2011年12月

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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

時事問題

2011年6月17日 (金)

POGドラフト終了しました

今週火曜日は某POGのドラフトでした。1人10頭持ちで13人が参加したので、規模としてはやや大きめの部類でしょうか。

計130頭が指名され消えていきます。上位で指名したいと願った馬がそのとおりに取れることはまずありません。しかも相手は業界の猛者ばかり。ドラフトの最中に牧場や育成場に直接電話を掛けて候補馬の状態について尋ねているですから、こりゃ勝てんわ……です。昨年は、レッドデイヴィス(重賞2勝)を指名して1億6000万円を稼いだ方が、なんとチョコレートを差し出す側でした。ハイレベル過ぎて笑ってしまいます。

わたしは1位指名の抽選に敗れ、その後もうまく立ち回ることができず、ガッツリと消化不良感の残るドラフトでした。8位以降はあらかじめ用意していた指名候補馬のリストが尽きて、ほとんどその場の勘で決めるという始末。10頭のなかにG1馬が引っ掛かってくれていることを祈るのみです。

13人の指名馬の、1位から5位までの父馬を集計すると以下のようになります。

32頭 ディープインパクト
12頭 アグネスタキオン
 4頭 シンボリクリスエス
 3頭 ハーツクライ
 2頭 キングカメハメハ、ステイゴールド
 1頭 ウォーエンブレム、タニノギムレット、アドマイヤムーン、
    キングヘイロー、ゴールドアリュール、ダイワメジャー、
    ネオユニヴァース、デュランダル、クロフネ、Street Sense

ディープインパクトが断然で、大きく離されてアグネスタキオンが2位。この2頭が飛びぬけています。そのあとに繁殖牝馬の質が並はずれているシンボリクリスエスが3位で続きます。

サンデーサイレンスが健在だった時代のように、ベタな評判馬が素直に走る傾向が見られるので、あまりひねりすぎないほうがいいかもしれません。ただ、それだと指名候補馬がほかの方と被ってしまうので、ホームラン狙いは1、2頭にとどめて、あとは高望みせず堅実な評判馬を確実に獲っていくのが賢いやり方かもしれません。

2011年6月16日 (木)

サラブレッドの多様性は馬場の多様性から生まれる

セントジェームズパレスSを見て感じたのは、欧州マイル路線のレベルの高さ。このカテゴリーはデインヒルや Galileo の縄張りで、これらの種牡馬は現在のヨーロッパ競馬を牽引する役割を果たしています。その優秀さがマイル路線の水準を押し上げているように思います。ここに割って入るのは並大抵のことではありません。しかし、だからといって、この差を埋めるために日本の馬場をヨーロッパ仕様にすべき、という意見にわたしは与しません。

大前提として、高温多湿の気候、馬場の使用頻度の高さから、日本においてヨーロッパと同種の洋芝コースを作ることは不可能です。ただ、もし仮に、日本の競馬場がすべてヨーロッパと同じ仕様になったとしたらどうなるでしょう? おそらく、日本の血統はあっという間に Sadler's Wells やデインヒルに飲み込まれてしまうでしょう。最適化したものがそうでないものを駆逐するのは道理です。そして、わが国の競馬はその独自性を失い、ヨーロッパ競馬のエピゴーネンとして半永久的に川下の立場に立たされるでしょう。

世界各国の競馬にそれぞれ特色があり、さまざまな馬場で競馬が行われているからこそ、サラブレッドの多様性は維持されています。逆にいえば、サラブレッドの多様性を守るには、世界各国でさまざまなスタイルの競馬が行われる必要があります。

サラブレッドの発展の歴史を振り返ればそれは明らかです。スピードを第一義とするアメリカのダート競馬があればこそ、ヨーロッパには見られなかったハイレベルなスピード型遺伝子がサラブレッドに芽生えました。異なる環境で、それに適した血統が発展していくことはきわめて重要です。一芸に秀でたスペシャリストの血はそれほど得がたいものです。自国のサラブレッドが、他のどの国にも見られない優れた個性を獲得したなら、それは大きなアドバンテージです。欧米の後追いによって得られるものよりも重要だと思います。

速い時計が出やすく、瞬発力を活かしやすい日本の芝コースでは、サンデーサイレンス系が圧倒的な勢力を誇っています。この個性はアメリカともヨーロッパともオセアニアとも違います。日本血統が将来、その個性を評価される形で海外から求められていくとわたしは確信しています。高速馬場やそれに適応する日本馬の個性を、批判的な文脈でのみとらえる一部風潮にはやや違和感を覚えます。

高速馬場については昨年6月10日のエントリー「馬の故障と高速馬場」で取り上げています。ご参照くさだい。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/06/post-bef1.html

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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2011年5月27日 (金)

Northern Dancer 生誕50周年

1982年以来、日本ダービーには必ず Northern Dancer 系の出走馬が名を連ねていました。しかし、09年にターニングポイントが訪れます。この年、同系の出走馬が途絶え、28年ぶりに Northern Dancer 系が出走しないダービーとなりました。昨年はメイショウウズシオ、シャインと2頭出走しましたが、今年はまたゼロ。Northern Dancer 系にとって冬の時代といえるでしょう。

ただ、それは日本だけの現象であり、世界の主要競馬開催国、とくにヨーロッパとオーストラリアにおいては、Northern Dancer 系は相変わらず猛威を振るっています。昨日のエントリー(活躍馬が続出する「Galileo×デインヒル」)でご紹介したように、ヨーロッパでは20年近く生産界を牽引してきた Sadler's Wells とデインヒルが融合し、新たな名馬を次々と誕生させています。これらはいずれも Northern Dancer 系です。

いまからちょうど50年前の1961年5月27日に、カナダのウィンドフィールズファームで Northern Dancer は誕生しました。

父 Nearctic は St.Simon の影響が強いイギリス血統。母 Natalma には、伝統的なアメリカ血統を濃厚に含んだ Native Dancer と、Lady Josephine(現代スピード血脈の祖)の影響を受けた Mahmoud が入ります。ですから、基本的には異系交配的な産物で、異なる個性のぶつかり合いによって人知を超えた生化学反応が生じ、時代を画する傑作が誕生したというわけです。
http://www.pedigreequery.com/northern+dancer

Northern Dancer 系の現況については昨年11月に4回シリーズでご紹介しました。

Northern Dancer 没後20年(1)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/11/northern-dancer.html
Northern Dancer 没後20年(2)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/11/northern-danc-1.html
Northern Dancer 没後20年(3)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/11/northern-danc-2.html
Northern Dancer 没後20年(4)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/11/northern-danc-3.html

世間に流通する血統系の慣用句で、わたしが最も理解に苦しむのが「セントサイモンの悲劇」です。そもそも何が悲劇なのかよく分かりません。St.Simon が種牡馬として爆発的な成功を収めたあと、代を経るごとに系統が衰退していったのは事実です。しかし、それでサラブレッド全体のレベルが低下したかというと、そんな事実はどこにもないと思います。むしろ逆に上昇したとわたしは考えます。英ダービーの勝ちタイムの変遷からもそれはうかがえます。

Teddy、Blandford、Tourbillon、Hyperion、Nearco など、20世紀前半に登場した大種牡馬群は、ほとんど例外なくGalopin-St.Simon(=Angelica) の強い影響のもとに誕生しています。このあたりは笠雄二郎著『サラブレッド配合史』(http://www.miesque.com/c00001.html)に詳述されています。
http://www.pedigreequery.com/teddy
http://www.pedigreequery.com/blandford
http://www.pedigreequery.com/tourbillon
http://www.pedigreequery.com/hyperion
http://www.pedigreequery.com/nearco

サラブレッドの生産は父系を伸ばすことが目的ではありません。強い馬を作ることです。St.Simon 系が衰退したことを悲劇というのは父系愛好家だけでしょう。むろん、そうした事態が起こったからといって、当時の生産者が愚かだったわけでもありません。St.Simon の強い影響力がサラブレッド全体のレベルを上昇させたのですから、少なくともわたしのなかでは“悲劇”という言葉はピンときません。

もし仮に、遠い将来サンデーサイレンス系が衰退したとしたら、人々の心にセンチメンタルな疼きは生じるでしょうが、日本の生産界には何の不都合も起こらないでしょう。サンデーサイレンスが日本の生産レベルを大きく引き上げた事実は変わりません。そして、サンデー系が衰退してもサンデー牝馬を苗床とした新しい系統がたくましく伸びているはずです。わたしはそれで何の問題もないと考えます。

もっとも、同系統が増えすぎて父系が衰退するということが、現代ではほぼ起こりえないことは Northern Dancer が証明しています。St.Simon のころとは生産規模が違いますし、交通機関の発達によりサラブレッドが大陸間を自由に行き来する現代において、配合相手に困るという事態はまず考えられません。

誕生から半世紀、Northern Dancer の血が世界の果てまで広まり、4代前、5代前と血が遠ざかっていくと、系統全体が一斉に衰退期に向かうということは現実的ではないでしょう。いまや Nearco 系という区分に何の意味もないように、いずれ Northern Dancer 系という区分も過去のものとなるはずです。

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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2011年5月19日 (木)

ダノンシャンティ種牡馬入り

先月、屈腱炎を発症したダノンシャンティが、現役続行を諦めて種牡馬入りすることが決まりました。繋養先は社台スタリオンステーション。同所には今年、すでに同じフジキセキ産駒のキンシャサノキセキがスタッドインしています。フジキセキ系の興隆は数年前までは想像しづらいところでしたが、このほかにもファイングレインが今春からフランスで種牡馬入りしており、今後の展開が楽しみな状況となってきました。

父フジキセキは今季体調を崩し、種付けを休んでいます。19歳という年齢はもう若くありません。累計3000頭以上に種付けしてきたアイアンホースも、いつかは役割を終える日が来ます。有能な息子たちが相次いで種牡馬入りしたのはいいタイミングかもしれません。

ダノンシャンティはその能力と配合を早くから評価してきました。共同通信杯、毎日杯、NHKマイルCと、予想はいずれも◎。NHKマイルCの予想文をあらためて掲載します。

「◎ダノンシャンティは『フジキセキ×マークオブエスティーム』という組み合わせ。母シャンソネットはシングスピールやラーイの半妹にあたる良血。2代母グローリアスソングはカナダ年度代表馬、米最優秀古馬牝馬。『ヘイロー3×3』だけが目立つ単純な配合に見えがちだが、じつはそうではなく、アンガール≒エルバジェ4×4、ミランミル5×6など、重厚な血が全体をしっかり支えている。それ以外にもダンスインザダークなどに見られるブルースウォーズ=ブルーヘイズの全兄妹クロスを持つなど、底力を感じさせる緻密な配合構成で見どころがある。母の父マークオブエスティームから受け継いだ切れ味は非凡。前々走の共同通信杯は展開のアヤで2着に敗れたが、前走の毎日杯は上がり33秒4、左ムチ一発で楽々と差し切った。東京芝マイルはほぼベスト条件なのでしっかり結果を出すはず。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007105709/

毎日杯のような超スローペースでも、NHKマイルCのような超ハイペースでも、パフォーマンスが変わらなかったというのは大きなセールスポイントです。瞬発力があり持続力もあります。要するに単純に能力が高いということですね。それに加えて、予想文に記したとおり配合に豊かな奥行きがあり、しかも名牝 Glorious Song の孫ですから、種牡馬としても高いポテンシャルを秘めている可能性があります。現役時代に松田国英厩舎に所属したキングカメハメハ、クロフネ、タニノギムレットがいずれも種牡馬として成功しているのは心強いジンクスです。社台グループが誇る良血牝馬群の手厚いバックアップがあれば、かなりの成功を収めたとしても不思議はありません。

★「ダノンシャンティ屈腱炎」(4月21日)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/04/post-88c5.html
★「ファイングレインがフランスで種牡馬入り」(2月10日)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/02/post-eb65.html

2011年5月 3日 (火)

サクラバクシンオー死亡

バブル期を境に日本に輸入される馬の質がグンと上がり、それまで栄えていた血統は劣勢に立たされるようになりました。サンデーサイレンス、ブライアンズタイム、トニービンといった種牡馬が縦横無尽に暴れまわり、明治、大正、昭和初期に輸入された繁殖牝馬の子孫は大レースを勝つ機会を減らしました。要するに血統がどんどん更新されていったわけです。

テスコボーイ→サクラユタカオー→サクラバクシンオー

この系統はそんな厳しい時代状況のなかで、「スピード」という一芸に賭けて生き延びてきました。凄い、という一言に尽きます。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1989108341/

現役時代のサクラバクシンオーは1400m以下で12戦11勝。スプリンターズS(G1・芝1200m)を2連覇したほか、日本史上初めて芝1400mで1分20秒の壁を破りました(1分19秒9=94年スワンS)。父サクラユタカオーは距離の壁こそあったもものの天皇賞・秋を制覇。母サクラハゴロモは天皇賞・春や有馬記念を制したアンバーシャダイの全妹ですから、デビュー前はごく普通に“ダービーを狙えるんじゃないか?”と思っていました。スプリンターが出てくるとはまったく想像していませんでした。中距離馬を思わせる優雅なフットワークは、ガチャガチャした走りのスプリンターの集団に入ると、まさに群鶏の一鶴といった趣でした。
http://www.youtube.com/watch?v=nL2EBCVTb3A

わたしはこの馬に強い思い入れがありました。POGで指名した馬だったからです。母サクラハゴロモもかつて指名していました。競馬場では単勝馬券を握って応援し、ときには関西にも遠征しました。2回制したスプリンターズSのうち、2回目はどう乗っても勝つだろうという安心感がありましたが、1回目はヤマニンゼファー、ニシノフラワーという強敵がそろって三つ巴でした。サクラバクシンオーはOP特別を勝っての挑戦で2番人気。キャリア全戦を振り返ったとき、個人的にいちばん印象に残っているのはこのレースでしょうか。冬の暗い曇り空を背景にピンクの勝負服が先頭でゴールに飛び込むシーンをいまでもありありと思い出せます。

周知のとおり、種牡馬としてのサクラバクシンオーは短距離向きの種牡馬として大成功し、ショウナンカンプ、グランプリボス、シーイズトウショウをはじめ多くの活躍馬を送り出しました。産駒がデビューして4年目に初めて種牡馬ランキングの9位に入ると、昨年までの10年間、一度もベスト10から落ちることなく頑張ってきました。産駒のJRA通算勝利数は歴代9位。父が内国産種牡馬である馬に限定すると1位です。サンデーサイレンスの孫種牡馬がこの記録を破るのは遠い先のことでしょう。

2代父テスコボーイは21歳時、父サクラユタカオーは16歳時の種付けがラストクロップでした。以後、授精能力を喪失してしまい、産駒が誕生しませんでした。生殖機能に関しては早老なところがある系統といえるでしょう。サクラバクシンオーに関しては、21歳だった昨シーズンまでそうした話はなかったので安心していました。まさか心不全で突然命を落とすとは……。合掌。

2011年4月30日 (土)

Sadler's Wells 死亡(後)

昨日のエントリーで、Sadler's Wells と Nureyev が4分の3同血であるという話を書きましたが、Sadler's Wells は兄弟も大成功しています。

全弟 Fairy King は、エリシオ(凱旋門賞)、オース(英ダービー)、ファルブラヴ(ジャパンC)などの父で、96年には仏リーディングサイアーとなっています。Sadler's Wells よりも短めの距離で強さを発揮しました。
http://www.pedigreequery.com/fairy+king2

この牝系は、51年にクレイボーンファームのブル・ハンコックがニューマーケットで購入した Rough Shod という牝馬にさかのぼります。代々活躍馬が目白押しで、Sadler's Wells と Nureyev の直近の共通祖先である Special は、英チャンピオンマイラー Thatch の全姉です。
http://www.pedigreequery.com/thatch

この牝系はスピードが持ち味で、Nureyev や Fairy King はそれを体現した馬でした。しかし、Sadler's Wells 自身は中距離馬で、種牡馬としては長距離向きの産駒も多数出しています。素晴らしい底力に恵まれ、2400m前後で少し時計が掛かればこれほど信頼できる種牡馬はありません。息子たちも種牡馬として成功し、ヨーロッパはもちろん、アメリカ、チリ、南アフリカ、インドなどでリーディングサイアーとなっています。

日本の馬場で走るにはやや重たく、スパッと切れる脚もありません。したがって、子の代では重賞勝ち馬が1頭(サージュウェルズ)しか出ませんでした。しかし、孫の代になると、持ち前の底力とスタミナがちょうどいい具合に希釈され、日本の馬場にフィットする大物が続出しました。サイアーラインを受け継ぐ孫にはテイエムオペラオー、メイショウサムソン。母の父に持つ馬にはエルコンドルパサー、フサイチコンコルド、シーザリオ、ヘヴンリーロマンスなど。天皇賞・春に出走するジャミールもそうです。

Sadler's Wells はアイルランドのクールモアスタッドに繋養されました。同スタッドはいまや世界最大級の種牡馬事業組織に成長しましたが、それを可能にしたのは Sadler's Wells が稼ぎ出した莫大な富です。こうした面からも世界を変えたといえるかもしれません。

『RACING POST.com』では、どのサドラーズウェルズ産駒が好きか、という緊急アンケートが行われていました。1位はなんと Istabraq。チャンピオンハードルを3連覇するなど無敵を誇ったハードル王です。これは故ジョン・ダーカン調教師との感動ストーリーが寄与したのでは、と思います。2位は Yeats。アスコットゴールドC(英G1・芝20f)を4連覇した長距離王です。以下、Galileo、Montjeu の順。

Istabraq、Yeats のワン・ツーは日本では想像がつかないところですが、「どれが強いか」ではなく「どれが好きか」という投票なので、妥当な結果かもしれません。イギリス人の意識に触れることができるおもしろいアンケートでした。

Sadler's Wells 系が障害に強いというテーマは昨年10月16日のエントリー「障害界のサンデーサイレンス」で触れています。ご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/10/post-c88e.html

2011年4月29日 (金)

Sadler's Wells 死亡(前)

「この種牡馬は凄いんじゃないか?」と初めて感じたのは88年のデューハーストS(英G1・芝7f)です。英2歳チャンピオン決定戦というべきレース。この年は、新種牡馬 Sadler's Wells を父に持つ Prince of Dance と Scenic が1着同着で勝利を分け合いました。

Sadler's Wells は現役時代、愛2000ギニー(G1・芝8f)など3つのG1を制しました。ただ、3歳春は同じヴィンセント・オブライエン厩舎に所属する El Gran Senor(英2000ギニー、愛ダービー)との使い分けによって、裏街道を歩まざるをえませんでした。

冒頭のデューハーストSには El Gran Senor の初年度産駒 Saratogan も出走していました。結果は3着。Sadler's Wells は現役時代の鬱憤を晴らすかのように、種牡馬としては El Gran Senor よりも格上であると示したのです。

初年度産駒にはこのほか、オールドヴィック(仏ダービー、愛ダービー)、In the Wings(BCターフ)、フレンチグローリー(ロスマンズ国際S)などがいます。当時から Northern Dancer 系の真打ち登場、という別格の扱いでしたね。

血統面の優秀さも評判を後押ししたと思います。母 Fairy Bridge は Nureyev の半姉。そして、Sadler's Wells と Nureyev はいずれも Northern Dancer を父に持ちます。要するに両者は4分の3同血(父が同じで母が親子)です。
http://www.pedigreequery.com/sadlers+wells
http://www.pedigreequery.com/nureyev

         ┌ Northern Dancer
Sadler's Wells ―┤
         └○┐
           └ Special

         ┌ Northern Dancer
Nureyev  ――――┤
         └ Special

Nureyev は当時すでに Miesque、Theatrical、Sonic Lady といった産駒を出して大ブレイクしており、その4分の3同血ですから成功は堅い、と見られていました。ちなみに、この2頭を使った4分の3同血クロスはポピュラーなもので、今週の天皇賞・春に出走するコスモメドウなどはこのパターンです(Nureyev≒Sadler's Wells 4×2)。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007110045/

産駒がデビューして3年目の90年に英愛リーディングサイアーに輝き、翌年、ジェネラスを擁する Caerleon にタイトルを譲ったものの、92年に奪回すると04年まで13年連続でその座を守りました。通算14回、13年連続という記録は、18世紀の大種牡馬 Highflyer の通算13回、12年連続を上回る新記録です。(続く)

2011年4月28日 (木)

メジロ牧場解散

この成績ではたして牧場がやっていけるのだろうかと、失礼ながら以前から心配はしていました。80年後半から90年代にかけての黄金時代に比べ、見る影もなく低迷した00年代。なぜここまで落魄したのか、その原因はひとつではないでしょう。土壌と牧草、血統、育成、人材、馬場やレーススタイルへの適性、等々……。それを検証するメジロ牧場興亡記はいずれどなたかがお書きになると思います。

ただひとつはっきりしているのは“メジロ牧場が負けた”という事実。残念ながら現在の日本競馬のなかにメジロ牧場の居場所はなかったということです。実力社会においては、時代の移り変わりのなかで浮き沈みは避けられません。社台グループといえど、永久に成功が約束されているわけではなく、ちょっとした綻びをきっかけに転落していく可能性もないとはいえません。

わたしが競馬に興味を持ち始めた80年代、ホワイト&グリーンのメジロの勝負服は、大レースになくてはならない存在でした。時代錯誤ともいえるステイヤー血統。それをハードトレーニングで鍛え上げ、中長距離の重賞を席巻していました。その秘密を知りたくてメジロの血統はよく研究したものです。スノッブ、Djakao、Charlottesville、モンタヴァル、という馬名を目にすると、いまでも胸が疼きます。英仏の伝統的なステイヤー血統を重用し、ほかの牧場には見られない上品な血統を作り上げていました。それが意図的な選択の結果であったことは、たとえばメジロエニフの配合に端的に表れています。Sicambre=Senones 3×3、Barley Corn 4×3、Tourbillon 5×5という強烈な父母相似配合。これは偶然できるものではありません。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1979101600/

メジロ牧場の全盛期を支えた武田茂男氏が独立してから成績が振るわなくなった、という話を聞いたことがありますが、内情についてはよく分かりません。父として成功したモガミが母の父として不振だった、という事情もあるでしょう。メジロマックイーン、メジロパーマー、メジロアルダンといった種牡馬は、およそ能力的な見極めがついたあとでも粘り強く交配していましたが、残念ながら結果は出ませんでした。スピード不足に懲りたのか、時代に遅れまいとしたのか、徐々にスピード系の種牡馬に軸足を移して行きました。しかし、それも実りませんでした。最近の生産馬の血統には、かつてあった香気や配合的な意思といったものが消え失せていたように思います。

馬産の歴史を振り返れば、フランスのマルセル・ブサックはある時期から生産馬がまったく走らなくなり、晩年には本業も傾いて破産。競馬事業をすべて手放しました。北米では近年、カルメット、スペンドスリフト、オーヴァーブルック、ウインドフィールズといった名門牧場が撤退を余儀なくされました。こうして解体されていくものがある一方、新しく勃興するものもあります。サラブレッド生産の歴史はその繰り返しです。

マルセル・ブサックが破産したといっても、その生産馬が現代に及ぼす影響は不滅です。カルメット、スペンドスリフト、オーヴァーブルック、ウインドフィールズにおいてもそうです。“メジロ牧場が負けた”といっても、存在そのものが否定されるわけではありません。メジロ牧場の華々しい業績は競馬史に刻まれ、人々の記憶に残ります。ドリームジャーニーやオルフェーヴルを通じて血統は受け継がれていきます。

2011年4月21日 (木)

ダノンシャンティ屈腱炎

海外に旅立ったヴィクトワールピサを別にすれば、今年の古馬戦線で最も期待していた馬でした。右前浅屈腱炎で9ヵ月以上の休養を要する、という診断です。

トレーナーの数だけ馬の仕上げ方があります。藤沢和雄、角居勝彦調教師が“強い調教を課さない派”の代表だとすれば、松田国英調教師はその逆、“ハードトレーニングを課す派”の代表です。

過去に松田国英調教師が管理した大物の多くが怪我に泣きましたが、ハードトレーニングを課さなければ栄光を手にしていたかどうかは分かりません。門外漢のわたしには判断のつかない難しい問題です。仕上げ方に関して対照的な考えを持つ角居勝彦調教師が、調教助手時代に松田国英厩舎に所属していたのはおもしろい事実です。

安田記念で走るところは見てみたかったですね。この春の楽しみのひとつでした。休養から復帰後、2000m以上を3戦して結果が出ませんでしたが、1600mの定量戦なら違うと思っていました。残念。

2011年4月15日 (金)

トレンドハンター骨折

桜花賞3着馬でオークスの有力候補と目されていたトレンドハンター(松田博資厩舎・父マンハッタンカフェ)が、右第1指節種子骨を骨折し、戦列から離れることとなりました。1年以上の休養を要するとのことなので症状としては軽くありません。血統的に距離が延びていいタイプだったので残念です。今年の3歳牝馬戦線はサバイバル戦の様相を呈してきました。オークスはマルセリーナとホーエルキャプチャの二強対決でしょうか。

2011年4月 1日 (金)

ディープインパクト産駒の Barocci がフランスで勝利

Omnium II は19世紀末のフランスの名馬で、仏ダービーをはじめ大レースを勝ちまくり、引退後は仏リーディングサイアーにもなりました。Tourbillon の父として知られる Ksar(凱旋門賞2回、仏ダービー)は Omnium II 3×2です。
http://www.pedigreequery.com/ksar

この馬を記念したオムニウムII賞(芝1600m)は、リステッドレースではありますがそこそこ重要度の高いレースです。フランスの3歳牡馬のトップクラスは、シーズン最初のレースとして、4月半ばにロンシャンで行われるフォンテンブロー賞(G3・芝1600m)か、3月にサンクルーで行われるオムニウムII賞を使ってくることが多いですね。

日本で生まれ、フランスに輸出されたディープインパクト産駒の Barocci は、昨年10月のデビュー戦で2着。今回のオムニウムII賞は約半年ぶりのレースでした。結果は以下のとおり。

■オムニウムII賞(3/31・サンクルー・芝1600m・7頭・不良馬場)
1着 Barocci     1分48秒90
2着 Private Jet     短首
3着 Two for Two      2

見事勝利を飾りました。勝利騎手はクリストフ・スミヨン、調教師はエリー・ルルーシュです。芝1600mで1分48秒90という勝ちタイムですから、ペースが遅かったにしろ馬場は相当悪いですね。母の父 Giant's Causeway や Hypericum≒Aureole 6×6のパワーが活きたように思います。また、Round Table が入るディープインパクト産駒は走るなぁという印象です。
http://www.pedigreequery.com/barocci2

ディープインパクトの母方に潜む Lady Rebecca を刺激する配合は好みなのですが、Sir Gaylord≒Secretariat 6×5・6、Pocahontas 5×7を持つこの馬はまさにそのパターンです。

Giant's Causeway が入るので、あくまでも欧州仕様ながら、配合的には見どころがあります。今後は、仏2000ギニーに直接向かうのか、フォンテンブロー賞あたりを挟むのか、現段階では分かりませんが、いずれにしろ非常に楽しみです。

2011年3月30日 (水)

レーヴディソール骨折

やはり……という言葉が脳裏をよぎった方も多かったのではないかと思います。周知のとおり、父アグネスタキオン、母レーヴドスカーはいずれも体質的に丈夫とはいえない血統。シーズン開幕前からこうした懸念はささやかれていました。今年のアグネスタキオン産駒の有力馬は、途中でリタイアする馬が見当たらず、どれもこれも順調でした。レーヴディソールにしても、潜在的な不安があることを忘れそうなくらい、これまでは何事もなかったのですが……。本当に残念というほかありません。屈腱炎などと異なり骨折は元通りに治ります。そこは不幸中の幸いでした。

2011年3月27日 (日)

ドバイワールドCは日本馬のワン・ツー・フィニッシュ!

