン様

レーシングプログラムを見ると、凱旋門賞の出走馬はそのほとんどが世界に名だたる有名牧場出身なのですが、ナカヤマフェスタは「Arai Bokujo」ですから痛快です。

流石に嬉しくて今日は東スポを買って再度読んでしまいました。蛯名騎手は、「横を見ると Workforce は遊んでいた。少し前に出ようとするとそれよりも前に出た。3.5キロ差が響いたのかも」と書いていました。それにしても今回は頑張った。スプリンターズステークスの結果は残念ですが、中距離における日本の馬のレベルの高さを証明してくれて嬉しい限りです。レッドデザイアも頑張ってほしいです。

キングジョージの Workforce は、陣営も「なんで負けたかよく分からん」ということだったらしいですが、あれが実力ではなかったということですね。あの競り合いで遊んでいたとは……凄いですね。キングジョージで負けて凱旋門賞に直行して勝ったのは、Tantieme、Rainbow Quest に次いで3例目だったと思います。マイケル・スタウト恐るべし!

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!