片野治雄のファミリーテーブル考察

“質の違う2つの「瞬発力」について考える”

一般的に最後の直線で33秒~34秒台前半の脚を使い、後続を突き放すor先行勢との差を一気に詰めるタイプの競走馬を指して「瞬発力に優れている」という表現が用いられます。特に日本競馬はゴール前ラスト1Fの攻防戦に重点が置かれ、そこに醍醐味を覚えるファンも多く、近年でもディープインパクトやウオッカ、そしてブエナビスタなどがこのカテゴリーに当てはまり人気を博してきましたが、勝ち方という点に注目してみると大きく分けて2種類のパターンに振り分けられるのがわかります。

一つはディープインパクトやウオッカのように「スピード」を武器に、直線で相手をぶっちぎる派手な勝ち方をしたり、内枠からのイン突きを得意とするタイプ。もう一つはブエナビスタやスイープトウショウ、タニノギムレットなどのように大外一気というダイナミックな競馬をして、能力の違いを見せながらも少ない着差で勝つ「スタミナ」タイプ。前者はその豊富なスピードから不利を受ける事が少ないものの、折り合い面に不安を残す競走馬が多く、後者はその重厚なスタイルから折り合い面に不安がないもののスピードの無さから道中、小脚を使う事ができず不利を受ける事が多いので、展開一つで大敗もあり得るというリスクを背負っているのが特徴です。これらを「スピード型」と「スタミナ型」とに区別すると、スピード型をNo.で言えば2・7・101322が当てはまり、スタミナ型の場合は4・5・8・9・16が主だったものと言えます。

簡単なイメージとしてはスピード型の場合、スピードの裏付けがある=不利を受けにくいという事で内枠を利した激走が多く見られます。アドマイヤムーン[7-f]やポップロック[7-c]のJC、Vマイルにおけるダンスインザムード[7]やショウナンラノビアなどが当てはまりますし、13号ではヘヴンリーロマンス[13-c]の秋天やタケミカヅチ[13-c]の皐月賞などが該当します。

一方、スタミナ型の場合は馬群がバラけやすい重馬場を除いて、大外をまわす競馬が基本。典型的なのが16号同士でワン・ツーした09年の桜花賞・オークス。また、ヒシミラクル[16-c]やマンハッタンカフェ[16-c]らもやはり大外をまくるイメージが強かったですし、9号(タニノギムレット[9-c]・アドマイヤベガ[9-f]・トゥザヴィクトリー[9-f]など)の場合も器用な脚が使えず不利を受けて惜敗するパターンが多く、勝つときは決まって「大外一気の小差勝ち」という事で共通しています。これらの例からも、[差し・追い込み脚質]のスタミナ型馬たちが内枠を引いてしまった場合、かなりのハンデを背負ってしまうのは間違いありません。まれにスタミナ型の競走馬が内を突いてG1を勝つシーンも見受けられますが、その場合は能力が出走メンバーではズバ抜けている証拠だと言えるでしょう(カンパニー・レッドディザイアetc)。

馬券戦略を立てる際、それぞれのNo.ごとの「脚質」から「枠順の有利・不利」を知った上で購入すれば、よりロスなく買い目が絞れるのではないかと思います。