競馬に携わってきてよかった、という気持ちを今日ほど強く感じたことはありません。

トランセンドの強気の逃げ。ヴィクトワールピサの早めマクリ。凄かったですね~。“勝つ”という気迫が伝わってくるレース運びでした。最後の直線の粘りは言葉になりません。日本馬のワン・ツー・フィニッシュが決まった瞬間の光景はおそらく一生忘れないでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=BDwNduibQ6w

他国の馬にとってはただの1レースだったかもしれませんが、日本馬にとってはそうではなかったはずです。未曾有の国難のさなか、背負っているものが違いました。レース後、ヴィクトワールピサのデムーロ騎手は右腕の喪章を幾度も示し、天を指差しました。そして、メイダンに流れる君が代。感無量です。

ヴィクトワールピサは元PO馬で、出走レースは可能なかぎり現地観戦してきました。今回も密かに観戦プランを練っていたのですが、大震災でそれどころではなくなってしまいました。日本競馬はいま非常に困難な状況にあります。この1勝が競馬ファンや関係者をどれほど勇気づけたかということは、いまを生きるわれわれにしか理解できないことであり、後世、紙の上の記録からは決して窺い知ることはできないでしょう。

2011年3月 5日 (土)

サニーブライアン逝く

いうまでもなくサラブレッドは成長する生き物です。デビューから引退まで能力がずっと一定ということはありません。充実期に入ると周囲の人々でさえ驚くような変貌を遂げることがあります。サニーブライアンはそれを劇的な形でファンに示した馬でした。

97年にクラシックを戦った世代は個性派ぞろいで強く印象に残っています。なかでもサニーブライアンは皐月賞、日本ダービーの二冠をいずれも逃げ切り、個性派でありながらチャンピオン、という魅力的なキャラクターでした。好きな馬だったのでいくつかの媒体で原稿にしたことがあります。『競馬王』にも数年前、400字詰め原稿用紙15枚ほどの文章を書きました。そこから抜粋します。

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 のちに大西直宏騎手にお会いしたときに、97年の皐月賞からダービーまでの状況について伺う機会があった。
「たしかに、皐月賞の直線のバテ方は酷かったですし、有力馬が馬場に泣いたという評価もありました。馬場が良くて広い東京に移れば、直線も長いし、有力馬が差し切れるんじゃないかとは誰もが思ったでしょうね。皐月賞を勝った時点では僕も評価は一緒で、あんだけバテちゃえば東京ではもたないな、という気はしてましたよ」
 手綱を取った大西騎手自身も、われわれ一般ファンとほぼ同じ見方をしていたというのは驚きだ。だがしかし、と彼はいう。
「皐月賞が終わってからダービーまでの7週間、馬がすごく成長して、それこそ1日1日変わっていくんですよ。他の馬に蹴られてプリンシパルSを使えなかったというアクシデントはあったんですが、稽古を休ませたのは1日だけでしたし、影響はなかったですね。本当に状態のいい馬というのは皮膚の表面に“銭型”が出るというじゃないですか。あの馬の場合、それこそ全身、首のほうまで出ていて、ああ凄いんだなぁと思いましたよ。乗っていても皐月賞前とは全然違う感じがしましたし、競走馬というのは短期間でこれだけ変わるんだなという感じがしましたね。調子の上がる馬というのは何頭も見てきましたけど、あれだけ変わったというのはあの馬だけです」
 皐月賞からダービーまでの短い期間に、サニーブライアンは別馬のように変化していたというのだ。さらに直前には、勝利を予感させる奇妙な出来事が立て続けに起きる。
「ダービーの枠順抽選では大外の18番が出るんじゃないかと予感していて、自分で抽選を引いたら18番。『やっぱり出たな』と思いましたよ。ダービーの前日には南井さん(現調教師)たちと調整ルームでマージャンをやったんですが、緑一色四暗刻というダブル役満をあがったんです。その瞬間、ああ、明日は勝てるなと確信しました」

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当時をご存じない方のために補足しますと、サニーブライアンの皐月賞制覇は、11番人気とノーマークの存在で、しかも逃げ切りだったため「フロック」という評価が大勢を占めていました。ダービーは6番人気。皐月賞の勝ち馬としてはダービー史上最低の人気でした。レースの模様は以下の映像をご参照ください。
http://www.youtube.com/watch?v=FOdVYsByiyo

春のクラシックが近づいてくると、毎年必ずサニーブライアンの教訓が脳裏をかすめます。デビュー当時に足踏みをした馬は、それ以降あまり人気にはなりません。弱かったころのイメージはなかなか払拭できないものです。3歳春はサラブレッドが大きく成長し、それまでの序列がレースごとに入れ替わる時季でもあるので、この見極めが馬券の勝敗に直結します。

今週は土曜日にチューリップ賞、日曜日に弥生賞というクラシックに向けての重要ステップレースが行われます。サニーブライアンの訃報を耳にして「サラブレッドの成長」についてあらためて考えさせられました。短期間にびっくりするような成長を見せる馬が、今年もまた現れないとも限りません。

ちなみに、大西騎手が語ったマージャンのエピソードですが、これは通常の四人マージャンではなくサンマです。念のため。

2011年2月26日 (土)

黛弘人騎手、油断騎乗により9日間の騎乗停止

土曜日の小倉最終レースで、メジロガストンに騎乗した黛弘人騎手が「決勝線手前で2完歩ほど追う動作を緩め2着」(JRAホームページより)となりました。
http://www.youtube.com/watch?v=QCNcvxI0dDs

87年10月の東京競馬で、天間昭一騎手(現調教師)がゴール前で手綱を緩めて後続に差されたことが問題になったとき、騎乗停止期間は「4ヵ月」でした。わたしはこういうケースで仮に半年間の騎乗停止処分が下ったとしても重いとは思いません。

メジロガストンの馬主であるメジロ牧場のブログに以下のような記述があります。

「黛ジョッキーから牧場に電話がありました。ガストンがもたれて斜行しそうになり、それを立て直すために上体が起きてしまったとのこと。しかもムチを入れようとおもった手が勝ったときのガッツポーズにとられてしまったそうです。」
http://ameblo.jp/mejiro308/entry-10813960180.html

JRAの説明は以下のとおり。

「黛騎手本人から事情聴取を行うとともに、パトロール映像を精査した結果、この行為は騎手としての注意義務を著しく怠った油断騎乗であると認め、騎乗停止30日としました。」
http://www.jra.go.jp/news/201102/022602.html

JRAは黛騎手の言い分を認めていません。「騎乗停止30日間」は競馬開催日に直すと「9日間」ということになります。

ゴール前の競り合いの最中、不用意に手綱を緩めたり腰を上げたりする騎手がよく目に付きます。今回は1着と2着が入れ替わったので目立ちましたが、2着と3着、あるいは3着と4着の争いでは、「最後までしっかりと追っていたら着順が入れ替わっていたのでは?」というシーンをたまに目にします。たった数メートル手綱を緩めたぐらいで馬のスピードは変わらないよ、という意見もあります。しかし、ファンの目にはそうは映らないでしょう。レースの公正性に対して疑念を抱かせる行為が競馬ファンの増加につながるとは思えません。

公正というものに厳格な態度を貫くJRAが、なぜこうした行為を放置しているのかよく分かりません。騎手を調整ルームに缶詰にすることよりも重要だと思うのですが。

2011年2月25日 (金)

オーストラリアのスピードクイーン Black Caviar(後)

Black Caviar の重要な構成要素である Vain(1966年生)は、日本ではあまり馴染みのない血で、過去にこの系統の種牡馬が導入されたこともありません。オーストラリアでは83-84年にリーディングサイアーに輝くなどメジャーな血です。現役時代は14戦12勝(2着2回)。圧倒的なスピードで大レースを勝ちまくり、69-70年の豪年度代表馬に選ばれました。名誉の殿堂入りも果たしています。
http://www.pedigreequery.com/vain2

その父 Wilkes(1952年生)は、Worden(ボンモーやマリーノの父、ディクタスやサンシーの母の父)の半弟、ブランブルー(タニノチカラの父)の半兄にあたる良血。父 Court Martial 譲りの非凡なスピードを伝え、1960年代にオーストラリアで3回リーディングサイアーとなりました。Vain と同じく名誉の殿堂入りを果たした Wenona Girl など多数の一流馬を送り出しています。
http://www.pedigreequery.com/wilkes

Vain は、父が Fair Trial 系で、母の父が Nasrullah 系。これら Lady Josephine 牝系の影響を受けた血からスピードを受け継ぎ、Gainsborough-Hyperion を重ねて底力を補強しています。当時のイギリスでよく見られたスピード型の配合パターンで、イギリス血統の影響を強く受けたオーストラリアでもよく見られました。自国で生まれ育った名馬が種牡馬としても成功し、新たな名馬を作り出すための糧となっている、というサイクルが Black Caviar の血統表からは見て取ることができます。オーストラリア生産界の歴史と底力を感じさせる配合ですね。

Black Caviar の母の父 Desert Sun は、現代のスピード血統の新たな主流ラインを形成しつつある Green Desert の子。名誉の殿堂入りを果たした名牝 Sunline(通算48戦32勝)の父でもあります。Black Caviar と Sunline は近い世代に Nijinsky と Desert Sun を持っているという共通点があります。
http://www.pedigreequery.com/sunline

父 Bel Esprit は First Rose≒Tom Fool 4×5。娘の Black Caviar は、Tom Fool の息子 Silly Season 5×5によってこの相似な血のクロスを継続しています。これもポイントのひとつかもしれません。
http://www.pedigreequery.com/first+rose
http://www.pedigreequery.com/tom+fool

       ┌ Menow
First Rose ―┤ ┌ Sir Gallahad(=Bull Dog)
       └○┤ ┌ Broomstick
         └○┤
           └ Cherokee Rose(=Pennant)

       ┌ Menow
Tom Fool ――┤ ┌ Bull Dog(=Sir Gallahad)
       └○┤   ┌ Pennant(=Cherokee Rose)
         │ ┌○┤ ┌ Broomstick
         └○┘ └○┘

Black Caviar は楽勝の連続で、これまで辛勝というものがありません。今回のライトニングSでもゴール前で手綱を抑えていました。勝ちっぷりがあまりに楽なので、弱い相手と戦っているように見えますが、今回の2着馬 Hay List は通算13戦11勝のG1ウィナーで、これも相当な強豪です。よほど調子が悪かったり、長すぎる距離を使ったり、常識外の斤量でも背負わないかぎり、連勝は続いていきそうです。

2011年2月24日 (木)

オーストラリアのスピードクイーン Black Caviar(前)

オーストラリアで注目を集める女傑スプリンター、Black Caviar が無傷の9連勝を飾りました。2月19日に豪フレミントン競馬場で行われたライトニングS(G1・芝1000m)を3・1/4馬身差で快勝。すでに歴史的名牝との評価を獲得しています。
http://www.youtube.com/watch?v=J6QktlVEydw

オーストラリアの芝短距離は世界ナンバーワンの水準。そこで抜きん出た強さを誇っているので、いま世界で一番速い馬かもしれません。
http://www.pedigreequery.com/black+caviar

父 Bel Esprit は前肢に難があるため、1歳時のセールでわずか9000ドル(当時の邦貨で約55万円)の値しか付きませんでした。しかし、競走馬としては何の問題もなく、2つのG1を含めて重賞6勝という成績を収めました。Nijinsky 系のロイヤルアカデミー産駒で、重賞勝ち距離は1000mから1350mです。
http://www.pedigreequery.com/bel+esprit2

昨シーズンの豪種牡馬ランキングは21位。今シーズンは現時点で10位。Black Caviar のほかにロバートサングスターS(豪G1・芝1200m)を勝った Bel Mer などを出しています。
http://www.pedigreequery.com/bel+mer

Black Caviar と Bel Mer は、いずれも「Vain 3×4」というクロスを持っています。Bel Esprit 産駒のこの配合パターンは要注目です。

2011年2月10日 (木)

ファイングレインがフランスで種牡馬入り

2月2日、JRAのサイトに、サクセスブロッケンとファイングレインの競走馬登録抹消の記事がありました。前者は東京競馬場で誘導馬に、後者はフランスで種牡馬となるそうです。

ファイングレイン(父フジキセキ)は Pure Grain(愛オークス、ヨークシャーオークス)の全妹を母に持つ良血で、競走生活の晩年は衰えが目立ったものの、全盛期の5歳春に高松宮記念(G1・芝1200m)を制しています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2003102667/

海外のホースマンにとって、フジキセキとは“Sun Classique の父”という認識でしょう。Sun Classique はフジキセキがシャトル種牡馬でオーストラリアへ渡った際、そこでの種付けで誕生した世界的名牝です。
http://www.pedigreequery.com/sun+classique

オーストラリア生まれの南アフリカ育ち。南アフリカでケープフィリーギニーズ(G1・芝1600m)など3つのG1を制して同国の3歳牝馬チャンピオンとなり、その後、ドバイへ渡ってドバイシーマクラシック(G1・芝2400m)をレコードで勝ちしました。
http://www.youtube.com/watch?v=mY0dfCsmJkQ

Sun Classique は母方に Mill Reef を持ち、その母 Milan Mill 5×5というクロスを持ちます。ファイングレインも同パターンです。それだけでなく、配合構成がかなり似ています。ファイングレインの母ミルグレインと、Sun Classique の母ラストタイクーンは相似な血です。

              ┌ Northern Dancer
            ┌○┘
          ┌○┤ ┌ Buckpasser
ミルグレイン ―――┤ └○┘
          │ ┌ Mill Reef
          └○┘

            ┌ Northern Dancer
          ┌○┤ ┌ Buckpasser
ラストタイクーン ―┤ └○┘
          │ ┌ Mill Reef
          └○┘

フジキセキの成功パターンは幾通りかあるわけですが、こうした血統的共通項を見ると、ファイングレインと Sun Classique は似たような原理で走ったのだろうと想像できます。

Pure Grain の近親で、Sun Classique ときわめてよく似た配合構成を持ち、しかもG1勝ちの競走成績。フランスの生産者がファイングレインに白羽の矢を立てた理由が分かります。成功するかどうかは別として、目の付けどころの良さには感心しました。

昨年暮れ、マルカシェンクがフランスで種牡馬となるニュースが流れ、当ブログでも取り上げました(12月24日のエントリー)。しかし、その後、話は流れてしまったようで、日本で種牡馬入りすることになりました。さすがに2回連続でそんなことにはならないと思うので、何ごともなくフランスに渡ってほしいところです。

2011年1月22日 (土)

Miesque 死亡

『BloodHorse.com』の報道によると、80年代を代表する世界的名牝であり名繁殖牝馬であった Miesque が、1月20日、米ケンタッキー州のレーンズエンドファームで死亡したとのことです。27歳。
http://www.bloodhorse.com/horse-racing/articles/60909/miesque-top-racehorse-and-broodmare-dies

アメリカで生まれ、フランスのフランソワ・ブータン厩舎からデビュー。マイル路線で歴史的な強さを発揮し、2~4歳時に仏英米で16戦12勝(うちG1を10勝)という成績を残しました。アメリカへ遠征してブリーダーズCマイルを2連覇(87、88年)したのですが、1年目の勝ちタイムは1分32秒8(トラックレコード)、2年目は1分38秒6と、まったく異なる馬場コンディションにもかかわらず変わらぬ強さで圧勝したのは驚きでした。軽やかでいて力強いという、一見矛盾するような特長を併せ持った世紀の傑作でした。
http://www.youtube.com/watch?v=tMb5776H2aA
http://www.youtube.com/watch?v=NdZ7b_FErOA

繁殖牝馬としてもきわめて優秀で、Kingmambo(仏2000ギニー、ムーランドロンシャン賞、セントジェームズパレスS)、East of the Moon(仏1000ギニー、仏オークス、ジャックルマロワ賞)という2頭のクラシックホースを送り出し、このうち Kingmambo は名種牡馬となって、日本でもエルコンドルパサー、キングカメハメハなどの父となりました。
http://ahonoora.web.fc2.com/miesque.html

私事ですが、個人ホームページを作ったとき、ドメインに Miesque の名前を拝借しました。それぐらい好きな馬でした。
http://www.miesque.com/

Miesque を所有したニアルコス家は、「Miesque は我々の人生の一部でした」と声明を出しました。「彼女は唯一無二であり、我々に計り知れない喜びをもたらしました」。

2011年1月21日 (金)

ザッツザプレンティ乗馬に

03年の菊花賞馬ザッツザプレンティが種牡馬引退となり、乗馬となることが決定したそうです。

菊花賞のレースぶりは素晴らしいものでした。この馬のスタミナを信頼した安藤勝己騎手は、2周目の3コーナーで自ら動いて早めに先頭に立ち、後続になし崩しに脚を使わせてそのまま押し切りました。瞬発力勝負となることを封じるために、スタミナにものをいわせて自らレースを作っていくという、ステイヤーの乗り方としては完璧なものだったと思います。それに応えたザッツザプレンティも見事でした。
http://www.youtube.com/watch?v=KCZE87fe7Zw

配合の構成はバブルガムフェロー(天皇賞・秋、朝日杯3歳S)とよく似ています。ただ、バブルガムフェローもザッツザプレンティも、種牡馬としてはスピードが足りません。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2000101398/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1993109219/

             ┌ サンデーサイレンス
           ┌○┘
ザッツザプレンティ ―┤
           └○┐
             └ バブルカンパニー

           ┌ サンデーサイレンス
バブルガムフェロー ―┤
           └ バブルカンパニー

たとえステイヤーであっても、産駒が走れば重宝されます。スピード血統ばかりが重用される感のあるアメリカでは、そのイメージとは裏腹に、世界各地からさまざまなスタミナ血統が導入され、Princequillo、Ribot、Herbager などが成功を収めました。スタミナを伝えるこれらの種牡馬は、アメリカのスピード血脈とうまく結びついて多くの一流馬を送り出しました。優秀であれば距離適性がどうであろうと成功し、生産者はその血を求めます。スタミナ血統として貴重だから、という理由で冴えない種牡馬に繁殖牝馬が集まることはまずありません。競争原理と市場原理が貫く生産界では当然のことです。

ザッツザプレンティはこれまで2世代がデビューし、JRAで勝ち上がったのが2頭だけで、2勝馬はゼロ。この成績では……。同じくダンスインザダークを父に持つ菊花賞馬デルタブルースは、古馬になってからオーストラリアに遠征してメルボルンC(G1)を制したのですが、結局、種牡馬にすらなれませんでした。それに比べればまだ恵まれているのかもしれません。今後はノーザンホースパークで乗馬となるようです。

2011年1月20日 (木)

2010年の米年度代表馬に Zenyatta

日本時間の1月18日昼に発表された2010年のエクリプス賞米年度代表馬は Zenyatta でした。票数は以下のとおり。

1位:Zenyatta(牝・2004年生・父 Street Cry)……128票
   10年成績:6戦5勝(G1-5勝)
http://ahonoora.web.fc2.com/zenyatta.html

2位:Blame(牡・2006年生・父 Arch)……102票
   10年成績:5戦4勝(G1-3勝)
http://ahonoora.web.fc2.com/blame.html

3位:Goldikova(牝・2005年生・父 Anabaa)……5票
   10年成績:6戦5勝(G1-5勝)
http://ahonoora.web.fc2.com/goldikova.html

どれが受賞しても一理あるという感じでした。昨年の Rachel Alexandra と Zenyatta の争いでは、個人的に Zenyatta が受賞すると予想して外したのですが、今年はさすがに Zenyatta だろうなと思いました。

エクリプス賞の記者投票は、むろん人気投票ではありません。しかし、勝ったレースをポイント換算して機械的に決めるわけでもありません。

Zenyatta はブリーダーズCクラシック(G1・ダ10f)で Blame との直接対決に敗れ、しかも勝ったG1は牝馬限定戦のみ。そのあたりが評価を難しくさせている部分だったのですが、投票する記者も人の子ですから、昨年受賞させてあげられなかった罪滅ぼしのような面もあったのではないでしょうか。どちらの投票行動が正しく、あるいは正しくなく……ということではないと思います。

ここ2年、全米の競馬シーンを盛り上げてきた女傑に対し、それにふさわしい栄誉が与えられたことを喜ぶファンが多数派ではないでしょうか。

2011年1月16日 (日)

社台グループが欧米セリで良血牝馬を大量購入(後)

社台スタリオンステーションにサンデー系が増殖しているのは周知のとおり。サンデー系が増えすぎて血の飽和を起こすのではないか、という意見もありますが、私はそうは思いません。たとえば仮に、サラブレッドを生産している国が日本だけだったり、あるいは欧米でも日本と同じようにサンデー系が大繁栄しているのなら、そうなる可能性もあるでしょう。しかし、もちろんそのようなことはなく、欧米では Northern Dancer 系や Mr.Prospector 系などの、旧来からある系統が相変わらず繁栄しています。サンデー系と交配可能な他系の牝馬は、海外に出向いてお金さえ出せばいくらでも買えます。幸いなことに社台グループは、それを可能にするだけの潤沢な資金に恵まれています。こんな状況で飽和など起こるはずがありません。あと10年もすれば、サンデーサイレンスのクロスを持つ馬が大レースを勝ち、サンデー系同士の配合も珍しくなくなるでしょう。

種牡馬事業で得た莫大な資金を、海外の良血牝馬の購買に注ぎ込むことは、サンデー系の発展を促すための投資です。サンデー系が健全に成長するために必要となる新鮮な栄養分を、どんどん海外から運んできているわけです。繁殖牝馬のレベルが上昇し、しかもサンデー系が強くなるわけですから一石二鳥です。

「種馬は数打たなきゃ当たらない」という哲学のもと、かつて社台グループは海外の種牡馬を毎年のように導入していましたが、最近は繁殖牝馬の導入に力点を置き換えているような気がします。ある時期を境に、海外から種牡馬を導入して新たな系統を見つけ出そうという考えが後退し、サンデー系を筆頭とする内国産ラインをしっかり育てていこう、という方向に舵を切ったのではないでしょうか。新たな系統を導入するにしても、国内で走った馬のなかで優秀なものを用いれば事足りる、と。“種牡馬による血の更新”から“繁殖牝馬による血の更新”に比重が移っているような気がします。

種牡馬の分野でも、繁殖牝馬の分野でも、国内においては比肩するものが見当たらない社台グループ。これではほかの牧場は追いつけないではないか、とお考えになる方が多いと思います。しかし、ひとつだけやっていない(であろう)ことがあります。それは、アガ・カーン四世殿下がやっているような血統表をベースとした交配種牡馬の選定です。これを社台グループが始めたら半永久的に追いつけないと思います。しかし、やっていないとしたら、その王権は絶対的なものではなく、知恵を使って闘えばまだ革命の起こる余地はあるでしょう。

2011年1月15日 (土)

社台グループが欧米セリで良血牝馬を大量購入(前)

北半球ではだいたい春から秋にかけて1、2歳のセールが行われ、秋冬に繁殖牝馬や現役牝馬などが出場するミックスセールが行われます。良血の繁殖牝馬を手に入れようとするならば、秋冬のミックスセールに出かける必要があります。

1月10日から米ケンタッキーで始まったキーンランドジャニュアリーセールでは、社台ファームが140万ドルの最高価格で Ave(父 Danehill Dancer)を、吉田勝己氏が2番目の価格である80万ドルで Wickedly Perfect(父 Congrats)を落札しました。

Ave は、昨年10月のフラワーボウル招待S(米G1・芝10f)でレッドディザイアを破って優勝した馬です。一方の Wickedly Perfect も米G1ホースですが、明け3歳なのでまだしばらく現役を続けるのではないでしょうか。
http://www.pedigreequery.com/ave5
http://www.pedigreequery.com/wickedly+perfect

このところ欧米のセールにおいて、社台グループ(社台ファームと吉田勝己氏)がどんどん良血牝馬を購入しています。昨年12月に仏ドーヴィルで行われたアルカナディセンバーセールでは、社台グループが落札価格順の上位3頭(Celimene、Lune d'Or、La Boum)までをお買い上げ。また、11月末から12月初めにかけて英ニューマーケットで行われたタタソールズディセンバーセールや、11月に米ケンタッキーで行われたファシグティプトン、キーンランドの両ノベンバーセールでも、目玉商品を続々と落札していきました。

社台グループが落札した主な牝馬は以下のとおり。いずれ日本に輸入され、社台スタリオンステーションの種牡馬群と交配されるのでしょう。どんな実績を持つ牝馬であるかは説明は省きます。興味のある方はURL内にある説明をご覧ください。

http://www.pedigreequery.com/celimene5
http://www.pedigreequery.com/lune+dor2
http://www.pedigreequery.com/la+boum
http://www.pedigreequery.com/serious+attitude2
http://www.pedigreequery.com/gabbys+golden+gal
http://www.pedigreequery.com/dubai+majesty
http://www.pedigreequery.com/franny+freud
http://www.pedigreequery.com/lucky+one3
http://www.pedigreequery.com/fit+right+in
http://www.pedigreequery.com/baroness+thatcher
http://www.pedigreequery.com/moneycantbuymelove2
http://www.pedigreequery.com/pretty+carina2
http://www.pedigreequery.com/cooden+beach
http://www.pedigreequery.com/exhibit+one
http://www.pedigreequery.com/belle+allure3
http://www.pedigreequery.com/limelight11
http://www.pedigreequery.com/pollenator

2010年12月24日 (金)

マルカシェンクがフランスで種牡馬に

先週土曜日、JRAのサイトに告知がありました。最近では日本馬が海外で種牡馬入りすることは珍しくなくなりましたね。アチチさんという方の個人サイト「火傷でアッチッチ! Annex」に、海外で種牡馬となった日本馬のリストがまとめてあります。「DATA」→「海外で活躍する日本関連種牡馬」というルートでご覧いただけます。
http://atiticlinic.web.fc2.com/index.html

これによると、海外で種牡馬入りしたサンデーサイレンス産駒は30頭を超えています。フランスだけでもすでに8頭。

アグネスカミカゼ
グレイトジャーニー
サムソンハッピー
ペールギュント
ボーンキング
ミレニアムバイオ
レゴラス
ローゼンカバリー

現在トルコにいるディヴァインライトは、当初、フランスで種付けを行っていたので、これを含めると9頭です。マルカシェンクがリストに加われば10頭目。

なぜこれほど多いかというと、やはり Natagora 効果ではないでしょうか。いうまでもなくディヴァインライトの代表産駒で、07年のカルティエ賞最優秀2歳牝馬に輝き、08年の英1000ギニー(G1・芝8f)を制した名牝です。
http://www.pedigreequery.com/natagora

日本から連れてきた名もない種牡馬の子が、並み居る強豪をしりぞけて本場イギリスのクラシックを勝ってしまったのですから、その衝撃は小さくなかったと思います。ディープインパクトの凱旋門賞(06年)におけるパフォーマンスと相俟って、サンデーサイレンスが日本のみで通用するローカル種牡馬ではないという認識に至ったのでしょう。その子供たちにどんどんオファーが来たのは当然だと思います。

第二の Natagora が出現!というニュースが聞きたいですね。

2010年12月17日 (金)

ダノンシャンティ有馬へ

アヴェンチュラ骨折、と聞いてガッカリしていたら、骨折が癒えたダノンシャンティの有馬緊急参戦、というニュースが。

いや~、ビックリしました。と同時に、これまで数々の常識を打ち破ってきた松田国英調教師らしいローテーションだと思いました。仮に負けたとしても、さすがに条件が厳しかったね、ということで馬の評価は下がりません。逆に、もし勝ち負けに絡めば、常識破りの好走ということで評価はうなぎ登り。松田国英調教師が常々口にしている「種牡馬の価値」も揺るぎないものとなるでしょう。

