オルフェーヴル三冠達成
日曜日の午前、新幹線で京都に向かう道中、周りの席に座っていた方々がずっと菊花賞の話題で盛り上がっていました。こういう雰囲気はいいですね。自然に耳に入ってくる会話はオルフェーヴルが中心でした。
レースは、そんなファンの期待に応える横綱相撲。最終コーナーの手前で馬なりのまま先頭に接近した時点で勝負は決しました。着差は2馬身半ですが、ゴール前で手綱を抑えなければ4~5馬身差はつけていたでしょう。ふと17年前のナリタブライアンの圧勝劇が脳裏に甦りました。勝ちタイムの3分02秒8はコースレコードにコンマ1秒差です。
http://www.youtube.com/watch?v=gKY_XWhuv0o
1ハロン13秒台のラップが一度もない、という過去に例がない引き締まったペース。しかも、馬群が縦長にならなかったため、実力が如実に表れるレースとなりました。1着◎オルフェーヴル(1番人気)、2着▲ウインバリアシオン(2番人気)、3着○トーセンラー(3番人気)というガチガチの決着です。穴馬に出番はありませんでした。
予想は◎▲○で馬単400円、3連単2190円的中。各媒体に提供した予想文(一部)を転載します。
「◎オルフェーヴルは『ステイゴールド×メジロマックイーン』という有名なニックス配合で、ドリームジャーニー(有馬記念、宝塚記念、朝日杯フューチュリティS)の全弟にあたる良血。二冠を制した春の時点でも抜きん出た実力を誇っていたが、夏を越して心身の成長ぶりが著しく、もはや同世代には負けようがないレベルに達している。前走の神戸新聞杯はテンションが上がりやすい休み明けで、なおかつ例年の菊花賞よりも遅いペースで展開したにもかかわらず折り合いがついた。引っ掛かって自滅するシーンは想像しづらい。淀みない流れで展開した場合は、折り合いを欠く心配がなくなり、この馬の底力が活きる競馬となる。いずれにしても死角は小さく三冠達成は濃厚。2着探しのレースだ。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102636/
スタート後の3コーナーの下りで、ハミを噛んで行きたがる仕草をみせましたが、折り合いがついてからはスムーズでした。ここまで上手にレースができるようになったのは、スタッフの創意工夫や並々ならぬ忍耐の賜物でしょう。もし2歳時に見せた気性難が治らなかったら、三冠どころか一冠もなかったはずです。入線後、止め際で池添騎手を振り落したシーンに、いまだ潜在する気性難を感じました。この悍性こそが父ステイゴールドから受け継いだ最大の武器であり、またアキレス腱でもあります。
ダービーを勝って二冠を制したあと、オルフェーヴルはノーザンファームしがらき(滋賀県甲賀市)で夏を過ごしました。管理する池江泰寿調教師は毎週見に行っていたそうで、「いい夏を越せたのが三冠達成の大きなファクターでした。遅生まれだったので成長も大きかった」と語っています。前走16キロ増だった馬体が、今回さらに6キロ増えていました。全兄ドリームジャーニーもそうでしたが、ステイゴールド産駒は古馬になって完成する晩成型が多いので、まだまだ成長していくでしょう。
レース後の記者会見で、池江調教師は「来年の目標は凱旋門賞制覇。そのプランについてはこれから練っていきたい」と語りました。気負いのない自信に満ちた口ぶりに、ひょっとしたら「まともに走れば勝てる」と考えているのではないか――と、軽い戦慄を覚えつつその胸中を想像しました。5年前のディープインパクトのフランス遠征に池江調教師は付き添いました。その経験は大きな財産となっているはずです。今後のレースについては馬の状態を見て決めるそうなので未定です。回復が早いようならジャパンC、疲れが抜けないようなら有馬記念でしょう。
2着ウインバリアシオンは、世代ナンバー2の実力を証明しました。レース後、安藤勝己騎手はサバサバとした表情で「馬がようやく良くなってきたところだから。これから楽しみがありますよ」と、馬の成長力に期待を寄せていました。松永昌博調教師は次走について「相手(オルフェーヴル)次第やね」と語りました。ライバルが出ないレースに出す、ということなのでしょう。オルフェーヴル以外なら勝てる、という自信の表れとも取れます。
3着トーセンラーは、管理する藤原英昭調教師がオルフェーヴルの強さにショックを受けた様子で、「あそこまで強いとは思わへんかったなぁ~」と、苦笑まじりに社台ファーム代表の吉田照哉氏に語っていました。「三冠馬誕生かぁ~」とつぶやいて溜息をついたのが印象的でした。
10月24日(月)の午後10時55分から、NHK総合テレビ『アスリートの魂』で、「人馬ひとつになって 三冠馬・オルフェーヴルと池添謙一」が放送されます。検量室前にNHK大阪のスタッフの姿がやけに目についたのですが、三冠達成へ向けての密着取材をしていたようです。10月26日(水)の午前2時00分(25日深夜)に再放送があります。
