ニエル賞、フォワ賞
ヴィクトワールピサ4着、ナカヤマフェスタ2着は、前哨戦としてはまずまずだったと思います。
まず3歳馬のニエル賞。勝った Behkabad、2着 Planteur は、本番の凱旋門賞でも勝ち負けになるであろう強豪です。下馬評どおりワンツーフィニッシュを決めたわけですが、ヴィクトワールピサも残り300mぐらいで外から並びかけるシーンがありました。能力的にお話にならない馬であれば、ああいった見せ場を作ることはできません。それ以前のフォルスストレートあたりから手が動いて追走に手一杯になるはずです。
Behkabad と Planteur は、少なくともロンシャンの芝2400mではかなり強い馬です。私は同じ舞台設定でこの2頭を負かせる馬はほとんどいないと思います。ひょっとしたら他にいないかもしれません。レースが終わり、現在の凱旋門賞のアンティポストを見ると、イギリスの主要ブックメーカー14社中、Behkabad を1番人気に推す社は8つ、Behkabad と Fame and Glory を同オッズとする社は4つ、Fame and Glory を1番人気に推す社は2つです。Behkabad が1番人気に躍り出たわけです。その強豪を相手に直線半ばまで見せ場を作ったわけですから、悲観するような内容ではなかったと思います。
最後に失速した理由として、武豊騎手は「レース間隔が開いた」ことを挙げています。それならば本番へ向けて期待が持てると思います。遠い日本から遠征して初物尽くしだったわけですから、今回の敗戦を糧として前進できるはずです。
ただ、絶好の手応えできて失速するというのは、距離に問題があるケースも多いので、仮にそうした点が絡んでいるのだとすれば厄介です。日本で走る分には2400mに問題はないと思います。しかし、ヨーロッパの重い馬場ではどうなのか……ということですね。このあたりは杞憂であってほしいものです。
次は古馬によるフォワ賞。戦前から書いているように出走メンバーの質はニエル賞には及びません。今回勝った Duncan はうまく乗ったという感じで、凱旋門賞で人気になることはないでしょう。事実、レースを終えた後のアンティポストでも21~26倍と伏兵の1頭に過ぎません。
ナカヤマフェスタの2着は本番前の試走としては十分な内容だったと思います。しかし、レースレベルに疑問符がつくことも確かなので、これで凱旋門賞の有力候補になったということはありません。Duncan と同じくあくまでもアップセット狙いの伏兵陣、という位置づけでしょう。
「かなり太い」という二ノ宮調教師のコメントからすると大きな上積みがありそうですね。11年前のエルコンドルパサー(二ノ宮厩舎所属)は、遠征初戦のイスパーン賞(G1)で2着と敗れたあと、2戦目のサンクルー大賞典(G1)で見違えるような強さを発揮し、2馬身半差で完勝しました。陣営は、今回のレースはまったくの試走と割り切っていたでしょうから、レースレベルとは関係なしに、本番は期待できると思います。幸いなことに勝ち時計が遅かったので消耗も少ないはずです。母ディアウィンクは Ribot 系の His Majesty 2×4というクロスを持ち、ヨーロッパで大成功しているデインヒルの血が入ります。パワーを必要とするヨーロッパの馬場によくフィットしていますね。
凱旋門賞のアンティポストは、ヴィクトワールピサが26倍、ナカヤマフェスタが26~34倍です。イギリスのブックメーカーは両馬をほぼ同格と扱っています。もちろん、2頭とも伏兵評価なので、厳密に力量比較しているわけではなく、だいたいこのぐらい、というおおざっぱなものでしょう。競馬新聞の印で表現するとしたら、2頭とも△が1~2個つくぐらいといった感じですね。
今回の衛星生中継に関して、レース以外で良かったなと思う点は、アガ・カーン四世殿下(Behkabad のオーナーブリーダー)のお姿をたっぷり拝見できたことと、イギリス競馬界の名物男ジョン・マクリリック氏がほんの数秒間画面に映ったことです。マクリリック氏はジョン・レノンと同い年で今年70歳を迎えましたが、相変わらずド派手ないでたちでしたね~。10年ぐらい前まではジャパンCの取材に毎年いらっしゃっていたはずです。最近はお姿をお見かけしません。
この動画はけっこう笑えます。
http://www.youtube.com/watch?v=UXAK-2TQ_bA
さっきYoutubeで二つのレースとジョン・マクリリック氏を見ました。
ヴィクトワールピサは距離なんでしょうか。小さな画面では判りにくかったですが、手前を替えなかったとのことでしたので、それならばまだ期待出来そうですね。
ナカヤマフェスタは、ペースメーカーがいなかったこともあり、タイムは云々するレベルではなさそうですが、レース前はかなり大立ち回りしてた(笑)そうですし、太かったとの二ノ宮調教師のコメント、意外性を発揮する馬ですから、斤量が増えても案外やれそうですね。
マクリリック氏…他の映像も見ましたが、例によって英語はほとんど判らないですが、名物記者?役者?
見てるだけで面白いですね。これらを見てると、やはり文化の厚みを感じます。
凱旋門賞も楽しめそうです。ありがとうございました。
投稿: ダンディ“ゲッツ”さっさん | 2010年9月13日 (月) 09:09
角居チームも二ノ宮チームも遠征競馬に関してはプロフェッショナルですから、本番へ向けてキッチリ馬を作ってくるのではないでしょうか。この点に関しては心配していません。前哨戦を勝つための遠征ではないので、今度はピークに持っていくはずです。アクシデントなく10月3日を迎えてほしいものです。
マクリリック氏はお客さんとの場外乱闘を含めて芸風というか、そういう破天荒なキャラが愛されている感じですね。昔はその風貌だでけ「イギリスの佐藤洋一郎」と言われていた記憶が(笑)。おっしゃるとおり「文化の厚み」という言葉がぴったり来ます。
投稿: 栗山求 | 2010年9月13日 (月) 14:15