配合については一貫して高く評価してきました。共同通信杯、毎日杯、NHKマイルCといずれも◎を打ちました。見解については5月10日のエントリー「NHKマイルCはダノンシャンティ」をご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/05/post-ce80.html

もちろん、懸念材料はいくつかあります。まず、誰もが思うであろう距離面の不安。ハイペースになればスタミナ切れ、スローペースになれば引っ掛かる心配があります。ハイペースのNHKマイルCでは折り合いましたが、スローペースの毎日杯では行きたがっていました。休み明けでテンションが高くなると危ないですね。

松田国英調教師は半年以上の休み明けの成績があまり芳しくありません。このクラスの調教師ですから、もちろん技術がないというわけではありません。調教でキッチリ仕上げるか、使いつつ仕上げるか、という考え方の違いで生じる部分です。角居勝彦厩舎や橋口弘次郎厩舎も、同じように長期休養からのカムバック戦はイマイチという傾向が見られます。逆に、音無秀孝厩舎は半年以上の休み明けは断然買いです。もちろん、今回はいきなり有馬記念に出てくるわけですから、使いつつ……という仕上げでは臨んでこないと思います。すでに坂路で2ヵ月乗り込んでいるので、体調面に大きな問題はないでしょう。

今年の有馬記念は、大げさではなくレース史上最高のメンバー構成ではないでしょうか? 活きのいい3歳馬が多いと盛り上がります。

2010年11月30日 (火)

ディープインパクト産駒の格上がり戦

11月28日のエントリー「土曜日の2歳戦いろいろ」のコメント欄に、ぎむれっと様から「ディープの仔って、なかなか2勝目あげれませんね、新馬戦でパフォーマンス見せてクラス上がると2着までのパターンが多いような気がします」というご意見を賜りました。

ジャパンCが終わったあと、府中駅近くの居酒屋で、石川ワタルさんご夫妻、宇田川淳さん、村田利之さんなど総勢十数名で宴会をしたのですが、奇遇なことにその席でも「ディープインパクト産駒って、すごく勝ってる割に2勝馬が少ないですよね、栗山さんどう思われますか」と訊かれました。

みなさんが疑問に思われていることなのだなぁと実感しました。正しい答えなのかどうかは分かりませんし、あくまでも仮説ですが、現時点における私の考えを述べたいと思います。

11月末までにディープインパクトが挙げた勝利数は33。勝ち上がりは31頭で、うち2勝馬は2頭です(ディープサウンド、ドナウブルー)。京王杯2歳S(G2)でリアルインパクトが2着となっているのでOP馬は計3頭です。

サンデーサイレンスが新種牡馬だった94年は、23頭が30勝を挙げました。2勝以上は7頭です。重賞2着馬を含めるとOP馬は計9頭。時代背景が異なることを考慮しても驚異的な数字です。

ディープインパクト産駒を見ていてちょっと異様だなぁと思うのは、新馬戦における圧倒的な強さです。長いあいだ競馬を見てきましたが、これほど新馬戦で勝ち上がる種牡馬は記憶にありません。またディープ、またまたディープ……といった感じで、そこそこ人気に推された馬ならほとんどが勝ち上がってしまうという印象です。

94年のサンデーサイレンス、2歳戦で過去最高の勝ち星(54勝)を記録した04年のサンデーサイレンス、そして今年のディープインパクトの新馬戦勝率を比較してみます。94年当時は折り返しの新馬戦があったので、それを除いた新馬初戦のみ対象です。

94年 サンデーサイレンス 21.9%
04年 サンデーサイレンス 20.4%
10年 ディープインパクト 31.3%

今年のディープインパクト産駒がどれほど新馬戦に強いかご理解いただけると思います。サンデーにめぼしいライバルがいなかった94年、全盛期を迎えた04年ですら、今年のディープインパクトには敵いません。

ディープインパクト産駒がデビュー戦に強いのは、能力の高さはもちろんですが、気のいいタイプが多く、競走に対して前向きであることが大きいと思います。それに加えて、デビューさせる各厩舎も、ディープインパクト産駒ということで多少意識が違うのか、新馬戦からキッチリ仕上げてきます。どれも高馬だけに“下手な仕上げでは出せない”という気持ちがあるのかもしれません。トーセンレーヴが万全を期してデビューを再三延期しているのはその典型でしょう。

新馬戦向きのディープインパクト産駒が、いきなり目一杯に仕上げられれば、それは強いと思います。ただ、上がり目は乏しく、馬によっては反動もあるでしょう。2戦目にもうひとつパフォーマンスが伸びないのはこのあたりに原因があるのではないかと考えています。

ですから、藤沢厩舎や角居厩舎のような、馬を作りすぎずにゆっくり仕上げる調整法が、ディープインパクト産駒には合っているのではないかと個人的には考えています。ポンポンと勝ち上がるので手が掛からないように見えて、じつは、大成させるためにはほかの種牡馬の子よりも我慢と忍耐が必要なのかもしれません。

優れた資質を持っていることは明らかだと思うので、やがてどんどんOP馬が誕生していくでしょう。

2010年11月26日 (金)

サクラユタカオー死亡(後)

社台ファームは70年代の Princely Gift ブームに背を向け、もちろんテスコボーイ、トウショウボーイとも無縁でした。しかし、トウショウボーイの代表産駒である三冠馬ミスターシービーを社台スタリオンステーションに導入したのに続き、サクラユタカオーの獲得にも乗り出しました。こちらの交渉は失敗するのですが、静内スタリオンステーションに繋養されたサクラユタカオーのもとへ毎年繁殖牝馬を送り込み、「サクラユタカオー×ノーザンテースト」という90年代を代表するニックスによって、サクラバクシンオー、ダイナマイトダディ、トゥナンテ、エアジハード(2代母の父がノーザンテースト)といった活躍馬を生産しました。この配合は他牧場でも成功し、サクラキャンドル、システィーナなどが誕生しています。

シルクロードS(G3)2着など重賞戦線で頑張っているショウナンカザンは、サクラバクシンオー≒ダイナマイトダディ2×2。リスクの高いこのような配合でもしっかり走ってしまうのですから、サクラユタカオーとノーザンテーストの組み合わせはいいものを伝えているのだなぁと実感します。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2005101404/

代表産駒のサクラバクシンオーは2年連続でスプリンターズS(G1・芝1200m)を制しました。1400m以下では12戦11勝、芝1400mで日本史上初めて1分20秒の壁を破った馬でもあります。種牡馬としても成功し、日本競馬にスピード革命をもたらしたテスコボーイのサイアーラインを繋げることに成功しています。また、もう1頭の代表産駒であるエアジハード(安田記念、マイルチャンピオンシップ)は、ショウワモダン(安田記念)の父となりました。

テスコボーイが送り出した牡馬のうち、最も優れていたのはトウショウボーイとサクラユタカオー。トウショウボーイは代表産駒ミスターシービーが失敗したのが大きく、サイアーラインはほぼ絶滅しています。一方、サクラユタカオーはサクラバクシンオーとエアジハードを残しました。

日本産馬のレベルが世界水準に達していなかった時代は、相対的に能力が高い外国産種牡馬が次々と導入され、そのたびに日本国内の血統は更新され、ランキングの上位はそれらに独占される状況でした。内国産の系統は、代を経るごとに能力を上げていかなければ、外から入ってくる種牡馬群に対抗できません。輸入種牡馬のレベルは日本経済の発展と歩調を合わせるように、60年代、70年代、80年代、90年代と上がっていったからです。輸入種牡馬のレベル上昇に敗れ去った内国産ラインはどんどん淘汰されていき、ほとんど残りませんでした。

そうした厳しい時代を生き抜き、約40年にわたって日本に根付いているテスコボーイ系は素晴らしいとしかいいようがありません。サクラユタカオーはその発展に大きく寄与した名種牡馬でした。合掌。

2010年11月25日 (木)

サクラユタカオー死亡(前)

いまから24年前、1986年に行われた第6回ジャパンCで、サクラユタカオーは1番人気に推されました。この年の秋、同馬は競走馬としてのピークを迎えており、毎日王冠(G2・芝1800m)を1分46秒0、続く天皇賞・秋(G1・芝2000m)も1分58秒3と、2戦連続で日本レコードを樹立していました。

530キロに達する雄大で均整の取れた馬体、輝くような明るい栗毛、温和な気性。いかにも良家のボンボンといった風情がありました。天皇賞を制した夜、NHKのスポーツニュースに小島太騎手が中継で出演し、インタビューを受けたという記憶があります。それぐらいスターホースとしての扱いを受けていました。

しかし、期待を背負ったジャパンC(G1・芝2400m)は6着。距離の壁はいかんともしがたいものがありました。

誤解を恐れずにいえば、種牡馬としての可能性という意味では、この結果はポジティヴなものだったと思います。種牡馬というものは、特長のないオールラウンダーよりも、伝えるものがはっきりしている馬のほうが成功すると思います。それがスピードであれば申し分ありません。サクラユタカオーの持ち味は中距離におけるズバ抜けたスピード。2400mでタレたことでこの一芸が際立った、というとらえ方もできるでしょう。

半兄サクラシンゲキ(重賞4勝)、甥にサクラスターオー(皐月賞、菊花賞)がいる良血で、3代母スターロッチは有馬記念とオークスを制した名牝です。日本における最良の在来牝系のひとつといえるでしょう。

これに Nasrullah 3×4というスピード豊かなクロスを施した配合は、シンプルで狙いがはっきりしています。母方にネヴァービートを持つテスコボーイ産駒といえば“黄金の馬”ハギノカムイオー。これも速い馬でした(Nasrullah 3×5・5)。このほか、Jury≒Precipitation 4×5という相似な血のクロスもあるので、配合の完成度は高いと思います。(続く)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1982101222/

        ┌ Hurry On
Jury ―――――┤ ┌ Bachelor's Double
        └○┤
          └○┐ ┌ Desmond
            └○┘

        ┌ Hurry On
Precipitation ―┤ ┌ Bachelor's Double
        └○┤
          └○┐ ┌ Desmond
            └○┘

2010年11月23日 (火)

先週の2歳戦(前)

ディープインパクト産駒が先週5勝を挙げ、初年度産駒の2歳戦勝利数記録である30勝(94年サンデーサイレンス)に並びました。今年はあと5週あるので相当な上積みが期待できそうです。おそらく45~50勝ぐらいは行くだろうと予想します。ちなみに、04年にサンデーサイレンスが2歳戦の最高記録である54勝を挙げたとき、同じ時期に34勝を挙げていました。これよりはやや遅いペースです。

サンデーサイレンスの初年度産駒は67頭。ディープインパクトの152頭に比べると半分以下です。ただ、30勝到達時点の出走回数を比べてみると、サンデーサイレンスの107走に対しディープインパクトは114走と、大きな差はありません。中身は濃いですね。

トップクラスの種牡馬が30勝に到達するまでにどれぐらいの出走回数を要したか比べてみます。

サンデーサイレンス 107走
ディープインパクト 114走 ←←←
アグネスタキオン  181走
クロフネ      186走
サクラバクシンオー 216走
ジャングルポケット 265走
ゼンノロブロイ   267走
シンボリクリスエス 280走
キングカメハメハ  284走
フジキセキ     288走
ネオユニヴァース  332走
スペシャルウィーク 355走
マンハッタンカフェ 357走

サンデーサイレンスとディープインパクトだけが別次元で、他の種牡馬とは一線を画しています。

土曜日の2歳戦で注目したいのは、京都6R新馬戦(芝1600m)を勝ち上がったリトルダーリン、東京5R新馬戦(芝1800m)を勝ち上がったコウヨウレジェンド。

リトルダーリンは「栗山ノート」で指名した馬です。春ごろは馬体重が380キロぐらいしかないという話もあったので、これはちょっと厳しいのかな……と思っていたのですが、初戦は404キロでした。あと20キロぐらいは増えてほしいですね。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想は以下のとおり。

「◎リトルダーリンは『ディープインパクト×ロドリゴデトリアーノ』という組み合わせ。母エリモエクセルはオークス(G1)など4つの重賞を制した名牝。母方にセックスアピール(ラトロワンヌの強い凝縮)やリヴァーマン(ローマンを内包)を持つ配合パターンは好ましい。馬体は小さいようだが素質は高いだろう。」

「栗山ノート」のディープインパクト産駒の項では、母方に Riverman を持つ馬を何頭か選びました。“Pocahontas≒River Lady”が生じ、それらに含まれる Roman がディープインパクトの構成要素のひとつの核なので、好結果が期待できるのではないかと考えたからです。今週、京都2歳Sに出走するレッドセインツなどもそうです。

予想文にも書きましたが、La Troienne の強い凝縮がある Sex Appeal のような血は、おそらくディープインパクトに合うでしょう。
http://www.pedigreequery.com/sex+appeal

ディープインパクトにアメリカ血統が合うことは産駒のデビュー前から主張してきました。そして、La Troienne を持っていないため、そのエッセンスを濃厚に含んだ血を新たに注入することは悪くないでしょう。ですから、Sex Appeal の息子たち(トライマイベスト、El Gran Senor)を含んだ馬も何頭か指名しました。まだサンプルが少ないので何ともいえない状況ですが、数年経てばだいたい傾向が明らかになると思います。

このパターンの1頭がレッドディアーナ(母ケイウーマン)。同馬はそれだけでなく、3代母が River Lady なので大きな期待を掛けていました。しかし、聞くところによると肺炎に罹ってしまったようで、残念ながらデビュー予定は白紙に。素晴らしい配合馬だけに残念です。(続く)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008105563/

2010年11月12日 (金)

レーヴドリアン死亡

菊花賞の健闘からまだ半月しか経っていないので驚きました。腸捻転を悪化させたとのことです。

私的な話をすれば、09-10年のPOGで1位指名した馬でした。調教は動かない、レースでは行き脚がつかず不器用と、じれったくなるような癖馬でしたが、目立つ芦毛だったせいか、なんとなく憎めないキャラでしたね。福永騎手に乗り替わってから脚質に幅が出てきて、「来年こそは」の思いがあっただけに残念でなりません。

配合については1月10日のエントリー「レーヴドリアン完勝――福寿草特別」で触れています。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/01/post-aae6-1.html

そのエントリーにも記しましたが、レーヴドスカーの子供たちは体質面に不安を抱えるケースが目に付きます。半姉レーヴダムールは爪の故障で戦線離脱したあと復帰調整中に死亡。半兄アプレザンレーヴは頑健な四肢を伝えるシンボリクリスエスの子ながら屈腱炎で引退。そして、レーヴドリアンが腸捻転で死亡。抜群に走るのは事実ですが、その一方で暗い影のつきまとう血統でもあります。

  レーヴドスカー(f.1997.Highest Honor)
    ナイアガラ(c.2003.ファンタスティックライト)
    レーヴダムール(f.2005.ファルブラヴ)
    アプレザンレーヴ(c.2006.シンボリクリスエス)
    レーヴドリアン(c.2007.スペシャルウィーク)
    レーヴディソール(f.2008.アグネスタキオン)

今年の2歳牝馬戦線のトップランナー、レーヴディソール(父アグネスタキオン)はレーヴドスカーの末娘。父アグネスタキオンは周知のとおり脚部の弱さを伝えるところのある種牡馬です。このまま何ごともなく大成してほしいですね。

2010年11月 6日 (土)

ブレイクランアウト種牡馬入り

先日の富士S(G3・芝1600m)で故障を発症したブレイクランアウトの種牡馬入りが決定しました。配合的に高く評価していた馬なので、どうなるのか気を揉んでいたのですが、血を残せることになってよかったと思います。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006110007/

父 Smart Strike はアメリカにおける Mr.Prospector 系の代表格。リーディングサイアーの経験もあります。Curlin(米年度代表馬)、English Channel(BCターフを含めて芝G1を6勝)、Lookin At Lucky(プリークネスS)、Fleetstreet Dancer(ジャパンCダート)などを送り出し、芝・ダートを問わず成功しています。

ブレイクランアウトは「Smart Strike×フレンチデピュティ」という組み合わせ。母の父が Deputy Minister 系、という配合は前出の Curlin と同じです。
http://www.pedigreequery.com/curlin

母キューが芝12ハロンのロングアイランドH(米G2)の勝ち馬なので、芝向きの軽いフットワークが備わっていたのでしょう。 Mitterand≒Peroxide Princess 2×2(近い世代で Bold Ruler、Prince John、Eight Thirty、Folle Nuit が共通し、このうち Prince John と Eight Thirty がニックス)というユニークな配合をしています。
http://www.pedigreequery.com/queue2

父母どちらかにおもしろい凝縮のある馬は、種牡馬でも繁殖牝馬でも私の好みです。たとえば、名馬 Native Dancer を産んだ Geisha などがそうですね。その母 Miyako には多重クロスが見られます。
http://www.pedigreequery.com/geisha

70年代末から80年代前半にかけて、地方競馬ではタガワ四兄弟(タガワエース、タガワキング、タガワテツオー、タガワリュウオー)が大活躍しましたが、その母コーホールも同パターンです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1955101937/

笠雄二郎さんの「4分の1異系配合」という考え方は、視点を変えれば、こうした配合パターンをもカバーできうるものではないかと思います。詳しくは以下のサイトをご覧ください。
http://www.tescogabby.com/index.htm

2010年10月28日 (木)

ディープインパクト産駒、土日で4勝(3)

本日紹介する2頭は、いずれも『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』で◎を打って的中した馬なので、手っ取り早く説明するためにその予想文を転載します。カギ括弧の部分です。

■日曜東京5R新馬戦(芝1400m)リアルインパクト
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103244/

「◎リアルインパクトは『ディープインパクト×メドウレイク』という組み合わせ。アイルラヴァゲイン(オーシャンS)の半弟にあたる。母トキオリアリティーは、配合構成がメドウレイクの代表産駒メドウスター(BCジュベナイルフィリーズなど米G1を6勝)と酷似しているので、繁殖牝馬としての好成績もうなずける。基本的にディープインパクトはアメリカ血脈と相性がよく、本馬はサンデー系とニックスの関係にあるヘリオポリスが入るほか、ノーサードチャンス≒ブルームーン5×4・5などを持つ。なかなかの好配合馬。稽古で抜群の時計が出ており、このメンバーが相手なら問題なく通過しそう。」

パドックでは馬っ気を出していました。レース後、後藤浩輝騎手は気性面のコントロールについてコメントしていたので、ネックとなりそうなのはメンタル面だけですね。直線でエンジンが点火するまでにやや間を感じましたが、初戦なので何の問題ないでしょう。フットワークが豪快で惚れ惚れします。直線でグイッと伸びて後続を突き放したときに、スタンドにいた私の周囲に軽くどよめきが起こりました。気性面のケアを優先して大事に使っていくようですね。

■日曜京都5R新馬戦(芝1800m)ダノンバラード
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103548/

「◎ダノンバラードは『ディープインパクト×アンブライドルド』という組み合わせ。半兄にロードアリエス(京都新聞杯-2着)がいる。母レディバラードは現役時代にクイーン賞(G3・ダ1800m)とTCK女王盃(G3・ダ2000m)を勝った。本馬はヘイロー3×3を持っているが、これは父ディープインパクトのヘイロー≒サーアイヴァー2×4を継続するものなので好感が持てる。今年のNHKマイルCを勝ったダノンシャンティとも配合構成が似ている(ヘイロー3×3、2代母が全姉妹、ルファビュルーが入る)。抜群の稽古を消化しているのでしっかり勝ち負けに持ち込むだろう。」

文中でダノンシャンティとの比較について語りましたが、文章だけでは分かりづらいので表にしてみます。

           ┌ サンデーサイレンス
         ┌○┘
ダノンバラード ―┤ ┌○┐ ┌ Le Fabuleux
         └○┤ └○┘
           │ ┌ Halo
           └○┤
             └ Ballade

           ┌ サンデーサイレンス
         ┌○┤ ┌ Le Fabuleux
ダノンシャンティ ┤ └○┘
         └○┐ ┌ Halo
           └○┤
             └ Ballade

ダノンバラードの母の父 Unbridled は名配合の産物。しかし、性質としてはダート向きです。芝で走ったレッドチリペッパー(父 Unbridled)にしても、繁殖牝馬としては決め手を伝えていません。ですから、この血を取り込んで芝向きのA級中距離馬を作るには少々厄介なところがあります。ディープインパクトは、Halo≒Sir Ivor 3・5×3の効果があるにせよ、しっかり手なずけています。このあたりの懐の深さは魅力ですね。ちなみに、今週デビュー予定のダコール(父ディープインパクト)も母の父 Unbridled です。

ダノンバラードが年末に阪神へ行くのか、それとも中山へ向かうのかは分かりませんが、どちらでも好勝負でしょう。

今週の出走馬はまだ確定していません。ただ、10頭以上出てくることは間違いなさそうです。注目のレースは土曜京都6Rの新馬戦(芝2000m)。トーセンレーヴ(池江泰寿厩舎)とオンリーザブレイヴ(角居勝彦厩舎)が出走を予定しています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103273/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102980/

前者はノーザンファームのエース格。水曜日の坂路で好時計を出しました。私が今年のPOGで1位指名した馬です。後者は3月30日のエントリー「ディープインパクトの牝系をクロスさせてみると」で取り上げました。「Burghclere≒Height of Fashion 3×4」という4分の3同血クロスがどう出るか、ですね。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/03/post-fc82.html

