【函館スプリントS・オマケの消去法】

「バカって言ったらバカって言う、遊ばないって言ったら遊ばないって言う、暑いって言ったら暑いって言う、こだまでしょうか、いいえ汗玉です」

カンカン帽の下は顔中汗まみれ。白い開襟シャツに麻のベージュのジャケット、手には扇子。まるで避暑地にでも行こうかという大正ダンディの出で立ちであらわれたアフター競馬評論家の鬼野谷。

 「インド人もびっくり。もう暑くてたまんないっす。ちょっと海の見える競馬場に行って涼んできます」とANAのチケットをこれ見よがしにひらひらさせる。

 「まさか、またデルマーじゃないよな」

アメリカの西海岸カリフォルニア州にあるデルマー競馬場は、海の見える避暑地競馬場として有名で、別名サーフィンしながら遊べる競馬場とも言われている。そのデルマーに以前鬼野谷が行ったことがある。

15年前の夏、90年代最強馬といわれるあのシガーの17連勝を見届けようと勇んで出かけた。グレード制導入後、最多の16連勝を成し遂げたシガー。アメリカ競馬史上最強馬サイテーションの連勝記録を半世紀ぶりに破るのか。全米中が注目したデルマー競馬場のG1パシフッククラシック。結果は②着だった。

「いやー、あんときは参った。お土産代ぜーんぶシガーにつぎ込んだんすからね。銭がなくなってシガネーなんつって。海に突っ込みたい気分だったっすよ。それにしても今日も暑いっすね、35℃!…突っ込んだっていえば、暑くて、暑くて池ポチャの馬っていたの知ってますか」

いたいた、10年ちょっと前、H12年の夏8月小倉競馬場。この年は、東京でも37℃を超える猛暑だったが、小倉も暑かった。リターンオブラブという2歳牝馬が、朝の調教中に放馬し、コース内の池に突っ込んで水浴び?という珍事があった。本来、寒冷地仕様のサラブレッド、よほど暑さが応えたのだろう。

「で、今度は、どこに突っ込みに行くんだい」

「函館っすよ。昨日(木曜)の気温21℃だってさ。海の見える競馬場で涼んできますよ。もちろん函館スプリントSでばっちり儲けてね。注目は外国産馬っす」

川向うはダウンタウン、海向うお台場の先は外国という品川生まれ田園調布育ちの鬼野谷。デルマーも函館もほとんどいっしょの思考回路が注目するのはアメリカ産馬の3歳馬ヘニーハウンドだという。

過去17回、外国産馬は[3-8-2-54]。H9~15年、外国産馬が7年連続連対の記録があるが、サブプライム問題やリーマンショックといったアメリカ経済失速の影響か、ここ5年では外国産馬[1-1-1-14]と冴えない。

が、プラス思考の鬼野谷。言い張るデータがこれだ。

前2走内に芝12001600m重賞戦、斤量牡馬56㎏以上・牝馬55㎏以上で③着内好走歴があった馬は[6-5-2-17]。このうち、(a)前走1秒2(6馬身)以上敗退歴、(b)1200m戦③着内率5割未満、(c)10戦以上して0~2勝、(d)斤量58㎏以上、(e)前2走内に斤量55㎏以下で⑩着以下、(f)3走内に条件戦使用歴、以上(a)(f)のマイナスポイントをクリアしていた馬は[5-4-1-0]

「それにね、3歳馬。H14年、前年11月デビューのキャリア5戦サニングデール。重賞ファルコンS勝ち馬で1200m持ち時計1分08秒9しかなかったんすけど、前走G1高松宮記念勝ち馬ショウナンカンプとの斤量差4㎏を生かして3番人気Ⅴ!っす。今回も外国産ヘニーハウンド3歳馬にお任せっすよ。あとね…」

「なんだ、まだあるのかい」

「デルマーでね、競馬場を造った人にちなんだビングクロスビーSっていう6ハロンのG1レースがあるんすけど、去年の夏このレース、斤量差を生かして勝ったのがスマイリングタイガーって3歳馬なんすよ。犬と虎。暑い夏は避暑地で3歳ケンコー一番!なんつって」

「……、3歳、3歳って散財じゃないだろな。津軽海峡に突っ込むなよ」

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