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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年10月19日 (水)

スピルバーグ、初陣を豪快に差し切る

土曜東京4Rの新馬戦(芝2000m)は、◎スピルバーグ(1番人気)が長い直線を活かして末脚を伸ばし、ゴール直前で差し切りました。
http://www.youtube.com/watch?v=JCxOBrHaXN4

4コーナーで外からマクられ、先を行く3頭から離されたときには終わったかなと思いましたが、そこから盛り返して差し切ったのにはビックリしました。北村宏司騎手によれば直線までハミを取らなかったとのこと。本気を出してからの走りは別馬のようでした。

『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』の予想は◎〇▲で馬単380円、3連単750円的中。予想文を転載します。

「◎スピルバーグは『ディープインパクト×リシウス』という組み合わせ。半兄にフラワーアリー(米G1トラヴァーズSなど重賞4勝)、半姉にブルーミングアレー(G2フローラS-3着)を持っている。母はハイハット≒オリオール4×5で、自身はそれを継続する形でハイペリカム≒オリオール6×6を持つので底力は十分。スピードとスタミナをバランスよく抱えた好配合馬なので、このレースといわず来春のクラシックまで注目したい。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105961/

予想文には「トーセンラー(きさらぎ賞)の全弟」という最も重要な情報をウッカリ書き忘れてしまいました。スミマセン。

母プリンセスオリビアはきわめて優秀な繁殖牝馬なので、配合相手が何であれPOGでは毎年指名候補には入れたくなります。競走馬時代はたいした成績を挙げられませんでしたが、その父 Lycius が送り出した唯一のG1ホース(Hello)と同じ「Lycius×Sadler's Wells」という組み合わせで、両者の相性の良さ、スピードとスタミナの交配でいいとこ取りができたことが繁殖牝馬として成功した最大の要因でしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a010abb/

配合を細かく見ると、(1)ハイハット≒Aureole 4×5という組み合わせのクロス、(2)Goofed 4×4という牝馬クロス、というふたつのポイントがあります。

(1)を図にすると以下のようになります。

       ┌ Hyperion
ハイハット ―┤ ┌ Donatello
       └○┘

       ┌ Hyperion
Aureole ―――┤ ┌ Donatello
       └○┘

80年代の女傑 Time Charter(父が Native Dancer 系で母がハイハット≒Aureole 2×3)を連想させる配合です。予想文に記したとおり、息子のスピルバーグはこれを部分的に継続する形で Hypericum≒Aureole 6×6という4分の3同血クロスを持ちます。スタミナ、底力といった要素を補強しています。

(2)については、「母に名牝の強いクロスがある」という個人的に好きなパターンで、わたしも過去にディープスカイ(母アビは Miss Carmie 4×3)、ストロングリターン(母コートアウトは Smartaire 4×3)などをPOGで指名した経験があるので、その効果については実感しています。

プリンセスオリビアの2代母 Diamond Spring は、名牝 Nobiliary の4分の3同血(父が同じで母が親子)です。

         ┌ Vaguely Noble
Diamond Spring ―┤
         └○┐
           └ Goofed

         ┌ Vaguely Noble
Nobiliary ――――┤
         └ Goofed

Nobiliary は Lyphard の半妹で、現役時代にワシントンDC国際(米G1)、サンタラリ賞(仏G1)を制したほか、英ダービー(G1)に挑戦して2着に食い込む活躍をみせました。つまり、プリンセスオリビアは Goofed が産んだ2頭の傑作、Lyphard と Nobiliary の要素をほぼ含んだ上で、Goofed 4×4という牝馬クロスを持っています。これは好感が持てますね。スピルバーグ自身は Lyphard 4×4なので、母が持つ Goofed のクロスを継続(5×5・5)しています。

このようにスピルバーグは、母プリンセスオリビアが持つ(1)(2)のポイントをいずれも継続しており、配合的によく出来ています。『競馬王のPOG本』の「栗山ノート」で指名し、血統屋の電子書籍『種牡馬別好配合馬リスト ディープインパクト編』でも◎評価でした。電子書籍のほうは共著者の望田潤さんと◎が被った数少ない1頭です。

