「カミもホトケもなしっすよ」
正月早々、トホホのアフター競馬評論家の鬼野谷。
初詣に毎年行っている川崎大師、そこでお祓いを受けるのを恒例にしていた鬼野谷だが、受付時間にわずか1分ばかり間に合わなかっただけで「ダメです」とケンもホロロに門前払いされてしまった。
「正月から縁起でもねぇ」と腹の虫がおさまらない鬼野谷は、賽銭100円の本殿参拝のあと名物の一袋300円のさらし飴を買い、ひとつふたつと口に含みながらゲン直しに正月開催の川崎競馬場までトボトボと歩いて行った。
時刻は3時。9レースの発走3時35分に十分間に合う。ケイバ新聞を見ると「ヨユウノヨッチャン」という馬が出走している。前走0秒3差の②着だ。
川崎大師では余裕がなくてお祓いに間に合わなかった。そのお祓い用に用意した1万円をどうする。単勝4.4倍の3番人気。強欲が常に先行する鬼野谷。今年厄年なのも忘れて、余裕綽々ためらいのカケラも見せずに馬券を購入した。
結果は、もちろん負け。ヨユウノヨッチャン⑥着だった。②着にシゲルヤク(厄)イン。厄を落とせずまたも正月つまずいてしまった。
「もう、金杯しかないっすよ」とドロ沼に落ち込みそうな勢いの鬼野谷。「狙いはイケドラゴンっすね」という。
「タツ年だからドラゴンって言うんじゃないよね」
「ナニ言ってんすか。金杯はキンがテーマっす」
昭和27年にスタートして今年で61回目となる中山金杯。これまで、辰年に行われた金杯は4回あったが、いずれも「金」にちなんだ馬名の馬が連対しているという。
昭和27年壬辰はトキツオー(王はキング)が7番人気②着、昭和39年甲辰はキングダンディーが1番人気②着・スズ(鈴)テンユウが11番人気③着、昭和51年丙辰はアイフル(消費者金融)が4番人気①着、昭和63年戌辰はアイアン(鉄)シローが12番人気①着、そして平成12年庚辰はミスズ(美鈴)シャルダンが2番人気②着。
「イケドラゴンはドラが銅鑼で金がふたつも入ってるっすよ。男らしいっすね」
「?。でも、もう7歳だよ。ちょっとキツイんじゃない」
「ナニ言ってんすか。年を取るってことは、細胞が死んでいくことだけど、魂が老いるわけじゃない、って還暦ロッカーのエイちゃんが言ってるっすよ」と都立の田園調布高校でロックを演っていた鬼野谷が崇拝する矢沢永吉の名語録が飛び出した。
確かに年が明けたからって急に老け込むわけではない。
平成14年1月のG3ガーネットSでブロードアピールが史上初8歳牝馬の平地重賞制覇、平成19年2月のG3小倉大賞典で10番人気のアサカディフィートが9歳で制覇など高齢馬の年明け競馬での活躍が目立つ。
「年齢はともかく、距離適性が問題にならない?」
グレード制開始の昭和59年以降、この2000m金杯で2000mを10回以上走って0~1勝だった馬は[0-1-3-17]と未勝利で、このうち前2走内に重賞戦③着内の好走があった馬を除くと[0-0-2-15]。
「ナニ言ってんすか。ハンデが味方するっすよ」
「軽いからっていいもんじゃないよ。鬼野谷の頭じゃないんだから」
過去20年(H4~23)、金杯でハンデ52㎏以下の軽量馬は[2-3-2-51]、このうち牝馬を除くと[1-1-2-34]と連対例は2回しかない。
「さっきからナニ言ってんすか。その2回が問題なんすよ」
平成6年、ハンデ52㎏7歳ヒダカハヤトが10番人気①着。平成15年ハンデ50㎏4歳トーアメイウンが12番人気②着。良馬とも「逃げ」戦法での大穴だった。
「イケドラゴンも5歳のとき目黒記念で9番人気②着、これハンデ51㎏で逃げ粘ってのモノっすよ。今回も51㎏、逃げてお楽しみっす」
軽さがウリの鬼野谷、厄を落とせるか注目の金杯は1月5日。
高橋学の「消去法シークレット・ファイル」の予想は、netkeiba.comをご覧下さい!