酒井学の学っていうのは、我々が酒井騎手から学ぶってことでした。そんな編集部日記です。

Kakiharaこんにちは、K3です。
いよいよ新書『大穴の騎手心理』の発売が2日後にせまって来ました。
先週も新書の出演ジョッキーが大活躍していましたが、今日は、その中でもひと際目立っていた酒井学騎手のポイントを紹介したいと思います。
と言っても、馬券を獲ったという話ではなく、得意条件がそろった酒井騎手を軽視したせいでやられてしまったという話です(涙)。

日曜日の新潟11R、信越ステークスはフルゲートの新潟芝1200mで、いかにも荒れそうなニオイがしました。
WIN5の対象レースでもありますし、なんとしても当てたい。
そう思って、3時間もかけて必死に予想しました。

最初に狙いたいと思ったのは大外枠に入ったサンダルフォンでした。
新書の中で酒井騎手がこのように語っているからです。

「サンダルフォンみたいにごちゃつきたくない馬には外枠もいいのかもしれませんけどね」

サンダルフォンは今回の出走メンバーの中では明らかに格上ですが、
斤量59キロが嫌われて、8番人気という低評価でした。
しかし、これも問題にはならないのです。
なぜなら、酒井騎手は「斤量が重い方が良い」というデータがあるからです。

編 酒井騎手は48㎏の斤量でも乗れますし、過去にも48㎏のタフネススターでカブトヤマ記念を勝っています。しかし、斤量別の成績を調べてみたら、斤量の重い馬の成績の方がよかったんですよ。
酒 あぁ、そうなんですか。
編 過去3年で見ると、一番いいのは55・5㎏~57㎏です。これは意外に盲点になっているんじゃないかと思います。
酒 自分では軽ハンデで結構来ているイメージはあったんですけどね。もしかしたら、もうちょっと前のことなんですかね。

さらに、信越ステークスはオープン特別。
酒井騎手はオープン特別の回収率が高いというデータもあります。

酒 自分の馬だけじゃなく、他の出走馬のレースも見ていますよ。自分の馬だけ研究して、他の馬を研究しなかったりすると、思わぬところで不利を受けてしまいますからね。
〔中略〕
編 なるほど。これでわかりました。酒井騎手が重賞やオープン特別に強いのは、周りの馬の特徴をしっかり把握できているからで、過去の重賞勝ちもそのリサーチが役立ったんでしょうね。

今回のサンダルフォンは酒井騎手の得意条件にいくつも該当しているから本命はこれだ、と普段の僕ならあっさり決めたでしょう。
しかし、この日の僕は変にやる気になっていました。
ちなみに、ここまでの検討時間は5分。
頑張るぞ!と気合いを入れたのに本命があっさり決まって、なんか物足りなかったのです。

そして、ここから2時間55分かけて誤った方向に行ってしまいます。
その原因は馬場読みによる過信です。

新潟の内回りは土曜日に2鞍組まれており、両方とも極端な前残りでした。
1400m内回りでは単勝万馬券が出たほどです。
この馬場では、後ろから競馬をするサンダルフォンは届かないかも……。
とても不安になりました。
そこから各馬のレース映像を徹底的に見て、最終的に前に行く馬を本命に据え、サンダルフォンを消してしまったのです。

結果はご存知の通り。
サンダルフォンは1頭だけ後方から追い込んで2着に好走。
他の馬が内を回ろうとする中、大外の奇麗な馬場を走っていました。
そういえば、酒井騎手は馬場のリサーチについてもこだわっていました。

酒 開催が進んで行くにつれて馬場も変わってくるので、例えば日曜日の競馬だったら、土曜日のレースの時計だったり、どういうペースでどのポジションの馬が上位に来ているかを把握しておかないといけないでしょうね。
編 それってデータ派の馬券ファンが調べるようなことですよね。
酒 僕がこういう風に考えるようになったのもそこなんですよ。18頭立ての3連単なんていう難しい馬券を当てるファンの人ってすごいなと思うんです。それは馬場状態だとか、時計だとか、調教だとか、様々なデータを収集したうえで買うわけですよね。だから、ジョッキーである僕がそのデータを持って乗れば、さらにいい結果を出せるんじゃないかと思ったんです。

つまり、酒井騎手は僕の「馬場読み」よりもはるか上の次元で競馬をしたということです。
詳しくは新書に書いていますが、酒井騎手は、リサーチの仕方が他のジョッキーとは違います。
あの馬場でひとりだけ追い込みを決めるというのも、酒井騎手なら不思議じゃないんです。

レース後のコメントを見ると、こうあります。
「少しでも馬場が悪いと気にしてしまうので、大きくコーナーを回してあげたかったんです。ですから、この枠順は良かったと思います」
(『週刊競馬ブック』10月29・30日号、169頁)

本当に参りました。
馬の特徴とその日の馬場を完全に把握した上での見事なコース取りでした。

かつて、あるマナブさんは言いました。

「学っていうのは、俺が何かを学ぶんじゃなくて、お前らが俺から学ぶってことなんだよ」

酒井騎手になら言われても良い気がします。

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そんなわけで発売まであと2日です。
書き下ろしや本誌未収録の部分もたくさんあります!
酒井騎手の本誌未収録原稿「小倉ターフ賞の妙技」にも注目です。
小倉開催が始まる前に必ず読んでおきましょう。
お楽しみに!


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『大穴の騎手心理 ジョッキーの思考がわかれば激走パターンが見えてくる!』

頻繁に穴を開けるジョッキーに「自身の得意条件」を見せて分析してもらうという前代未聞のインタビュー集。騎乗技術、意図、算段、駆け引きなど、現役ジョッキーが騎乗の手の内を明かす、まさに「禁断の書」です。データと本人の証言に裏付けられた激走パターンがわかれば、大穴馬券も簡単に当てられます。
出演ジョッキーはデータ上日本一の特長を持つ勝負師14名。さらに巻末特別インタビューとして蛯名正義騎手の「トップを走り続ける騎乗論」を収録しています。是非それぞれの「大穴を導く騎乗哲学」を堪能してください。

■出演ジョッキー
石橋脩
大野拓弥
大庭和弥
川田将雅
北村宏司
木幡初広
酒井学
田中博康
田辺裕信
武士沢友治
古川吉洋
松岡正海
丸田恭介
和田竜二
(敬称略・五十音順)

■巻末特別企画
蛯名正義インタビュー
「トップを走り続ける騎乗論」

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