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血 統 屋 http://www.miesque.com/
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オルフェーヴルどこで走っても勝つイメージしかわきません。
それにしてもあの迫力というか威圧感はなんなんでしょうか、見ていてちょっと怖いと思ってしまいました。
ああ凱旋門賞に出走するなら生で見たいなあ。
投稿: たくぼん | 2011年10月24日 (月) 10:20
レース前、オルフェーヴルが三冠は想像しにくいと思っていましたが、結果は快勝でしたね。
しかし私的には、勝ったオルフェーヴルより、二着に来たウインバリアシオンの安藤勝己騎手の騎乗っぷりが印象に残りました。あそこで内を突ける騎手は、最近ではあまりいない気がしますからね…。
投稿: キングトップラン | 2011年10月24日 (月) 12:21
栗山先生こんばんわ。
オルフェーブルは、本当に強かったですね。
1週目は…少し引っかかっていましたが、
スタンド付近で…池添騎手が馬群にいれた途端に…
落ち着きを取り戻しましたね。
馬券は…基本、穴狙いなので、あまり買わずに
殆どスポーツ観戦という感じで見ていましたが、
最後の4角で…すでに勝ったと思いました。
この馬は、レースを見る度に、
強くなっているので…
この先、どれだけ強くなるのか?
本当に恐ろしいですね。
一応…私もサンデーレーシングの会員なのですが…
出資者じょ方々が…羨ましい限りです(^_^;)
将来は、社台で種牡馬入りだと思いますが、
どんな繁殖牝馬が集まって来るのか?ですね(^-^)
オルフェーブルの血統は、日本を代表す血統の馬達の集大成
みたいな血統構成ですので、
少し重たい血統の牝馬が良いと思っています。
栗山先生なら、どんな馬を付けますか(^-^)?
個人的に…池添騎手繋がりで、スイープトウショウあたりを
付けて欲しいと思っています。
投稿: brokken | 2011年10月25日 (火) 01:01
>たくぼん様
スピードがあり、スタミナの不安がなく、抜群の瞬発力があるわけですから、非常に負けづらい馬ですね。もしフランス遠征のプランが具体的に決定したら、わたしは旅の準備を始めます^^ 来年の競馬の大きな楽しみですね。
投稿: 栗山求 | 2011年10月25日 (火) 07:50
>キングトップラン様
日曜日の京都は内しか伸びない馬場でしたから、あそこを突くしか選択肢がなく、開かなかったらそれまでという乗り方でした。同じ位置取りでは勝てないので、イチかバチかで展開利に期待したのでしょう。安藤勝己騎手らしい勝負師的な騎乗だったのではないかと思います。
投稿: 栗山求 | 2011年10月25日 (火) 08:00
>brokken 様
おはようございます。オルフェーヴルは一戦ごとにどんどん強くなり、隙が無くなってきています。上の世代とも互角以上に戦えるのではないでしょうか。次走がジャパンCになるのか有馬記念になるのか分かりませんが、本当に楽しみです。
オルフェーヴルが種牡馬になれば、社台グループが総がかりでサポートするでしょうから、錚々たる繁殖牝馬が集まると思います。スイープトウショウはいいと思いますよ。わたしも種付けに間に合うようにじっくり研究してみたいと思います。ドリームジャーニーの子が先にデビューするので、POG的にはそれが参考になるでしょうね。
投稿: 栗山求 | 2011年10月25日 (火) 08:09
私もこの日曜日、淀にいました。久しぶりに熱気にあふれた競馬場でした。初めて競馬場に足を踏み入れたのが、レオダーバンの菊花賞でしたので、毎年このレースが来るたびに自分の競馬誕生日を迎える気がします。オルフェーブルが4角で先頭に立った時のどよめき、その後の湧き上がる歓声を聞きながら「ああ競馬って楽しいな」と心から思いました。競馬人気の陰りがささやかれて久しいですが、まだまだ捨てたもんじゃないとあらためて感じました。
投稿: へろへろへりおす | 2011年10月25日 (火) 21:46
「毎年このレースが来るたびに自分の競馬誕生日を迎える気がします」という感覚はとてもよく分かります。わたしも毎年、初めて馬券を買った週がやってくるとそれを感じます。
菊花賞はゴールしてから“イケゾエ・コール”の発生までもの凄く速かったですね。久しぶりに味わう盛り上がりでした。毎週毎週、競馬は常に新鮮で楽しいと感じます。今週もいいレースを見たいですね~。
投稿: 栗山求 | 2011年10月26日 (水) 07:55
栗山さんこんにちは。
三冠馬を見るためにはじめて京都競馬場に行きました。
最高のレースで感動しました(T_T)
オルフェヴェールの走りを見ているとサッカーボーイとメジロマックイーンの良いとこ取りに思えてきて、しかもステイゴールドの気性の激しさを良い方にレースに向けていられるように思えました。
ディクタスの血ってのはフランスでは有利に働くのでしょうか?