スケールの大きさを感じさせる勝ち方ではありましたが、一方でまだまだ課題も多いなという印象も受けました。残り3ハロンの地点で13秒3→11秒3とペースアップしたときに、ギアチェンジできずに一瞬置かれ気味になりました。ハミを取っていなかったので仕方がないところではあるものの、ディープインパクト産駒にときどき見られる現象でもあります。心身の成長により、このあたりに対応できる俊敏さが出てくれば、全兄トーセンラー同様の活躍が期待できるでしょう。兄よりも50キロ以上重い490キロという馬格は魅力があります。

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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コメント

栗山先生こんばんは

スピルバーグのデビュー戦は、私もよくあそこから差し切れたなあと感じました。これからも無事に成長してほしいものです。
今週は菊花賞に全兄のトーセンラーが出走しますね。京都の最後の直線で、良馬場ならすごい切れの末脚を繰り出してくれるのではと期待しています。
ディープインパクト産駒は、馬格に恵まれていない産駒がやはり多いですが、今のところディープインパクト自身に似た小柄な産駒のほうが走るのでしょうか?

スピルバーグのラスト1Fの伸びは素晴らしかったのですが、サンデー系の切れ味というよりは、母方の欧州血脈が強く出ているような力で捻じふせる末脚でした。
ディープ的な切れ味の全兄トーセンラーとはタイプが違い、リファールの血の影響が強く出ている印象です。例にあげるのは畏れ多いのですが、ちょっとダンシングブレーヴ的な差し脚のように感じられました(あくまでも、タイプとしてはということです)。
体型も、最近ますますディープに似てきたトーセンラーとは異なり、こちらはリファールに似ているのではないかと思います。
もちろん、この上がりの速い展開を差し切ったわけですから、日本の高速馬場への対応力も高いとは思いますが、欧州の洋芝なども試してみたいタイプですね。
とはいうものの、今回は正味200mしかレースをしていませんし、まだまだ教え込まなければならないことが沢山ありそうな印象で、はたして何時ごろ本格化してくるのかという懸念も少しあります。藤沢師の腕の見せどころかもしれませんね。

スピルバーグ
http://uma-jin.net/pog/body/body.php?hid=2009105961
リファール
http://www.sporthorse-data.com/horse/417680/394/Horse_Lyphard-big.jpg
http://www.sporthorse-data.com/horse/417680/723/Horse_Lyphard-_3big.jpg
トーセンラー
http://www.keibado.com/keibabook/110920/images/pp03.jpg

>ディープエックス様

おはようございます。菊花賞のトーセンラー、楽しみですね。今回のメンバーでオルフェーヴルに先着経験があるのはこの馬だけで、それも京都コースでのことですから、一発があっても不思議ありません。

ディープインパクト産駒はある程度体が大きいほうがいいと思います。これはディープに限らずどの種牡馬においてもそうですが、やはり400キロそこそこの小柄な馬格はマイナス材料ですね。リアルインパクトは500キロ前後、マルセリーナはディープ産駒の牝馬にしては大柄な460キロ台の馬体です。

>toku 様

前半モタついたレースぶりがそう思わせるのかもしれませんが、たしかに兄トーセンラーのようなキリッとした軽さはなく、全体のイメージが厚ぼったい感じはしますね。そのあたりが違いといえば違いでしょう。

レースを使うにつれて学習し、体は絞れ、だんだん鋭利な部分が顔を覗かせてくるのかもしれません。初戦を見たかぎりではかなり荒削りだったので、勝ち負けにこだわらずレースの数を使い、経験のなかで学んでいくのがいいのかなという印象は受けました。もちろん、身近で接しておられる藤沢和雄調教師がベストの選択をされるでしょう。将来が楽しみな馬であることは間違いありません。

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