【小倉記念・オマケの消去法】

 「やったね、函館記念のマヤノライジン。10歳馬予想、ぴったりだったじゃないか」

 「そうだけど…」

いつになく、しおたれているアフター競馬評論家の鬼野谷。

訊くと、先日、東池袋周辺で多発した下着泥棒の被害にあったという。

「男のパンツをか?」

「違いますよ。妹のっす」

帰りが遅くなるから洗濯物を取り込んでおいてと妹に頼まれていたのをすっかり忘れて被害にあったらしい。ただのイタズラならいいが、ストーカーだったら…とガラにもなく兄妹で不安がっている。

「ストーカーっていえば、競馬にもいたっすよね」

「馬のパンツをか?」

「なに言ってんすか。ゼッケンすよ。馬のゼッケン!」

平成14年6月9日、中京競馬場で行われたG3ファルコンS。レース後、そこに出走していたステキプレゼント(11着)のゼッケンが盗まれたのだ。馬主用のバッジを盗んだ男は、関係者を装って検量室に入り、胡乱な様子でゼッケンに目を付けた。怪しいとにらんだ警備員が後を追い詰問したところ、逆に居直られて殴られ一週間のケガを負ってしまった。ほどなく犯人の男は逮捕されたが、自宅からは同様の手口で手に入れた50枚もの馬のゼッケンが出てきた。盗んだゼッケンをネットで一枚3000円で売ろうとしていたらしい。とんだプレゼントになるところだった。

「で、決まりだろ、鬼野谷。今週の小倉記念は女馬イタリアンレッドのストーカー、追っかけだな」

「そっすね。夏女の出番すよ」

前走の七夕賞で初重賞をものにしたイタリアンレッド。その7~9月の成績はなんと[6-0-0-1]で、負けたのはG2ローズS15着だけという、まさに夏にうってつけ、夏期稼働型の馬なのだ。

蒸し暑い日本の夏。勢いのある「夏大好き」馬を狙え!が定石だ。

グレード制開始のS59年以降、小倉記念(別定戦のH7~11年除外)出走馬のうち、3カ月以上休養馬を除き、前走芝重賞戦で連対をはたしていた馬は[5-3-4-20]。このうち、

(a)2走前に条件戦1000万クラス使用、1600万クラス敗退は×

(b)2走、芝良・稍重以外のレース使用は×

(c)4走内に10着以下大敗が2回以上、または前3走内にG3以下戦で10着以下、あるいは2走前にG1戦以外で1秒以上の惨敗歴ある馬は×

(d)18002000mを10回以上走って0~1勝の中距離実績不足は×

(e)小倉芝コース0~1勝とコース実績ない馬は×

以上5項目をクリアしていた馬は[4-3-2-0]。前走重賞勝ちで勢いの乗っているイタリアンレッド、中距離5勝、小倉芝も[4-0-0-1]とコース実績十分だ。

「ところで、前回より3㎏増加のハンデ。ちょっと見込まれすぎじゃないか」

「たしかに、ハンデを見て、調教師も『テンションが下がったな』ってコメントすよね」

「だろ?」

「でも、テキの二枚舌かもしんないすよ。イタリアンレッドって『真っ赤なウソ』っすからね。口上手のイタ公に甘いといわれて食べて酸っぱかった真っ赤なイタリアントマト、あれすよ。テンション下がったなんて煙幕すよ」

「ほんとかよ」

「それに、ゼッケン盗んだストーカー野郎じゃないすけど、ゼッケンってイタリア語のスペルでzecckinoすよ」

「なに」

「イタリアンレッドって別名サマーレッド。ゼッチョウ~ノ夏、絶頂の…」

「なんだか金鳥の夏っぽくないか。煙いなぁ~」

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