スピード×スタミナの優位性
昨年12月1日、競馬国際交流協会と日本軽種馬登録協会が合併し、ジャパン・スタッドブック・インターナショナルという組織が誕生しました。そのサイトには「海外競馬情報」というコーナーがあり、世界各国の競馬に関する情報を日本語訳で読むことができます。
2月25日、「スピード重視の種牡馬選びがチャンピオン血統に変化を与える」という記事がアップロードされました。
http://www.jairs.jp/contents/w_news/2011/4/4.html
内容は、現役時代にスプリンターやマイラーだった種牡馬の子が、2000~2400mの大レースを勝つ割合が以前に比べて増えている、というもの。昨年でいえば、ハービンジャー(父 Dansili)、Workforce(父 King's Best)、Twice Over(父 Observatory)、Snow Fairy(父 Intikhab)など10頭が該当します。03年は8頭、93年は7頭でした。
このパターンは、配合に関心を持つ者なら誰でも知っているポピュラーなものです。たとえば、100年近く前に活躍した Phalaris(1913年生)などがそう。現役時代はマイル以下で圧倒的な強さを誇り、引退後、英リーディングサイアーに二度輝いた名種牡馬です。スタミナ豊かな Chaucer を父に持つ繁殖牝馬との間に、Pharos、Fairway、Sickle、Pharamond を出しました。現代の主要父系はことごとく Phalaris から誕生しています。
http://www.pedigreequery.com/pharos
Phalaris(1913)
Pharos(1920)
│ Nearco(1935)
│ Nasrullah(1940)
│ │ Grey Sovereign(1948)
│ │ Bold Ruler(1954)
│ │ Red God(1954)
│ │ Never Bend(1960)
│ Royal Charger(1942)
│ │ Turn-to(1951)
│ │ Hail to Reason(1958)
│ │ Roberto(1969)
│ │ Halo(1969)
│ Nearctic(1954)
│ Northern Dancer(1961)
│ Nijinsky(1967)
│ Lyphard(1969)
│ Nureyev(1977)
│ Danzig(1977)
│ Sadler's Wells(1981)
Sickle(1924)
│ Unbreakable(1935)
│ Polynesian(1942)
│ Native Dancer(1950)
│ Raise a Native(1961)
│ Mr.Prospector(1970)
Fairway(1925)
│ Fair Trial(1934)
│ Petition(1944)
│ Petingo(1965)
Pharamond(1925)
Menow(1935)
Tom Fool(1949)
Buckpasser(1963)
現代の血統シーンで Danzig 系や Mr.Prospector 系が優位に立っているのも、スピード×スタミナの配合パターンが優れたものであることの証明でしょう。
いつも楽しみに拝見させて頂いております。
一点、素朴な疑問なのですが、スタミナ×スピードの成功例は(つまり牡馬と牝馬のタイプをひっくり返した配合での成功例は)、比較的少ないように思われます。これには、どういった要因が考えられますでしょうか。
あるいは、「一代で成功したければ、スピード型種牡馬をつけろ」「牝系を繋ぎたければ、スタミナ型種牡馬をつけろ」といったところなのでしょうか。
投稿: jiumi | 2011年3月16日 (水) 13:51
いつもお読みいただきありがとうございます。スピード×スタミナの優越性は経験則といってしまえばそれまでですが、一般的に優秀なスピードというものはなかなか伝わりづらい、ということがあると思います。種牡馬というものは何百頭、何千頭から選ばれた存在で、そのスピードをもってしてようやくコンスタントに子に伝わります。スピードのある繁殖牝馬といっても、それは種牡馬ほど厳しい淘汰選択を受けたものではない、ということなのかなぁと考えます(優秀な繁殖牝馬はコンスタントに子に伝えるでしょう)。これは仮説と推理の世界ですね。
投稿: 栗山求 | 2011年3月16日 (水) 20:56