「絶対、ってあるんすねぇ~」
へそ曲がり、あまのじゃくのアフター競馬評論家・鬼野谷が珍しく素直に感心している。
史上7頭目の三冠馬となったオルフェーヴル。単勝1.4倍、支持率58.3%の圧倒的な支持を受けて、見事に期待に応えた。
「直線で先頭に立ったのがちょっと早いんじゃないかって思ったけど、絶対能力を信じた鞍上池添の気迫が勝っていたっすよね」
『絶対』といえば、やはり同じく菊花賞をダントツ人気で制した無敗の三冠馬シンボリルドルフの調教師‘ミスター競馬’野平祐二氏がもらしていたことがあった。二度の有馬記念のときだ。
昭和59年の有馬記念。「勝つのは分かってる」横綱らしいレースを、との注文に2馬身差の快勝。
そして、翌年の有馬記念。「絶対ってあるんだよ」どれだけ強いか見せてやれ、との指示に1完歩8mの大跳びで4馬身差の楽勝。
そんな『絶対』の名を歴史に刻んだ名馬シンボリルドルフ。
それでも足元をすくわれた一戦があった。今週行われる天皇賞のときだ。
昭和60年秋、単勝支持率56%を集めていたが、ゴール前、外から襲いかかってきた、後に‘赤い刺客’といわれるギャロップダイナに1/2馬身差負けたのだ。
「でも、②着っすよね。連対確保ならやっぱ『絶対』はありっすよ」
「そうだね、馬連馬券の不思議なとこだよね」
「そんなら、今回はブエナビスタが『絶対』すよ」
そう言って鬼野谷が引っ張り出してきたプラスデータがこれだ。
天皇賞秋が3200mから2000mに短縮されたS59年以降、前2走とも、日本の牡牝混合芝G1を含む1600m以上の重賞戦(G3戦を除く)で連対をはたしていた実績上位馬は、失格降着を除き[7-6-4-11]。このうち、
(a)芝3勝未満あるいは左芝を2回以上走ってゼロ勝は×
(b)着外(④着以下)が6回以上もある馬は×
(c)前走連対も0.4秒(約2馬身)以上敗退馬は×
(d)前3走とも2400m以上の長距離レース使用馬は×
(e)3歳馬で、前走3歳限定戦敗退もしくはⅤも1馬身差未満の辛勝は×
(f)前2走内にG1戦で2馬身差以上の快勝があった馬を除き、1800~2200m戦で着外が3回以上あった馬は×
以上の6項目クリア馬は[7-3-0-0]。
「ブエナビスタの連対は、ゼッタイ!っすよ」と鬼野谷の太鼓判◎予想だ。
「でもな、世の中の流れはウイン5だよ。①着が絶対じゃなきゃ」
「じゃあ、なにを推すんすか」
「今年の凱旋門賞はドイツ産馬のデインドリームが勝っただろ。世の中の流れはドイツだよ。ギリシア危機も救っているしさ」
「だから、なんすか」
「最強世代といわれている現4歳勢。天皇賞出走馬中7頭が4歳馬で、このうち6頭にサンデーサイレンスの血が入っているんだけど、唯一入っていないのがエイシンフラッシュさ。それで、このエイシンの母がドイツ馬ってわけ」
「そろそろ脱サンデーサイレンスってこと?」
「そう! 血が変わらなきゃ、日本の競馬が近親相姦だらけで腐っちまう」
「似合わず、過激っすよ。酔ってないすか」
「去年の残ったボジョレーを飲ますからだよ」
「で、エイシンを推すデータは?」
「4番枠に入ったからさ。フランス語で4はquatre」
「キャットルすよ、だから?」
「聞こえないか、勝ってる、って」
「そんな~、オレのお株を取ってどうするんすか。それに、エイシンは、芝の連対8回未満馬のうち、前4走とも日本の芝良・稍重のレースを使って①着がなかった馬は[0-2-1-27]に当てはまるんすよ」
「ごめんごめん。じゃあ、ブエナに対抗する①着完璧データはネットでってことで…」
高橋学の「消去法シークレット・ファイル」の予想は、netkeiba.comをご覧下さい!