このままいくと週末は台風14号の影響で道悪必至。その適性が問われそうです。芝の重・不良でディープインパクト産駒は〔1・1・0・2〕。サンプルは少ないものの悪くない結果が出ています。今週の競馬である程度傾向が鮮明になりそうです。

~~~~~~~~~~~~~~~~

注)トーセンレーヴは出走投票がなかったため、今週のデビューは見送られました。

2010年10月27日 (水)

ディープインパクト産駒、土日で4勝(2)

先週勝ち上がった馬の配合をざっと見ていきたいと思います。

■土曜京都5R新馬戦(芝1600m)ドナウブルー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103250/

ディープインパクトの母は Court Martial(父 Fair Trial)のクロスを持ちます。また、Fair Trial 3×3の Queen's Hussar も入ります。このあたりを刺激すると大物感が出づらいのではないかと考えたので、今年の馬選びでは、Fair Trial やその息子 Court Martial の影響が感じられる血――Danzig や Lyphard など――が入った馬は、積極的に評価しませんでした。ドナウブルーには両方入っています(笑)。

ただ、この馬にはサンデー系と相性のいい Revoked が入るので、そのあたりがポジティヴに作用したのかもしれません。このニックスについては昨年12月5日のエントリー(ミカエルビスティーと「Nothirdchance≒Revoked」)で触れています。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2009/12/nothirdchancere.html

今年のPOGでは、ディープインパクト産駒のレッドセインツ(新潟2歳S-3着)を指名しました。この馬はまさに Nothirdchance≒Revoked のニックスを持っています。

■日曜東京3R未勝利戦(芝2000m)サトノペガサス
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103131/

この馬もドナウブルーと同じく Lyphard クロスを持ち、しかも4×4・4ですから、あまり指名したくないタイプです(笑)。ただ、薔薇一族に属しており、母クラシックローズも3勝馬ですから、牝系の質はなかなかいいですね。

そして、なんといっても「Halo≒Sir Ivor≒Drone 3・5×5」です。父ディープインパクトは「Halo≒Sir Ivor 2×4」が配合構造のひとつの核。これを継続する配合は悪かろうはずがありません。これらとよく似た構造の Drone を入れると、同じような血がトリプルで重なるわけですから、その効果は大きいのではないかと思います。このあたりについては3月26日のエントリー(ディープインパクト産駒の成功する配合パターンとは?)で詳しく触れています。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/03/post-1f90.html

サトノペガサスは中山のほうがいいタイプではないでしょうか。京成杯あたりに向きそうな気がします。(続く)

2010年10月26日 (火)

ディープインパクト産駒、土日で4勝(1)

10月22日のエントリー(ディープインパクト産駒、今週10頭出走)に記したように、今週はうまくいけば3~4頭は勝てそうな情勢でした。期待どおりしっかり勝てるというのはいいですね。

土曜日
 東京2R 未勝利戦  芝1400m フジハヤブサ    9着
 東京4R 新馬戦   芝1800m エアジョイント   5着
 東京9R いちょうS 芝1600m ヒラボクインパクト 取消
 京都3R 未勝利戦  芝2000m スマートロビン   2着
 京都5R 新馬戦   芝1600m ドナウブルー    1着

日曜日
 東京2R 未勝利戦  芝1600m ナイスアゲイン   3着
 東京3R 未勝利戦  芝2000m サトノペガサス   1着
 東京5R 新馬戦   芝1400m リアルインパクト  1着
 京都5R 新馬戦   芝1800m ダノンバラード   1着
 京都5R 新馬戦   芝1800m フェアープライド  7着

夏ごろは明らかに期待先行で、7月から8月にかけてちょっと苦しい時期もありました。しかし、秋風が吹いたあたりからエンジンが掛かり、10月に入ってさらに加速しています。10月の成績は〔8・4・2・9〕。勝率34.8%、連対率52.2%、複勝率60.9%です。

夏のローカル短距離戦に向いたタイプではない、ということは常々言ってきたことですが、それよりも単純に、ここにきて期待馬が続々とデビューを迎えているということでしょう。1年で最もレベルが高いこの時期の新馬戦を、ディープインパクト産駒がどんどん勝ち上がっているわけですから、今後の重賞戦線は同産駒が中心となって展開していきそうな予感がします。もちろん、一方の雄ハーツクライも大物を揃えているので、これから来年春にかけて両産駒の大決戦となりそうですね。楽しみです。

初年度のサンデーサイレンス(94年)は、まったく同時期に18勝ですから、現在18勝のディープインパクトはこれにぴったり並びます。産駒数はディープのほうが多いので、サンデーサイレンスが記録した初年度産駒の勝利数記録「30勝」は、高い確率で更新できるのではないかと思います。

明日は勝ち上がった馬の血統を解説します。(続く)

2010年9月22日 (水)

競馬国際交流協会と日本軽種馬登録協会が合併

本年12月1日をもって両法人は合併し、「ジャパン・スタッドブック・インターナショナル」という組織に生まれ変わります。両法人は競馬を支援するさまざまな事業を行っています。サイトも充実しており、専門家だけでなく競馬ファンにも楽しめる内容となっています。私もしょっちゅう利用させていただいています。

★競馬国際交流協会
http://www.jair.jrao.ne.jp/japan/
★日本軽種馬登録協会
http://www.studbook.jp/ja/

今回の合併は、両者それぞれの事業を一体的・効率的にできる体制を整えることが目的です。特例民法法人は、2013年11月30日までに、新公益法人または一般社団法人・一般財団法人へ移行しなければならないのですが、それを見据えて合併するという事情もあるようです。

競馬国際交流協会も日本軽種馬登録協会も、公益団体であるため収益事業はできません。活動費は補助金などで賄われます。ふたつの団体が合併することにより、そのあたりの節約も図られます。

取材のためお話をうかがった幹部の方は「競馬をとりまく状況は非常に厳しい」とおっしゃっていました。ただ、事業を一体化して無駄を省き、効率的なシステムが作られることは悪いことではないと思います。

なお、事業体としては競馬国際交流協会が日本軽種馬登録協会を吸収合併するという形をとり、事業所は日本軽種馬登録協会のあるJRA新橋分館に置かれるようです。

2010年9月21日 (火)

ハーツクライ固め打ち

種牡馬に関する先週の話題といえばハーツクライの固め打ちでしょう。野路菊S(OP)のワン・ツー・フィニッシュを含めて〔3・3・0・3〕という成績でした。全盛期のイチローを思わせる猛打ぶりです。

サンデー系種牡馬が初年度にどのような成績を残したか、秋の中央開催2週目終了時点で比べてみます。サンプルが4頭だけなのは、これらがほかのサンデー系種牡馬と比べて別格といえる成績だからです。

                   勝率 連対率 複勝率(%)
サンデーサイレンス〔13・6・6・6〕 41.9  61.3  80.6
アグネスタキオン 〔13・8・6・24〕 25.5  41.2  52.9
ディープインパクト〔10・5・7・16〕 26.3  39.5  57.9
ハーツクライ   〔9・7・3・11〕 30.0  53.3  63.3

勝率、連対率、複勝率、いずれにおいてもサンデーサイレンスが圧勝しています。これは当然でしょう。サンデーサイレンスがデビューした当時、ライバルとなるサンデー系種牡馬はいなかったのですから。

ハーツクライは各部門でサンデーサイレンスに次ぐ第2位。サンデーを父に持つ種牡馬ではナンバーワン、ということになります。ただ、2歳のこの時期は週によって成績に波があるので、調子のいい週もあれば悪い週もあります。ハーツクライとディープインパクトについては、これから毎週上がったり下がったりするでしょう。この2頭はいずれリーディングサイアーを争う種牡馬になると思います。

ハーツクライはどう考えても早熟タイプではないので、この成績が一過性のものであるとは考えづらいところです。クラシック向きのスタミナ、底力も持ち合わせているでしょう。

どの距離でもまんべんなく走るところがセールスポイントなのですが、とくに芝1800mでは〔5・2・1・4〕で連対率58.3%。この距離では逆らえません。ウインバリアシオンが楽勝した野路菊S(芝1800m)を見ると、2400mではさらに強いのではないかというイメージが湧いてきます。

いまのところ“母に Northern Dancer の強いクロスを持つ馬”が目立ちます。ウインバリアシオンは2×4。マリアビスティーは2×4。メイショウナルトは3×4。そして、全体的にちょっと硬いかなと思うような血統のほうがいいですね。こうした特長はマンハッタンカフェとよく似ています。ウインバリアシオンの母は「Storm Bird×Time for a Change」ですから、ちょっと日本向きとはいえないような血統です。それをジャパナイズして走らせてしまう力業は非凡ですね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103206/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103221/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008101384/

2010年9月 8日 (水)

橋本邦治さん死去

先月19日にお亡くなりになったとのことですが、9月に入ってから知りました。87歳。大川慶次郎さんより7歳年上で、大正生まれ(大正11年/1922年生)では最も長く現役でいらした競馬関係者ではないでしょうか。つい数年前までラジオNIKKEIの競馬中継に出演されていたイメージがあります。

『日本の名馬』(サラブレッド血統センター)の118頁に、「私と競馬」と題する橋本さんの文章が載っています。抜粋します。

「私の家は、昔府中にあった。そんな関係もあり、父が野戦重砲兵だったりしたため、子供のころから馬が好きだった。そのうえ、目黒から東京競馬場が移転してきたりしたため、なにもわからないうちから、競馬は見ていた。だから、ガヴアナーが『ダービー』に勝った後で急死して、墓地に運ばれる、悲運な姿を見たことを覚えている。」

ガヴアナーは第4回のダービー馬。死んだのは1935年(昭和10年)ですから75年前です。橋本さんはそのときの光景を目撃しています。

また、『優駿』04年10月号にはこんな記述があります。

「私も、馬房によこたわるトキノミノルを見舞ったが、“これがあのダービー馬か”と、目を疑いたくなるような寂しい姿だった。」

トキノミノルは1951年(昭和26年)の二冠馬で、通算10戦全勝。ダービー制覇から17日後に破傷風により死亡しました。橋本さんは死の床にあるトキノミノルも目撃しています。

時代が下り、日本テレビの名物番組『11PM』で、大橋巨泉氏と競馬コーナーを持ったと聞きますが、残念ながら記憶にありません。私にとって橋本さんは『話のかいば』の著者です。NAR地方競馬全国協会の機関誌『地方競馬』に連載されたコラムをまとめたもので、91年にJRA馬事文化賞を受賞しました。競馬に関する幅広い蘊蓄を90のチャプターに分けてエッセイ風に記したものです。読みやすくて好きな本でしたね。「父は、明治の日本画家、橋本雅邦の六男」というプロフィールの記述を見て、へぇ~と感心したりもしました。この本を Amazon で検索しても引っ掛かってきません。現在入手は困難かもしれません。晩年はJRA賞の記者投票でたびたび独創的な票を投じることで話題になりました。

私はよく中山競馬場行きのバスでお見かけしました。雨の日も風の日も変わることなく座席に腰掛けていらっしゃいました。奥様らしきお連れの方と一緒のことが多かったですね。自分はあの歳まで競馬場に通う気力を保てるだろうか……と、そのお背中を見ながら思ったものです。合掌。

2010年9月 4日 (土)

Harbinger 日本へ

社台グループが Harbinger を獲得したと複数の海外メディアが報じています。値段は明らかになっていません。円高傾向が続いているので、このクラスの馬としてはそれほど高い価格ではなかったのでは、と思います。

社台ファーム代表の吉田照哉氏は「種馬は数打たなきゃ当たらない」「失敗するのが当たり前」が口癖です。社台グループといえばサンデーサイレンス、トニービン、ノーザンテーストといった華々しい成功種牡馬にばかり目が行きがちですが、その陰には膨大な数の失敗種牡馬が死屍累々と横たわり、それだけで一冊の本が書けるほどです。種牡馬というものは本来きわめて低い確率でしか成功しません。

競走成績からある程度見分ける方法はあります。2歳時からトップクラスで活躍し、3歳時にスプリントまたはマイルのG1を勝つようなタイプは当たる確率が高いといわれています。ただ、こんなことはプロなら誰でも知っているでしょう。

ヨーロッパでそうした馬を買ってこようとしても、種牡馬ビジネスで激しい火花を散らすクールモア、ダーレー、ジャドモントなどいくつかの巨大資本がまず押さえてしまうので簡単ではありません。当ブログでも Green Desert 系がいいとか Oasis Dream はサンデーと合うだろうとかたびたび書いてきましたが、欲しいといって買えるなら誰も苦労はしません。

現実的には、成功パターンから外れた Harbinger のような大物を狙うしかないのだろうと思います。最前線でしのぎを削る欧米の種牡馬事業グループ群は、クラシックディスタンスを得意とする晩成タイプに強く執着することはなく、だからこそ社台グループが手に入れることができたのだと思います。社台グループには「種馬は数打たなきゃ当たらない」という哲学と、リスクを承知の上でそれに挑むだけの資力があります。たとえ低い確率でも当たれば儲けもので、運良くヒットすれば牧場は20年間安泰です。失敗したとしても屋台骨が揺らぐことはないので、買ってみる価値はあるでしょう。

思えばサンデーサイレンスは血統的なリスクの大きな買い物でした。トニービンもクラシックディスタンスを得意とする晩成タイプ、という成功しづらいカテゴリーに属していました。種牡馬ビジネスというものは常識では割り切れませんし、かといって当てずっぽうでもダメ、という難しさがあります。Harbinger がトニービンになるのかエリシオになるのか分かりませんが、ワールドサラブレッドランキングでは過去最高クラスの評価を得た馬なので期待したいですね。

11馬身差のレコード圧勝、という今年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英G1・芝12f)は、この一戦だけでアスコット競馬場に銅像が建つレベルのパフォーマンスだと思います。ニコニコ動画に生涯全9戦をダイジェストでまとめたものがアップロードされていました。戦績表と合わせて鑑賞すると楽しめます。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm11808925
http://ahonoora.web.fc2.com/harbinger.html

2010年9月 2日 (木)

G1サラブレッドクラブ誕生

今週発売の『週刊競馬ブック』の表紙をめくると、「G1 Thoroughbred Club 誕生」という広告があります。もちろんサイトも存在しており、8月30日付けで「G1サラブレッドクラブが誕生しました!」というインフォメーションが記されています。
http://www.g1tc.co.jp/

サイトのどこにも謳ってはいませんが、社台サラブレッドクラブ、サンデーサラブレッドクラブに続く、社台系第三のクラブ法人なのでしょう。社台グループが新しく何かを始めるらしいという噂は、こうした事情に疎い私の耳にも入っていました。サイトの作り、育成先やリンク先などを見ても、社台グループ以外にないだろうと思います。

驚いたのは「G1サラブレッドクラブは前身のないまったく新しい愛馬会法人」という一文です。この問題について10年前に取材した際に、新規のクラブ法人はもう作れないという規制があることを知り、それはいまなお生きているものと思っていました。事情が変わったのでしょうか。

1頭の総額は1400~3600万円(一口35~90万円)と比較的安く、月会費は1575円ですから社台やサンデーの半額。このご時世ですから大衆化路線は受けるかもしれませんね。

2010年9月 1日 (水)

凱旋門賞のアンティポスト

気がつけば暦は9月、フランスに遠征したヴィクトワールピサとナカヤマフェスタの勝負が迫ってきました。前哨戦のニエル賞(G2・芝2400m)とフォワ賞(G2・芝2400m)は9月12日(日)に、本番の凱旋門賞(G1・芝2400m)は10月3日(日)に行われます。

イギリスのブックメーカーが発表しているアンティポストをご紹介したいと思います。アンティポストとは“事前オッズ”のようなものと考えればいいでしょう。この賭けは、早ければ対象競走の数ヵ月前から受け付けられます。直前オッズよりも当然倍率は高いのですが、出走しなかったとしても掛け金は返ってきません。もし当たれば、賭けた時点のオッズで配当が支払われます。POGが盛んな日本では、もしアンティポストベットが実現したら相当売れると思うのですが。法改正して発売を目指すという動きはないのでしょうか。

多数のブックメーカーのなかで、世界三大ブックメーカーといわれる三社のものをご紹介します(9月1日現在)。数字は左から順にラドブロークス、コーラル、ウイリアムヒルです。オッズは日本式に直しています。

Fame and Glory   4  4  4
Behkabad      7  7  7
Planteur      11  11  11
Workforce      11  9  9
Sarafina      13  13  11
Byword       17  17  15
St Nicholas Abbey     13  13
Sariska       17  13  17
Rewilding         17  21
Youmzain      26  26  26
Cape Blanco        17  21
Cavalryman     17  34  26
Dar Re Mi      34  17  26
Snow Fairy     26  34  26
Daryakana      34  34  34
Goldwaki      41     26
Jan Vermeer        26  34
Ice Blue         41  34
Cutlass Bay     26  41  51
Simon De Montfort     26  34
Midas Touch        51  51

三社とも重賞4連勝中の Fame and Glory が1番人気、パリ大賞典(G1)の勝ち馬 Behkabad が2番人気です。
http://www.pedigreequery.com/fame+and+glory
http://www.pedigreequery.com/behkabad

Fame and Glory は古馬代表で、次走はフォワ賞。一方の Behkabad は3歳代表で、次走はニエル賞。つまり、前者はナカヤマフェスタと、後者はヴィクトワールピサと対決します。

表のなかに日本馬2頭の名前がないのは、まだオッズが付けられていないからです。日本馬の実力が把握できずにオッズが付けられないのか、それとも挑戦することすら知らないのか、事情はよく分かりません。前哨戦が終われば数字が出てくるでしょう。

現時点で数字を発表しているブックメーカーもあります。ヴィクトワールピサには3社がつけており、それぞれ35倍、39倍、44倍。ナカヤマフェスタには2社がつけており、それぞれ107倍、130倍。はっきり“圏外”という扱いです。こういうのを見ると燃えてきますね~。

両馬のオッズが付いている二社は以下のとおり。ご参考までに。
http://www.betfair.com/
http://www.wbx.com/

2010年8月30日 (月)

スーパークリーク死亡

オグリキャップやイナリワンのライバルとして第二次競馬ブームを盛り上げたスーパークリーク(父ノーアテンション)が、8月29日、日高スタリオンステーションで死亡しました。25歳。

スーパークリークといえば武豊騎手。88年の菊花賞でインからスパッと5馬身抜け出したとき、当時19歳の青年の背中にスーパースターのオーラがはっきりと見えました。これはからは武豊の時代なんだな、と多くの人が感じたはずです。
http://www.youtube.com/watch?v=0nO2PPc49hE

以前、競馬評論家の塩崎利雄さんと取材でお会いしたとき、スーパークリークの菊花賞で800万円儲けたとおっしゃっていました。すぐに換金せす、当たり馬券を背広の胸ポケットに入れていたそうなのですが、当日夜に祇園で開かれた祝勝会の最中、たまにポケットをまさぐって「あるある」と確認したそうです。「だって800万の金券だからね。うっかり落としたら大変だからさ~」と笑っておられました。

配合屋が揃って的中させたレース、というのは相場が決まっていて、二昔前なら88年の菊花賞と90年のオークスあたりですね。昔話になったとき、この2レースの話になるとだいたい意気投合します。前者はスーパークリークが、後者はエイシンサニーが勝利を挙げました(一方で配合屋が揃って討ち死にしたレースというのもあるわけですが……)。

スーパークリークは、「ノーアテンション×インターメゾ×Sayajirao×Rockefella」というわかりやすいステイヤー血統。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1985104409/

88年の菊花賞で1番人気に推されたのは「ヤマニンスキー×イエローゴッド」のヤエノムテキ、2番人気は「ディクタス×ノーザンテースト」のディクターランド。そして、3番人気がスーパークリークでした。配合に多少でも関心があればほぼ一択でしょう。76年の菊花賞を勝ったグリーングラスとは、インターメゾ、Rockefella、Grey Sovereign≒ニンバスが共通しているので配合構成がちょっと似ています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1973100905/

第二次競馬ブームの中心的存在だったオグリキャップ、スーパークリークが相次いで死亡し、あのころがどんどん遠くなっていくことを実感します。イナリワンとサッカーボーイには長生きしてほしいものです。

2010年8月27日 (金)

マイネルキッツ、メルボルンCを断念

歩様に乱れが生じたとのことで、豪州遠征を断念することになりました。国枝厩舎やラフィアンの関係者はさぞかし無念でしょう。有力候補の1頭だったと思います。

すでに天皇賞馬ジャガーメイルは回避を表明しているので、結局、メルボルンC(豪G1・芝3200m)に挑戦するのはトウカイトリックのみとなりました。意地を見せてほしいものです。父エルコンドルパサー、母ズーナクアはともに国際G1競走の勝ち馬。血統的なネームバリューはあると思います。9月19日に出発し、10月17日のコーフィールドC(豪G1・2400m)をステップに11月2日の本番に向かいます。

昨日のエントリーでは頑丈な馬の話を書きました。が、サラブレッドは一瞬先にどうなるか分からないデリケートな生き物です。この秋フランスに遠征するヴィクトワールピサとナカヤマフェスタ、アメリカに遠征するエスポワールシチーとレッドディザイアは、ぜひ無事に本番を迎えてほしいものです。

2010年8月19日 (木)

ステキシンスケクンがチリへ

アーリントンC(G3)と京成杯オータムH(G3)を制したステキシンスケクン(父 Danzig)が引退し、南米チリで種牡馬になるとのことです。昨年のちょうどいまごろ、まったく同じニュースが流れたと記憶しているのですが、なにか事情があったのか計画が1年延び、ようやくチリへ渡る運びとなったようです。一時はアイルランドへ渡って調教を重ね、ポップロックのように再起を目指していたそうです。

ここ20年間のチリ生産界は Mr.Prospector 系が牽引しています。90年代は Roy(父 Fappiano)、00年代は Hussonet(父 Mr.Prospector)が一時代を築きました。両者ともアメリカ産馬で、前者は9年連続、後者は7年連続リーディングサイアーとなりました。
http://www.pedigreequery.com/roy
http://www.pedigreequery.com/hussonet

血統表を見ていただければ一目瞭然、スピードタイプです。ですから、こういう文脈で「Danzig×Mr.Prospector」のステキシンスケクンが求められたとすればうなずける話です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2003110015/

ちなみに、ジャパンCダート(G1)に出走したチリ産馬、リドパレスとトータルインパクトも Mr.Prospector 系です。
http://www.pedigreequery.com/lido+palace
http://www.pedigreequery.com/total+impact

話が脱線して恐縮なのですが、十数年前、競馬通信社という会社に所属していたころ、『世界の名馬7代血統表』(青木義明著、栗山求監修)という単行本を作りました。1807年生まれの Whalebone から1993年生まれのエリシオまで、世界の名馬500頭の7代血統表を収録したものです。このリスト選定とすべての短評を私が担当しました。

あまり定かではない記憶ですがチリ産馬は2頭収録しているはずです。1966年生まれの Cougar と1987年生まれの Wolf。前者はビワハヤヒデの父シャルードに母の父として入っています。後者は母に Rheita≒Silver Moon 2×2という鮮やかな4分の3同血クロスがあります。これはカッコいいですね。
http://www.pedigreequery.com/cougar2
http://www.pedigreequery.com/wolf

チリ産馬の血統でおもしろいのは、いまから約100年前に走った Old Boy(1909年生)という芦毛の名馬です。通算36戦33勝という成績を残しました。“チリの Native Dancer”といったところでしょうか。
http://www.pedigreequery.com/old+boy6

母 Skylark もチリオークス、チリセントレジャー(単走)を制した名牝で、これが Palmy 1×3(!)という強度のクロスを持っています。しかし、血統表をよく見ると、両親が栗毛なのに Skylark 自身は芦毛です。芦毛の法則(=芦毛馬は両親のどちらかが芦毛である)に反しているので、毛色が正しいとするならば父は別馬であることが濃厚だと思います。
http://www.pedigreequery.com/skylark21

2010年8月17日 (火)

王登美さん108歳で死去

プロ野球ソフトバンク王貞治会長の母・王登美さんが亡くなりました。108歳。著名人やその係累でここまで長寿を保った例は稀でしょう。

登美さんは1984年に『ありがとうの歳月を生きて』(勁文社)という自伝を上梓しています。時代との関わりのなかで一庶民がどう生きたか、というライフヒストリーがしっかり描かれた好著です。王貞治の母、という事実によりかかっていないところがいいですね。

1901年に富山県で生まれ、1914年の大洪水により一家は没落。生活が立ちゆかなくなり長女登美は単身東京に奉公へ。その後、親兄弟も上京して共同生活を始めるものの、1919年に両親が相次いで病死。兄弟はちりぢりに親戚に預けられることに。1923年の関東大震災を経て、1927年に深川の中華ソバ屋で浙江省出身の料理人・王仕福と出逢い、周囲の猛反対を押し切り翌年結婚。1940年に貞治が誕生。1945年には経営していた店が空襲により全焼。この年までに弟2人、妹1人、娘1人(貞治の双子の姉)を失っていました。

かなり端折って数行にまとめると以上のようになります。朝の連続テレビ小説の題材にするにはややヘビーですね。ただ、当時にあってはとくに壮絶というわけではなく、このような人生はありふれたものであったでしょう。

両親兄弟が次々と早世するなかで登美が生き残ったのは、おそらく体が頑丈だったからだろうと思います。若いころは太っていたため奉公先でのあだ名は「関取」。息子の貞治も並外れた食欲の持ち主で、中学時代は学校から帰ると肉や野菜がいっぱい入った大盛のヤキソバをたいらげて、さらにご飯を三杯食べていたそうです。高校時代になると大盛りの五目ソバをまずかっこみ、そのあと自分の顔ほどもあるステーキを二枚食べてやっと人心地がつくという有様で、「うちが料理屋でなければ食費だけで破産している」と語るほどだったそうです。体も大きく、横綱・吉葉山から相撲部屋に誘われたというエピソードもあります。

母・登美は108歳まで生き、息子・貞治は歴代最多本塁打王に。生命力の基本は食欲なのだなぁとつくづく思います。そういえば先日死亡したオグリキャップは旺盛な食欲に支えられて激戦の連続に耐えました。

皆さま、夏バテしてませんでしょうか? 私はこの暑さで食欲が下降気味なので、今日はしっかり食べようと思います。

2010年8月 7日 (土)

Harbinger 故障

『RACING POST.com』によると、本日ニューマーケットでの調教中に故障を発症。おそらくキャリア続行は無理だろうとのことです。凱旋門賞には出られません。結局、どのレベルの競走馬だったのか、大きな謎を残したまま引退することになりました。

キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英G1・芝12f)の11馬身差圧勝がハイグレードなパフォーマンスであることは事実です。ただ、そのレベルの力を安定的に発揮できる歴史的名馬だったのか、あるいはたまたま嵌って能力以上の大駆けをしてみせただけなのか、もう確かめようがありません。

凱旋門賞はすでに取材に行くことが決まっているのですが、それはヴィクトワールピサとナカヤマフェスタの戦いぶりだけでなく、Harbinger を間近で見られるという期待感も大きなモチベーションでした。残念の一語です。

2010年7月31日 (土)

武豊騎手復帰

金曜日の夜、市川海老蔵・小林麻央の結婚披露宴をテレビでチラッと観たら、ちょうど武豊・佐野量子夫妻が映っていました。あれっ、今週から復帰なのに調整ルームに入らなくていいの? と思ったら、騎乗は日曜日からでした。

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さすがに乗り数をセーブしたようです。

2010年7月28日 (水)

レッドディザイア、BCフィリー&メアターフ参戦へ

ちょっと前に「BCターフ参戦も」という記事を見たと記憶しているのですが、このほどBCフィリー&メアターフ(米G1・芝11f)に出走することが決定したようです。確実に勝ちに行くということでしょう。

9月15日に出国し、まず東海岸のニューヨークに飛んでフラワーボウル招待H(10月2日・米G1・芝10f)を使い、ケンタッキーに移動して11月5日の本番に臨む、というスケジュールです。このふたつのレースはアメリカにおける芝牝馬の王道路線です。

このカテゴリーで現在強敵といえるのは、5月のゲイムリーS(米G1・芝9f)で1、2着した Tuscan Evening と Forever Together あたりでしょうか。ただ、前者は11ハロンがやや長く、後者は6歳を迎えてこれ以上の上がり目があるのか疑問なので、レッドディザイアのほうが上だろうと思います。
http://www.pedigreequery.com/tuscan+evening
http://www.pedigreequery.com/forever+together

やはり怖いのはヨーロッパからの遠征組。現段階では何が出走するのか分かりません。昨年の覇者 Midday は順調なら2連覇を目指すのではないかと思います。
http://www.pedigreequery.com/midday8

ここに挙げた3頭のうち、Tuscan Evening と Midday は Oasis Dream 産駒。Oasis Dream 自身はカルティエ賞最優秀スプリンターに選ばれた快速馬だったので、放っておけばいくらでも速い産駒が産まれますし、スタミナを入れれば2000mぐらいまでは対応できる素晴らしい種牡馬です。2月10日のエントリー「なぜか日本に入らない Green Desert 系」で触れておりますのでご参照ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/02/green-desert-e2.html

2010年7月23日 (金)

痛快?壮絶?元大嶽親方のギャンブル人生

「元大嶽親方『負けは総額5億円かな』」という見出しに惹かれ、写真週刊誌『FLASH』(光文社)を買って読んでみたところ、これが最高に面白い内容でした。

角界を追放された元大嶽親方(現役時代は貴闘力)がギャンブル好きであることは以前から伝え聞いていました。かなり以前のことですが大井競馬場で見かけたことがありますし、たしか大相撲ロンドン公演を扱ったテレビ番組で、着流し姿で競馬場に繰り出して馬券を楽しむ姿を見た記憶があります。

「本格的にハマりはじめたのは、十両に昇進したとき。十両に上がると化粧回しや回しを作るから、支度金が300万円くらいかかる。それは自分で用意するんですよ。(中略)全財産で10万円しかなかった。『これを300万円にしなきゃいかん』と札束を握って、一人で大井競馬場に行ったんですよ。そしたら、400万円儲けたんですよ。そのお金で化粧回しを作った。これが初めての競馬だった。
 それまでは1日15時間くらい稽古していたのに、それ以来、競馬にハマっていったね」

「競馬だったら、1点買いで800万円ぐらい賭けたことがある。負けたけどね。馬の名前なんて、覚えてないよ。だって、1週間前の昼メシなんだった? というのと同じ感覚だから。1億円勝つところを、鼻差で負けたこともあったね。もう血が出るほど叫んだよ。
 シドニーに巡業に行ったとき、カジノで負けまくって、5万円しかなくなったことがあった。でも、そこから最終的に4800万円にしたこともありましたよ。海外巡業はいつも楽しみだったな。カジノに行けるから」

「(「人生におけるギャンブルの収支は?」との問いに)そりゃ、5億円ぐらい負けてるでしょ。だって、年間2、3千万つぎ込んで、20年くらいずっと負けつづけるわけだから。やめられないから、病気なんでしょ。(解雇の)記者会見の最後に『ギャンブルやめますか?』と聞かれて、何も言わなかったけど、心のなかでは『やめません』って言ってたね。そりゃ野球賭博はもうやらないでしょうけど、競馬・競輪はやるでしょ。アホだから」

ギャンブルだけに話題を絞って元大嶽親方が1冊語り下ろしたら売れませんかね? 私なら喜んで買いますが。

2010年7月22日 (木)

セレクションセール2010 2日目(当歳馬)

2日目(21日)は今年生まれたばかりの当歳馬のせり。先週行われたセレクトセールは、国際基準に合わせる形で当歳馬から1歳馬に重心を移し始めています。国内トップの動きは当セールを含めた周辺にも波及しているようで、今年の上場頭数は昨年(162頭)より40%近く減って102頭でした。

1500万円以上で落札された馬は3頭(税別)。以下のリストをご参照ください。

■347番 ┌ ネオユニヴァース
 牡馬 └ リンデンシラユリ(父ダンシングブレーヴ)
      落札価格:1700万円
      落札者:深見富朗
http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/match.pl?fdata=130353&mdata=39747

■394番 ┌ アドマイヤムーン
 牡馬 └ サンタママ(父 Lear Fan)
      落札価格:1740万円
      落札者:(有)ユニオンオーナーズクラブ
http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/match.pl?fdata=187082&mdata=68641

■395番 ┌ ゼンノロブロイ
 牡馬 └ サンターナズソング(父サクラバクシンオー)
      落札価格:2220万円
      落札者:グローブエクワインマネージメント(有)
http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/match.pl?fdata=133312&mdata=116685

上場頭数が少なく、主取りも多かったのでイマイチ盛り上がりに欠けましたね。395番の落札者は多田信尊氏が代表を務めるエージェント会社。どなたかの代理で落札されたのだと思います。“母の父サクラバクシンオー”は、硬めのアメリカ血統を含んだ父との組み合わせで好結果を残しており、サンデー系ではダート向きのゴールドアリュールとの組み合わせでトップカミング(日経新春杯-2着)、メモリアルイヤー(先週の九州産新馬戦を大差圧勝)が出ています。395番の父ゼンノロブロイは母方にそうした血を抱えているので悪くないでしょう。

2010年7月21日 (水)

セレクションセール2010 1日目(1歳馬)

セレクトセールが終わればセレクションセール。7月20日(火)が1歳馬、21日(水)が当歳馬のせりです。

1日目に行われた1歳馬のせりでは、2000万円以上で落札された馬が8頭出ました(税別)。以下をご参照ください。

■33番 ┌ ブライアンズタイム
 牡馬 └ ナイストレビアン(父ノーザンテースト)
      落札価格:2300万円
      落札者:ノーザンファーム
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009104836/

■84番 ┌ フジキセキ
 牡馬 └ ホクトペンダント(父パークリージェント)
      落札価格:2700万円
      落札者:(有)ローズヒル
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009100449/

■99番 ┌ アグネスタキオン
 牡馬 └ ミスカースティー(父 Miswaki)
      落札価格:2500万円
      落札者:加藤守
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009100713/

■119番 ┌ シンボリクリスエス
 牡馬 └ ラモレイエ(父 Theatrical)
      落札価格:2050万円
      落札者:杉山美恵
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009109162/

■149番 ┌ キングカメハメハ
 牡馬 └ アタラマ(父 Sadler's Wells)
      落札価格:2050万円
      落札者:高岡秀行
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009104880/

■178番 ┌ キングカメハメハ
 牡馬 └ オールマイティ(父フジキセキ)
      落札価格:2300万円
      落札者:(有)ビッグレッドファーム
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009102116/

■181番 ┌ ネオユニヴァース
 牡馬 └ ガティーク(父 Gulch)
      落札価格:2250万円
      落札者:山岸桂市
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009101633/

■220番 ┌ ダイワメジャー
 牡馬 └ シックファイター(父ヘクタープロテクター)
      落札価格:2050万円
      落札者:山元哲二
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009103015/

149番の母アタラマ(父キングカメハメハ)を落札したのは、シンガポールで厩舎を開業している高岡秀行調教師。あちらで走らせるのでしょうか。Nureyev≒Sadler's Wells 4×2という力強い4分の3同血クロスがあります。聞くところによるとシンガポールの芝はここ1、2年でやや速くなっているそうですが、それでも日本のような高速馬場ではありません。そうした粘っこい芝に合いそうな配合です。

2010年7月20日 (火)

Overdose 13連勝

“ブダペストの弾丸”の異名をとるハンガリー調教馬 Overdose。昨年4月以来戦列を離れていたのですが、7月18日にスロバキアのリステッドレース(芝1000m)で15ヵ月ぶりの復帰戦に臨み、これを勝利で飾りました。デビュー以来の連勝記録は「13」に伸びています。
http://www.pedigreequery.com/overdose3

レベルの低い東欧のみで連勝を伸ばしているわけではなく、ドイツに遠征してG2とG3を、イタリアに遠征してG3を制しています。2008年にはフランスのアベイドロンシャン賞(G1・芝1000m)に出走し、見事1位で入線したものの、出走馬1頭のゲートが開かなかったため不成立となり競走のやり直しが決定。再レースに Overdose は出走しませんでした。したがって競走成績にこのレースは含まれていません。

YouTube には多くの映像があります。どれもこれも強烈ですね。全13戦の平均着差は約8馬身。着差がつきにくい短距離戦でこの数字ですからスピードの次元が違います。ただ、ここ2年は脚部不安で思うように競馬に使えず、以前のようなスーパーホースぶりを再度示せるかどうかは微妙なところでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=158UOynZhbQ

父 Starborough はセントジェームズパレスS(英G1・芝8f)とジャンプラ賞(仏G1・芝1600m)を勝った Nureyev 系のマイラー。その母 Flamenco Wave は本邦輸入牝馬アンブロジン(ノーリーズンやグレイトジャーニーの母)と配合構成がよく似ています。

Overdose 自身はイギリス産馬で、やや一本調子で確かに速そうな配合ではあります。微妙にウエスタンヒートっぽいですね。1歳時の11月、ニューマーケットのセールで現馬主に落札された際は、わずか2100ポンド(当時のレートで約32万円)の安値だったそうです。

2010年7月 4日 (日)

オグリキャップ死す

自分とオグリキャップの個人的な関係を語れば、3歳時は“幻のダービー馬”と呼ばれていることに不快感を持っていました。本物のダービー馬サクラチヨノオーのファンだったからです。4歳以降はすでに競馬業界で働き始めていたので、日々の仕事に忙殺され競馬を楽しむどころではありませんでした。

オグリキャップに思い入れを持つ機会を失ったまま、あの時代をやり過ごしてしまったことがよかったのか悪かったのかわかりません。同世代の競馬好きはオグリキャップをきっかけに競馬にのめり込んだ方が多く、彼らが熱く“オグリキャップ体験”を語り合っている横で、自分はイマイチ話に乗りきれず、あの時代にとんでもない忘れ物をしてしまったのではないかと、その話題が出るたびに思ったものです。

ただ、オグリキャップの強さはもちろん認めていました。4歳秋のマイルCS→ジャパンCの連闘も凄いと思いましたが、いま振り返って最も強く印象に残っているのは5歳春の安田記念。休み明けをものともせず1分32秒4のレコードで楽勝したレースです。
http://www.youtube.com/watch?v=3CAKpRFNxH4

4歳秋の時点でオグリキャップの偶像化はほぼ完成しており、ハイセイコー以来ひさびさに1頭のサラブレッドが競馬の枠を超えてひとり歩きを始めていました。安田記念が自分のなかに強い印象をもたらしたのは、どんどん肥大化していく“オグリキャップ”という虚像に、実像がググッと近づいて一致するという、そのダイナミズムに心を動かされたからだろうと思います。「やっぱり強いなぁ……」と心底感心しました。

初年度産駒がデビューしたのはサンデーサイレンスと同じ94年。新聞や雑誌で日米種牡馬対決を煽る企画などもあったように記憶しています。片や歴史的大成功を収め、片や歴史的大失敗となりました。1600mを1分32秒4、2400mを2分22秒2で走破する能力の持ち主が、自身の資質をまったくといっていいほど伝えられなかったのは神秘的な印象すら受けます。

当時のレースを YouTube で見ると、映像の向こう側にある“熱度”に圧倒されます。それは言い換えれば“ピープルズホースが存在する時代の幸福感”であるような気がします。

2010年7月 2日 (金)

日本馬2頭が凱旋門賞挑戦

ここにきて世界経済の雲行きが怪しくなってきて、現在ユーロ円は109円ぐらい。凱旋門賞の1着賞金を円換算すると2億5000万円ぐらいです。去年の秋は3億円ぐらいだったのでずいぶん目減りしてしまいました。ひょっとすると10月ぐらいにはユーロ円が100円割れしているかもしれません。

しかし、それでも日本馬が遠征を取りやめることはないでしょう。今年参戦を表明したヴィクトワールピサとナカヤマフェスタは、「行きたい」ではなく「行く」という陣営の強い意志が感じられます。

ヴィクトワールピサの角居勝彦調教師は、シーザリオ、デルタブルース、ハットトリックで海外G1制覇の経験があり、ウオッカでは3年連続ドバイに遠征しました。ナカヤマフェスタの二ノ宮敬宇調教師は、エルコンドルパサーでサンクルー大賞典を勝ち、凱旋門賞でも2着となりました。両陣営とも海外遠征に関して豊富なノウハウを持っています。

凱旋門賞は「3歳馬有利」といわれます。3歳と古馬に3.5キロの斤量差があるのはたしかに大きいですね。日本の場合、秋のG1は2キロ差です。もし仮にヴィクトワールピサがダービーを勝っていたら、三冠か凱旋門賞か――という難しい決断を迫られたことでしょう。負けたことですんなりと遠征一本に進路が定まり、早い時期から準備を整えることができるわけですから、怪我の功名といえるかもしれません。

5月10日のエントリーで「ヴィクトワールピサ、ペルーサ、ダノンシャンティの3頭は世界のどこへ出てもトップを争える逸材でしょう。」と書きました。この考えは変えていません。下手な競馬はしないのではないかと思います。

ナカヤマフェスタは、気性面に弱点があるので、環境の変化に対応できるかどうかですね。この点さえクリアできれば楽しめそうです。

今年はなんとなく観に行ったほうがいいような気がするので、たぶん行くことになると思います。

2010年6月30日 (水)

日本チーム残念でした

ここまで楽しませてくれてありがとうと心から感謝したいです。

試合中、惜しいシュートが飛んだり危ない場面をクリアするたびに、家の外で「ワーッ!」とか「ウォーッ!」とか大集団で騒ぐ声が聞こえたのはいままでにないことでした。若者たちがワンセグ視聴のパブリックビューイングでもしていたのでしょうか? こういう盛り上がりはなかなかいいものです。

2年前にイタリアへ行ったとき、ちょうどサッカーの欧州選手権(ユーロ2008)の真っ最中でした。ローマのホテルに投宿した晩に、ロシアVSオランダの試合が放送されていて、ロシアが点を入れるたびに屋外で大歓声があがりました。

この試合は決勝トーナメントの一回戦(準々決勝)で、勝者は次の準決勝でイタリアVSスペインの勝者と対戦することが決まっていたのです。イタリアとしては、強豪オランダと当たりたくないので、当然、格下ロシアの勝利を願います。

オランダ ―┐
      ├―┐
ロ シ ア ―┘ │
        ├― 決勝進出
スペイン ―┐ │
      ├―┘
イタリア ―┘

イタリア国民の熱い期待に応え、ロシアは3対1のスコアで勝ち上がりました。しかし、翌日行われたイタリアVSスペインは、スペインの勝利。延長戦まで進んで0対0の末、イタリアはPK戦で敗れました。せっかくカモが勝ち上がったと喜んでいたら、自分たちがそこへ行く前に負けてしまったというオチです。

翌日のローマは、沈んだ雰囲気になっているかと思いきや、街へ出てみると何ごともなかったかのような日常がありました。試合前は目一杯盛り上がり、負けてしまえば案外アッサリ受け止める、というのは世界共通の心理かもしれません。

2010年6月10日 (木)

馬の故障と高速馬場

この問題について触れた本が手元に2冊あります。

『競走馬の科学』(JRA競走馬総合研究所編・講談社・06年4月)
『コースの鬼!』(城崎哲著・競馬王新書・07年11月)

因果関係があるのかないのか議論を深める一助として、ちょっと長いのですが抜粋したいと思います。

