ペルーサの“弱点”
昨年の赤本のクロスレビューで、デビュー前のペルーサについて「ダートに活路を見出す可能性も」と記しました。これを書いた当時、種牡馬ゼンノロブロイについてやや懐疑的な見方をしていました。母ローミンレイチェルが芝向きとはいえないアメリカ血統で構成されているので、産駒は案外ダートにフィットするのでは、と――。
しかし、ロブロイ産駒がデビューしてみると芝適性に関して問題はなく、ペルーサの新馬戦のレースぶりも大物としかいいようのないものでした。イメージしていた馬とはまったく異なり、力馬っぽさは欠片もありません。均整のとれた馬体と、そこから繰り出す弾むようなフットワーク。まさに“目から鱗”でした。血統背景については3月20日のエントリー「ダービーへ一歩前進、ペルーサ」で触れています。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/03/post-3d05.html
ペルーサがダービーで首位争いをすることは疑う余地がありません。どこからどう見ても名馬です。しかし、弱みがあるとすれば、ここまで一度も負けていないことでしょう。
今年2月4日付の『東京スポーツ』に「魔法のムチ 武邦彦の真実」という連載記事が掲載されました。そこに、往年の名騎手武邦彦さんが、5戦全勝のロングエースで72年の皐月賞に挑んだときの心理が記されています。
「『楽に勝てるやろ』が周囲のムードだった。当然1番人気。でも僕自身は迷いながらの出走だった。
ロングは負けていない弱さがあった。皐月賞までに一つでも黒星を喫していればそこで見えるものがある。課題が見つかる。でも無敗だったがゆえにどこに弱さがあるのかがわからなかった。負ける時のパターンを見いだせずに皐月賞を迎えた。
悪いことに、そんな迷いがレースで馬に伝わってしまった。スタートしてハミをガッチリかんでそのまま折り合いを欠いてしまった。結果はランドプリンスの3着――。
弱さを知ること。何かにチャレンジする際、自分の中にある弱い部分を把握する。それがいかに大事かを痛感した皐月賞だった。
だからダービーは逆に自信満々だった。課題は折り合い面。それさえ注意して乗れば勝てる確信があった。レースはタイテエム、ランドプリンスを見ながら、この2頭よりワンテンポ仕掛けを遅らせてスパートした。今でも当時のビデオを見る時があるんだけど、完璧な騎乗。会心の勝利だったね。」
ここまで楽勝続きのペルーサ。はたして横山典弘騎手はこの馬の“弱点”を把握しているのでしょうか? あるいは、そもそもそんなものは存在しないのでしょうか? ここを難なく勝つようならシンボリルドルフ、ディープインパクトのカテゴリーに含まれる馬でしょう。
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