投稿: まさ | 2011年10月26日 (水) 15:22
おはようございます。三冠達成の瞬間はなかなか見られるものではないですし、レースも素晴らしかったので最高でしたね。スタンド全体が震えるようなゴール前の感覚がまだ体に残っています。
ディクタスは純フランス血統ですから、フランスで走るにあたって決してマイナスにはならない血だと思いますよ。同じステイゴールドを父に持つナカヤマフェスタは凱旋門賞2着です。この血統は頼もしいですね。
投稿: 栗山求 | 2011年10月27日 (木) 09:13
オルフェーヴルの三冠達成は素晴らしいことですが
東西格差がますます酷くなってきていることを再認識したレースでもありました。
掲示板に載ったのは全て関西馬。
関東馬の参戦は18頭中わずか2頭だけですから
意外な結果でもありません。
これで牡馬クラシック三冠の近10年の戦績は
関東馬2勝 関西馬28勝 になりました。
他の重賞レースの戦績も目を覆いたくなるような惨状です。
もはや調教師の能力や労使関係だけの問題ではなくなってきているのは明らかでしょう。
JRAの管理下に置かれ、運用面で様々な厳しい制約を受ける現場(調教師)ゆえ、自浄作用も期待できません。
このような歪な構造が続けば
美浦トレセンのみならず日本競馬の将来にも大きな悪影響を及ぼすことは必至です。
問題を先送りにすればするほど、それだけ大きなツケが回ってくるでしょう。
厩舎の在り方、トレセン移転等を含めた抜本的な改革が早急に必要かと思われますが如何でしょうか?
常に現場と接しておられる栗山氏の見解をお聞かせ願えれば幸いです。
投稿: fujiyama | 2011年10月27日 (木) 09:53
東西格差の要因については、ここ十数年のあいだにほとんど語りつくされた感があります。関係者もそのあたりについては十分認識しており、格差を縮めようと努力をされています。しかし、それでもなかなか好転しません。なぜかというと、入厩する馬の質に大きな差があるからです。
美浦に入厩する馬に比べて、栗東に入厩する馬の質は断然上です。この格差はいったん固定化するとなかなか覆りません。仮に美浦の管理・調教レベルが栗東を明らかに上回っていたとしても、東西が逆転するには長い年月が必要です。同レベルならおそらくこのままでしょう。
美浦のいくつかの厩舎が相当厳しい状況にあるという噂はよく耳にします。定年を待たずに引退する、という例が近年いくつか見られ、悪影響はすでに表れています。いまのような不況が続くかぎりこの流れは変わらないと思います。これを抜本的に解決するとなると、JRAによる現状の管理システムそのものが問われることになります。免許の在り方や外厩制といった議論も浮上してくるでしょう。具体的な青写真についてはわたしの手に余ります。ただ、市場原理に委ねても、共産主義的な方向に管理を強化しても、前途多難であることには変わりないと思います。穏やかな改革では何も変わらないでしょうし、かといって手術を強行すれば出血多量で患者が死ぬかもしれません。難しいですね。
投稿: 栗山求 | 2011年10月27日 (木) 11:16
早速のご回答ありがとうございました。
格差が広がれば広がるほど入厩馬の質も偏る。
まさに負のスパイラル状態ですね。
社台グループの肥大化もそれに拍車をかけたような気がします。
世界レベルを視野に入れた生産、育成を第一義とする社台グループにとって
東西格差などは、大事の前の小事に過ぎないのかもしれません。
欧米でも通用する馬が増えてきたのは本当に喜ばしいことなのですが・・・。
ただ、このままでは日本の競馬も盛り上がらないでしょう?
JRA関係者の改善に向けた努力と
美浦関係者の奮起を願ってやみません。
地方競馬も同様!
投稿: fujiyama | 2011年10月27日 (木) 15:00
美浦にはやる気のある優秀な若手調教師が少なくないので、次の時代を担う彼らの奮起に期待したいところです。
投稿: 栗山求 | 2011年10月28日 (金) 08:44