~~~~

「記録と馬場の関係については、内・外のほかに『時計が速いのは馬場が硬いため』という考えがある。たしかに、硬い馬場は走行タイムが速い傾向にあるが、『時計の速い馬場=硬い馬場』とは必ずしもいえない。芝が密に生えそろって、クッションの効いた状態でも速いタイムを記録することがある。
 また、『硬い馬場は事故のもとになる』という考えもあるが、これも誤った認識である。実際に、時計の速いレースで事故が多発するという傾向はない。競走馬は馬場が硬ければ硬いなりの、軟らかければ軟らかいなりの走り方をする。これから肢を着こうとする場所の状態が、競走馬の予想どおりであれば、危険はさほど高くない。
 しかし、硬かったり軟らかかったり、また凹凸があったりした場合に、競走馬の肢は競走馬自身の予想とは違う動きをしてしまう。これがもっとも事故につながりやすい。
 馬場は競走馬にとって走りやすく、より安全でなければならない。重要になるのが、馬場の均一性である。」(『競走馬の科学』139頁)

~~~~

「馬場造園課の人々にとっての理想の馬場とは、馬・騎手にとって安全で、公平で、たくさんの馬主が自分たちの馬を走らせたいと感じてくれるような馬場である。
 それに対して馬場の速い・遅いは、ファンの関心の中心であっても、馬の故障やアクシデントの議論とかかわってくるため、馬場造園課としたら言いたくないし、聞きたくない。
 彼らは、日本の馬場は外国のそれに比べて路盤が硬い=時計が速すぎる、だから日本は競走馬の故障が多いのだ、というワンパターンの論調で、マスコミ等から長らく――20年以上も――攻撃され続けたために、速いという言葉にやたらと過敏な体質がすっかりできあがってしまっているのだ。
 といって馬場造園課がこの20年間マスコミの意見にまったく耳を傾けてこなかったわけではない。速い芝と言われることにうんざりしながら、それを何とかしたいといちばん思ってきたのは馬場造園課だったはずだ。そのため91年の阪神競馬場の馬場改造を初め、速いものを遅くしようといろんなことを試みてきた。だが結局、馬場の耐久性を犠牲にせずに、日本の馬場の物理的な特性――①アップダウンが少ない、②直線が長い、③労働集約的な管理によってコース面のデコボコが常に平らに修正されている、④洋芝よりも根の張った野芝が使われている――を越えられないというのが現実だった。
 そうやって紆余曲折を経て、ヘタに路盤を軟らかくするくらいなら、もっと芝自体を丈夫にして、全体に均一な、保持力のある馬場を作ったほうがかえって安全な馬場に近づくのではないか、その副産物としてある程度の速さはやむをえないのではないか、という考え方に最近は変わりつつあるようだ。そのところをJRA施設部馬場土木課課長の矢島輝明さんは、
『時計が速いというのと、競走馬の故障しやすさは別のことだと考えている。現実にコース面がデコボコで不均一で遅いよりは、速くてもコース面が平らで硬さが均一な、保持力が十分な馬場のほうが事故や故障が少ないことがわかっている。
 たとえば芝のレースの競走馬の故障率は1999年頃がいちばん高く、約2%だった(出走馬100頭中2頭という意味)が、最近はその半分強(1.1~1.2%)にまで下がっている。それに対してダートの故障率は現在でも1.4%程度だ。
 脚元に不安のある馬がダートに回ることが多いとしても、芝とダートを比べたらダートのほうが断然タイムが遅い。それでいてダートのほうが事故率が高いのは、走破タイムと故障率の間に直接の相関がないことを示している』と説明する。」(『コースの鬼!』28-30頁)

~~~~

日本と諸外国、過去と現在、馬場別・距離別・競馬場別・クラス別……といった故障率の比較データがあれば見てみたいですね。

2010年6月 9日 (水)

御神本訓史騎手が大井競馬復帰

以前書いた話題のフォローといえば、御神本訓史騎手の大井競馬復帰も挙げられます。内部でどのような政治的動きがあったのかは分かりません。今度関係者に会ったときにでも聞いてみます。

5月31日から6月4日まで騎乗し〔2・4・2・30〕という成績。ブランクが長かったわりには騎乗数が集まった印象です。ただ、人気馬に乗る機会はさすがに少ないですね。これから地道に信頼を回復していくしかありません。当面は大井競馬場のみの騎乗となるようです。

ウオッカ、三度目の正直で受胎

レース回顧などをしているうちにここまで後回しになってしまいましたが、ウオッカが無事受胎したという朗報はやはりスルーするわけにはいきません。5月19日のエントリー「ウオッカ、2回目の交配も不受胎」で示した懸念が杞憂に終わりホッとしています。

ウオッカは Northern Dancer も Mr.Prospector もサンデーサイレンスも持ちません。にもかかわらずあれだけの能力を発揮したのですから偉大です。交配相手の Sea the Stars は、Northern Dancer 系×Mr.Prospector 系で、さらにドイツ血統を抱えているので、ウオッカは自身にない新たな活力を取り込むことができるでしょう。
http://www.pedigreequery.com/sea+the+stars
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004104258/

Sea the Stars の2代父 Green Desert については、2月9日のエントリー「Green Desert 時代の幕開け?」、2月10日のエントリー「なぜか日本に入らない Green Desert 系」などで触れました。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/02/green-desert-73.html
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/02/green-desert-73.html

Green Desert 系は、Never Bend クロスを持つ馬が成功しています。したがって、Mill Reef や Riverman(いずれも Never Bend の息子)が入る配合は悪くありません。

“Green Desert+Mill Reef”からは Oasis Dream や Desert Prince が出ましたし、“Green Desert+Riverman”からは Mandesha やメジロダーリングが出ています。
http://www.pedigreequery.com/oasis+dream
http://www.pedigreequery.com/desert+prince
http://www.pedigreequery.com/mandesha
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1996107035/

ウオッカは Riverman を持っているのでこのパターンに当てはまります。ヨーロッパの馬場にも対応できそうな本格派ですね。無事に誕生して育成も順調ならデビューは2013年です。

2010年6月 4日 (金)

的場文男騎手6000勝達成

佐々木竹見騎手は20代、30代と圧倒的な強さを誇りましたが、40代に入るとポジションを下げていきました。桑島孝春騎手は30歳前後が勝ち鞍のピークでした。石崎隆之騎手は31歳から15年連続南関東のリーディングジョッキーの座に就いたあと、徐々に勝ち星を減らしています。昨年は77勝でした。

的場文男騎手は86年から昨年まで24年連続で南関東の勝ち鞍順位のベスト3をキープしています。リーディングジョッキーに輝いたのは02、03年の2回。同じ1956年生まれの石崎騎手が年齢相応の下降線を辿っているのに対し、的場騎手は一向に落ちてきません。昨年は208勝。99年から11年連続で200勝以上を挙げています。

かつて通算7151勝を挙げた佐々木竹見騎手は“鉄人”と呼ばれました。的場文男騎手は何と呼ぶべきでしょうか? ちょっと形容する言葉が見つかりません。50代に突入しても衰えることなく毎年200勝以上を挙げ続けるのですから、もはやオカルトの領域です。

石崎騎手との通算勝利数の差は現在80勝余り。一時はかなり差が開いていたのですが、ここ数年でどんどん詰めています。このペースでいけばあと1年も経たないうちに逆転するでしょう。そして、佐々木竹見騎手の大記録を更新する可能性も現実味を帯びてきます。

6月4日の大井競馬第6Rで的場文男騎手は通算6000勝に到達しました。5000勝達成から4年しか経っていません。このままコンスタントに200勝以上を挙げていけば5~6年で新記録となる計算です。50代半ばにさしかかろうという騎手にこんな机上の計算が成り立たないことぐらい重々承知していますが、衰え知らずの的場騎手ならなんとかなるのでは?という気にさせられます。

2010年5月29日 (土)

すでに始まっている地方競馬の2歳戦

ブログを始めて気がついたのですが、大レースの前は意外と書くことがありません。有力馬の血統については以前にあらかた書いており、それ以上のことを書くとなると限りなく予想に近くなってしまいます。予想めいたことを事前に書くと、私の予想を売っていただいている方々にご迷惑をかけてしまうので、どうしても自粛せざるをえません。

というわけで、無難にPOGの話題を……。

JRAに先駆けて、すでに4月28日から北海道(門別)で2歳戦が始まっています。5月25日には兵庫(姫路)でも始まりました。5月27日時点で勝ち星を挙げている新種牡馬は以下の3頭。

スニッツェル〔1・0・0・0〕
ソングオブウインド〔1・0・2・1〕
ルールオブロー〔1・1・0・3〕

スニッツェルは、オーストラリアのリーディングサイアー Redoute's Choice の子。赤本の企画で“ディープインパクト以外で注目してみたい新種牡馬”として挙げた馬です(139頁)。その一部を抜粋します。

「はっきりと距離の限界があるので、クラシック云々というタイプではない。サクラバクシンオーと同じカテゴリーの種牡馬と考えればいいだろう。脚の回転の速さを活かして夏のローカルからガンガン走ってくるはず。“スニッツェル旋風”を巻き起こす可能性もあるのではないか。」

5月26日、門別8RのJRA認定フレッシュチャレンジ2歳新馬(ダ1200m)に出走したフロレアルは、9頭立ての6番人気ながら2着を8馬身ちぎって勝ちました。
http://www.chihoukeiba.jp/hokkaido/meta/vod/36/2010/05/26/362010052608.asx

おそらく稽古では動かず実戦で変わり身を見せたのでしょう。このパターンは中央でも見られるかもしれないので要注意です。2歳戦ではかなりやれそうな雰囲気を感じさせる種牡馬です。フロレアルは、母フロレアーナが「ダンスインザダーク×ノーザンテースト」というスタミナ型。父のスピードを受け止めるには悪くないですね。Nijinsky≒Storm Bird 5・4×4です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102555/

ソングオブウインドは現役時代に菊花賞を勝ちました。初勝利を挙げた産駒モルフェソングエルはサンデーサイレンス3×3です。このクロスはこれから先どんどん目にする機会が増えていくのでしょうね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102540/

ルールオブローは現役時代に英セントレジャーを勝ち、英ダービーでも2着となったスタミナタイプ。キングカメハメハやエルコンドルパサーと同じ Kingmambo 産駒です。初勝利を挙げたキングロッキーは、母の父がフォーティナイナーで Mr.Prospector 3×3。父はスピード面の懸念を抱えているのでこのクロスはいいでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103436/

このほかの主な新種牡馬の成績は以下の通り。

オンファイア〔0・1・1・3〕
スズカマンボ〔0・0・3・1〕
テレグノシス〔0・0・1・0〕
デビッドジュニア〔0・0・0・1〕
タイムパラドックス〔0・0・0・1〕
リンカーン〔0・0・0・5〕

ちなみに、去年のこの時期に勝ち上がっていた新種牡馬は、ウインデュエル、ウインラディウス、スパイキュールです。ゼンノロブロイ産駒はまだデビューしていませんでした。

2010年5月22日 (土)

今年も顕彰馬選定なし

この問題に関心のある方なら誰もが「たぶんそうなるだろう」と考えていたと思います。案の定そうなりました。そして来年も、再来年も、たぶんそうなるでしょう。よほどのことがないかぎり、今後、顕彰馬は現れないと思います。投票結果は以下のとおり。
http://jra.jp/news/201005/052101.html

選定システムを簡単に説明すると、191人の投票者がそれぞれ2票ずつを投じ、144票以上(191人の4分の3以上)を獲得した馬が顕彰馬となります。問題は、有力候補が票を食い合ってしまうことです。

「選定のハードルが高いからこそ顕彰馬の価値は保たれるのだ」、というのもひとつの考え方でしょう。ただ、私個人は、エルコンドルパサーが落選を重ねるシステムはやはり問題だと思いますし、その上に成り立つ制度はやがて価値を失っていくのではないかと危惧します。

2001年に現行制度が発足してからしばらく、タケシバオーとテイエムオペラオーが票を食い合い、どちらも選定基準に届かないという事態が続きました。これは、2004年にJRA50周年事業という名目で、1人あたりの投票数を2頭から4頭に増やすという特例措置が講じられて解消しました。もし現行システムが適正なものであれば、そもそもそのような特例は不要のはずです。

過去の顕彰馬28頭を生まれた年代によって分類してみました。

30年代……2頭
40年代……4頭
50年代……4頭
60年代……4頭
70年代……4頭
80年代……6頭
90年代……3頭
00年代……1頭

平均すると10年あたり3.5頭、つまり3年に1頭程度の割合です。このぐらいの頻度で顕彰馬を誕生させるシステムを作らなければ、過去と比べてハードルが高いということなので不公平といえます。選ばれるべき馬が選ばれず、滞留馬の層がどんどん厚くなれば、本来選ばれるはずの馬がますます選ばれにくくなるという悪循環に陥り、制度そのものが危機に瀕すると思います。エルコンドルパサー、スペシャルウィーク、ダイワスカーレット、アグネスデジタルといった名馬がひしめくなかに、来年はウオッカが加わります。どの馬であろうと4分の3以上の得票は無理でしょう。

この問題を解決する手段はいくつか考えられます。たとえば、3分の2以上の票を3年連続、あるいは2分の1以上の票を5年連続で獲得したものを顕彰馬とする、というもの。

あるいは、予備投票をして候補馬を3~5頭に絞ってから、あらためて本投票を行うというもの。

システムは現実に即して変えていくものであろうと思います。何らかの改善策が講じられることを期待したいところです。

2010年5月19日 (水)

ウオッカ、2回目の交配も不受胎

アイルランドのギルタウンスタッドに繋養され、Sea the Stars との交配が試みられていたウオッカは、4月11日に続き28日の交配でも不受胎が確認されました。ちょっと気になるニュースです。

ウオッカの日本ダービー制覇は、牝馬としては64年ぶりのことでした。同じようにアメリカでは、1980年に牝馬の Genuine Risk が65年ぶりにケンタッキーダービーを勝ちました。同馬は現役を退いたあと、繁殖牝馬として苦難の途をたどり、不受胎や流産などで10年以上も産駒ができませんでした。そして、懸命の治療が続けられた結果、16歳にして初めての産駒が誕生。しかし結局、同馬は生涯に2頭の産駒しか得られませんでした。
http://www.pedigreequery.com/genuine+risk

似たような例として、1949年に凱旋門賞を勝った Coronation が挙げられます。世界的に広く知られたこの女傑はとうとう1頭の産駒も送り出すことができませんでした。子宝に恵まれなかった原因を Tourbillon 2×2のインブリードに求める向きもありますが、個人的には並外れた競走能力と何らかの関連があるように思います。Coronation の2頭の全妹は正常に子を送り出しました。
http://www.pedigreequery.com/coronation

秋華賞とエリザベス女王杯を制したファインモーションにも産駒がいません。発情もないため最近では種付けすら行われていないという話を耳にしたことがあります。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1999110187/

男勝りの活躍をした牝馬のなかには、稀にこういったタイプがいるような気がします。ウオッカの場合、まだ初年度であり、しかも3回目の種付けが残っているので、心配するのは気が早いかもしれません。朗報を待ちたいと思います。

2010年5月15日 (土)

ヘクタープロテクター死亡

5月12日、北海道日高郡新ひだか町のレックススタッドで死亡しました。22歳。現役時代は仏2000ギニー(G1)、ジャックルマロワ賞(仏G1)など5つのG1を含めて12戦9勝の成績を挙げた名馬でした。

早熟のスピードタイプでローカル向き、といったタイプの種牡馬でしたが、全妹に Bosra Sham(英チャンピオンS、仏1000ギニー)、半弟にシャンハイ(仏2000ギニー)が出たこと、そして初期の産駒から Limnos(日本産馬初の欧州Gレース制覇)と Shiva(同G1制覇)が現れたことにより、海外での評価は高い種牡馬でした。イギリスへレンタルされたり、オーストラリアへシャトルで渡ったりと、まさに席が温まる暇がなかったという印象です。

初年度産駒がデビューした夏は印象的でした。同期にはリズムとスキャンというミスタープロスペクター産駒の新種牡馬がおり、いずれも華々しい競走成績を持っていたので注目されていたのですが、スタートダッシュを決めたのはヘクタープロテクターでした。7月8日に産駒がデビューしてから9月3日にエイシンイットオーが小倉3歳S(G3)を勝つまで、約2ヵ月間に13戦7勝(!)。前年にデビューしたサンデーサイレンスは13戦した時点で3勝だったので、その凄まじさが分かると思います。

Mr.Prospector 系のスピードタイプなので、ローカルの2歳短距離戦では信頼できる種牡馬でした。JRAではセンターライジング(サンスポ賞4歳牝馬特別)、キタサンチャンネル(ニュージーランドT)、プロモーション(クイーンS)など8頭が重賞を勝ちました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1993109152/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1998104068/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1994108627/

海外での種付けからは、Royal Purler(フライトS-豪G1)、Hec of a Party(AJCイマンシペイションS-豪G2)、Shanty Star(クイーンズヴァーズ-英G3)、Vanquished(GCTCザプライムミニスターズC-豪G3)などが誕生しています。
http://www.pedigreequery.com/royal+purler
http://www.pedigreequery.com/hec+of+a+party
http://www.pedigreequery.com/shanty+star
http://www.pedigreequery.com/vanquished2

代表産駒の Limnos と Shiva の兄妹は、Riverman≒Mill Reef 3×3に加え、父方のプレイメイトが持つ War Admiral と La Troienne の凝縮を、母方の Mr.Busher によって継続するという教科書のような配合でした。
http://www.pedigreequery.com/limnos

母の父としてはこれまでに、ブラックエンブレム、タイセイアトム、アドマイヤメインなどを出していますが、この3頭の母はそれぞれ「ヘクター×Vaguely Noble」、「ヘクター×ダイアトム」、「ヘクター×Assert」という配合。ヨーロッパのスタミナ血脈と結びついた牝馬が母となって良駒を送り出す傾向が見られます。

