NHKマイルCはグランプリボス
日曜日の東京競馬場は夏でした。ビールを飲みたい願望を抑えつつ買った馬券は……残念ながらハズレ。しかし、直線で抜け出してきた○グランプリボス(1番人気)が豪快でかっこよく、勝ち負けを忘れて爽快な気分を味わわせてもらいました。こんなにいい馬だったのかと感心しました。
http://www.youtube.com/watch?v=VmA5gBwhnzc
昨年秋、リアルインパクトを破って京王杯2歳S(G2)を勝った際のレースぶりが鮮やかだったので、左回りは相当上手いのではないかという目算はありました。今回は馬場が良かったこともあると思いますが、当時に比べてフットワークが大きくなっているような気がしました。母の父にサンデーサイレンスを持つサクラバクシンオー産駒は、マイルあたりまでこなしてしまうものが少なくないのですが、それはサンデーがスタミナに関与しているというより、伸びのあるフットワークを伝えるからではないかという気がします。
配合的には、いくつかあるサクラバクシンオーの成功パターンには当てはまりません。サンクスノート(京王杯スプリングC)と似ている、という指摘ができる程度です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103388/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2005103146/
┌ サクラバクシンオー
グランプリボス ―┤ ┌ Halo
│ ┌○┘
└○┤ ┌ Secretariat
└○┘
┌ サクラバクシンオー
サンクスノート ―┤ ┌ Halo
└○┤ ┌ Secretariat
└○┘
サクラバクシンオーがマイルG1を2勝するような産駒を出す、ということ自体、これまでの常識を破ることです。常識外の大物がこれまでの常識的な成功パターンから誕生しなかった、ということはなんとなく理解できるところです。
何事もなければ次走はイギリス遠征でしょう。ロイヤルアスコット初日の6月14日に組まれているセントジェームズパレスS(G1・芝8f)。英2000ギニー(G1・芝8f)を6馬身差で逃げ切った怪物 Frankel(6戦全勝)も出走を予定しています。3代父テスコボーイが故国イギリスを離れ日本の土を踏んだのは1967年。それから44年を経てこの系統は里帰りを果たすことになります。
2着△コティリオン(2番人気)、3着▲リアルインパクト(4番人気)はディープインパクト産駒。先週土曜日のエントリーでは同産駒について「高速ラップが平均的に刻まれるマイル戦は向いていないような気もします」と書いたのですが、細かい適性など関係なく馬が強いですね。スタートダッシュがつかなかったコティリオンはゲートが開いて5秒でレースが終わったと思いましたが、上がり33秒4の鬼脚で2着確保。強いです。先週はディープインパクト産駒が7勝。手が付けられません。
◎エーシンジャッカル(3番人気)は9着。これはよく分かりません。もともとこの程度の実力だったのかもしれませんが……。
グランプリボスは、サクラバクシンオーのいい後継馬になりそうですね。体型的には、BMSのサンデーの要素もかなり強く出ており、そのへんが距離の融通性につながっているのかもしれません。
この後、海外遠征でフランケルに挑戦なんていう話もあるようですが、ぜひ見てみたいと思う反面、今日の馬体はギリギリの仕上げだったので、休養が無難かなと思わなくもありません。
2着のコティリオンは、もう少しゲートの出が良ければと思いましたが、ともかく小牧騎手との出会いで運命が開けた感じです。コティリオンのように道中の無駄な動きで脚をなし崩しに使ってしまうタイプには、小牧騎手はぴったりのパートナーではないでしょうか。
ひとつ気になったのは、橋口調教師が、ハーツクライに似てきたというコメントをされていたことです。
慌ててコティリオンの画像とハーツクライのダービーの頃の画像を見較べたところ、想像以上に似てきているのに驚かされました。コティリオンは、セレクトセールの高額落札馬だけあって、以前から均整の取れた好馬体ではありましたが、ハーツクライに似ているかというと、少なくともPOG本の頃には、あまり似ていなかったと言わざるをえません。
ディープ産駒には、マルセリーナやトーセンラーのように、この時期に馬の形が根本から変化するような成長の仕方をする馬が見うけられますが、コティリオンもそうした1頭と言えそうですね。
賞金が加算できたので、ダービーでも楽しみです。
