セレクトセール2022(初日)

 セレクトセールは今年25回目の開催を迎えた。数多の名馬を送り込みセール出身馬によるGI勝利は120にも及ぶという。今年は入場規制も緩和されたこともあり、過去2年とは違い多くの馬主とその同行者、来場を自粛していた騎手なども姿を見せ開始前から盛況の様相を示していた。
 初日は1歳馬によるセールが行われ、過去の傾向からも特に午前中のセリは盛り上がる傾向にあるのだが、10時スタートのセールは12時を少し回った時点で50頭をわずかに超えた頭数しか終了していない。この時点で90分ほど予定より遅れていると言われ、報道陣からは『どんなに巻いても19時に終わらない』と断言する声が続出。それだけ午前中から熱狂的なセリが行われたことを示していた。
 トップバッターと最後の上場馬はリザーブ価格が設定されていないのだが、1歳セッションのトップバッターとなるサマーハの21(牡、父リアルスティール)は、5000万円からのスタート。しかし、あっという間に1億円を超え、終わってみればDMM.comが1億8000万円で落札。続く2番めの上場馬でもあったシンハディーパの21(牡、父レイデオロ)も同社が6200万円で落札と飛ばしていたのが印象的。その後もセリは白熱して進み主取りも今年はやたらと少ない。これでは確かにセリのスピードが上がらないのも分かる。
 結局、1歳セッションで億を超えた馬は25頭と昨年の28頭よりは減っているものの、落札率は95・3%と過去の最高を記録。販売総額も128億7000万円と昨年を12億円を上回りとこちらも過去最高となった。平均価格も約5797万円と昨年よりも600万円以上高い状況。10年前の2012年の平均価格が2699万円だったということを考えると、10年で倍以上の価格となっている。
 ディープインパクト産駒、キングカメハメハ産駒がいなくなり、ハーツクライ産駒も残りが限られている状況。種牡馬戦国時代に突入しているといっていい状況だと思うが、それでもバンバンと高額で取引されていった。これにはセール後に吉田勝己市場長代理も「セリというのは、販売申込者にとっても、購買者にとって真剣勝負の場。販売申込者はより良い上場馬を揃えるために血統レベルを上げ、また、飼養管理技術も向上させている。購買者の方々が、そういった事を高く評価いただいたことが今回の結果になったと思う。今年は海外からの購買者を含め、新しい購買者の方に多く参加いただき、結果的にセール終了までの時間がかかってしまったが、数字的には一言でいえば、今日のセリは驚き以外の何物でもない。このセリが盛り上がると、海外のセリも含め、多くのセリにも良い影響を与えてきた。そういう意味では業界全体にとってよいセリが出来たと思う」とのコメントを残した。
 今回は急激な円安下での開催(今回は1ドル=135円の設定)となったため、もっと海外勢も参戦するのではないかと予測されていたが、さすがに元値が高過ぎてそこまで目立つような動きがあった訳ではない。円安でお買い得なのは間違いないものの、1頭辺りの平均価格が6000万円近くでは海外のバイヤーはおいそれと手を出さない。ちなみに、筆者のライター仲間が計算したところ、ドルベースでは昨年の売り上げを下回るという計算になる。昨年は1ドル111円での取引だったため、約1億450ドルに対し、今年は1億ドルを割って約9533万ドルだ。まぁ、ほとんどの取引が日本人購買者なので意味をなさない比較ではあるが(苦笑)、急激な円安はこんなところにも表れていたのだ。
 落札馬個別の状況については本誌10月号でお伝えする予定としよう。落札者は必ずしも馬主名義ではないため不明な馬などもいると思うが、その辺りについても取材で分かった範囲で公開することにしたい。(文/野中香良) ※セレクトセール2022(2日目)に続く。

001kantei オープニングから1億円超え。サマーハの仔で牡馬ということもありぐんぐんと値は上昇していった。

076kantei この日の最高価格となったモシーンの21。ダノックスが4億5000万円で落札。ダノックスの岡田ディレクターは「モーリスの仔をオーナーが走らせたかった」と述べていた。