2010年5月11日 (火)

トライマイベスト=El Gran Senor

昨年秋に誘拐されたイタリアの種牡馬 Martino Alonso が無事発見されたそうです。事件発生から半年以上が経過していたので、関係者も最悪の事態を想定していたことは想像に難くありません。種牡馬誘拐→無事発見、という流れを目にすると、つい Shergar 生存のエイプリルフールネタを思い出してしまうのですが、今回は本当のようです。

Martino Alonso は、現役時代にイタリアのG1で2着、3着という成績。至って平凡です。種牡馬としても大きな期待は掛けられず、初年度の産駒数はわずか一桁でした。しかし、そのなかからいきなり Ramonti という国際級の大物が出現しました。通算20戦12勝(2着5回)。レコード勝ちしたクイーンアンS(英G1・芝8f)のほか、サセックスS(英G1・芝8f)、クイーンエリザベスS(英G1・芝8f)、香港C(港G1・芝2000m)、ヴィットリオディカプア賞(伊G1・芝1600m)など数多くのGレースを制しています。いまのところ Martino Alonso 産駒の大物は Ramonti だけで、ほかの産駒とはレベルが違いすぎるので鬼っ子というべき存在です。

Ramonti は、トライマイベスト=El Gran Senor 4×2という大胆な全きょうだいクロスを持っています。伝えるものが弱い血は、これぐらい思い切った配合をしないと大物を出せないということでしょう。
http://www.pedigreequery.com/ramonti

トライマイベストを持つ日本の代表的な種牡馬といえばキングカメハメハ。初年度産駒のナサニエルは、フサイチホウオー、トールポピーの半弟にあたる良血で、全日本2歳優駿(G1)で2着となりました。この馬はトライマイベスト=El Gran Senor 4×3です。今年の2歳では、ツルマルグラマーの2008がトライマイベスト=El Gran Senor 4×3。インディゴワルツの2008がトライマイベスト≒ロッタレース4×2です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008101894/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103089/

2010年5月 7日 (金)

ギリシャのサラブレッド

ギリシャ危機が世界を揺るがしています。昨晩、94円だったドル円の為替レートは、今朝起きてみると91円。未明には一時87円台をつけました。アメリカで100万ドルの馬を買うとすると、昨晩は9400万円必要でしたが、今朝は9100万円で買えるわけです。そういう意味ではお得感があるとはいえ、日本経済への悪影響が深刻なので喜んでいる場合ではありませんね。

ギリシャの競馬については何一つ知りません。ただ、昨年のちょうどいまごろ、ギリシャ出身の Ialysos というスプリンターがイギリスに遠征したことは覚えています。

Ialysos は2004年にギリシャで誕生。父 So Factual、母 Vallota は Polish Precedent の娘ですから、いわゆる持込馬です。
http://www.pedigreequery.com/ialysos

ギリシャのオールウェザーコースで7戦全勝のあとイギリスへ渡り、ヘイドックで行われた移籍緒戦(芝5ハロンのリステッドレース)を勝ったときにはニュースになりました。続くロイヤルアスコットのゴールデンジュビリーS(英G1・芝6f)はさすがに相手が強く、道悪にも脚をとられ14頭立ての12着と惨敗。しかし、続くサンダウンのスプリントS(英G3・芝5f)では巻き返して優勝しました。ギリシャ出身馬がイギリスのGレースを勝つのは史上初ではないでしょうか。Ialysos はその後、シーズン終了までに2戦し、13着、10着という成績を残しています。

Ialysos の半妹 Irida は、地元ギリシャの Filandros という種牡馬を父としています。この父系は見たことがありませんでした。
http://www.pedigreequery.com/irida2

  Teddy(1913)
   Brumeux(1925)
    Borealis(1941)
     Atromitos(1949)
      Nilefs(1966)
       Stavraetos(1971)
        Evippos(1981)
         Filandros(1994)

Borealis はディープインパクトの4代母の父でもあります。こんなラインが残っていたとは驚きです。月並みな感想ですが世界は広いですね。

2010年4月29日 (木)

ケンタッキーダービー大本命馬 Eskendereya が出走回避

これはガッカリです。左前肢に異状が生じたとのこと。ヴィクトワールピサがダービーを回避するようなものですね。

ファウンテンオブユースS(G2・ダ9f)を8・1/2馬身差、ウッドメモリアルS(G1・ダ9f)を9・3/4馬身差で圧勝していたので、もし出走していれば一本かぶりの人気を背負うはずでした。ウッドメモリアルSの勝ち馬といえば、昨年の I Want Revenge も直前の出走取消で本番に出られなかったことを思い出します。

本命視されながら故障によりケンタッキーダービーに出られなかった馬は、どういうわけか種牡馬として成功する確率が高いように思います。たとえば Turn-to。その息子の Hail to Reason と Sir Gaylord などもそうです。このほか Graustark や Hoist the Flag や A.P.Indy なども。このうち A.P.Indy は競走に復帰して米年度代表馬となりました。将来、Eskendereya が成功種牡馬となる確率は高い?
http://www.pedigreequery.com/eskendereya

2010年4月28日 (水)

バブルガムフェロー死亡

史上初めて3歳時に天皇賞・秋(G1)を制したバブルガムフェロー(父サンデーサイレンス)が26日に死亡しました。17歳。肺炎が回復しなかったとのことです。

サンデーサイレンスは、Northern Dancer と同じように、高い競走能力を持った産駒が種牡馬としても成功する、というケースが比較的多いように思うのですが、バブルガムフェローの種牡馬成績はイマイチでした。スピード、瞬発力といった資質を伝えることができませんでした。半兄にあたる Candy Stripes(父 Blushing Groom)は、米年度代表馬 Invasor や米芝牡馬チャンピオン Leroidesanimaux を送り出すなど種牡馬として成功しました。それだけにバブルガムフェローの不振は謎です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1993109219/

ただ、シャトル種牡馬として渡ったオーストラリアでは3頭の重賞勝ち馬を送り出しています。なかでも Rockabubble はNZブラッドストックブリーダーズS(G1・芝1600m)を制しました。オセアニア血統とフィットする馬だったのかもしれません。
http://www.pedigreequery.com/rockabubble

2010年4月22日 (木)

勢力を拡大するドイツ血統

皐月賞2着のヒルノダムール、3着のエイシンフラッシュにはドイツ血統が含まれています。ヨーロッパにおけるドイツ血統は、ブームを超えてすでに定着した感がありますが、日本ではマンハッタンカフェとビワハイジが両輪となってこれから勢力を増していきそうです。3歳世代にはほかに、リリエンタール(水仙賞)やミッションモード(葉牡丹賞)といったドイツ血統の影響を受けた外国産馬が活躍中。今後、ドイツ血統の導入は確実に増加していくはずです。

日本におけるドイツ血統といえば、昔はホッカイダイヤとスタイヴァザントが代表的存在で、前者はホッカイペガサス(ダイヤモンドS、ステイヤーズS)を、後者はブラウンビートル(新潟記念)を出しましたが、いずれも種牡馬として成功したとはいえません。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a000bee/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a000cea/

初期のジャパンCには、パゲーノ、トンボス、カイザーシュテルンといった西ドイツ代表馬が参戦したものの、いずれも見せ場なく後方に敗れています。
http://www.pedigreequery.com/pageno
http://www.pedigreequery.com/tombos
http://www.pedigreequery.com/kaiserstern

こうした状況があったため、当時、ドイツ血統に抱いていたイメージは、「スタミナはあるが重く、道悪が上手でスピードに乏しい」というものでした。この見立ては間違ってはいなかったと思います。エイシンフラッシュが皐月賞で3着に突っ込んできたのは、渋り気味の馬場状態の恩恵を受けた部分もあったでしょう。

ただ、ドイツ血統の特徴がそれだけでしかないなら、現在のような世界的な成功はありえません。ドイツ型馬産とは、ひと言でいえば牝系を重視した系統繁殖です。閉鎖的な環境で似たような血を重ねた結果、ほかのどの国とも違った独自のサラブレッドが育まれました。主流血統とは無縁の異質な血が凝縮されているため、どんな血統とも和合性があり、新鮮な活力をもたらすというメリットがあります。

主要競馬国の血統は、昔の時代に比べてクロスオーバー化が進み、国ごとの個性といったものが消失しつつあります。そうした時代にあって、ドイツ型馬産によって育まれた血統が、貴重な異系――つまりは活力源――として引っ張りだこになるのは自然な成り行きです。サドラーズウェルズと結びつけばその味を引き立て、サンデーサイレンスと結びつけばその味を引き立てます。そうした万能調味料のような役割を果たしてるからこそ、ドイツ血統は世界的な成功を収めているのではないかと思います。

現代における最も重要なドイツ血統は、1974年に誕生した Surumu でしょう。「スタミナはあるが重く、道悪が上手でスピードに乏しい」といった旧来のイメージから脱した、現代性を帯びたドイツ血統です。スピードがあり、堅い馬場も苦にしません。Surumu の2代母 Suncourt はテスコボーイの母でもあります。Monsun は、母の父にSurumu があってこそ世界的な成功を収めることができたのだと思います。
http://www.pedigreequery.com/monsun

ドイツ血統については、『栗山求 Official Website』の「Works」に収められた「ドイツ・ダービーの父系」をご参照ください。エイシンフラッシュの母の父 Platini についても触れています。
http://www.miesque.com/

2010年4月18日 (日)

Hyperion 生誕80周年

20世紀のイギリスを代表する名種牡馬の1頭 Hyperion は、1930年4月18日に誕生しました。本日はちょうど生誕80周年目にあたります。スタミナ、底力といったクラシック向きの資質を伝え、その血は世界中のサラブレッドに広く行き渡っています。
http://www.pedigreequery.com/hyperion

今年の皐月賞出走馬のなかで Hyperion を持たない馬は1頭もいません。詳しく調べてはいないのですが、年度代表馬クラスで Hyperion を持たない馬は Mineshaft(1999年生)が最後だったと記憶しています。
http://www.pedigreequery.com/mineshaft

ちなみに、Nasrullah は今年の3月2日が生誕70周年だったのですが、ブログに書くのを忘れていました。来年は Northern Dancer、Raise a Native、シンザン、Anilin が生誕50周年を迎えます。

2010年4月12日 (月)

Zenyatta 16連勝、そして Personal Ensign の死

4月9日にオークローンパークで行われたアップルブラッサム招待H(G1・ダ9f)は、デビュー以来15戦全勝の Zenyatta が断然人気に応えました。強敵が次々と回避してどう考えても負けないだろうというメンバー構成。いつものように最後方追走から楽々とマクリを決めました。これで16戦全勝(G1は10勝目)。
http://www.youtube.com/watch?v=1I9_Tx9t7z0

その前日、80年代を代表する名牝 Personal Ensign がクレイボーンファームで死亡しました。26歳。キャリアの途中、骨折による約1年の休養(ボルトを5本埋め込む手術により治癒)を余儀なくされたものの、それを乗り越えて13戦全勝という大記録を達成した不屈の名牝です。

引退レースとなった88年のブリーダーズCディスタフ(G1)は、逃げ込みを図る Winning Colors(ケンタッキーダービー馬)、2番手で食い下がるグッバイヘイロー(キングヘイローの母)を大外からまとめて交わし、有終の美を飾りました。痺れるような名勝負でした。
http://www.youtube.com/watch?v=oILJ6IYoZso

Personal Ensign は、Personal Flag(G1を2勝し種牡馬としても成功)の全妹にあたる良血で、アルゼンチン牝系の出身という際だった血統的特徴があります。
http://www.pedigreequery.com/personal+ensign

2代母 Dorine はアルゼンチンの大レースを勝ちまくった名牝。「Aristophanes×Advocate」の組み合わせは同国の歴史的名馬 Forli(Nureyev の母の父、Sadler's Wells の2代母の父)と同じで、Riot≒Fair Trial 3×3がキーポイントのニックスです。
http://www.pedigreequery.com/dorine
http://www.pedigreequery.com/forli

        ┌ Phalaris
      ┌○┤ ┌ Chaucer
Riot ―――┤ └○┘
      └ Lady Juror

        ┌ Phalaris
      ┌○┤ ┌ Chaucer
Fair Trial ┤ └○┘
      └ Lady Juror

繁殖成績も傑出しており、My Flag(ブリーダーズCジュヴェナイルフィリーズ-米G1)、Our Emblem(ウォーエンブレムの父)、Miner's Mark(ジョッキークラブGC-米G1)、Traditionally(オークローンH-米G1)などを出しました。

My Flag は繁殖牝馬としてブリーダーズCジュヴェナイルフィリーズ(G1)の勝ち馬 Storm Flag Flying を出しています。直牝系で3代連続ブリーダーズC優勝馬が現れるというのは空前絶後でしょう。
http://www.pedigreequery.com/storm+flag+flying

   Personal Ensign(f.1984.Private Account)
     My Flag(f.1993.Easy Goer)
       Storm Flag Flying(f.2000.Storm Cat)

Zenyatta は、将来、繁殖牝馬として Personal Ensign のような存在になれるでしょうか。おもしろいのは、この2頭は非常によく似た血統組成を抱えていることです。Personal Ensign の母 Grecian Banner と、Zenyatta の2代母 For the Flag は瓜二つです。
http://www.pedigreequery.com/zenyatta

        ┌ Hoist the Flag
Grecian Banner ┤ ┌ Aristophanes
        └○┤ ┌ Advocate
          └○┘

          ┌ Aristophanes
        ┌○┤ ┌ Advocate
For the Flag ―┤ └○┘
        │ ┌ Hoist the Flag
        └○┘

Zenyatta には、Personal Ensign の血を含んだ種牡馬をつけるとおもしろいかもしれません。

2010年4月 8日 (木)

御神本騎手が7ヵ月ぶりに大井で騎乗

4月7日、大井競馬場で行われた東京スプリント(G3・ダ1200m)は、JRAのスーニが外から伸びて優勝しました。

この日の注目は、高知競馬所属の御神本訓史騎手がどんな騎乗をするかでした。かつて益田競馬の若き天才ジョッキーとして名を馳せ、益田廃止後は大井競馬に移籍。昨年9月に調整ルームから無断外出したことが発覚し、以来、南関東では乗れなくなりました。現在は2月から5月までの期間限定で高知競馬に所属しています。

高知のポートジェネラル(8番人気)に騎乗した御神本騎手は、果敢にハナを奪い、残り70mぐらいまで先頭で粘っていたものの、惜しくも4着に敗れました。直線半ばでは逃げ切りかと思う瞬間がありました。健闘といえるでしょう。

直前の10R(フォーチュネイトはなみずき特別)では、高橋三郎厩舎のアポロプログラム(5番人気)で2着。益田から大井に移籍してきた御神本騎手を、さまざまな面でバックアップしてきた高橋三郎調教師は、彼のたび重なる背信行為によってメンツを潰されてしまったわけですが、こんな状況でも騎乗馬を用意し、チャンスを与えようとするのですからその温情に胸が熱くなります。期待に応えて2着に持ってきた御神本騎手の手腕もさすがです。

高知競馬との契約が終わってからについては、“ミスターピンク”内田利雄騎手のように全国を渡り歩く説、元の鞘に収まる説など、いろいろ囁かれています。もちろんどれも噂の域を出ません。まだ28歳と若く、腕もあるので、やる気になればどこからでも這い上がっていけるでしょう。

2010年4月 6日 (火)

ノーザンテースト系最後の種牡馬

JRAホームページにある最新の競走馬登録リストを眺めていると、「ハンベエクン」という名の2歳馬に目が留まりました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008104167/

父ダイナマイトメール、というのは聞いたことがありません。JRAで走った形跡はなく、NARのサイトで調べてみるとダイナレターの子で、現役時代は浦和競馬で5戦4勝。すべて下級条件でのものなのでまったく無名です。

ノーザンテースト系は、アンバーシャダイ→メジロライアン→メジロブライトという主流ラインがすでに子を出していないので、近いうちに絶滅することは確定的です。種牡馬登録があってもアテ馬専用という馬もいて、結局、産駒を出しているのはダイナマイトメールだけ。つまり、同馬は実質的にノーザンテースト系最後の種牡馬ということになります。ダイナマイトメールには1歳馬の産駒が1頭います。これが現在確認できうる最後のノーザンテースト系競走馬です(まだなっていませんが)。

生産者の小野瀬晃司さんは、十勝総合振興局(旧・十勝支庁)の清水町で馬産を行っており、そうした地理的な制約があるせいか、繁殖牝馬につける種牡馬も独特です。ダイナマイトメールは小野瀬さんが生産・所有した馬なので、おそらくご自身の牧場に繋養しているのでしょう。かつてはダイゼンキング(父トウショウボーイ)やトドロキヒホウ(父ヴェンチア)を、最近ではマイネルプラチナム(父シルヴァーエンディング)を重用しています。

小野瀬さんが生産した馬でいまだに忘れられないのが「リトルジャスミンの1994」です。なんとトドロキヒホウ1×2!
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1994108801/

               ┌ トドロキヒホウ
リトルジャスミンの1994 ―┤ ┌ トドロキヒホウ
               └○┘

この配合の真意を知るために、15年ほど前に牧場にお電話をしたことがあります。小野瀬さんから返ってきた答えは「間違えてつけてしまいまして……」というものでした。

2010年4月 5日 (月)

プリモディーネの子が未勝利戦で勝利

先週、当ブログで故伊達秀和さんの愛馬だったプリモディーネについて採り上げました。すると、奇遇なことに、その息子ローカパーラが日曜日に未勝利戦(中山ダ1200m)を勝ち上がりました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007110058/

父は Seattle Slew 系の Vindication。母プリモディーネは、母系の奥にあるヨーロッパ血統の凝縮から芝適性を受け継ぎつつ、直接的には「アフリート×マルゼンスキー」というアメリカ血統の影響を受けているので、アメリカ血統の強い種牡馬をかけるとダート馬が出ます。ローカパーラはその典型です。

そういえば、4月3日のエントリー(「ナムラタイタン5連勝」)でもアフリートについて採り上げました。べつに意図したわけではないのですが、最近はなぜかアフリートの話題ばかりです。

プリモディーネ(父アフリート)は母系に Nijinsky と Buckpasser を持っているので、4月3日に記した「アフリート、Danzig、Buckpasser」のトライアングルにちょっと似ています。Nijinsky と Danzig の父はいずれも Northern Dancer です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1996101283/

2010年4月 2日 (金)

ファンタストの夢とプリモディーネ

ファンタストといえば現在はファンタストクラブのことを指しますが、その名称の元となったのは1978年の皐月賞馬ファンタスト(「夢みる人」の意)です。皐月賞制覇から3ヵ月後、滞在中の函館競馬場で腸捻転を発症し、短い生涯を閉じました。

父イエローゴッド、母ファラディバはオークス2着馬、2代母ソーダストリーム。典型的な“伊達血統”でした。Pharos=Fairway 5・5×3・5、Fair Trial 4×4、Hurry On 5×5、Buchan 5×5という鮮やかな父母相似配合で、笠雄二郎の『日本サラブレッド配合史』にも採り上げられているほどです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a010208/

とくにソーダストリームと、イエローゴッドの母 Sally Deans は、いずれも3代以内に Fair Trial、Hurry On、Buchan を持ちます。偶然とは考えづらい共通点です。
http://www.pedigreequery.com/soda+stream
http://www.pedigreequery.com/sally+deans

              ┌ Hurry On
            ┌○┘
          ┌○┤ ┌ Buchan
ソーダストリーム ―┤ └○┘
          │ ┌ Fair Trial
          └○┘ 

            ┌ Fair Trial
          ┌○┘ ┌ Hurry On
Sally Deans ――――┤ ┌○┘
          └○┤ ┌ Buchan
            └○┘

伊達さんがお亡くなりになったいまとなっては想像でしかないのですが、イエローゴッドに目を付けて輸入した真の目的は、ソーダストリーム系と交配するためだったのではないか、という気がします。もしそうであれば、計画どおりに作ったファンタストが自身に初のクラシックタイトルをもたらした喜びはひとしおだったでしょう。「一番欲しかったのが、この皐月賞だったのです」と伊達さんは語っています。俗に「最も速い馬が勝つ」といわれる皐月賞は、スピードを第一義として生産を行ってきた伊達さんへの最大の勲章だったのではないでしょうか。

栄光からわずか3ヵ月後に訪れたファンタストの死は、現役クラシック馬の急逝というだけでなく、その血統的な価値からみても惜しまれるものでした。叔父のアローエクスプレスが初年度からテイタニヤ(桜花賞、オークス)を送り出し、種牡馬として大成功していたからです。

ファンタストの死とともに、この馬に関わる多くの人々の夢も墓石の下に葬られました。しかし、21年後、同じソーダストリーム系から出た1頭の牝馬が、ごくささやかながらその夢の一部を果たすことになります。

1999年の桜花賞馬プリモディーネです。

2代母イザベラは、「父イエローゴッド、2代母ソーダストリーム」という配合。ファンタストとほとんど同じ構造です。

        ┌ イエローゴッド
ファンタスト ―┤
        └○┐
          └ ソーダストリーム

        ┌ イエローゴッド
イザベラ ―――┤
        └○┐
          └ ソーダストリーム

イザベラにマルゼンスキーをかけて母モンパリが生まれ、それにアフリートをかけてプリモディーネが生まれました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1996101283/

もう少し図式化していえば、父母相似配合の傑作といえるイザベラ(≒ファンタスト)に、Northern Dancer 系→Mr.Prospector 系という順に主流血統を入れ、見事に現代競馬に対応してみせたのです。母モンパリは Nijinsky と Red God のニックスを持ち、プリモディーネ自身はアフリートと Nijinsky のニックスを持っていました。たんにイザベラ(≒ファンタスト)の血を引くだけでなく、配合全体もきわめて優秀なものだったのです。サンデー全盛期にありながらそれと無縁の血で世代の頂点に立ったのですから賞賛に値します。そして、これを作った伊達さんの手腕には感嘆するしかありません。

現在、プリモディーネはアメリカで繁殖生活を送っており、産駒は日本に輸入されて走っています。残念ながら成績は芳しくありません。日本で走らせるならサンデー系以上の種牡馬は世界のどこを探してもいないのでは、と思います。もし私が種牡馬を選ぶならマンハッタンカフェにするでしょう。
http://www.jbis.or.jp/topics/simulation/result/?sire=0000324971&broodmare=0000303071&x=63&y=21

2010年4月 1日 (木)

伊達秀和氏死去

血統派のオーナーとしても知られた伊達秀和氏が亡くなりました。81歳。昭和20年代に馬主となり、以来50年以上の長きにわたって第一線で活躍されました。主な所有馬は、アローエクスプレス、ファンタスト、ブロケード、パーシャンボーイ、プリモディーネなど。

中長距離が競馬の主役だった時代から「私はマイラー指向です」と公言し、スパニッシュイクスプレス、イエローゴッド、テュデナムといったスピード豊かな種牡馬や、名牝系の祖となったソーダストリームを輸入しました。

『競馬四季報』(77年秋号)に「アローエクスプレスとそのファミリー」という特集があるのですが、そのなかで伊達さんはご自身の血統観を語っています。いくつか抜粋してみます。

「私はよくいうんだけど、競走馬の場合、スタミナとスピードのうち、どちらを重視するかといったら、それは絶対スピードだと。スピードこそが競馬の基本だという考えを持ってますからね。」

「ファミリーというのは自らつくり出すものでね。どんな名血だってこつ然としてできるんではなくて、つくられるものである。最初から名血というのはないんだと。」

「種馬の選択っていうのも難しくてね、外国で走ったからといって日本で走るとは限らんし。やはりその国に合ったものを探さなきゃいかん訳ですよ。いい例がネヴァーセイダイでしょ。欧米じゃ、あの程度の種馬ならたいしたことないですが、だけど日本は別。ネヴァーセイダイの子というだけで走る。なにしろ、コントライト級の種馬から、テンポイントが出るんだから。みんな同じ系統の馬をワッと入れる割には、この系統的な相性というのに、意外に無関心なんだな。だから私は、外国の成績が良くても、日本に向かない系統は避けますね。」

伊達さんが輸入した馬の配合を見てまず感じるのは、その質の高さと品の良さです。そして、アガ・カーン血脈への傾倒の跡がうかがえます。ソーダストリームはアガ・カーンの牝系から出た馬ですし、その母 Pangani は Lady Josephine 3×5です。スパニッシュイクスプレスやイエローゴッドを購入したのは Nasrullah への信頼でしょう。馬選びの視線に、スピードを重んじる哲学が感じられます。
http://www.pedigreequery.com/pangani
http://www.pedigreequery.com/spanish+express
http://www.pedigreequery.com/yellow+god

スパニッシュイクスプレスとソーダストリームの間に誕生したアローエクスプレスは、伊達さんの血統理論の結晶といえるもので、現役時代に朝日杯3歳Sなど4つの重賞を制したほか、1980、81年にリーディングサイアー(中央+地方)となりました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a000afe/

もし伊達さんが馬と関わっていなかったら、日本の競馬は現在と違ったものになっていたでしょう。ご冥福をお祈りします。

2010年3月31日 (水)

アラン・ポーターの「世界の最新血統」

アラン・ポーターはイギリス生まれの血統評論家で、十数年前、私が当時関わっていた『週刊競馬通信』という血統専門誌に連載を持っていました(『Patterns of Greatness』『Patterns of Greatness II』の翻訳)。この人の配合研究の深さは一目置くところであり、昨年から『週刊競馬ブック』誌に不定期ながら新たな連載を持ったのは喜ばしいかぎりです。

ただ、素晴らしい連載だけに、残念なところもあります。文章の見せ方です。ページの制約があるのは分かるのですが、さかのぼった代の細かな血統を論じているのに、4代血統表が1つ掲げられているだけでは、おそらく一読して誰も内容を理解できないでしょう。「Throughbred Horse Pedigree Query」などの海外血統検索サイトを利用して、研究したい人は研究してください、ということなのかもしれませんが、文中の馬名がすべてカタカナ表記なので、初心者の方はそれをアルファベットに置き換えるのも一苦労だと思います。アルファベットがなければ血統表検索ができません。

補足の血統表を増やす、アルファベットを併記する、という改善がなければ、いいことが書いてあるのにほとんど読む人がいないという、じつにもったいない連載になってしまうと思います。

今週号の文中に登場する「スリーパーツ・シスター」という用語もどうでしょうか。一読してこの意味を理解できる人は少ないと思います。「4分の3同血」という血統用語が日本にあるのですから、それを使ったほうがいいのではないでしょうか。

厳しいことを書き連ねてしまいましたが、この素晴らしい連載を多くの人に読んでほしいという気持ちから出たものなのでお許しを。

2010年3月24日 (水)

ベネズエラの女傑 Bambera が故障

命に別状がないのは不幸中の幸いです。3月17日と2月16日のエントリーで採り上げたベネズエラの女傑 Bambera が、アメリカ移籍初戦のランパートS(3月21日・米G2・ダ9f)のレース中に故障を発症。8頭立てのしんがりに敗れました。スタートで躓いて体勢を崩した際、肢の腱にダメージを負ったようです。レース映像は以下のURLで見ることができます。最内枠の青い勝負服が Bambera です。
http://www.youtube.com/watch?v=Pd97T1lrz7g

YouTube のコメント欄にスペイン語の書き込みがたくさんあります。ベネズエラだけでなくカリブ海沿岸諸国の期待を背負っての挑戦だっただけに、この結果は残念でならないでしょう。これで4月9日のアップルブラッサム招待Hは Zenyatta の独壇場。難なく16連勝を達成しそうです。

2010年3月17日 (水)