リアルインパクトは、グランプリボス同様、ギリギリの仕上げだったと思います。ますます胴長な感じで、背中のラインにはマンノウォー系の影響が出てきたような気がします。ボールドルーラー系やミスプロ系が席捲する以前のオールドファッションな米国産馬という雰囲気もあって、アメリカのダート競馬にも挑戦させてみたい馬ですね。
ただ、クラブサイドはダービー挑戦を希望しているという噂もあり、堀師の判断が注目されるところです。
追伸
今年は震災の影響で、各陣営ともローテーションが大きく乱れました。
有力馬の中には、トライアルをパスしたり、あくまでも一叩きで負けてもかまわないといった姿勢の馬も多かったように思います。
それに対して、トライアル一発で出走権を確保したり、裏街道で賞金を稼いでクラシックに挑戦する上がり馬が、例年よりも派手に活躍して注目されました。
しかし、皐月賞とNHKマイルの牡馬路線に限れば、本番のレースでは実績馬が上位を独占し、上がり馬は全く通用しませんでした。例年ならば、実績馬もトライアルにかなり良い状態で参戦するので、それを押しのけて出走権を確保した上がり馬は、それなりに本番でも通用するのですが、今年はかなり状況が違うようです。
今年に限っては、上がり馬の取捨は慎重に考えないと危険かもしれませんね。
追々伸
栗山さんのオルフェーブルの皐月賞回顧記事で、ピッチ走法の話題が出ていましたが、プリンシパルSで上位に来たディープ産駒は、皆やや小柄でピッチ走法寄りの走りの馬だったように思います。
ディープ産駒は、栗山さんが指摘されるように、トビが大きく、コーナリングに難があり、エンジン全開になるまでに時間が掛かる馬が多いのですが、そうしたタイプのターゲットマシンは、プリンシパルSのような渋った馬場には対応できませんでした。
しかし、トーセンレーヴやダノンシャークは、以前からコーナーワークに問題が無く、エンジンの掛かりも速いタイプで、走りもピッチ走法寄りです。
プリンシパルSや皐月賞の馬場には、こうしたタイプの馬のほうが適していたということでしょうか。
ハーツクライ(ダービー)
http://www.keibado.com/keibabook/040531/photo01.html
コティリオン(NHKマイル)
http://www.keibado.com/keibabook/110509/photo06.html
投稿: toku | 2011年5月 9日 (月) 13:28
グランプリボスが英国遠征で戦果を挙げれば、プリンスリーギフト~テスコボーイの血がまだ日本で活力を持ち続けている証明になりますね。
かつて、『種牡馬の墓場』と揶揄された日入づる国の住人としては誇らしい気持ちになります。
血を繋いで発展させてきた、ホースマンの先人に感謝、感動をさせてくれる。
まさにブラッドスポーツたる競馬の面目躍如たるものがあります。
そんな面に触れることの出来た私自身、血統の奥深さ、面白さに目覚めた僥倖を今噛み締めています。
ありがとうございます!
グランプリボスには、フランケルにアッと言わせる快走を期待してます。
投稿: ダンディ“ゲッツ”さっさん | 2011年5月 9日 (月) 20:02
>toku 様
1着グランプリボスについて、ノーザンファーム代表の吉田勝己氏は「馬体が抜けていい。これだけいい筋肉をしている馬は、めったにいるものじゃない。バクシンオーの後継種牡馬はこれです」(『Gallop Online』)とコメントしました。いずれ社台スタリオンステーションで種牡馬入りするのでしょう。
3着リアルインパクトは稽古の動きが抜群で、聞くところによるとレース前に内田博幸騎手が相当色気を持っていたようです。今回は道中の不利で力を出し切れませんでしたが、次走以降も引き続き期待できそうです。
プリンシパルSと皐月賞の馬場状態がどの程度馬の走りに影響したのかは分かりませんが、一般論として、大トビの馬は下が悪いとバランスを崩してしまうことが多いですし、ピッチ走法の馬はその点上手ですね。ピッチ走法の馬が上位に来るというケースは馬場状態の良しあしのひとつの指標にはなると思います。
投稿: 栗山求 | 2011年5月10日 (火) 07:03
>ダンディ“ゲッツ”さっさん様
テスコボーイの血がイギリスに里帰りをすれば、まさに偉業です。素晴らしいとしか言いようがありません。母がテスコボーイ2×4のコスモバルク(10歳)は以前シンガポールまで行ったのですが、このほど現役復帰してアイルランドへ渡るプランが浮上しているようですね。こちらも注目したいです。そういえば母方にテスコボーイの血が入るウオッカはひと足先にアイルランドで繁殖生活を送っていますね。
投稿: 栗山求 | 2011年5月10日 (火) 07:14