安田記念はショウワモダン
G1レースの予想はたいてい、◎を打ちたい馬が複数いて、それをひとつに絞り込むのに苦労します。しかし、今回の安田記念は、◎を打ちたい馬が1頭もいませんでした。妥協に妥協を重ねてもピンとこない馬ばかり。悩んだ末に出した結論は以下のとおり。
◎ビューティーフラッシュ
○トライアンフマーチ
▲ショウワモダン
△リーチザクラウン
△スマイルジャック
△マルカフェニックス
ビューティーフラッシュに◎を打ったのは、冷静に考えて“逃避”だったかなと思います。未知の魅力に「期待する」というより「すがる」感じだったかなと。返し馬を見たときにややフットワークが重いような気がしました。
▲ショウワモダンはパドックで良く見えました。完全に本格化しています。エアジハード産駒は晩成型です。年齢別の連対率は以下のとおり。
2歳 12.2%
3歳 10.3%
4歳 14.7%
5歳 16.8%
6歳 21.0%
7歳~ 16.7%
5歳ぐらいから実が入ってきて、6歳が働き盛り。エアジハードのもう1頭の代表産駒アグネスラズベリが初めて重賞を勝ったのも6歳でした。ショウワモダン、アグネスラズベリはともに母の父にトニービンを持っています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004103318/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2001103044/
┌ エアジハード
ショウワモダン ――┤ ┌ トニービン
└○┘
┌ エアジハード
アグネスラズベリ ―┤ ┌ トニービン
└○┘
父エアジハードは、現役時代に安田記念を勝っているので親子制覇。その父サクラユタカオーは中距離のスピード王で、サクラバクシンオーの父でもあります。エアジハードは、母の父に軽快なロイヤルスキーが入って Nasrullah 4・5×5ですから、父よりも距離適性が短くなってマイルがベストでした。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2001103044/
サクラユタカオーがノーザンテーストとニックスの関係にあった理由は、ノーザンテーストが抱える Hyperion の強いクロス(4×3)が底力をサポートしたからです。エアジハードは、2代母がオークス馬シャダイアイバーで、その父がノーザンテースト。そして Hyperion 5・4×5。このあたりの頑強な血が支えていたからこそ、エアジハードの Nasrullah 4・5×5は活きたのだと思います。底力の裏付けのないスピードはマイルのG1を勝てません。グラスワンダーを差し切った安田記念は、Nasrullah と Hyperion が織りなす名配合の、まさに面目躍如といえるレースだったと思います。
エアジハード産駒の大物2頭は、いずれもトニービン牝馬から誕生しました。トニービンは、Gainsborough-Hyperion のラインを執拗にクロスさせたヨーロッパ血統です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1983109006/
シャダイアイバーとトニービンという同様の構成の血が結びついて大物感を醸し出していくという、オーソドックスな組み立てです。ただ、その一方で、トニービンは母系に潜ると渋さを出すので、アグネスラズベリのように本質的に洋芝向きだったり、ショウワモダンのように道悪の鬼だったりしたわけです。
ショウワモダンに▲を打った理由は2つあります。ここ2走のレースぶりに本格化の気配が見て取れたことがひとつ。もうひとつは、高速馬場の平均して速いフラットなラップが案外合うかもしれないと思ったことです。
道悪に強い馬は、大きく分けてふたつのタイプに分類できると思います。タイムの遅い決着が得意な馬と、一定のペースで粘り強く走る能力に秀でた馬です。前者は時計が速くなると用なしですが、後者は問題ありません。むしろ、一定のペースで粘り強く走れるので、ハイペースに強く、レコードが出るようなレースを得意とします。
約20年前にランニングフリーという馬がいました。道悪巧者で、一定のペースで粘り強く走る能力に秀でた馬でした。ホーリックスがレコード勝ちした89年のジャパンC(勝ちタイム2分22秒2)で、同馬は14番人気ながら7着と頑張り、2分23秒3というタイムを記録しました。当時は、勝ちタイムの別次元ぶりが話題を集めると同時に、「ランニングフリーがこんなタイムで走るなんて!(笑)」とネタにされましたが、非常に学ぶところの多いレースでした。
ショウワモダンはこのタイプでしょう。正確にいえば、本格化するにつれて徐々に速い時計に対応できる能力を身につけていったという感じです。
ただ、弱かったころのイメージをそう簡単に頭からぬぐい去れるものではなく、このメンバーに入って自信をもって本命に推せるほどの根拠は見いだせなかったので、評価は▲どまりでした。とはいえ、暴風のように吹き荒れるサンデー系旋風のなかで、古色蒼然たるテスコボーイ系が勝利を収めたのですから凄いことです。ぜひ種牡馬となって成功してほしいものです。
今月の社台の会報に柏木集保さんが「拡大しつつある影響力」と題して「トニービンを母父に持つ種牡馬がアドマイヤボス、アドマイヤドン、リンカーン、ハーツクライ、サムライハート、トップオブツヨシ、ヴィクトリー・・とどんどん増えている。」と書いていました。母方に入っていい影響を与えるのはやはりGainsborough-Hyperion のラインの影響でしょうか?ショウワモダンも種牡馬になればそれに続きますね。蛇足ですが昨日は頑張ってくれて馬券とれました。ありがとうです。
投稿: Bucchi | 2010年6月 7日 (月) 22:37
高配当馬券おめでとうございます。
父=軽快、母=重厚、というパターンが配合的にいちばん安定感があると思います。母の父にトニービンが入るとたしかに座りがいいですね。むろん Gainsborough-Hyperion の影響もあると思いますよ。イギリスで育まれた最良のクラシック血統ですから底力という点では信頼性があります。これと逆配合の「トニービン系×サンデー」から、今年はジャガーメイルとアプリコットフィズが出ており頑張っています。こちらにも注目しています。
投稿: 栗山求 | 2010年6月 8日 (火) 09:10