世紀の女傑対決、お流れに

Rachel Alexandra と Zenyatta の世紀の女傑対決(4月9日、アップルブラッサム招待S-米G1)は、結局、お流れとなってしまいました。Rachel Alexandra が休み明け緒戦で思わぬ敗戦を喫し、陣営が回避を決めたからです。

オールウェザーを主戦場とする Zenyatta が、対決を実現するためにダートへの出走に踏み切るという歩み寄りを見せたのに、ホーム側の Rachel Alexandra がさっさと回避を決めたのでは、逃げているという批判が出ても仕方ありません。こうした姿勢は、直接対決で負けるよりも Rachel Alexandra の名誉を傷つけると思うのですが。

ただ、今回は負け方が悪かったのも事実です。いくら休み明けで体調がイマイチとはいえ、4コーナーでマクられて直線でねじ伏せられるという、力負けとしか思えないレースぶりでした。
http://www.youtube.com/watch?v=thcV_9NDqVA

勝った Zardana は、Zenyatta と同じジョン・シレフス調教師の管理馬。ライバルの実力を測ろうと僚馬を出走させたら思いがけず勝ってしまったわけです。驚くべきことにこれが初ダート。眠っていた能力が目覚めた可能性もあります。Sadler's Wells の孫にあたるブラジル産馬で、母の父はサザンヘイロー、2代母の父 Merce Cunningham は Caerleon の全弟です。配合を見てレッドディザイア(とジョーカプチーノ)を思い出しました。近い世代で Sadler's Wells、Halo、Caerleon(=Merce Cunningham)が共通します。
http://www.pedigreequery.com/zardan
http://www.pedigreequery.com/red+desire2

          ┌ Sadler's Wells
        ┌○┘
Zardana ――――┤   ┌ Halo
        │ ┌○┘         ┌ Nijinsky
        └○┤ ┌Merce Cunningham ┤
          └○┘         └ Foreseer

            ┌ Halo
          ┌○┘
        ┌○┘     ┌ Nijinsky
レッドディザイア┤ ┌ Caerleon ┤
        └○┤     └ Foreseer
          │ ┌ Sadler's Wells
          └○┘

一方の Zenyatta は、休み明け緒戦のサンタマルガリータ招待H(米G1)をいつもどおりの強さで快勝しました。
http://www.youtube.com/watch?v=S0SwxIi11aI

4月9日のアップルブラッサム招待Hは、これで Zenyatta の独壇場かといえばそうでもなく、2月16日のエントリーで採り上げたベネズエラの女傑 Bambera(通算18戦16勝)が挑戦してきます。
http://www.pedigreequery.com/bambera2

Rachel Alexandra が回避し、総賞金が10分の1に減額されてもなお、興味深いレースには違いありません。

2010年3月16日 (火)

フィフスペトル復活

先週日曜日の東風S(OP・中山芝1600m)でフィフスペトルが復活しました。2歳夏の函館2歳S(G3)以来1年7ヵ月ぶりの勝利です。この馬の配合についての見解は、08年7月の新馬戦で◎を打ったとき以来ほとんど変わっていません。当時、『web競馬王』に掲載した予想を再録します。

「◎フィフスペトルは『キングカメハメハ×バーリ』という組み合わせ。キングカメハメハはトゥールビヨン-ジェベルのラインが母系の構成要素の核となっているので、ここを強化した配合は買える。本馬の母の父バーリは英マイルG1を2勝した名馬で、ジェベル5×5。配合相手に入る血脈としては好ましい。本馬はミルリーフ≒リヴァーマン5×3。底力に秀でた本格的な血で構成されており、新馬戦だけでなく先々まで楽しめそう。」

キングカメハメハは Never Bend と相性がいいだろう――ということは、産駒がデビューする前から赤本(POGの達人)などで指摘してきました。2月3日のエントリーでも触れた箇所なのでご参照ください。

新馬戦の予想をした時点ではうっかりスルーしてしまったのですが、フィフスペトルの母ライラックレーンには、Never Bend≒Nanticious 3×3があります。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a00fed6/
http://www.pedigreequery.com/never+bend
http://www.pedigreequery.com/nanticious

      ┌ Nasrullah
Never Bend ┤     ┌ Tourbillon
      │   ┌○┘
      │ ┌○┘
      └○┤
        └ Be Faithful

        ┌ Nasrullah
      ┌○┘
Nanticious ┤   ┌ Tourbillon
      │ ┌○┘
      └○┤
        └ Be Faithful

このほか、Nijinsky 3×3、My Babu≒Ambiorix 5×5、Bull Page≒Rerelea 5×4・5、Nasrullah≒Royal Charger 4・6×5・5・5など、眩暈がするような父母相似配合です。

こういう特殊な凝縮を持つ配合馬は、競走馬としてはダメでも、母や2代母となって真価を発揮することがよくあります。たとえばトキツダイヤなどはその一例です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a0034f9/

この悪夢のような配合は孫の代で花開きました。70年代末から80年代前半にかけて地方競馬を賑わしたタガワ四兄弟(タガワエース、タガワキング、タガワテツオー、タガワリュウオー)は、トキツダイヤの孫です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1977102855/

フィフスペトルの母ライラックレーンは、Blushing K.D.(ケンタッキーオークス-米G1)や Electronic Unicorn(香港の名マイラー)の半妹でもあり、繁殖牝馬としてかなりの器かもしれないと考え、昨年のPOGではフィフスペトルの半弟ヴァルガリスを指名したのですが、いまだに仕上がらずデビューに至っていません。その全妹にあたる今年の2歳馬は早々と故障してしまいました。こういう配合なので体質的な弱さを伝えるのかもしれません(しかも2頭の父はアグネスタキオンです)。

東風Sを快勝したフィフスペトルは、次走、中2週でダービー卿チャレンジトロフィー(G3)か、中4週でマイラーズC(G2)に挑むはずです。そこからぜひ安田記念(G1)に駒を進めてほしいものです。

2010年3月15日 (月)

関口房朗氏が苦境に

3月14日付けの『東京スポーツ』によれば、先日、船橋のダイオライト記念(G2)を勝ったばかりのフサイチセブンが裁判所に差し押さえられたそうです。

数年前から苦境が漏れ伝わっていた馬主の関口房朗氏は、1990年代半ば以降、競馬界有数のスポンサーでした。本業や私生活に関してはうかがい知るところではありませんが、少なくとも競馬にまつわる活動については、ほかの誰にも真似できないことをなさった方だと思います。経済的に厳しくなってからは、セリで落札した馬の代金支払いに窮し、たびたびトラブルを起こしていました。

いまをときめくレッドディザイアは、じつは関口氏と深い関わりがあります。父マンハッタンカフェを最初にセリで落札(1億3000万円)したのは関口氏でした。その後、キャンセルとなったため西川清氏と吉田照哉氏の共同持ち馬となりました。イギリス生まれの母グレイトサンライズは、関口氏の名義で生産された馬です。しかし、自ら走らせることはなく、歌手でタレントのやしきたかじん氏の名義で走りました。数年後、この2頭が結びつき、レッドディザイアが誕生しました。

毀誉褒貶はさまざまですが、ファンサービスの姿勢は徹底していたので、関口氏のことを悪く言うファンは少なかったような気がします。

数年前、『それでも悲しき日本競馬』(東邦出版)という関口氏の著書の編集に関わったのですが、そのなかで関口氏は、フサイチペガサスが勝った2000年のケンタッキーダービーにおける“舞妓パフォーマンス”について触れています。ちょっと長いのですが引用します。

「私は生来パフォーマンスをするのが平気な性質で、もっと言えば目立つのが大好きな性分である。だからこれからもいろいろな場面で、さまざまなパフォーマンスをお見せすることになるだろう。だが、これだけは知っておいていただきたい。私はただウケたいためだけに、パフォーマンスをやっているわけではないということを。道化を演じる裏には、私なりのメッセージが隠されている。」

「ケンタッキーダービーの舞妓は、日本人のプライドを表現したつもりだった。所有馬であるフサイチペガサスが、ケンタッキーダービーで本命に推されるほど有力視されたことは、大げさに言えば、日本の誇りだと思ったのだ。そのオーナーである私が、チャーチルダウンズ競馬場で縮こまっているわけにはいかない。(中略)精一杯目立たなければならない。そのために、アメリカ人が日本と聞いてすぐに思い出す『ゲイシャ、フジヤマ』を連れて行こうと決意した。残念ながら、フジヤマをアメリカに持っていくことはできない。だったら、ゲイシャだろう。というわけで、私の傍らには舞妓たちが陣取ったというわけである。」

「舞妓はアメリカでは大ウケだった。ケンタッキーダービーの前夜祭では、ステージに上げて舞を踊ったり、私とタンゴを踊ったりして、大喝采を浴びている。それが、チャーチルダウンズ競馬場の場長の耳に入り、パーティーを盛り上げたお礼ということで、私は舞妓らとともにVIPルームに招待されているのだ。」

カッコイイですね。つねにド派手で、つねに豪快。これほどの傑物は関口氏のほかに二度と現れることはないと思います。

2010年3月12日 (金)

マカニビスティー大井移籍の真相~~矢作調教師のブログから

3月5日のエントリーでマカニビスティーの大井移籍について採り上げました。昨日付の矢作芳人調教師のブログに詳しい事情が記されています。やはり中央に適レースがないことが原因でした。

「厩舎としては大きな損失となるが
馬やオーナーの幸せを考えると
このままここにいるよりは
南関に移籍して
羽田杯や東京ダービーなどで
活躍したほうがいいと
僕が決断しました。」
http://ameblo.jp/yahagi-ecurie/

大井でいくら活躍しても矢作厩舎に金銭的メリットはないのですから、なかなか真似のできることではありません。大井では戸崎圭太騎手が手綱を取り、時機が来たらまた中央に戻るようです。

2010年3月10日 (水)

「サンデーサイレンス×デインヒル」は海外向き

昨日のエントリーで採り上げた Raihana は、母 Esubooh が「サンデーサイレンス×デインヒル」でした。日本ではシックスセンスとメテオバーストが出た組み合わせです。この2頭はデインヒルの面影を感じさせる四角い馬体で、ジワジワと伸びる渋いタイプでした。

シックスセンスは香港ヴァーズ(G1・芝2400m)で2着。国際舞台でも十分に戦える馬でした。いや、むしろ海外の競馬のほうが向いていた可能性があります。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2002100476/

日本の軽い芝では、「サンデーサイレンス×デインヒル」は「ジワジワと伸びる渋いタイプ」なのですが、力のいる馬場ではそれがちょうどいいような気がします。「サンデー×デインヒル」の代表産駒は、AJCオーストラリアンオークス(豪G1・芝2400m)を勝った Sunday Joy。サンデーサイレンスが南半球で送り出した唯一のG1馬です。このときは2分32秒42と遅い決着でした。
http://www.pedigreequery.com/sunday+joy

Sunday Joy は繁殖牝馬としても才能を示しており、娘の More Joyous(父 More Than Ready)は現在、オーストラリアでG1を含めて重賞4連勝中と注目を集めています。「サンデー×デインヒル」は、海外で力強く血を広げています。
http://www.pedigreequery.com/more+joyous

2010年3月 9日 (火)

オールウェザーに適性を示すサンデーサイレンス

あまり話題にはなりませんでしたが、2月25日に行われたUAEオークス(リステッドレース・オールウェザー〔タペタ〕1900m)は、母の父にサンデーサイレンスを持つ Raihana(父 Elusive Quality)が勝ちました。オーストラリア産の牝3歳です。北半球の馬よりも生まれが半年早いので59.5キロを背負っての勝利でした。
http://www.pedigreequery.com/raihana

母 Esubooh は、おそらくその母フェリシテーションがサンデーサイレンスと交配するためにオーストラリアから北海道にやってきて、種付けしたあとまた戻って行って出産した馬でしょう。

レッドディザイアと Raihana の活躍を見ると、サンデーの血は高い確率でオールウェザー(タペタ)にフィットしているように思えます。ただ、注意したいのは、前者は Sadler's Wells を、後者はデインヒルを併せ持っていること。どちらもイギリスの深い芝に適応する血です。このあたりもオールウェザー適性のポイントのひとつかもしれません。

サンデーの血がオールウェザー向きだとしたら、これから数年、外国人が気づく前に、ドバイに遠征する日本馬を英ブックメーカーで狙い続けて大儲けできる……かもしれません。

2010年3月 8日 (月)

キンカメ・レヴォリューション

ドバイでウオッカが引退を表明し、中山ではヴィクトワールピサが弥生賞を快勝。そして、阪神のアルメリア賞ではルーラーシップが必敗の態勢から逆転勝ち。日曜日はまさに角居デイでした。

タムロスカイのタックルを受けた時点で、キャリアの浅い若駒ならレースを投げてしまってもおかしくありません。たしかに勝って当然のメンバー構成でしたが、そんなことは重要ではなく、あそこから態勢を立て直して闘志に火をつけ、差し切ったことに意味があります。母エアグルーヴのいちょうSを思い出された方も多いかと思います。この闘争心は、この先に待ち受ける厳しいクラシックレースで必ずモノをいうでしょう。ひ弱なお坊ちゃんでは勝てません。

「中間、アクシデントの連続で、ここはせいぜい七分のデキだが、500万下ならなんとかなる」と書いて◎を打ちましたが、2着ミヤジシェンロンはヌケてしまいました。結局、キングカメハメハ産駒のワンツーフィニッシュ。土曜日のチューリップ賞のワンツースリーフィニッシュ(3月6日のエントリーでは「ワンツーフィニッシュ」と書きましたが誤りです)に続く上位制圧で、これはもう“キンカメ・レヴォリューション”とでもいうべき勢いです。土日7勝は圧巻です。道悪で頑張れるのは、精神面の強さの証明でもあるでしょう。そう考えると、アクシデントにひるまないルーラーシップの根性もうなずけます。

レース後の様子についてはまだ情報が入ってきていませんが、接触の際のダメージや、不十分な体調でキツいレースをした反動がなければいいのですが。皐月賞を目指すとしたら、さすがに中1週の若葉SやスプリングSは無謀なので、中2週の毎日杯しか選択肢は残っていません。楽ではないですね。ダービーに狙いを絞ったほうがいいのでは、と個人的には思います。

2010年3月 7日 (日)

ウオッカ引退

昨年秋の毎日王冠は、東京競馬場のメインスタンドから離れた東門近くの場内テレビでレースを観戦していました。カンパニーがウオッカを差し切った瞬間、スタンド方面から「あぁ……!!」という大きな潮騒のようなため息が聞こえてきたのを思い出します。大本命馬が敗れただけではあのような響きにはなりません。ウオッカはファンに愛されているんだなぁと、そのときあらためて感じました。

欧米には「レモンは絞りすぎてはいけない」という格言があります。牝馬を競走に使いすぎると繁殖成績に影響が出てくることがあるので、余力があるうちに牧場に上げたほうがいい、という意味です。この点でウオッカには多少心配があるのですが、それを覆すような繁殖成績を挙げてほしいものです。

2010年3月 5日 (金)

逆転の発想、マカニビスティー大井移籍

その手があったか!と思いました。ダートの未勝利戦、500万下を圧勝した3歳牡馬マカニビスティー(父ゼンノロブロイ)が、この時期としては異例の大井移籍に踏み切りました。

中央所属のダート強豪は、3歳6月のユニコーンSが来るまで、言葉は悪いですが店ざらし状態です。OP特別はあっても重賞がひとつもありません。OP特別の数も少ないと思います。3歳1~6月のダートOP特別は、現在、ヒヤシンスS、伏竜S、端午S、昇竜Sの4つ。08年まで2回京都開催に組まれていたバイオレットSは廃止となり、ますます使えるレースが減りました。

クラシック前にダートの高額賞金レースをいくつも作ると、そこで賞金を稼いだダート馬が、芝のクラシックに出てきて出走枠を占めることになりかねません。そうした事態をJRAは恐れているのでしょう。

ダートの強豪は、出走できるレースがないために、意味もなく休養したり、芝のレースに出たりして、肩身の狭い思いをしています。マカニビスティー自身、前走は芝のアーリントンCに出走しました(10着)。そうした状況を眺めるうちに陣営の誰かが閃いたのでしょう。――いっそ地方へ移籍してしまえ!

その昔、“アラブの魔女”といわれたイナリトウザイが、3歳春に中央から大井へ移籍し、見事アラブダービーを制覇したことがありました。これとやや状況が似ています。

マカニビスティーを管理する矢作芳人調教師は、大井競馬の矢作和人元調教師(昨年5月に引退)のご子息です。また、馬主の備前島敏子さんは、大井競馬に何頭かの馬を預けています。そうしたコネクションから話が進んだものと推測します。

4月21日に行われる三冠の第一弾・羽田盃(ダ1800m)は1着賞金4000万円。6月2日の三冠第二弾・東京ダービー(ダ2000m)は4500万円。これは魅力的です。大井の馬場に慣れておけば、7月14日のジャパンダートダービー(ダ2000m・5000万円)も有利でしょう。ひょっとしたら羽田盃の前にトライアルの京浜盃(3月18日・ダ1700m・2500万円)を使うかもしれません。

昔は、いったん中央から地方へ移籍すると、再転入は認められませんでしたが、現在は地方で2勝を挙げれば戻ってこられます。マカニビスティーにとってはたやすいことでしょう。1月5日のエントリーで採り上げたように配合的に高く評価している馬です。活躍を期待したいですね。

2010年3月 4日 (木)

エリモマキシム引退

11歳馬エリモマキシム(父ブライアンズタイム)が3月5日付けで登録抹消します。2001年夏のデビューから足かけ10年、通算59戦10勝(うち障害20戦3勝)という競走成績でした。現役末期は同期のダービー馬タニノギムレット(同じブライアンズタイム産駒です)の子と一緒にレースを走ることもありました。

エリモマキシムといえば、史上初の10歳馬による中央重賞初制覇(09年新潟ジャンプS-J・G3)を記録した馬です。ただ、個人的に記憶に残っているのは“2着病”です。障害転向後、初勝利を挙げるまでに2着を10回重ねました。1戦ごとの着順を書き出してみます。

9→2→5→3→2→2→2→2→2→3→2→2→2→2→1

初勝利は入障後15戦目。その直前までの成績は〔0.10.2.2〕でした。記念すべき初勝利を挙げた2008年8月23日の障害未勝利戦は、ステイゴールドが初めて重賞を勝った目黒記念ほどではありませんが、エリモマキシムの苦闘を知る者にささやかな感動を与えてくれました。

引退後はオーナー一族が所有する北海道のエクセルマネジメント(旧・えりも農場)で乗馬になるとのことです。

2010年3月 3日 (水)

現代に待ち望まれる Orme

サンデーサイレンスには、サンデーズシス、ペニーアップ、マイライフスタイルという3頭の全妹がいて、すべて輸入されています。これらから大物が誕生する日を待ちわびていたのですが、3頭ともすでに高齢に達してしまい、ちょっと無理そうな雰囲気になってきました。

先日の中山記念を勝ったトーセンクラウンは、ペニーアップの孫。サンデーの全妹の血を引く初めての重賞勝ち馬です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004101623/

19世紀最大の種牡馬といえば St.Simon(1881年生)ですが、同馬には Angelica という全姉がいました。繁殖成績は優秀で、16戦全勝の三冠馬 Ormonde との間に、英リーディングサイアーの Orme(オーム・1889年生)を出しています。

Orme と St.Simon は、血統表上で出会うことで Angelica と St.Simon の全姉弟クロスが生じます。これは大きな効果を生み出し、Tracery など後世に優れた影響を及ぼした名馬を誕生させています。
http://www.pedigreequery.com/tracery

Orme の誕生から10年後、今度は St.Simon 直系の孫から Sceptre(セプター・1899年生)が誕生しました。どんな名馬物語集にも必ず登場するこの女傑は、英2000ギニー、英1000ギニー、英オークス、英セントレジャーを制覇。この馬の母 Ornament は、Orme の父 Ormonde の全妹です。Orme と Sceptre の関係は以下のようになります。
http://www.pedigreequery.com/orme
http://www.pedigreequery.com/sceptre

          ┌ Bend Or
    ┌ Ormonde  ┤
    │     └ Lily Agnes
Orme ―┤
    │     ┌ Galopin
    └ Angelica ┤
          └ St.Angela

            ┌ Galopin
      ┌ St.Simon ┤
    ┌○┘     └ St.Angela
Sceptre ┤
    │     ┌ Bend Or
    └ Ornament ┤
          └ Lily Agnes

このふたつの血が血統表上で出会うと、全きょうだいクロスがダブルで生じます(Ormonde=Ornament、St.Simon=Angelica)。

このほか、Orme と Desmond の関係もこれに近いですね(St.Simon=Angelica、Macaroni≒Carnival の4分の3同血クロス)。

興味のある方は、Orme と Sceptre、あるいは Orme と Desmond の関係を調べてみるといいでしょう。20世紀前半の血統を理解するための一本の補助線となります。

St.Simon は、もちろん単独でも時代を画す傑出した大種牡馬でしたが、
近親やそれに付随する血が全きょうだいクロスや4分の3同血クロスを作り、この増幅効果でより大きな果実を生産界に実らせました。

将来、サンデーの全妹がサンデーサイレンスと血統表上で出会うこともあるでしょう。そのとき、平凡なファミリーに成り下がった状態で出会うのと、活躍馬を通して高いテンションを維持したまま出会うのとでは、大きな違いがあると思います。

トーセンクラウンが将来種牡馬になれるかどうかは分かりませんが、一般論として、サンデーの全妹の血を引く馬が活躍し、種牡馬になることは、わが国の馬産にとって意義があることだと思います。その馬は現代の Orme となる可能性があります。

ひょっとしたら、マンハッタンカフェとアプリコットフィズ(母マンハッタンフィズがマンハッタンカフェの全妹)が、遠い将来、それに近い役割を担うかもしれません。

2010年2月25日 (木)

エスポワールシチーがドバイWC回避

海外遠征は、その馬を応援するファンにとっては純粋に“夢”ですが、馬主サイドにとっては“夢であり現実”です。その現実の部分に越えられないハードルがあったのでしょう。

エスポワールシチーが春に国内2戦2勝(かしわ記念、帝王賞)なら賞金は1億3000万円。これ以上の賞金をドバイで稼ぐとなると、2着以上が必要となります(1着賞金600万ドル、2着賞金200万ドル)。馬の適性や体調を含めて現実的に考えると、チャレンジするにはリスクが大きすぎると馬主サイドが判断したわけです。ただ、エスポワールシチーの遠征に夢を紡いでいたファンのなかには、この決定に納得できないという方も当然いるでしょう。

フェブラリーS2着のテスタマッタは骨折。幸い、全治3ヵ月と軽症なので、秋シーズンには復帰できそうです。フェブラリーS3着のサクセスブロッケンはゴドルフィンマイルを回避することが決定。昨年暮れのジャパンCダート2着のあと休養していたシルクメビウスはアンタレスS(4月25日・京都)で復帰するようです。帝王賞でエスポワールシチーとの対決が見られるかもしれません。

2010年2月24日 (水)

名牝 Urban Sea 2×3

昨年3月に20歳で死亡した Urban Sea は、近年における傑出した牝馬といえるでしょう。凱旋門賞を勝った競走成績もさることながら、Galileo、Sea the Stars、Black Sam Bellamy、My Typhoon、Urban Ocean、All Too Beautiful、Melikah を送り出した繁殖実績は歴史に残るものです。

ある馬主の方にうかがった話では、Urban Sea がジャパンCに出走した際(93年)、同馬の関係者から売却のオファーがあったそうです。値段が高すぎて話は流れたそうなのですが、もし購買していれば競馬の歴史は変わっていました。Galileo や Sea the Stars が誕生しないかわりに、父サンデーサイレンスの Urban Sea 産駒が産まれていたわけです。

活力を秘めた血をクロスによって強化するのは馬産の常識といっていいでしょう。Urban Sea のクロスは早晩試みられるはずですが、すでにそのプランが持ち上がっています。

2月10日付けの『RACING POST.com』によれば、アイルランドのジム・ボルジャー調教師(エイダン・オブライエン調教師の師匠)が新種牡馬 Sea the Stars のもとへ8頭の繁殖牝馬を送ったそうですが、そのなかの2頭――Lush Lashes(コロネーションCなどG1を3勝)と Cuis Ghaire(6fのG3を2勝、英1000ギニー2着)――は Galileo の娘とのことです。
http://www.pedigreequery.com/lush+lashes
http://www.pedigreequery.com/cuis+ghaire

Galileo は Sea the Stars の半兄なので、この配合によって Urban Sea 2×3という強度のクロスが生じます。

         ┌○
┌ Sea the Stars ┤
│        └ Urban Sea
│              ┌○
│        ┌ Galileo ―┤
└ Lush Lashes ―┤      └ Urban Sea
         └○

         ┌○
┌ Sea the Stars ┤
│        └ Urban Sea
│              ┌○
│        ┌ Galileo ―┤
└ Cuis Ghaire ―┤      └ Urban Sea
         └○

Lush Lashes と Cuis Ghaire は、母の父が Danzig 系なので、同系統の Sea the Stars との交配では、Urban Sea 以外にも Danzig クロスが生じます。

「父」と「母の父」が異父兄弟、という例はめったに見られるものではありません。それなりに実績を挙げたものとなると、Lizzie G.(Domino の2代母、Hamburg の3代母)と Russell(Wise Counsellor の母の父)ぐらいでしょうか。
http://www.pedigreequery.com/lizzie+g
http://www.pedigreequery.com/russell

狙いはいいとしてもちょっとキツすぎるのでは、という意見はボルジャー調教師も想定しているようで、強度のクロスで成功馬を送り出したマルセル・ブサックを例に挙げて予防線を張っています。そして、これがうまくいかなかったら次はもうちょっと緩くするし、産まれてくるのが牝馬なら将来いい繁殖牝馬になるかもしれないね、と述べています。

2010年2月23日 (火)

水野麗奈さん結婚

相手は渡辺薫彦騎手と聞いて、関西在住の知り合いが「エッ!(絶句)」と衝撃を受けておりました。長年『DREAM競馬』とつき合ってきた関西圏の方はそういう反応になるのかもしれません。「関東で言ったら井森美幸が結婚するようなもん?」と言ったら「それは違う」と完全否定されました。

東京に住んでいると関西圏の競馬番組を観る機会がありません。関西に遠征するときは当然競馬場に行くわけです。したがって、競馬を始めて30年近く経ちますが、いままで関西圏の競馬番組を一度も観たことがありません。関西重賞の際に登場する杉本清さん、大坪元雄さんのネタならついて行けますが、関東のテレビに映らない宮川一朗太さん、水野麗奈さんとなるともうダメです。蚊帳の外です。

ただ、水野麗奈さんについては、話題にする方すべてが褒めるので、いい子なんだろうなぁと思っていました。どうぞお幸せに。

2010年2月16日 (火)

女傑の時代

09年のアメリカ年度代表馬の座を争った女傑2頭、Rachel Alexandra と Zenyatta が、4月9日にオークローンパークで行われるアップルブラッサム招待S(G1・ダ9f)で対決するようです。

このところ、耳目に触れるニュースは牝馬にまつわるものが多く、世界各地で強い牝馬が牡馬を打ち負かしています。

わが国のウオッカ、ダイワスカーレット、ブエナビスタ、レッドディザイアについてはあらためて説明するまでもないでしょう。

ベネズエラの Bambera(通算18戦16勝)は、同国の牝馬三冠と牡馬二冠を制覇しました。
http://www.pedigreequery.com/bambera2
そして昨年暮れ、プエルトリコに遠征し、カリブダービーの異名を持つクラシコデルカリブ(ダ1800m)に出走。メキシコの牝馬三冠馬 Vivian Record を一騎打ちの末に破りました。プライドをかけた女傑2頭が死力を尽くて戦う姿は感動的でした。
http://www.youtube.com/watch?v=J-XSIzZTQ0A
Bambera はアメリカ移籍が決定したようで、今年はフロリダを本拠に走るようです。Rachel Alexandra と Zenyatta の戦いに加わってきたらおもしろいですね。

インドでは Jacqueline(通算10戦8勝)が話題です。
http://www.pedigreequery.com/jacqueline18
印1000ギニー、印2000ギニー、印オークスを制したあと、2月7日に行われた印ダービー(芝2400m)もインから鋭く抜けてレコードタイムで快勝。最後の直線、真正面からの映像が入るところはインド流でしょうか。
http://www.youtube.com/watch?v=CsxofxYVAjM

チリでは Casablanca Smile(通算12戦5勝) が昨年暮れのオークスに続き1月31日に行われたダービー(芝2400m)も勝ちました。
http://www.pedigreequery.com/casablanca+smile
道中の接近映像がないので位置取りがわかりづらいのですが、中団を追走し、最終コーナーでインをすくうように伸びてきました。後続に6馬身差をつける圧勝です。勝ちタイム2分23秒92はレース史上2番目に相当する速いものです。
http://www.youtube.com/watch?v=YvNxZPP8exY

ニュージーランドでは昨年秋に Katie Lee(通算15戦7勝)が2000ギニーと1000ギニーを連勝しました。
http://www.pedigreequery.com/katie+lee2
この2レースを連勝した馬は史上初。連闘での快挙でした。
http://www.youtube.com/watch?v=_-KePejYPW8

世界中のあちこちで女傑が台頭している現象は、本当に単なる偶然なのだろうか……と思わずにはいられません。とりあえず今週は京都記念のブエナビスタに注目です。

2010年2月11日 (木)

ルーラーシップがフレグモーネに

2月21日(日)のセントポーリア賞(500万下・東京芝1800m)を目指して調整していたルーラーシップ(父キングカメハメハ)がフレグモーネを発症。今後のスケジュールが白紙となりました。症状が軽度であれば早期復帰は可能ですが、日程的にそれほど余裕があるとはいえない状況でのアクシデントは痛いですね。

500万下からトライアルを使って本番、という穏やかなローテーションはもう厳しいでしょう。スプリングS(3月21日)で3着以内、毎日杯(3月27日)か若葉S(3月20日)で2着以内、という形しか選択肢はないと思います。ただ、いずれにしろフレグモーネ明けの馬にとっては負担が大きいため、皐月賞を捨ててダービー一本に目標を切り替えるのでは、と思います。血統的にも走法的にも明らかに東京向きなので、この進路を取るとしたら、案外、怪我の功名となるかもしれません。現在休養中のリルダヴァルともども、なんとかダービーのスターティングゲートにたどり着いてほしいですね。

2010年2月 9日 (火)

Green Desert 時代の幕開け?

