ダービーダン方式の至宝 Dynaformer(3)
ジョン・W・ガルブレイスは、史上初めてケンタッキーダービーと英ダービーを制覇したオーナーブリーダーです。
ケンタッキーダービーはシャトーゲイと Proud Clarion で、英ダービーは Roberto で制しています。
http://www.pedigreequery.com/chateaugay
http://www.pedigreequery.com/proud+clarion
ガルブレイスは、彼の牧場のスタッドマネージャーであるオリン・ジェントリーに生産馬の配合デザインを一任していました。ですから、ダービーダンファームが生み出した名馬は、すべてオリン・ジェントリーが配合したものです。
伝説的な配合研究家である彼は、ダービーダンファームに雇われる以前、アイドルアワーストックファームで働いていた時代に、La Troienne のファミリーを育てました。現代アメリカ血統の基礎はオリン・ジェントリーが築き上げたといっても過言ではありません。
Roberto は Royal Charger≒Nasrullah 3×3、Sir Gallahad=Bull Dog 4×4・6、Blue Larkspur 4×4という父母相似配合の傑作で、オリン・ジェントリーは驚くべきことに、母 Bramalea が生まれる以前からこの配合をイメージしていた、と語っています。スタミナと底力に秀でたフランス産の Sardanapale をベースに母 Bramalea を作り、その主要部分をクロスさせて父母相似配合を作りたい、という大きな方針にしたがって、現実の材料を選択して行ったということでしょう。
http://www.pedigreequery.com/roberto
Roberto は72年の英ダービー(G1)を制したほか、同年夏のベンソン&ヘッジズゴールドC(英G1)では、それまで15戦負け知らずだった Brigadier Gerard に初めて土をつけてレコード勝ちを収めました。ムラ馬ではありましたがハマったときは強く、スピード、スタミナ、底力、いずれにおいてもハイレベルなものを持っていました。馬名についてはよく知られているとおり、Roberto がダービーを勝った年の大晦日に飛行機事故で非業の死を遂げたロベルト・クレメンテ選手(メジャーリーグのピッツバーグパイレーツで活躍した名選手)に由来します。ジョン・W・ガルブレイスはピッツバーグパイレーツのオーナーでもありました。
Roberto はダービーダンファームに繋養され、種牡馬として大成功を収めます。ダービーダンファームが生産した Roberto 系の活躍馬には、かつて繋養していた Ribot の血を持つものが目立ちました。このパターンは「ダービーダン方式」とでもいうべきもので、ヨーロッパで活躍した馬をベースとしているだけにスタミナと底力に優れ、大レースに強いという特長がありました。(続く)
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血 統 屋 http://www.miesque.com/
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度々お邪魔します。
偉大な馬産家のもとには、劉備玄徳と諸葛孔明のような天才的な配合研究家がいるものですね。
オリン・ジェントリーどこまで見抜いてたのかというぐらいの慧眼には驚くばかりです。
シリーズもあと2回ぐらいでしょうか、最後まで楽しみに待っています。
投稿: TACO | 2011年8月27日 (土) 15:00
名生産者の陰には配合のプロフェッショナルがいることは珍しくなく、ダービー卿のウォルター・オルストンや、アガ・カーン3世のヴィリエ中佐などが有名ですね。オルストンについては昨年12月29~31日のエントリーで触れました。
当初は3回ぐらいの予定だったのですが、書いているうちに延びてしまい……。来週中にはフィニッシュします。
投稿: 栗山求 | 2011年8月28日 (日) 14:38