1月22日のエントリーで、2009年の英愛サイアーランキングが Northern Dancer 系の圧倒的な支配下にあることを書きました。上位10頭中9頭がこの系統です。

では、Northern Dancer 系のなかでどのラインが活発に枝葉を伸ばしているかというと、Danzig と Sadler's Wells が双璧です。昨年の英愛サイアーランキングのベスト10に、Danzig 系は5頭、Sadler's Wells 系は3頭ランクインしています。

Danzig 系といえばデインヒルの名前が真っ先に挙がります。イギリスとアイルランドではここ十数年、Sadler's Wells とデインヒルの激しい角逐が繰り広げられてきました。13年連続リーディングサイアーだった Sadler's Wells を、2005年に王座から引きずり下ろしたのはデインヒルです。昨年の英愛リーディングサイアーに輝いた Danehill Dancer もデインヒルの子です。

しかし、英愛サイアーランキングのベスト10に入った Danzig 系5頭が、すべてデインヒルの子かというとそうではありません。デインヒル系の種牡馬は Danehill Dancer(1位) と Dansili(8位)だけで、残りの3頭――Cape Cross(2位)、Oasis Dream(4位)、Invincible Spirit(9位)――は、いずれも Green Desert を経由しています。

つまり、Danzig 系のくくりで見ると、多数派は Green Desert のラインで、デインヒルのラインは少数派なのです。

この Green Desert の躍進を、一時的な突風と見るか、あるいは新たな盟主誕生の胎動と見るかは人それぞれでしょう。現時点ではなんともいえません。Cape Cross は昨年のカルティエ賞年度代表馬 Sea the Stars の父。今年から種牡馬入りする Sea the Stars が成功すれば、大きな流れは Green Desert 系に傾きます。種牡馬勢力図の変化は10年単位のゆっくりしたものです。すぐに結論は出ません。
http://www.pedigreequery.com/sea+the+stars

2010年2月 4日 (木)

インペリアルマーチ猛時計

来週のきさらぎ賞(G3・京都芝1800m)に出走するインペリアルマーチ(父ネオユニヴァース)が、木曜朝の栗東坂路で一番時計を叩き出しました。

50.8-37.9-25.8-13.1(馬なり)は出色。ローレルゲレイロが出した前日の一番時計と同タイムです。1月17日に初戦を勝ち上がった際の馬体重は548キロと、まだまだ絞れる余地がありました。上積み十分でしょう。母キョウエイマーチ、半兄トライアンフマーチ。新馬戦を勝ち上がったばかりですが怖いですね。

きさらぎ賞はほかに、ダイワバーバリアン(朝日杯FS-3着)、レーヴドリアン(福寿草特別)、シャイン(シンザン記念-2着)などが出走を予定しています。

2010年2月 1日 (月)

レッドスパーダがフェブラリーSへ?

先週土曜日の東京新聞杯を勝ったレッドスパーダが、次走、フェブラリーS(2月28日・G1・東京ダ1600m)を視野に入れているとのこと。05年の優勝馬メイショウボーラーと同じ「タイキシャトル×Storm Cat」、従兄弟に米年度代表馬 Curlin、530キロを超える雄大な馬格。もし出走してくれば相当怖いと思います。リーチザクラウンに続く芝戦線からの刺客登場でエスポワールシチーもうかうかできません。俄然盛り上がってきました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006105511/

2010年1月27日 (水)

Dayjur が種牡馬引退

これまでに行われたブリーダーズCのなかで、最も強く印象に残っているのは、ニューヨーク州のベルモントパークで行われた90年の開催です。ディスタフにおける Go for Wand の骨折事故、マイルにおけるレスター・ピゴット騎手の復活劇、そしてスプリントにおける Dayjur のジャンプ事件などがありました。

直線で逃げ粘る Safely Kept を、Dayjur が外からとらえ、誰もが勝利を確信した瞬間、ゴール前に伸びたスタンド影に驚いてジャンプしたシーンは、20年経ったいまも語りぐさとなっています。YouTube でも視聴可能です。
http://www.youtube.com/watch?v=orsV78dt1WY

思わぬアクシデントで2着に敗れてしまったわけですが、私個人は過去四半世紀で最強のスプリンターだと思っています。父 Danzig、母の父 Mr.Prospector ですから速くて当然です。脚の回転速度が尋常ではありませんでした。
http://ahonoora.web.fc2.com/dayjur.html

姪に Sky Beauty(エクリプス賞古牝馬チャンピオン)がいるなど母系も優秀。しかし、種牡馬としてはイマイチでした。このスピードでこの良血ですから、どれだけ素晴らしい子を出すのだろうと期待していたのですが……。結局、北米とヨーロッパではG1馬を1頭しか出せませんでした(Hayil=英G1ミドルパークS)。

同じ Danzig 産駒のデインヒルは、Dayjur よりも1歳年上で、競走馬としての能力を比較すれば、Dayjur よりも明らかに下でした。しかし、歴史に名を残す大種牡馬となったのはデインヒルのほう。これほどの差がどうして生じたのか、いろいろ推理はできても、はっきりとした答えを見つけるのは難しいですね。

2010年1月26日 (火)

ウオッカはアイルランドのギルタウンスタッドへ

今朝の『サンケイスポーツ』によれば、今年春からウオッカはアイルランドのギルタウンスタッドで繁殖生活を送るそうです。ここはアガ・カーン四世殿下が所有する名門牧場。数年間滞在し、産駒は日本で走らせるとのこと。

無責任な外野の意見を述べれば、日本のクラシックを狙うならサンデー系に優る種牡馬はいないでしょうし、ヨーロッパで種付けをするならヨーロッパで走らせたほうがいいような気もします。ただ、そうした短期的視点ではなく長期的視点でとらえれば、海外の超一流血統を取り込む意義は大きいと思います。また、サンデー系とブライアンズタイム系の相性は、芝で走らせる分には現状やや微妙なものがあるので、1代ヨーロッパの血を入れて、そのあとサンデー系を持ってくる、という選択も悪くないかもしれません。

ウオッカはこの現代にあって、Northern Dancer も Mr.Prospector もサンデーサイレンスも含んでいない貴重な血統です。それらの血を新たな活力として導入できるわけですから、何を付けても走ってしまう可能性すらあります。

日本の超一流牝馬が海外に渡った例といえば、ハギノトップレディ、タレンティドガール、マックスビューティ、ビリーヴなどが頭に浮かびます。海外での種牡馬選びは、どうしてもネームバリューに頼りがちになり、種牡馬の評価は変動が激しいので、なかなか難しいものがあります。ハギノトップレディがグランディを付けたら、その後グランディが輸入され、タレンティドガールがダンシングブレーヴを付けたら、その後ダンシングブレーヴが輸入されたことを思い出します。ビリーヴがキングマンボとの間にファリダットを出したのは稀な成功例です。

以前、ウオッカとダイワスカーレットの組み合わせ血統表を作ってみたところ、その配合のすばらしさに思わず笑ってしまったことがありました。どちらかが牡馬だったら……と残念に思ったものです。

ウオッカの母タニノシスターは、娘がダービーを勝った春にタニノギムレットと交配しました。翌08年に生まれたのは牝馬、つまりウオッカの全妹です。同年のセレクトセールでダーレーが1億500万円で落札し、今年の夏にデビュー予定です。

08年は不受胎、そして09年はまたもタニノギムレットと交配し、今度は受胎しました。もうじき生まれる子馬は牡か、牝か? もし牡なら将来種牡馬となってダイワスカーレットと交配してほしいものです。遠い未来の妄想ですが……。

2010年1月22日 (金)

各国別のサイアーランキングを見て

『週刊競馬ブック』(1/24号)の「海外競馬ニュース」に、昨年の各種統計が掲載されています。種牡馬、馬主、調教師、騎手などの各国別ランキングがコンパクトにまとまっており、何時間眺めていても飽きません。

丸々1ページを割いて「各国・過去のリーディングサイアー」という表も掲載されています。「英愛」の「総合」を見ると、Northern Dancer 系が20連覇中。Sadler's Wells(1990)→Caerleon(1991)→Sadler's Wells(1992~2004)→デインヒル(2005~2007)→Galileo(2008)→Danehill Dancer(2009)とたすきが渡って途切れていません。

昨年の英愛総合サイアーランキングの上位10頭中、第10位の Hawk Wing(父 Woodman)を除く9頭が Northern Dancer 系でした。イギリスとアイルランドでは相変わらず Northern Dancer 系が圧倒的な勢力を誇っており、この系統による支配は当分覆りそうにありません。

翻って日本では、昨年の総合サイアーランキングの上位10頭中、Northern Dancer 系はクロフネ1頭だけ。昨年の日本ダービーは28年ぶりに Northern Dancer 系の出走馬がゼロでした。

交通機関の発達や情報伝達の即時性によって、各国の血統から独自性が失われ、均質化が進んできているという意見があります。たしかにそれは正しいと思います。しかし、こうした対比をみると、それは一面的な事実に過ぎないような気もします。その国にどのような血統が根付くかということは、馬場やコース形態によって違いが出てくるわけですが、その違いを乗り越えるのは簡単そうに見えてじつは簡単ではない、ということでしょう。

2010年1月20日 (水)

リーチザクラウンがフェブラリーSへ

G1でいきなり勝負になるかどうかは別として、リーチザクラウンが一度ダートを試してみるのは賛成です。母クラウンピースは「Seattle Slew×Mr.Prospector」というパワー型のスピード血統。間違いなくダートは巧いでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006102923/

全兄クラウニングスターは芝でデビューして11着→6着。そのあとダートに転じると、いきなり9馬身差で逃げ切りました。リーチザクラウン自身、切れる脚がなく、稽古では抜群に動くので、ダートに替わって楽しみが大きいと思います。

スペシャルウィーク産駒のダート実績をみると、1000万条件から下のクラスではよく走っており、とくに新馬戦では連対率30.1%と抜群の成績です。しかし、準OP以上では勝ち星がありません。これは奇異な光景です。同じサンデー系で芝向きと評価されるアグネスタキオンやステイゴールドでさえ、産駒はダート重賞を勝った実績があります。ダートは上手なのにトップクラスの馬が出ないところはクロフネに似ています。懸念があるとすればこの部分です。

シルクメビウスの回避により、フェブラリーSはエスポワールシチーでどうしようもないといったムードだったので、リーチザクラウンの参戦は大きな意味があります。外枠でも引いてすんなりとしたレース運びができれば、スピードが活きるコースでもあり無様な競馬はしないでしょう。

2010年1月19日 (火)

2009年の米年度代表馬に Rachel Alexandra

日本時間の本日昼に発表された2009年の米年度代表馬は、Rachel Alexandra に決定しました。希代の女傑2頭、Rachel Alexandra と Zenyatta は、どちらがタイトルを獲得してもおかしくありませんでした。

★Rachel Alexandra(牝・2006年生)
   09年8戦8勝(G1-5勝)
   牡馬相手のG1勝利……プリークネスS
              ウッドワードS
              ハスケル招待H

★Zenyatta(牝・2004年生)
   09年5戦5勝(G1-4勝)
   牡馬相手のG1勝利……ブリーダーズCクラシック

総投票数は232で、Rachel Alexandra は130票、Zenyatta は99票。個人的な予想では Zenyatta がやや有利かな、と思っていました。ブリーダーズCクラシックのタイトルとしての重みに加え、昨年暮れにAP通信が発表した「2009年の最優秀女性選手」の投票でセリーナ・ウィリアムズ(テニス)に次ぐ第2位に選ばれていたからです(Rachel Alexandra は第7位)。

とはいえ、Rachel Alexandra が選出されたことに異議を唱えるつもりはありません。こちらはこちらで選ばれて当然といえる成績でした。

Zenyatta は一昨日、引退を撤回して現役続行を宣言しました。これを“Rachel Alexandra 陣営に対する直接対決の催促”と捉えるのはうがちすぎかもしれませんが、今年のアメリカ競馬はこの2頭の進路が交わるのかどうかが最大の焦点となりそうです。

2010年1月16日 (土)

桑島孝春騎手、地方競馬初の通算40000回騎乗達成

1月15日の船橋競馬第1Rで、アルバーノに騎乗した桑島孝春騎手は、地方競馬初の通算40000回騎乗を達成しました。71年にデビューし、騎手生活は今年で40年目。年平均1000回騎乗してきたことになります。ちなみに、JRAの現役騎手で最多騎乗記録を持つ武豊騎手は15890回、引退した岡部騎手は18646回です(いずれもJRAのみ集計)。

桑島騎手は現在54歳(あと半月で55歳)。ロッキータイガーやホクトライデンなど数々の名馬にまたがり、79、82~86年には南関東のリーディングジョッキーに輝いています。通算勝利数は4700勝。これは佐々木竹見騎手(7151勝=引退)、石崎隆之騎手(6057勝)、的場文男騎手(5907勝)に次ぐ第4位です。

以前、南関東専門紙のあるベテラン記者にうかがったのですが、桑島騎手は義理人情を重んじる方で、勝てそうな馬を依頼されても、もとから乗っている馬がいるときは、そちらを優先するのだそうです。桑島騎手の高潔な人柄がしのばれるエピソードはあちこちで耳にします。

石崎騎手の通算騎乗数は33838回、的場騎手は30507回。引退した佐々木竹見騎手は39060回なので、桑島騎手は地方競馬初の40000回騎乗を達成したことになります。

2010年1月15日 (金)

ノーザンファームとシンボリ牧場がアメリカで繁殖牝馬を購買

『Blood-Horse.com』によれば、ノーザンファームが Point Ashley(牝・2004年生・父 Point Given)を100万ドルで購買したとのことです。現役時代にデルマーデビュタントS(米G1・ダ7f)を勝ち、現在は Ghostzapper を受胎しています。
http://www.pedigreequery.com/point+ashley
シンボリ牧場は Spoken Fur(牝・2000年生・父 Notebook)を50万ドルで購買。NY牝馬三冠のうちのマザーグースS(米G1・ダ9f)とCCAオークス(米G1・ダ12f)を制しています。こちらも Ghostzapper を受胎しています。
http://www.pedigreequery.com/spoken+fur
どちらもコテコテのアメリカ血統ですね。ダート1800mというイメージです。日本に持ってきて何を付けるかは分かりませんが、やはり無難にサンデー系でしょうか。サンデー系なら芝もOKという産駒を出せるかもしれません。シンボリクリスエスあたりになるとダートオンリーという感じですね。

2010年1月 8日 (金)

馬事文化賞

2009年のJRA賞馬事文化賞は、立川健治さんの『競馬の社会史1 文明開化に馬券は舞う―日本競馬の誕生』に決まりました。歴史を尊重することなく文化が成熟することはないと思うので、こうした仕事にしかるべき賞が与えられたのは喜ぶべきことです。750頁を超える大部ですが、記述が柔らかく図版も多いので読みやすいですね。

2009年12月21日 (月)

キングカメハメハが2年連続で2歳種牡馬チャンピオンに

アパパネが阪神ジュベナイルフィリーズを、ローズキングダムが朝日杯フューチュリティSを快勝し、キングカメハメハが2年連続で2歳種牡馬チャンンピオンの座につくことが確定しました。

同一年にこの2レースを制した種牡馬は史上初。2歳の収得賞金4億円超え、デビューから2年連続で2歳種牡馬チャンピオンとなったのは、いずれもサンデー以来となる快挙です。

今年のPOGでは、キングカメハメハ産駒の指名はイマイチ伸びませんでした。コンスタントに走るものの、大物感のある産駒が少なかったからです。勝ち上がり率が低いわりにホームラン級の産駒を出せるネオユニヴァースは、その反対に大人気でした。来年のPOGではキンカメ人気が復活しそうですね。

ただ、初年度の94年、2年目の95年と、2年連続で2歳リーディングサイアーとなったサンデーサイレンスは、3年目の96年に3位に転落しました。どんな種牡馬でもたいてい、3~4年目に繁殖牝馬のレベルが落ちるので、不振に陥ることがあります。アグネスタキオンもそうでした。今年の活躍だけでキングカメハメハに飛びつくのはやや危険かもしれません。

キングカメハメハは、「母の父サンデーサイレンス」の成績が、産駒全体の成績に比べて落ちるという稀な傾向を持っています。

■キンカメ産駒全体
全連対率 20.8%
芝連対率 19.4%
ダ連対率 23.5%

■キンカメ×サンデー
全連対率 18.1%
芝連対率 18.5%
ダ連対率 18.2%

つまり、母の父にサンデーを持たないほうが走っているということです。非サンデー系の主要種牡馬でこうした傾向を持っている馬は他にいません。シンボリクリスエス、クロフネ、ジャングルポケット、タニノギムレットなどは、いずれも母の父にサンデーが入ると成績が跳ね上がります。

ローズキングダムは、これまであまり走らない傾向があった「キンカメ×サンデー」。ただ、Mill Reef 5×4はフィフスペトルの Mill Reef≒Riverman 5×3を彷彿させますし、母にサンデーと Lyphard を併せ持つ配合はゴールデンチケットと同じです。父方のパワーと母方の柔らかさが融合した申し分のない配合です。

「キンカメ×サンデー」は、じつは1走あたりの収得賞金が高いので、走る産駒と走らない産駒の差が激しいことがうかがえます。ローズキングダムはいうまでもなく“当たり”。2歳にしてこれほどセンスのいい競走馬はあまり見たことがありません。ビワハヤヒデのようにどんな競走条件でも大崩れしないタイプでしょう。

2009年12月15日 (火)

冬はやっぱりクロフネ

昨日はDeputy Ministerの話を書きましたが、今日はその系統の最前線で頑張るクロフネについて。

先週、2歳戦だけでクロフネ産駒は3頭が勝ち上がりました(アイアムイチバン、ビーチランデブー、プリティカポレイ)。これ以外に、ベストクルーズが阪神ジュベナイルフィリーズで3着。勢いに乗っています。

クロフネは完全に冬型の種牡馬です。月別の成績を見ると、11月から2月までの4ヵ月間のみ連対率が20%を超えており、それ以外の月はいずれも20%未満です。

11月~2月 22.9%
3月~10月 16.0%

なぜこれほどの差が出るかというと、寒い時期になるとヤル気が出るということではなく、単純にダートが得意だからでしょう。あらためて言うまでもなく冬場はダート戦が増え、芝戦が減ります。ダートを得意とするクロフネにとっては待ちに待った季節です。

11、1月の京都ダ1200m、12、1月の中山ダ1200&ダ1800mはクロフネの天国といっていい条件です。いずれも連対率が30%を超えています。

11月21日の貴船S(京都ダ1200m)では、クロフネ産駒のラインプレアー(8番人気)、サラトガ(11番人気)がワン・ツー・フィニッシュを決め、馬連17650円の大穴となりました。少々人気のない馬でもこの条件では激走することがあるので要注意です。

京都ダ1200m、中山ダ1200m、中山ダ1800mは、クラス別に狙いを絞るとさらに成績がアップします。

◎京都ダ1200m
  新馬戦はダメだがそれ以外はまんべんなく強い
◎中山ダ1200m
  新馬戦から500万条件までが狙い目
◎中山ダ1800m
  500万条件はイマイチだがそれ以外は買い

中山の午前中は宝の山。血統で馬券を買うなら早起きしたいものです。

2009年12月 9日 (水)

アラブの名牝の子トライバルシンが新馬戦5着

トライバルサンダーといえば、兵庫大賞典(兵庫)、播磨記念(姫路)、オグリオー記念(笠松)などを制したアラブの名牝。その息子トライバルシン(父ラムタラ)が、先週日曜の中山6R新馬戦(芝1200m)で5着となりました。

アングロアラブのトップクラスは、地方競馬のサラブレッド上位クラスと比較してもそう大きく見劣るものではなかったので、地方競馬でアラブ系限定競走が消滅したといっても、その血を絶やさずサラブレッドに混じって走らせるのは、ごく当たり前の選択だと思います。

ただ、地方競馬ではなく中央競馬で、しかもダートではなく芝で好走したとなると、かなり凄いことですね。3歳上の全兄ゴールドサンダーは荒尾ダービー2着、2歳上の半兄トライバルジャパン(父タヤスツヨシ)はJRAで未勝利戦2着(ダ1200m)ですから、母トライバルサンダーは繁殖牝馬としてサラブレッドに見劣ることはありません。

ゴールドサンダー、トライバルジャパン、トライバルシンの兄弟は、アラブ血量13.46%。25%以上でないとアングロアラブではないので、サラブレッド系種ということになります。

ここ数年、JRAでデビューしたアングロアラブ由来のサラブレッド系種には、前出のトライバルジャパンのほかに、ジャンボ(父マキシムトライ)がいます。母マキシムオージョは全日本アラブクイーンC(園田)、名古屋杯(名古屋)など8つの重賞を制した名牝。2005年12月4日に芝1800mの中山新馬戦に出て12着と敗れ、地方競馬に転出しました。

トライバルシンは、このまま競走生活を続ければ、勝ち上がる可能性が高いのではないかと思います。ダート替わりに注目です。

2009年12月 7日 (月)

トキノガバナーのレコード、33年ぶりに破られる

競馬を始めたころ、中山競馬場の2歳レコードといえば、芝1600mのマルゼンスキー(1分34秒4)と、ダート1200mのトキノガバナー(1分10秒9)が印象的でした。いずれも1976年12月に樹立されたという共通点があったからです。

マルゼンスキーのタイムは1990年にリンドシェーバーによって破られました。トキノガバナーはずっと生き続けました。現役コース(日常的にレースが行われているコース)のレコードとしては最古のものではなかったかと思います。競馬を始めて30年近く、トキノガバナーの名前を、競馬新聞のレコード欄で何百回見たことでしょう。

12月6日(日)、中山7Rの2歳500万下で、このレコードは破られました。勝ち馬はアイアムルビー。タイムは1分10秒2。33年ぶりの更新です。

旧レコードホルダーのトキノガバナーは、父コントライト、母ミススウイフト(その父リンボー)という血統で、全日本3歳優駿を勝ったバトラーの半弟です。War Admiral 4×3があり、いかにもパワー型のスピード馬といった配合です。父コントライトは名馬テンポイントの父でもあります。

1976年12月26日、9頭立ての300万下(現在の500万下)で、後続を6馬身ちぎって逃げ切り、レコードを樹立しました。前日まで降った雨の影響で馬場コンディションは不良。時計の出やすい馬場だったようです。ちなみにその前週にトウショウボーイがテンポイントを破って有馬記念に優勝しています。当時は5回中山3週目に有馬記念が行われ、最終週にステイヤーズSと中山大障害が組まれていました。

トキノガバナーはその後、ヒザの骨折が判明して8ヵ月半の休養。復帰戦7着のあと、1977年9月25日の600万下(現在の1000万下)を3馬身半差で勝利したものの、再び不安が発生し、地方競馬に転出しました。通算9戦3勝。その後、どうなったかは資料がないので分かりません。

生産者の桑原博氏とは面識がありませんが、そのご子息とは20年近く前に、競馬通信社という会社で一緒に働いたことがあります。たまたま年が同じだったこともありよく覚えています。こんなことはどうでもいいですね。

トキノガバナーのレコードは、33年間、中央競馬のレコードでもありました。他の競馬場でもこのタイムを上回る馬は出なかったのです。アイアムルビーが新たなレコードを樹立すると、JRAホームページの「データファイル」にあるレコードタイム表から、トキノガバナーの名前はひっそりと消えました。もうその存在を思い出す人もいないでしょう。ちょっと切ないですね。

2009年12月 4日 (金)

またアグネスタキオン産駒が

ダノンパッションが屈腱炎のため戦線離脱となりました。今年の2歳世代で2勝目を挙げたアグネスタキオン産駒は、リルダヴァル、リディル、ダノンパッションの3頭。これらはすべて故障したことになります。

アグネスタキオンは、サンデーの後継種牡馬のなかでは最もサンデーに似ており、総合的な能力ではナンバーワンではないでしょうか。しかし、脚もとの弱さという点でも、残念ながらナンバーワン。

これまでに脚部不安で早期リタイアしたり長期休養に入った素質馬は、上記の3頭の他にも、ホッコータキオン、ミステリアスライト、ダノンジュンコウ、ヴァルプリス、ダイワカンパニー、ヒサクィーンなどがいます。

また、トップクラスまで上り詰めた馬でも、ダイワスカーレット、ディープスカイは屈腱炎で引退、キャプテントゥーレ、アドマイヤオーラ、ロジックは骨折しました。この確率は尋常ではありません。かつて、マルゼンスキーやリアルシャダイなども故障の多い種牡馬でしたが、これほどではなかったですね。

来年のPOGでは、タキオン産駒を避ける動きが当然出てくるでしょう。その分、現役時代に脚もとが丈夫だったディープインパクトに指名が流れるかもしれません。

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!